- ハイアングル(high angle)フカン
- パイカットアイ(pie-cut eye)目
-
円の一部にくさび形の切れ目を入れた形の目。
パイから一切れ取った形からこう呼ばれる。パックマンの形と言ったら、分かりやすい人も多いだろう。
初期のミッキーマウスが、このパイカットアイ。くさび型の部分は、光の反射であるハイライトを表現したもの。
この、くさびの尖った部分が指している方向にキャラの視線が向いていると解釈される。 - 背景(background)
-
キャラ(持物含む)を除いた残りの絵。バック、あるいはBGと言うこともある。
言葉としては多少違和感があるが、キャラの手前にある(なめている)ものもバックと呼ぶ。映像用語では書き割り、演劇用語では舞台美術、ゲームでのマップにあたるが、勿論漫画の背景はこれらと共通する部分もあれば、まったく異なる部分もある。
- ハシラ
-
小口部分にある縦の間白。
漫画本を持った時に指がかかって絵や字が読めないことがあるので、重要な絵や文字は入れない。
雑誌掲載時はアオリが書かれたり、広告が書かれたりする。 - パース(perspective)
パースペクティブの略で、透視図法のこと。
水平線(アイレベル)と消失点を使って遠近感を表す手法。一点透視図法、二点透視図法、三点透視図法が主なもの。
概ね、近くのモノを大きく、遠くのものを小さく描くことと思えばいい。漫画では、このパースもデフォルメされ、手前は極端に大きく、奥は極端に小さく描かれることが多い。
この手法による遠近感がおかしくなっていることを、パースが狂うと言う。
消失点のあたりは違和感のある絵になりがちなので、キャラを被せたり白ヌキをして(ごまかして)いることがままある。山田芳裕デカスロンなどは、極端なパースを使って迫力のある画面を作り出している。
- バストアップ(bust-up)ショット
-
キャラの胸から上を描いたショット。
表情も、ハンドアクションも入れられる、使い勝手の良い構図だが、多用すると全体の状況がさっぱり分からなくなる。
キャラのポーズを描かなくてもいいので楽。締め切りなどで切羽詰まっていたり、単に下手だったりすると増える傾向にある。バストショット
- 破線(dashed line)線種
-
のように、ミシン目のような区切れ目の入った線のこと。
点線と似ているが、破線は線の部分が多く、切れ目の長さはあまりない、点線よりは強い印象の線。
実線に比べて弱いイメージを持ち、フキダシに使われるとモノローグか小声、コマに使われると想像や回想シーンとなる。
目から対象物までを結び、視線として使われることもある。 - バタ足
-
何本もの足を描くことで、せわしなく足を動かしている様子を描く手法。異時同図の一種。
手をばたばたさせたり、頭をきょろきょろさせるのにも同様の残像手法が使われる。赤塚不二夫や谷岡ヤスジの得意な手法。
赤塚漫画の人気キャラ、目ん玉つながりのおまわりさん、がよくバタ足で描かれる。
漫画ではないがジャコモ・バッラ鎖につながれた犬のダイナミズムは、典型的なバタ足。 - 発声線漫符
-
口から放射状に出た数本の短い線で、キャラが声を出していることを示す。
大抵は少し長さや位置がバラついている。より大きな声の場合は線が長くなる。
気付き線と見た目はほぼ同じだが、口を中心としている場合は発声線。
しかし、頭を中心にしている場合は両者の区別は難しく、両方を兼ねている場合もある。破裂フキダシが発明されて、あまり使われなくなったが、ツバに形を変えて残っているとも言える。
放射フキダシは発声線にセリフがついたものと捉えられる。 - バツ目表情目
-
×の字状の目。片目ずつ×になっている場合、左右の目を合わせて×になっている場合、左右で>と<で構成されている場合がある。
ぐるぐる目と同様に、ダメージを受けたことを示すが、バツ目の場合はまだ意識がある状態で、肉体的にも精神的にも「あちゃーっ!」程度のダメージと言える。><に限っては、ダメージを受けていない、単にぎゅっと目をつぶった状態も示す。
また類似の目をつぶった表現に→ ←といった、3本線で目を表したものもある。絵文字でよく使われる。(x_x)、(>_<)
- ハッチング(hatching)技法
-
材質(テクスチャ)や影などの濃淡を表現するために入れる、間隔の揃った平行線。
1カケのカケアミと同じ意味。
