テイルズ オブ エクシリア2
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基本情報
テイルズオブシリーズはアニメ風味のRPGで戦闘システムが対戦格闘的なアクションゲームとなっているのが大きな特徴だ。
本作はテイルズ オブ エクシリアの一年後を描く直接の続編で、発売日も一年ちょっとで現実とシンクロしている。
また前作はテイルズ オブ ヴェスペリア(以後ヴェスペリア)とテイルズ オブ グレイセス(以後グレイセス)チーム合同かつテイルズスタジオの最終作であったので、本作は新たなテイルズオブ制作体制による処女作となる。
主要登場人物の声優は前作から引き続きで、契約書に魔法の言葉が書いてあったに違いない。
アニメシーン担当も前作から引き続きufotable。主題歌も引き続き浜崎あゆみで曲はSong 4 u。
2012年日本ゲーム大賞フューチャー部門受賞作でもある。
コントローラ同梱版のDUALSHOCK3 テイルズ オブ エクシリア2 X Editionも発売されている。
コンセプトはジャンル名通り"選択"、加えてプレイして感じた"プレイヤー=主人公"を軸に前作から追加・変更されたシステムを見ていこう。
キャラクタ
本作では以前からテイルズオブで周辺キャラのデザインを行なっていた奥村大悟の名前がクレジットされている。
主役のルドガーと相棒の少女エルと猫のルルが奥村大悟デザインで、周辺キャラも引き続き担当している模様。
エルの背負っているカバンはナムコバラデュークに登場する友達パケットくんで、主役のマスコット人形をぶら下げている。特に劇中での指摘はないが、フレーバーテキストによるとエレンピオスで人気のパラ公爵のキャラらしい。
キャラの衣装はファンタジーから現代よりにリニューアルされており、新鮮な感覚でプレイできる。
追加衣装も前作から大きく改善されていて、カラーバリエーションや前作の衣装など多数入手でき、本編に収めるなら十分な量かと思う。
またダウンロードコンテンツとして魔法少女まどか☆マギカコードギアスのコラボ衣装が登場して話題を呼んだ。
PS3版のヴェスペリア、グレイセス、および前作エクシリアをクリアしていると、主役のぬいぐるみアタッチメントが手に入り、闘技場ほかで過去作のキャラが登場するなど、きちんとファンサービスしてる感じだ。
親密度システム
親密度システムは多くのゲームで採用されているが、面倒臭いだけの場合も多い。
本作は親密度の状態はメニューで確認でき、親密度が下がることもなく、親密度上げないとゲームが詰まるようなこともないので、単純に仲良くなってる雰囲気の演出として高い効果を上げている。
ただ後述のキャラ別追加シーンの出現の一部にも親密度が関係していて、親密度上げてないとメンバー冷血漢ぞろいみたいになっちゃうの、いかがなものか。
親密度はキャラ毎のサブイベントのクリアやチャットでの選択肢、また戦闘でリンクすることで上がり、クリアだけなら不要な要素を積極的に使う仕組みとして効果的に利用されている。
親密度が上がって手に入るのは実用的なものもあるが、そのキャラの衣装が手に入るのが嬉しい。
なお親密度は「ルドガーに対する」ものだけが設定されており"プレイヤー=主人公"のコンセプトに沿っている。
キャラの役割
本作では要所でルドガーが([L2]と[R2]で)選ぶものとして2つの選択肢が登場する。
これは割とRPGではオールドスタイルである"プレイヤー=主人公"なシステムといえる。
なので主人公がプレイヤーの手を離れて色々主張されると困るので、ルドガーは通常無口なキャラで字幕には「…」とか「!」というセリフしか出ない。
キャラは動くし他のキャラは喋りまくるので違和感が強いのは否めない。ワープエネミーゼロの時代ですでにあった違和感で、動画が多く声が乗るゲームと"プレイヤー=主人公"システムは相性が良くない。
無口キャラ設定として受け入れることもできるが、2周目だと選択肢を喋るオプションがあり違和感が増加する。1週目を強制的に選択音声OFFにしたのは名采配だ。
そもそも選択肢を全て、セリフではなく行動にしていたら違和感なかったんだが。
