- 解説者(commentator)キャラ
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モブ(群衆)に近いが、主人公により近く、状況をまとめて説明してくれる存在。小池一夫は引き回し役と呼んでいる。
絵だけでは表現できないところを補完してくれるキャラ。
単純に言葉で解説するだけでなく、様々な驚きリアクションで、状況を読者に伝える役割を持つ。
あるキャラの強さを分かりやすく表現するかませ犬は、解説者の一種と捉えることもできる。
解説者には、解説相手として無知な人(転校生・初心者など)が必要とされ、多くの場合その解説相手は主人公である。レギュラーキャラでは藤子不二雄オバケのQ太郎ハカセのような知識豊富なメガネ君タイプが代表的。
高橋陽一キャプテン翼のようなスポーツものは、解説者(アナウンサー)がそのまま漫画でも解説者となる。ゆでたまごキン肉マンは「ゲェーーッ!!」という驚きリアクションで漫画の定型を作った。宮下あきら魁!! 男塾は、「なんとあの技は…」「何っ!知っているのか雷電!?」の掛け合いから始まる解説で有名。これらが転用されギャグではツッコミという形で笑いどころの解説が行われる。うすた京介セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん藤山起目粒(フーミン)や澤井啓夫ボボボーボボーボボビュティなどが代表的なツッコミキャラ。
ボケ・ツッコミ文化がない国・地域では、単なる怒りっぽい人と解釈されがち。グルメ漫画や音楽漫画は、味や音という漫画では伝達不可能なものが題材なだけに、様々な解説者やモブが必要とされる。橋口たかし焼きたてジャぱんなどは、グルメ漫画というよりリアクション漫画と呼んでも良いほど、そのリアクションに多くのページを割いているし、雁屋哲&花咲アキラ美味しんぼは、主人公自身が解説者である。
- 回想シーン
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過去のことが語られる場面。漫画ではコマ外の間白を黒くする、コマを角丸のものにする、あるいは点線(破線)にするなどで違う時間の話であることを示唆する。
- 会話フキダシ(dialouge balloon)フキダシ
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ダイアローグで使用されるフキダシ。
時代や作家によって変わるので、特にこれと言った形はないが、絵や文字の邪魔にならないシンプルなものが使われる。
フキダシを破線にすると、ひそひそ話になる。
二重線になると、少し客観視された印象(例えば回想シーン)が加わる。 - 顔文字フェイスマーク
- 顔漫画
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バストアップやクロースアップが延々続く漫画のことで、「漫画を描くときにやってはならない例」として出されるもの。
単調であるのは勿論、ロングが入らないので、何処で何をやっているのかセリフの内容から類推するしかなく読みづらい。
加えて正面か左向き(←)の顔しかないとなると、もはや漫画と言っていいのか不安になるが、漫画を描き慣れていないときに描きがち。なお同じくアングルやショットにメリハリがない幼年漫画や新聞連載の四コマなどは、漫画に親しみがない人向けの工夫。
きうちかずひろBE-BOP-HIGHSCHOOLなどは、大半のコマが正面からのバストアップかさらに寄ったアップで進行するすごい漫画だが、大ヒットしている。
顔漫画は、漫画を読み慣れていない人にとっては良い漫画だとも言える。 - 鈎カッコ(bracket)約物
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セリフの中に「」で括られた部分が現れると、多くの場合それは何らかの引用を示す。
例えば、有名な詞、伝言、書物の読み上げ、など。
他にも、単語の強調として使われることもある。漫画の場合フキダシによって発話だとわかるので、会話文と示すために使われることは基本的にない。
また、小説などで引用の意味で使われる二重鉤括弧『』が、漫画で使われることはほとんどない。 - 描き文字(lettering)
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音喩を表現するために、写植ではなく、ペンなどで手描きした文字。
グラフィカルで豊富な表現があり、日本漫画を特徴づける要素のひとつとなっている。大きな音は大きく、小さい音は小さく、低い音は太く、高い音は細く、柔らかい音は丸く、シャープな音は鋭角的に描かれるのが基本。
所謂「ブーバ/キキ効果」が、漫画では分かりやすく現れていると言えるだろう。音喩ではなく、手書きの台詞や文も描き文字と呼ばれることもあるが、本サイトでは、手書きの文を手書き文字と呼び、描き文字と区別する。
- カケ技法
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平行な直線を並べることで、ハーフトーンを表現する技法。
カケアミの一種である1カケの事でもある。カケで広い面積を描く場合は、角度を変えながら小さい面積単位でつなげていき、流線と差別化する。