線の角度を変えて重ねる技法をクロスハッチングと呼び、これは2カケ以降のカケアミに相当する。
ハッチングはカケアミのように小面積で線の角度を変えない傾向にあるが、ハッチングとカケアミの技法は特に区別されずに解説されることも多い。万線は印刷の指示やトーンで入れるが、ハッチングは実際に線を引く。
流線(スピード線)は間隔が不揃いで、線の方向に動きの意味を持つのが大きな違い。線に強弱や点線を入れることで複雑な濃淡を表現したり、曲面に沿って線を描き立体を表現する場合もある。
アルブレヒト・デューラー や ギュスターヴ・ドレ と言った絵画、紙幣などに見られる手法。
この技法は、メビウスに代表されるバンド・デシネのタッチなどへと引き継がれている。
濃淡表現という意味では点描と共通点が多い。 - はてなマーク疑問符
- ハート(hearts)
-
- エモティコン
「♡」のこと、愛情が発生したことを表現するための記号。恋愛感情に限らず、夕食に好物が出たという程度でも描かれる。
基本は下向き三角の上に半円を二つ並べたもので、心臓を記号化したもの。
電子メールではハートの代わりとしてvが使われることが多いが、その影響もあって漫画のハートの形もvに近いものが増えたが、おそらく一時的なもの。
頭の周囲に出現し、その数で愛情の度合いが示され、上昇していくように描かれる。
口の中にハートが出る場合もある。のどの奥(のどちんこ)の表現の変形ではないかと思うが、今「可愛い声をだしていますよ」という記号となっていることも。胸に描かれるハートは、動悸が高まったことを示す。勿論、一目惚れなんかでも動悸は高まるので使われるが、その場合でも愛情表現としてのハートは胸とは別に頭部に描かれる。
胸から飛び出したような表現だと、「心臓が飛び出るほど」びっくりしたことの、そのまんま表現にもなる。「口から心臓が飛び出るほど」のそのまんま表現も見かける。
大抵「どきっ」「ドッキーン」などの音喩とともに用いられる。セリフの末尾にも用いられることも多く、これは好意の表明程度の軽い意味から使われる。
冨樫義博HUNTER×HUNTERのヒソカは♥だけではなく、他のトランプのマーク♣♦♠も使う。ハートに矢が刺さると恋に落ちたことを、ハートが割れる(裂ける)と恋に破れたことを表す。
漫画とは直接関係ないが、欧米では二つのハートが矢で貫かれていると二人が相思相愛であることを示すが、日本ではさほどポピュラーな表現ではなく、相合い傘の上に♡を描くのが定番。 - 表情目
かわいいものを見つけた時とか、恋に落ちた時に、目の中に描かれたり、あるいは目そのものになる。
さらにびっくり目玉のバリエーションとして、ハート形の目が飛び出るという表現もある。
- 効果背景
背景がハートで埋め尽くされている場合は、愛情に満ちあふれていることを示す。
ちょっとカワイイ雰囲気を出したい、という程度でも使われる。
コミカルな雰囲気があるため、シリアスな愛の表現には滅多に使われない。
- エモティコン
- バトル漫画ジャンル
-
様々な形での対戦形式での戦闘を行なうことを物語の中心に置いた漫画で、トーナメント形式が良く使われる。
ただし、スポーツによる対戦はバトル漫画に入らない。スポーツの中でも格闘技は特に「格闘漫画」として別にされることもある。
バトル漫画は様々な(魔法なども含む)超能力あるいは超常的な武器を駆使して戦う。
車田正美リングにかけろの初期はボクシングがテーマのスポコン漫画だったが、最終的にはスポーツを離れバトル漫画の定型を確立した。
鳥山明ドラゴンボールが最も有名なバトル漫画と言え、多くのエピゴーネンを産んだ。
少年漫画の定型の一つだが、武内直子美少女戦士セーラームーンのように少女漫画にも類似のものが存在する。 - ハナビラトビモノ
-
明るく晴れやかな感じを出すために、画面に飛ぶ花びら。多くはハート型で一筋の葉脈が描かれる。必ずしも近くに花が咲いているわけではない。
ハナビラの向きは一定でなく、流れる方向も心境によって異なり、横に流れもすれば上から降るように描かれることもある。
花とともに描かれることもあり、薔薇はその代表的なもの。 - ハナヂダメージ漫符
-
鼻から出る(赤い)液体、興奮していることを示す漫符。鼻血。
実際はタラリと垂れる程度だが、漫画ではかなり大量に噴き出す。
強烈な勢いで噴出するハナヂ(鼻血ブー)で、谷岡ヤスジが革命を起こした。
ギャグマンガやギャグシーンで多く用いられる。 - ハナチョウチンエモティコン