しかし戦闘シーンで無口になられるとシステムとして成立しなくなるレベルで困る。
そこで登場するのがエルだ。戦闘シーンでは実況よろしくルドガーの状況を中心にしゃべるし、戦闘後の掛け合いにも登場する。
また、ステータス画面では2人一緒に描かれ2人で1キャラ扱いになっている。
地味なキャラに可愛いキャラを付属させれば人気がでるぞのサンソフトわくわく7方式だ。
そう、エルは驚くべきことに戦闘に直接参加しないのだ。
これまでのテイルズオブも含め(アクション)RPGでは妖精みたいなマスコットキャラが相棒となるパターンは多いが、本作では普通の人間。
エニックスポートピア連続殺人事件をはじめとしてアドベンチャーゲームではむしろ人間の相棒は定番だが、RPGで戦闘もしない、といってテイルズ オブ リバースのクレアのように一時行動を共にするNPC扱いでもないとなると、本作以外ではパッと思いつかない。
なお前作で「お前なんでついてきてんの枠」だったレイアには新聞記者という役割が与えられた。
記者は事件に首突っ込んでなんぼ、ゲーム的に非常に使い勝手のいい職業である。
世界の仕組みにどうしても関わってくるミラはおいといて、他のキャラについては一緒に冒険する意味はかなり希薄だ。
この辺は前作をプレイしていないと違和感の大きいところだろう。
チャット
ロングチャットは[SELECT]ボタンで起動するものだけではなく強制起動するものがある。
おそらく電話か親密度上昇の際に限定されているので強制起動しても違和感がなく、むしろ自然だ。
前作で使いきれてなかった移動中にモードが切り替わることなく左下に小さく自動的に表示されるショートチャットは、多くの場面切り替えで音声が途切れるとか、別のショートチャットがかぶさるとかの不自然な挙動がなくなり、発生タイミングや内容も含めてかなり洗練された。
また戦闘中に発生するファイティングチャットは顔が表示される頻度が上がり、バンダイスーパーロボット大戦ばりに戦闘を盛り上げてくれる。
キャラの深掘りシステム
本作は街の中にパーティキャラが出てきて話しかけられる。セガシャイニング・フォースシリーズなどのSRPGで見られる本陣システムっぽい。
コンピュータRPGでは自分から仲間に話しかけられないことが多く大きな不満だったが、本作では解消とまではいかないまでも不満はかなり和らいだ。
もちろん、この時操作するのはプレイヤーの化身ルドガーだ。
また話しかけるとキャラクターエピソードが発生することもある。
キャラの本編で語られない一面を見られる他、前述の親密度も上昇する。
必ずしもプレイする必要はないので押し付けがましさもなく、それゆえにプレイすると自分が望んで行なっている行為となり、のめり込み度も上がる。
ただプレイし損ねを気にする人にとっては強制されているようなものであり「キャラクターエピソードを開始します(クリア後にまとめてプレイもできます)」みたいに周回する以外の救済策は欲しかった。
マップ
進めない場所に向かって進み続けようとすると進入禁止マークが出る。
これはセガ龍が如くで採用されている手法だが、全てを理由づけるよりも細かい部分はバッサリ無機質に対応した方が納得感がある。
もちろん大抵は進入禁止マークだけでなく、きちんと柵などで進めない理由づけはされている。
マップ上のアクション
前作のレビューで、マップが無駄に広いが高速移動がワープしかないのでマップをいつまでも覚えない、と指摘した。
本作では乗り物が採用されるかと思っていたが、[R2]で高速で走るシステムが取り入れられた。
リアルな背景の中を走り回ってる時点でもう変なのに、スピード線までつけて高速移動する絵面は失笑を生む間抜けさがある。
しかし操作としては快適で、敵シンボルに当たらないように走るのは、セガソニックシリーズに似た疾走感と楽しさすらある。
そもそも、アナログスティックでアクセルは操作できるんだから加速ボタンは無駄機能ではないかという考え方もあるが、本作はこのトップ[R2]とロー[×]ギアがあることで移動中に操作できることが増えており、単純に退屈さが減る面も大きい。
なお[R2]で疾走中にシンボルに当たると、敵に囲まれて戦闘が始まるペナルティがある。
