- 仕上がり線タチキリ線
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共通の背景世界で描かれる、別のキャラの物語。
欧米の小説では特にTRPGを中心としたファンタジー世界での作品群が多い。
日本ではアニメ・ゲーム作品の背景世界を使ったものが多くある。
例えば、アニメ機動戦士ガンダムは、漫画でも数多くのシェアードワールド作品が描かれた。
ゲームドラゴンクエストなどは、キャラの匿名性が強いので、本編のパロディもあるがシェアードワールド型も多い。 - ジェスチュア(gesture)
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身振り・手振りのこと。音声言語発生前の映像言語でもある。視覚要素の強い漫画の中にも頻出する。
ジェスチュアが少ないと言われる日本人だが、漫画の中ではジェスチュアを多用する。
指差しは多用され、驚いた時は万歳して跳び上がり、呆れた時は掌を上に肩をすくめる。悔しがったり嫉妬した時に「ハンカチを噛んで、キーッと言いながら両手で下に引っ張る」というように、小道具も含めて定型化しているジェスチュアも珍しくない。
聖日出夫なぜか笑介のズッは、典型的ずっこけジェスチュア。
高橋留美子の漫画では、ちゅどーんの擬音と共に中指と薬指を曲げた特徴的な手の形をしてキャラがふっ飛ぶ。これは「爆発してるけど危なくないですよーギャグですよー」という説明として機能している。 - ジグザグ線(zig zag)線種
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のように、強い、尖った調子を表す線、ギザギザ線。
漫符では、怒ったことを示すカミナリなどに見ることができる。
大声を示す破裂フキダシも、このジグザグ線で描かれる。 - シーケンシャルアート(seaqencial art)
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連続した絵。
漫画の祖先であり、本質の一つ。絵巻物もシーケンシャルアートのひとつといえる。
ザ・スピリットを代表作のひとつとするウィル・アイズナーが提唱した、コミックを包括する概念。 - 地ゴマコマ
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コマ枠で囲まれていないコマ。ページの基準となる奥行き上に描かれたコマ。
間白に描かれたコマと捉えることもできる。
少女漫画でよく使われる手法。 - 視線誘導
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読者の視線を誘導すること。
まず、読者の視線は、文字、キャラ(特に目あるいは女性キャラの胸)、集中点、などに惹き付けられる。
また、コマの対角線方向や、コントラストの密度の分布に沿って流れる。
そして、ワク線を代表とする境界線で反射され。
最後に、視線方向や、指差し、あるいは矢印などに促されて更に先に進む。コマとフキダシの間に微妙な三角に近い隙間があると、そこに読者の視線が惹き付けられる傾向があるため、視線の流れが混乱する場合がある。
とは言え、隙間がないとフキダシ全体の形がなめらかにならず、収まりが悪くなる問題もあリ、コマとフキダシの間に隙間は作らないのが正解とも言えない。
この隙間の有る無しの違いは、多くの場合作品(あるいは作家)単位で決まっている。例えば森川ジョージはじめの一歩はフキダシとコマ枠の間に隙間があるタイプ。 - 実線(solid line)線種
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のように、途切れも波打ちもない、漫画の基本となる線。
大きく、タッチがある有機的な線と、太さの均一な硬質な線に分けられる。 - シッポ(pointer)フキダシ
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フキダシから出て、セリフを話しているキャラを指している楔形のもの。
トゲ、ヒゲ、アシ、クチバシ、ツノなどと言われることもある。通常は1本。2本以上の場合は心持ち声が大きい印象が出る。
複数の尻尾がそれぞれ別のキャラを指し、同時に同じことを言ったことを表す場合もある。その際にフキダシ枠が二重線になることも多い。シッポが付いていないフキダシはモノローグかナレーションであることも多い。
ただし、破裂フキダシは明示的なシッポはないことが多いが、全体にシッポがあると捉えることもできる。