イリやヌキを駆使してグラデーションを作り、光が射し込んでいる表現にも使われる。 - カケアミ技法
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平行な直線を沢山引き、さらにそれに掛け合わせて別の角度の平行線を引くことで、濃淡を表現する手法。
平行線を引いただけの状態を1カケ(あるいは単にカケ)と呼ぶ。さらに掛け合わせる角度の数で、2カケ、3カケ、4カケとなる。線い長さや太さを調節したり、インクとホワイトのカケアミを重ねたりして、グラデーションなどの高度な表現もできる。
繊細な表現が可能で点描とともに、少女漫画で好まれる手法でもある。
手描きが基本だが、カケアミトーンもある。網掛け、掛け合わせ
- 重ねゴマコマ
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他のコマの上に乗るように描かれるコマ。
カットインに使われるが、重ねゴマが必ずしもカットインになる訳ではない。重ねゴマは、重なり合ったコマが「同時」であることを示唆している場合が多い。
同様の同時性の演出は、コマの間にフキダシやその他の絵を置いて、複数のコマをつなげた場合にも起きる。浮きゴマ
- 重ねフキダシフキダシ
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幾つかのフキダシ(大抵は2つ)が繋がって描かれること。
ひとつのフキダシの中に長いセリフを書くと読みにくくなるが、分割すると視線の流れやセリフのテンポが悪くなる場合などに使われる。
同種のフキダシを斜めに配置し、重なった部分の輪郭を消す。 - 片面起こし
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見開きではなく、片面(奇数)のページから始まる(起こされる)こと。
多くの日本漫画は右綴じなので、左ページから始まることになる。左起こし、片起こし
- カット(cut)
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同ページ中に文章と絵が一緒に配置される場合の挿絵。
漫画と直接は関係ないが、漫画イラストの使用方法として、最も一般的なもの。
- カットイン(insert)
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ふたつのカットが重ね合わされた表現。
もともとはカットバックを挿入することをカットインというのだが、当サイト内ではその意味で使わない。オーバーラップと似ているが、カットインは画像の上に別の切り取られた画像が動きを伴って重なる。切り貼り(コラージュ)のようなイメージだ。
特に(サンライズ系)ロボットアニメでは、無敵超人ザンボット3以来、主人公達とロボットを同時に描くために多用されたが、アニメ用語として定着しているかは怪しい。
ただし、おそらくそのアニメを再現したスーパーロボット大戦の流れから、ゲームの演出としてはカットインで定着している。そもそも漫画の場合は画面を分割するコマという手法があったため、アニメほど意識的ではなく自然と発生した手法といえる。
重ねゴマの形でのカットインがなされることが多い。
めぞん一刻のラストはセリフとともに、漫画史上に残る名カットインがある。映像業界的には、映像の一部に別の映像をはめ込むことをピクチャーインピクチャー(PIP)あるいはサブ・クリップと言ったりする。
スプリット・スクリーンはコマ割りのように画面を区切った映像を指す。
テレビではよく(コーナー)ワイプと言われるが、場面転換(transition)時に拭う(wipe)ように切り替わる効果の誤用が定着したもの。
また、スーパーインポーズ(superimpose)という画像に重ね合わせをする場合の用語があるが、字幕スーパーの言葉が定着しているように主に字幕・テロップに対して使われる。 - カットバック(cutback)
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メインの進行とは別のシーンを挿入する手法。あだち充が神業的に上手い。
別の絵を挿入することで、新たな意味を創出するモンタージュに必要とされる手法。
何度も繰り返すとクロスカッティングとなる。
- 角丸フキダシフキダシ
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長方形の角をまるくしたフキダシ。かどまるフキダシ。んあー、つの丸じゃないのね〜。
会話フキダシの一つ。
セリフを奇麗に配置しやすく、無駄な空間が発生しないのが特徴。ただし、少し無機的な印象を与える。
山岸凉子が好んで使う形。 - カバー裏
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表紙カバーの裏側。稀にリバーシブルとなっていて、ひっくり返しても使えるようになっているが、大抵は何も印刷されていない。
- カバー下
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単行本の表紙カバーを外すと現れる漫画本の本体。当然、カバー下表紙、カバー下背表紙、カバー下裏表紙がある。