段差を登る、はしごを登る、崖から降りる、くぐるといったアクションは[○]ボタン押しっぱなしで実行されるようになった。
そして基本的な移動も含め全体的に動作速度も上がっており、特にはしごを登るのはスパイダーマンを彷彿とさせるスピードで正直滑稽ではある。
本来は挙動に合わせて画面のリアリティを設計しなければいけないが、優先すべきはリアルさより快適さという判断は正しい。
敵の分布
本作では通常より大きく強力な敵の数がかなり多い。
なので、特に探そうとしなくてもマップ上のでっかいシンボルに遭遇することが多く、いいアクセントになっている。
その強さも「雑魚敵よりは強い」程度から「ラスボスかな?」ぐらいのものまで無造作な感じに配置してあるので、街や手配書で情報を集めつつ狩るのが楽しい。
カプコンモンスターハンターやデータイーストメタルマックスのパクリ的な感じではあるが、面白いんだから正義だ。
なおギガントモンスターは色変えや装飾変えでバリエーションを増やしている。このくらい数あれば使いまわしの不快感はむしろ減る。
普通にプレイしているとマップを踏破する前に先のエリアが解放されるようなペースで一気に領域が広がる。
前作あればこそのマップを湯水のごとく使う贅沢な作りで、オープンワールド的などこにでも行けちゃう自由さを感じる。
ただこのせいで強さがさほど変わらない雑魚敵が大量に存在することになり、マップの魅力が落ちているのは否めない。
常に手応えのある状況にするために難易度設定をフィールドはハード、対ギガントモンスターでノーマルにする、みたいなプレイが必要なのもどうなのか。
グラフィック
前作のレビューで「どっち見ても同じ印象」と指摘したマップだが、本作で新規に追加されたマップは向きが分かりやすい。
ただし結局は街の間を線でつないだだけなのはそのままで、見やすくはあっても面白いマップにまではなっていない。
前作のマップの形はそのままなので問題も据え置きではあるが、[R2}の高速移動があるので本編を進めている間はさほど単調さは気にならない。
後述のように、常に次にイベントが発生する箇所はマップ選択画面とエリアマップに出るので、前作のようにマップが見づらくて迷うということもなかったが、迷わなければ面白いというものでもない。
シナリオ
本作はエレンピオスという近代的な国を起点に物語がはじまる。
列車はあっても自動車がないので産業革命後ぐらいかと思いきや、GHSという携帯電話まであった電子メールまで使えたりして現代っぽい。
この時点でもうテイルズオブっぽくないが、シナリオの方もレートC(15才以上)ということで、ヴェスペリア以上に衝撃的というかやな感じの展開が多い。
これは好き好きではあるが、テイルズオブというシリーズの幅を広げる意味では悪くない選択かと思う。
また前作の一年後の世界で前作のパーティキャラを全て使えるので、クリア後の世界を探索するのが好きな人にとっては、ほとんど無条件に楽しめる設定で、単体でも遊べる作りではあるものの豪華なファンディスクみたいに捉えられる作品でもある。
導入部分
まずいきなり戦闘ではじまり、兄ユリウスがマップひとつを使った訓練場で戦闘の基本を説明し、その後にオープニングムービーが挿入される。
これはスクウェアファイナルファンタジーを彷彿とさせる。テイルズオブはいきなり長いムービーから始まってプレイ意欲を落としてくるパターンが多いので、この時点で好印象。
そしてその後前作の主人公ジュードが成長やリンクなどの解説役になる。
加えてヴェスペリアと同様にストーリーの牽引要素として「追いかける対象」が用意してあり、丁寧なことにユリウスとエルの父の2人がいる。
説明も怒涛のように出てくるのではなく、小出しにしてくれるので圧倒されないのもいい。
また街中に戦闘チュートリアルのおさらいできる人もいて万全の構えだ。
独自用語
タイトル画面から前作のダイジェストムービーが見れる上に、前作の用語ヘルプもついている。
前作をクリアして「意味不明なんですけど」って感想を持ったプレイヤーも安心。
なんだけど、今作の独自用語の解説やムービー、サウンドのギャラリーはつかない…なんでや!!