このことから、シッポが多い=声が大きいという法則が見える。キャラがコマの外にいる場合には、シッポがフキダシの中にめり込んでいる逆シッポが使われたり、吹き出しの中にキャラを示すアイコン(デフォルメしたキャラの顔やキャラを表すアイテムなど)が描かれたりする。
中村力斗/野澤ゆき子君のことが大大大大大好きな100人の彼女では、キャラが多いこともあってバリエーションが多く、例えばフキダシを胴体に見立てて肩から上を乗せる手法などが使われている。シッポは楔形が一般的だが、多少湾曲したり、カミナリ、直線、角形、アブクなどがある。
シッポが一回転していると、ケムリの困った感じのニュアンスが出る。
アブクを除けは、それほど記号的意味は大きくなく、作品の雰囲気に合っているものが選択される。
稀に矢印形のシッポもあるが、その場合のフキダシの文字はセリフではなく、矢印が指しているものの解説あるいはラベルである。鬼頭莫宏ぼくらのや八木教広CLAYMOREなどで使われるフキダシは殆どシッポがなく、モノローグや映画の字幕のような、一歩引いた印象を与える。なお、シッポなしのフキダシは2010年代では割と一般化している。
アメコミでは同一人物のフキダシがシッポによって繋がっていることがよくあるが、日本では皆川亮二がコマにまたがるフキダシをつないだりするくらいで、あまり一般的ではない。メタアクションとして、フキダシのシッポがキャラを背中から付き刺すような使われ方がされたりもする。
言葉が突き刺さることのそのまんま表現だが、ここで突き刺しているシッポは突き刺すためだけに存在し、発話者を示すシッポは別にあるので、これはシッポではないのかもしれない。 - 下描き制作工程
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ペン入れの前に鉛筆で絵を描く工程。
アメコミではペンシラーの役割。水色鉛筆で描いて、消しゴムがけをしない作家もいる。白黒印刷では水色は白と認識されるからだ。漫画原稿用紙には水色の補助線が色々と引かれているが、これも同じ理屈。
すごいのは名探偵コナンの青山剛昌で、背景などの下描きを原稿用紙の裏側に描き、トレス台の上でペン入れをしているらしい。こうすると紙の表面は傷まないし消しゴムをかける労力も減らせる、というのは分かるが、相当絵が上手くないと無理。 - ジト目表情目
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目を細めて横(あるいは上)を見る形をした目。通常の目に比べて単純化されて描かれることが多く、写実的な場合でも上瞼が直線で描かれるので記号表現と分かる。
ジトっとした目の略だが、まずジトってなんだ、じっとりか?
軽蔑、あるいは揶揄、批難めいた意味を含んだ視線を表す。じーっ、といった音喩や「へー」といったセリフと併用して使われることが多い。
絵文字だと、(¬_¬)など。三白眼のキャラの目など、特に感情が入ってない場合もジト目という場合もあるようだが、どの辺までがジト目なのかは、揺らぎが大きい。
絵的に全く同じ描き方をされていても、目をそらす場合は、ジト目とは呼ばれない傾向があるようだ。 - 死神(death)漫符 | キャラ
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破壊や悪い予感を示すキャラ化した漫符。
いやな予感を感じたキャラの側に漂うように配置されることが多い。
骸骨が黒いローブを着て、長い鎌を持つのが定番。擬娘化のモチーフとしても高い人気がある。
あと、いしいひさいちの漫画に良く登場する。 - シノプシス(synopsys)制作工程
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プロットよりもさらに大まかな、あらすじ。概略。
シノプシスからプロットへ発展する場合も、逆にプロットの要約としてシノプシスを作る場合もある。 - しびれ線漫符
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その箇所がしびれていたり、じわっと痛いことを示す記号。3から6本程度、しびれ箇所を中心として放射状に描かれる波線。
正座でしびれた時や、お尻を打ったり、硬いものを叩いた後に出るパターンをよく見る。添えられる擬態語はジーンが定番。 - 字幕(subtitles)フキダシ
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コマに直接書かれたセリフ。