漫画本では表紙カバーのパロディが描かれたり、4コマ漫画が描かれたり、なんらかの遊びが入っていることが多い。
カバー下表紙ではなく本体表紙と呼ばれることもある。 - カービードッツ(kirby dots)効果背景
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大小の黒丸を連ねてグラデーションを表現する手法で、アメコミでよく見られる。カービークラックル(kirby crackle)とも呼ばれる。
アメコミの大御所ジャック・カービー(Jack Kirby)が開発し、好んで使用したことからこの名がついた。丸いからと言って星のカービィとは全く関係ない…と思う。負の雰囲気の空間・感情や、エネルギーの放出・爆発の表現などに使用される。
放射状に描かれることで、集中線のような効果を持つ。 - かませ犬(compared)キャラ
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もともとは自信をつけるために戦う弱い相手を指すが、漫画では「あるキャラの強さを説明するために敗れるキャラ」を指す。
そのため、かませ犬そのものも強ければ強いほど効果が高い。「あの強敵にあっさり勝つなんて、どれだけ強いんだ!」というわけだ。
必然的に強いキャラは「次のかませ犬」になる可能性を高く持つ。これはコンピュータゲームのRPGの面白さに通ずるものといえる。
何かの凄さを説明するための解説者に近い役割であるだけに、かませ犬は解説者も兼ねることが多い。鳥山明ドラゴンボールヤムチャは相対的な強さをキープしていたため、レギュラーでかませ犬となっていた。
バトル漫画は基本的に、「主人公(かませ犬) vs 強敵」→ 修行(新技獲得) →「強敵(かませ犬) vs 主人公」→「主人公(かませ犬) vs さらなる強敵」…、のループで進行する。 - 紙芝居周辺ジャンル
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表に絵を裏に文章を印刷し、演者が一枚ずつ引いてめくりながら、裏の文章を読んで聞かせる形式の作品。
絵本の変形とも言えるし、人形劇の変形とも言える形式で日本独特のもの。日本漫画の文法は、紙芝居から発生したものも多い。
紙芝居→漫画の変化によって、めくりの演出は演者から読者へとゆだねられ、読者によってかなり違う読書感が出るようになった。
勿論、紙芝居は演者の巧拙によって印象は変わったが、裏の演者用のト書きに「ゆっくりめくって期待を持たせる」とか書いてあるので、漫画の持つメクリとはかなり異なる。現在は幼児用の紙芝居を除くと、お笑いや情報番組などの司会者のフリップ芸(めくり芸)にその系列を見ることができる。
また、講演や発表で使われるスライドもこの流れにある。意外に今後も侮れないジャンルと言えよう。 - カミナリ漫符
- カラリスト(colorist)制作者
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アメコミで彩色を行う職業。
アメリカのコミック制作はアニメの制作のように分業が進んでいる。
アメコミをほぼ一人で描く作家も増えているが、カラリストは別にいることも珍しくないようだ。
カラーが苦手な漫画家も多いので、日本でも萌え系イラストの着色が専属でいることから考えても、職業として十分成り立ちそうだ。 - カレハトビモノ
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寂しげな、あるいは白けた雰囲気を出すために舞う枯れ葉。必ずしも近くに木があって枯れ葉がある必要は無い。
三点リーダと点目の人物ともに、カレハが一枚くるりと一回転した動線とともに描かれ、「ひゅー」などの音喩がのるのが、定番のドッチラケ場面。
北条司シティーハンターでは、同様の白けた場面にはトンボが飛ぶ。 - 感嘆符(exclamation mark)約物
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「 ! 」記号のこと。びっくりマーク、雨垂れ、エクスクラメーションマークとも言われる。
少年漫画の場合、大半のセリフの最後につくほど多用される。その数も2つ3つは当たり前、5つぐらい付くことも珍しくない。
何かに気づいた、あるいは思いついた時に頭の上に出る。この時は大抵ひとつだけ。
描き文字としても単体、または語尾に付く。この際には「−」長音記号を兼ねることや、「…」三点リーダ的に使われることもある。
非常に使い勝手の良い、万能漫符といえる。 - 感嘆符疑問符約物
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「 !? 」という感嘆符と疑問符の組み合わせ。
混乱した状況を表し、縦書きでは特に疑問符感嘆符と区別されないが、こちらは理解できていない表現。
「えっ!…でも、なんで?」という流れを短く表現している。週刊少年マガジンで多用されるため、マガジンマークと呼ばれることもある。
特に疾風伝説 特攻の拓の原作者である佐木飛朗斗が、フキダシ内はもちろんフキダシ外でも単体で多用する。