正史世界と分史世界
本作は所謂パラレルワールドもので、作中のエージェントは「今の正史世界に似ているがちょっとだけ違う分史世界に飛んで、時歪の因子を破壊し世界を消す」ことが目的だ。
これは過去に行って石版を集めたら現代にマップが復活するドラゴンクエストⅦとの変奏と言える。
分史世界はマップもモンスターも使い回しで、テイルズオブでおなじみの、やり込み用の追加ダンジョンと仕組みは一緒だ。
しかしパラレルワールドで正史世界と似ているという理屈がついているので、そこまで手抜きと感じない。
むしろ追加マップがついていると「頑張ってるな」ぐらいに思ってしまう。
しかも正史世界で事前調査をして差が大きい部分がある程度わかっているので、範囲以外へ行こうとすると「こっちは偏差が少ないから行くのやめよう」と行動を制限されても納得できる。
データが少ない場所に進めないのはUBIアサシンクリードがとった手法と同じだ。
本作でも前作のようにシナリオの都合でワールドマップでの移動が制限されることもあるが、分史世界については上記理由で納得感は高い。
ただ分史世界にも宝箱があって、帰ってくると二度と取りに戻れないのは勘弁して欲しかった。
それに店に正史世界よりいいもの置くのもやめてほしい。探索対象の猫が分史世界にいないのはホッとした。
探索はタイムファクターに絞るべきだったかと思う。
借金返済まわり
本作は冒頭で莫大な借金を負わされ、それを返済していくことをゲームの軸のひとつにするという任天堂どうぶつの森的なシステムが取られている。
- 明確な目標が設定できる
- 少々大盤振る舞いに金を渡しても借金で吸収される
- 借金返済額によってシステムやマップの解放タイミングが図れる
- 「金になるよ」の一言で、少々無理な依頼も押し付けられる
- 借金を押し付けてくるキャラを挟むことで、キャラを印象付けられる
などなど、この借金返済はゲームシステムとして素晴らしいものだなも。
借金を押し付けてくる裏の世界の住人っぽくて医者のリドウ、愉快で可愛い回収者ノヴァ、配役が上手すぎる。
ただ借金返済は序盤の勢いづけには良いが、ずっと残っているのは気分が悪い。なにせ借金だ。
本作は返済を章の区切りに使うのが製作者的に便利すぎて、最後まで使ってしまった。
借金完済という一大イベントで冒険に勢いもつくので、序盤か少なくとも前半で返済は終わっておいた方が無難だったろう。
また全体の数値が大きすぎるので完済に近づいてる感じが弱く、返済意欲が湧きづらいのも良くなかった。
イベントシーン
前作でかなり極まっていると思ったが、本作でさらにクオリティアップしている。
従来ならムービーになるような難しいアクションシーンや細かい表情やしぐさも、リアルタイムで実現されている。
こうなると基本静止画用のフキダシは厳しく、字幕でないと無理なレベルだ。
ただ字幕は相変わらず読みづらいし、特にルドガーは「!」とか多いので見落としがち。
前作はセリフ表示が混乱していると書いたが、本作では少なくとも同じイベントシーンの途中でメッセージのスキップができたりできなくなったりしない。ある程度、混乱は治った。
キャラクターエピソードをクリアしているとイベントシーンが追加される場合があり、画面上部に追加シーンであることが示される。
これはキャラクターエピソードをこなす強い誘引剤として機能している。
選択システム
本作の大きなテーマとして"選択"がある。
前述のようにルドガーの選択肢は大抵はすぐに元に戻る雰囲気選択肢だが、イベントシーンに操作を組み込むことで観客ではなくプレイヤーとして止まることができているし、うまく作るのが難しいQTEより無難ともいえる。
たまにセガサクラ大戦のLIPSみたいな時間制限付き選択肢がでるのも、適度に緊張感があっていい。
終盤の選択によってエンドがいくつか変化するので、きちんとテーマ"選択"を回収している。
チュンソフト街なみに大量のエンドに突入する必要はないが、強くて最終章みたいな作りにして、もう少しエンドを多く用意しても良かったかもしれない。