音声のない漫画ではあるが、雰囲気が似ていることから字幕と呼ばれるのだろう。
枠で囲まれていないフキダシ。 - 写植
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写真植字の略。漫画では写植によって紙に焼き付けた文字を切り取って原稿に貼り付ける。
大抵はフォントの選定も含め編集者の仕事。
漫画のセリフは基本的にこの方法が取られていたため、セリフのことを写植と呼ぶ場合もある。
コンピュータ上で処理される場合は紙を貼るも何もないのだが、慣例によって写植と呼ばれたりする。講談社のマガジン系の漫画ではなぜか、かなり小さな文字も手書き文字ではなく写植で処理されることが多い。
- シャボン(savon)
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シャボン玉のような球体が、幾つも描かれたもの。小さいものをバブルと呼んで区別する場合もある。
点描やトーンあるいはカケアミで淡く表現され、ふわふわとした夢見心地な印象を与える。 - 十字眼表情目
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ハイライトが十字になった眼。別名「しいたけ」
石森章太郎が開発したらしい。夢見る乙女の典型的な表現で、「少女漫画のお星さまキラキラ目」の定型の一つ。
どこを見ているか良く判らない印象を与えるため、天真爛漫(すぎる)キャラに使われることが多い。例えば高橋留美子うる星やつら水乃小路飛鳥などが代表的なもの。
何か素晴らしいものを見つけたときなど、この目に変化するパターンもよく使われる。プラスネジの頭に見える事からネジ目と呼ばれる事もあるが、戦闘メカ ザブングルのキャラのマイナスネジのような目もネジ目と呼ばれるため、十字の瞳を指すとは限らない。
- 集中線効果線
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集中点から放射状に広がる線。読者の目を集中点に集めるための効果背景。
雄の孔雀の羽や、仏像の後光(光背)と同様の効果と言える。
葛飾北斎の作品に頻繁に見られる表現でもある。丸っきり同じ背景でも、手前・奥方向への速度を表現したものだと流線(スピード線)となる。
同心円状に沢山の円を重ねても、集注線に近い効果が出るが、敏感な人はめまいを感じてしまったりするので、あまり使われない。 丸ゴマは、間白により二重円を形成するため、集中線と同様の効果がある。 - 集中ゴマコマ
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ページ中の一点を中心に放射状に配置されるコマ群。
コマの読み順が崩壊するが、それが同時に起きたことを示唆する。
多くの場合、それぞれのコマに別のキャラのアップが描かれる。放射状にコマが列ばず、縦に細長いコマがページの横幅いっぱいに列んだ場合も、ほぼ同じ効果が得られる。
全てのコマが、カットインだけで構成されていると理解することもできる。
アニメの場合は、順にカットインが発生し、最後には画面全体がカットインしてきた絵だけになるので、カットインで構成された画面であることが容易に分かる。
サンライズコンバトラーVなどの合体シーン他に見ることができる。 - 主観ショットショット
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一人称視点(FPV:First Person View)、またPOV(Point Of View)ショットとも呼ばれ、あるキャラから見た映像のこと。
コマを見ただけでは主観ショットであるかどうか判別できない場合もあり、その場合は前後のつながりから判断する。
ただし、漫画は静止画であるので、主観ショットであると断言できない表現が多い。
また漫画では、キャラ自身がその見ている景色と共に描かれる場合も、ほぼ主観ショットとして成立しており、特にそれを身体離脱ショットと呼ぶこともある。 - 背負う
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キャラに背景効果が付加された状態。
後ろに限らず、なめる形で手前に描かれても、背負うと言う。
例えば「薔薇を背負う」というかたちで使われる。 - 少女漫画ジャンル
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少女誌(少女向けの漫画雑誌)に掲載されている漫画。
