手書き文字
自分で台詞を写植してんのだろうか
上が写植、下のやりとりが手書き文字

 文章(セリフ)用の手書きの文字。
 音喩のための描き文字とは区別する。
 多くの場合は、モノローグに近い独り言(つぶやき)を表現するために使われる。

 安彦良和の漫画では叫びのセリフが描き文字として表現される。
 そのセリフは意味的には手書き文字の一種だが、見た目としては音喩のようなグラフィカルな独特のもの。
 この叫び描き文字を入れるだけで、なんだか安彦漫画っぽく感じてしまうほどの特徴のある表現と言える。

写植レタラー

デッサン(dessan)

 そもそもは単色での線画のことで、それが通常使われる写生・素描・下絵のことも指す。
 デッサンを繰り返し描くことで付く立体的な空間、あるいは人体(生物)構造の表現能力をデッサン力と呼ぶ。
 転じて正確な描写そのものをデッサンと呼ぶのが、特に漫画やアニメ業界では一般化して(しまっている)。
 現在の日本、特に漫画の世界ではかなりイーカゲンに使われている言葉。

 立体的・人体(生物)構造的におかしい絵を、デッサンが狂っていると言う。
 漫画は「正しい絵」を描くことが、必ずしも正解ではない。写実的正確性ばかりを気にしても仕方がない面がある。

デフォルメ(deform)
手が、なんきん(漫画家)風味のデフォルメ

 見せたい部分を誇張し、強調する手法。見せなくても良いと判断すれば、逆に省略される。
 どんなにリアルに見えようとも、絵であるからにはどこかデフォルメされている。

 ちびキャラのことを指して使われることも多い。

テレ線エモティコン
灰波かずみ
照れたときだけ出現するのはコテ線ではなくテレ線

 鼻の上や頬の上に描かれる斜線で、頬が紅潮している様子を表す。頬を染めるという状態の記号と言える。
 フキダシの中に描かれることもある。

 森田まさのりの女性キャラは、過剰にテレ線が描かれる。危うく日焼けしているのかと思うほどだ。

 斜線にさらにトーンで線を重ねボカした感じにする手法を「乙女張り」と呼び、少女漫画のテレ線によく使われる。「トゥンクのアレ」

アホッペぐるぐるホッペ

電球漫符

 アイディアがひらめいたことを示す漫符。
 多くは頭の上に描かれる。
 気付き線のバリエーションと考えることもできる。

(てん)
天
天にタチキリ(そら)コマが定番

 ページの上の方。あたま、とも。
 本は机に置いて読んだり、手に持って縦にして読んだりするため、「上」ではどっちか分からないため「天」という言葉を使っているものと思われる。
 コンピュータ上で読む場合も同じ問題があるので、この言葉は今後も残っていくと予想できる。
 また「上下」に対応する言葉として「天地」もよく使われる。

ノド小口

天狗鼻表情

 調子に乗って「天狗になる」のそのまんま表現。
 鼻が「ぐぐっ」という音喩とともに伸び、「ふふん」と言いながら胸を張るポーズをするのが定番。更に鼻息まで出ることも。

点線(dotted line)線種

 …のように、点が連続で描かれることで、線のように見えるもの。破線と似ているが、点線は点の集合であり、部分部分を見ると線となっている箇所はない。

 実線に比べて弱いイメージを持ち、フキダシに使われるとモノローグか小声、コマに使われると想像や回想シーンとなる。
 使われ方も破線と似ているが、破線よりさらに弱いイメージを持つ。

 イリヌキの代わり、あるいはその先に置く(点描)ことで、質の低い印刷でもより繊細な表現が可能になる。

天地ゴマコマ

 ページの天から地まで届く(縦長の)コマ。
 縦長のコマはページの中央に置かれることは少なく、ページの右か左に配置される。
 必然的にイリゴマヒキゴマに使われることになる。
 また、タチキリになる率も高い。

 漫画の基本からは外れるが、下から上にパンアップされるように読まれることを想定したコマが多い。
 白土三平などの忍者ものの作品では、しばしば木を登っていく描写に使われる。

 ページ全体が数個の天地ゴマで構成されるのは、石森章太郎がよく使った手法だ。
 さらにそれが斜めに割られてコマ全体が倒れていくような使い方がされることもある。
 コマの中には横顔が描かれ、モノローグがコマを跨いでちりばめられるような使い方が代表的なもの。
 俯瞰で人と足跡を描き孤独感を強調する、といった使い方もある。

帯ゴマスプラッシュページ見開き

点描(pointillism)技法

 細かい点を大量に打つことで、繊細なグラデーションを表現する手法。
 淡いふわふわした気分を表現する。
 少女漫画と水木しげるには欠かせない。恋と妖怪はどちらも、実体がはっきりせず、ふわふわしたものだということなのだろう。

 点描は比較的荒いサド点と、細かなマゾ点とに呼び分けられることもある。

カケアミアミテンチリ点

天使(angel)漫符 | キャラ

 善なる心を示すキャラ化した漫符。
 キャラが例えばお金を拾って警察に届けるかネコババするか葛藤する際に、モノローグの近くに描かれ、悪魔と戦うのが定番。
 光輪を頭に乗せ、白いワンピースか裸で子供の姿をしていて、背中に白い鳥のような羽がついているのが典型的天使の姿。

 また天国(死後の世界)の記号でもあるため、気絶時にホシの代わりに回ったり、死亡時はエンジェルリングとともに(ラッパを吹く姿で)描かれる。
 さらにハートを打ち抜くキューピッドの役割もする。

 擬娘化のモチーフとしても高い人気がある。

 PEACH-PITしゅごキャラ!エルは、この天使がしゅごキャラ化したものと考えられる。ちなみに悪魔はイル。

悪魔

死神

点目(てんめ)表情
たえちゃんびっくり
左下のキャラが点目

 点だけで描かれた目。
 主に、瞳孔が縮まった、びっくりし呆れた状態を示すが、必ずしもそればかりを示すわけではない。

 有名なのは谷岡ヤスジだが、目を細めて殺意を表す的なニュアンスで使われている。
 びっくりし呆れたことを表す漫画表現として使ったのは、みなもと太郎が一番早いらしい。

 なお「目が点になる」という言葉は、漫画のそのような表現を元につくりだされた言葉で、1987年に流行語となった、わりと新しい言葉。
 目が点になるを略して目点、目が点、などともいうが、これらは目が点として描かれた様を示すのではなく、驚いた・呆れたことを示す慣用句として使われているようだ。