また分史世界が「あの時ああしておけば」というif世界でもあり、テーマを媒介にシステムとストーリーがガッチリ噛み合っている。
その他シナリオについて
メインチャプターはその名の通り章立てになっていて、メイン1→借金返済→メイン2の繰り返しで進んでいく。
ストーリー中心のメインの間に狩りやクエスト消化するという区切りとテンポのいい作りで、コーラとポテチの繰り返しに「やべぇ止まらん」みたいになる。
それにキャラクターエピソードというクッキーもある。
アドベンチャー→シミュレーションを繰り返し、話数きざみで進むサクラ大戦を踏襲している感じだが、本作は常にRPGなので飯食ってる途中で取り上げられてスポーツさせられるような違和感もなく進行する。
ただ、コーラもっと飲みたいのにポテチに強制的に切り替えられてしまう不満もなくはない。
メインチャプターとキャラクターエピソードをプレイしている際は、右上にかなり大きくプレイ中のシナリオ名と飾り枠が表示されるのは大胆だが、終わらせないと先に進めない作りなので目立つのはいい。
これらは区切りが短いので毎日ちょっとずつ進める場合に遊びやすいし、他のプレイヤーとコミュニケーションを取る際もチャプター番号で説明できて便利だ。
これらはイベントリストにルドガーが記録した体であらすじ書かれていて、前作より無味乾燥さは薄れている。
ただ、ルドガーは性格が生真面目なので内容はさほど面白くない。
せっかくレイアが新聞記者になったので、ルドガーから取材した記事として書いて欲しかった。
ちなみにクエストの依頼テキストは、その場限りの文章ではあるが、そこそこ面白い。
ただまた「カナンの地」とかそれを出現させるための「五芒星」とか、世界で売りたいと思ってる割に世界で売りづらいモチーフを取り込むのはなんなのか。
戦闘システム
フィールドやダンジョンに出るときは4人のパーティを編成して他は街に残る。パーティ編成を考える面白さが出ていい。
パーティキャラ9人が移動しているのを想像するともはやツアー客だが、4人なら受け入れやすい。
ただ不測の自体に対処できないので、固定のルドガー + 強いガイアス + 回復役のエリーゼ + 対魔法のローエン、みたいな無難な組み合わせになりがち。
メインチャプターやキャラクターエピソードでは、シナリオに沿ってルドガー以外も何人かキャラが固定されるため、割と満遍なくキャラを使うように工夫してはある。
戦闘の基本
全体的には、グレイセスで好評だったシフト移動が採用され、連続ステップなどでもACを消費するようになり、加えて防御時間で攻撃特性もつくようになり、ほぼ完全にヴェスペリアとグレイセスのいいとこ取り、みたいなシステムとなった。
また、リンクアーツは特定のキャラと技の組み合わせでないと発動できなかったが、どんな技とキャラの組み合わせでもとにかく汎用のリンクアーツが発動するようになった。
これで少なくとも、クリアまでリンクアーツが理解できず発動できない、という可能性はかなり低くなった。
ただし連続でリンクアーツを行うチェインには特定の技とキャラを組み込む必要があり、その辺の複雑さは残っている。
リンク時のパートナーの挙動が良くないのは、個別に[一緒に戦え][任せる][自由に戦え]と指示が出せ、基本的な挙動自体も改善され、致命的な問題ではなくなった。
また複数人プレイ時のリンクでは、任意にリンク解除が可能になった。
秘奥義はオーバーリミッツ中に奥義を当てて[○]ボタン押しっぱなしから、オーバーリミッツ中のリンクアーツ発動時に[○]ボタン押しっぱなしに変わって、少し出しやすくなった。
また秘奥義発動を[L1+○]で行うとパートナーの秘奥義を発動することもでき、使用キャラの秘奥義だけ見ることになる前作に比べ断然華やかになった。
さらに共鳴秘奥義という2人で出す秘奥義もあるのだが、組み合わせが限定され必要スキルもあって面倒臭い。派手な技の出し惜しみしない方がいいと思うんだが。