繊細な心理描写や、華麗な画面、重層化されたコマなど、物語面・技術面の両面で、早い時期から漫画表現の高度化や細分化が進んだジャンルとなった。
端的に言って「LOVE♡」が少女漫画。同人誌(コミケ)・二次創作の隆盛も女性側からのもので、現在の日本の漫画文化は女性に牽引されてきたのは間違いない。
- 少年漫画ジャンル
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少年誌(少年向けの漫画雑誌)に掲載されている漫画。
「戦って勝つ!」という比較的単純な枠組みの物語に人気がある。漫画自体もコマが重層化していることは少なく、読みやすい。
成長物語がほとんどを占め、当然スポコンやバトル漫画など熱血ものに人気がある。
端的に言って「FIGHT!!」が少年漫画。 - 消滅線フィジコン
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何か消えたものを中心に放射状に引かれる短い線。
パッという擬態語とともに使われることが多い。 - ショット(shot)
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(仮想的な)カメラ位置によって、区別される構図。
主にキャラがどの部分まで描かれるかで分けられる。
特にアングルの指定がない場合は、サイドビューと判断される。
ほぼ映画(カメラ)用語と同じ。クロースアップ、アップ、バストアップ、ミドルショット、フルショット、ロング、主観ショット
カット
- しょぼ目3の目
- シリアス(serious)
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真剣なこと。
写実的な絵柄で描かれた顔をシリアス顔とか言う。
ギャグ漫画の主人公なんかのシリアス顔は、輪郭や頭身はそのままで、顔のパーツだけがリアルになるのが定番。みなもと太郎はシリアスとギャグの絵柄を混在させた先駆者。
- 白黒反転ネガポジ反転
- 白ヌキ(white on black)
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そもそもは印刷(染色)の一部を、つまり染めずに残す手法を白抜きと言う。
紙の色をそのまま残すということなので、必ずしも色として白になるわけではなく、空白の意味の白である。
しかし、印刷を経ずにコンピュータで作画しコンピュータで読まれることも珍しくない昨今では、意味が曖昧になっている言葉でもある。あえて抜く場合の言葉なので、黒ベタや線の多い場所に空白を作ることを意味する。
例えば、文字やキャラなどの周囲を白ヌキすれば、背景が黒っぽい場合に、キャラなどが埋もれて目立たなくなることを防ぐ。 - 白ヌキ文字
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白い文字。
正確には、紙の地の色を残した文字。ベタの上に白ヌキ文字を書く場合、原稿の上にトレーシングペーバーを置き、そこ文字を書いて指示をしておけば、白ヌキ文字を写植してくれる。
これを知らずに、ベタで文字の部分だけ残したり、ホワイトで書いたりするのは漫画初心者にありがちな笑い話。
デジタル作画の場合はツールで簡単に白ヌキ文字を書けるので、こんな笑い話もない。 - 白目表情目
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目から黒目をなくす、驚きの表現。
比較的リアルな作風でも使われる。美内すずえガラスの仮面でのタレ線を加えた表現が典型的。あまりに印象的なので「○○…恐ろしい子」のセリフとセットになってギャグに使われる。
空虚感を表す白目を使いだしたのは、永島慎二が嚆矢とされる。常時白目のキャラは、盲目であることや、逆に超視力を表していたりする。
失神したり忘我の状態となり「白目をむく」場合も当然白目だが、漫画ではあまり多くは使われない。 - 心話フキダシ(thought balloon)フキダシ
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心の声、モノローグを表現するフキダシ。
シッポがアブクになったのが代表的な物。長方形のシッポが幾つかに分割されている場合も同じ効果だが、より回想のようなイメージが強くなる。
発音はしていないものの、現在起こっていることの感想、といった具体的なものである傾向がある。
読者への説明として解説者(ツッコミ)が使うことが多い。
絵文字では 。o( を発言の前につけるなどして使われる。