-
鼻から出ている風船状のもの、眠っていることを示す漫符。鼻提灯。
鼻水に息が吹き込まれて、風船ガムのように膨らんでいる状態を戯画化したものが、漫符化したもの。
ギャグで多く用いられる。 - 花フキダシ(flower balloon)フキダシ
-
花びらのように丸い突起が放射状に広がるフキダシ。
大きな声だが楽しい雰囲気のあるセリフに使われる。
単に大きな声に使われることもある。 - ハナミズエモティコン
-
鼻から垂れ下がった液体、アホな状態であることを示す漫符。あるいはアホなキャラであることを示すキャラ記号。鼻水。
鼻水は頭の善し悪しとは関係なく出るが、垂れっぱなしなのは頭が足りないと見なされる。漫画だけではなく、コントのメイクとしても多用される。
ギャグで多く用いられ、どんなシリアスなキャラもこの記号が付くだけで、見事にギャグキャラ化する強烈な記号。 - 薔薇効果背景
-
華やかな印象を与えたい時に使用する効果背景。あるいはアイコン。
キャラの効果背景に薔薇が使われることを「薔薇をしょう」と言う。
キラキラのお星さま目と共に、少女漫画の象徴的表現と言える。 - 破裂フキダシ(spike balloon)フキダシ
-
柊の葉状、あるいは鋸状のトゲのついたフキダシ。
叫びのセリフに使われるが、少年漫画では大して大きな声でなくても使われる傾向にある。
爆発フキダシやトゲフキダシと呼ばれたり、輪郭がギザギザなので「ギザ」と呼ばれることもある。英語ではscream balloon(叫び風船)とも呼ばれる。大声に使うフキダシは、例えば丸いフキダシにトゲがついた機雷フキダシなど細かなバリエーションがあり、それぞれに微妙な使い分けがされている。
また、雲型にトゲか付いたものは中間的な強さを表現する。
絵文字的には、発言の前にΣを使ったり、以下のようにセリフを囲ったりする。_人人人人人人人_ > 危ないわね! <  ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
- ハーロー(halo)効果背景
-
ハーローとは後光のことで、キャラの周りを(主に白く)縁取る効果。
特に白黒の原稿では、キャラの周りまでしっかり背景を描くと背景に埋もれるため、キャラの周囲は何も描かないことが多い。カラーの場合は単純な白や黒のハーローをつけにくくなるため、キャラが背景に埋もれて読みにくくなることがある。アメコミの読みにくさの原因の一つ。
アニメの場合はキャラが動いている、あるいは背景と質感が異なるため埋もれにくい。 - バンド・デシネ(bande dessinée)ジャンル
-
フランスやベルギーを中心とした「9番目の芸術」としての漫画。略してB.D.(ベーデー、ベデ)。バンデシネとも書かれる。
話よりも絵が重視される傾向があり、ひとり〜少人数の作家が時間をかけてゆっくり描くのが主流。
漫符もほとんど無く、カラーで印刷され、形態としては絵本に近い。線描によってつけられたテクスチャと、鮮やかだが落ち着いた色彩が特徴。
ひとつひとつのコマが絵画として成立するほどの完成度を誇るものも少なくないが、逆にアメコミ以上に動きのダイナミックさに欠ける原因ともなっている。近年のヨーロッパ圏、特にフランス・イタリアは日本漫画の影響が大きく、バンド・デシネとは違う流れも産まれている。
アメリカンコミックとの対比でユーロコミックと呼ぶ場合もある。
ヨーロッパの状況は最近大きく変わろうとしているので、今後どのような方向へ進むのか興味深い。
逆に、メビウス、エンキ・ビラルなどのバンド・デシネ作家が日本に影響を与えたことも少なくない。ちなみに、イギリス(ブリティッシュコミック)は、アメコミともバンド・デシネとも異なる独自の文化を築いている(例えば、わりと最近の2000年代まで白黒の作品が多かった)
アメコミ、マンファ
- バンソーコーダメージ漫符
-
タンコブと同様に、ダメージを受けたことを表現する漫符。絆創膏。
交差した四角形で十字形になっていることが一般的。
また、カットバンとかバンドエイドとかの、角丸の長方形の中央に四角いガーゼを埋め込んだ図柄もよく使われる。
キャラに限らず、道具にもついたりする。やんちゃなことを示すキャラ記号として常に描かれる場合もあり、特に鼻の上に横むきに貼ってあることが多い。
手塚治虫三つ目がとおるの写楽保介の額には常にバンソーコーがついているが、それを剥がすと…