ひとりで秘奥義が出せるスキルも追加されていて、この際は奥義が必要になるものの、奥義の存在感は薄い。
ルドガー3つの武器
本作の新システムは主人公のルドガーに集中している。
ルドガーは刀・ハンマー・銃の3種類の武器を持っていて、敵の耐性・弱点に合わせて使い分ける必要がある。
武器は当然3種類を強化していく必要があり、技も武器ごとに異なるので3人分の機能が1人に集中していることになる。
おそらく、多くのプレイヤーは主人公をひたすら使う傾向があるという調査結果を受け、ひとりでもボリュームを感じられる仕組みを作ろうとしたのだと思う。
ルドガーは基本的にパーティメンバーに固定されていることも含めて、本作の"プレイヤー=主人公"的な調整のひとつだ。
ルドガー変身
ルドガーは[L3+R3]で骸殻という姿に変身して敵と別空間に移動し、コーエーテクモの無双シリーズのような「攻撃ボタン数回+技ボタン」で攻撃が変わる方式になり、時間とダメージでゲージを消費し切るまでは無敵の超人になる。
通常空間に戻ったらゲージは戦闘時間で回復して、また変身できる。
正直アホみたいに強いのでゲーム的には初心者救済策かと思う。変身を封印してちょうどいいバランスだ。
ただしストーリーとは密接に関連していてバランスブレイカーであることに意味がある。
また単純に、対戦でないゲームのバランスブレイカーは爽快で楽しい。
その他戦闘のシステム
耐性・弱点の有利不利は、かなり極端に設定され、武器・技・術の使い分けが、より大切になっている。
弱点攻撃を当てた後に別の属性の攻撃を当てていくと弱点属性連携となり、ダメージ倍率が上がり一気に体力を奪える…が正直そこまで技を把握するのは面倒くさい。
ボスの挙動は概ね良くなっていて、突撃後隙ができるみたいな単純な挙動ではあるが、特徴を出している。
それと同時に弱点をきちんと把握して弱点属性連携を決めれば、一気に仕留められることをある程度許容している。
流石に前作の「バリア+ボム」のダサい対策は反省したようだ。
ただし、途中で耐性・弱点が変わるとか、雑魚敵を呼んで集中攻撃されないようにする、状態変化攻撃や即死攻撃を多用する、といった2番目にダサい対策が取られていことが多いのでマシになった程度。
その他、闘技場のリングアウトがなくなるなど、細かい部分も改善が施されている。
そもそもシステム過剰な戦闘に3武器と変身が追加され、ルドガーひとりを使いこなすのも至難。
特にボタン同時押し操作が大量にあり、もう術・技の性能以前に基本操作を把握するのも大変だ。
前作で戦闘以外のシステムをある程度初期化することに成功したが、戦闘も初期化の必要がある。
基本的にルドガーさえ使っていればいい調整で、前作の蓄積があったから取れる贅沢なやりかただ。
コンセプトの"プレイヤー=主人公"を貫くなら、他のキャラを操作できる必要すらない。
これには、いろんなキャラを使って楽しむことを目的にしているテイルズオブの基本的なシステムとの整合性の悪さを感じる。
とはいえ、ある程度の成功を収めているのも確かで、ずっと主人公を操作してても楽しい。
その他のシステム
情報開示によるストレス軽減
マップ上のイベント発生箇所にマーカーが表示されるシステムはグレイセスからのものだ。
グレイセスおよび前作エクシリアの場合イベント発生を移動マップ上でしか確認できないため、プレイヤーが画面を見て認識できる選択肢が1つだけになってしまい、押し付け感が強かった。
本作では加えて移動先選択画面に本編・キャラ・その他のイベント発生場所が表示される。
これだけ情報が開示されると選択肢がはっきりし、押し付けがましさではなく取りこぼしを防いでくれる親切さに感じる。
先が見えないと不安になってしまうプレイヤーが多いとか、プレイ途中での脱落者が思いの外多いということが判明し、単純に進みやすくしている面も大きいと思う。
また結局攻略サイトで情報を得られるなら、ゲーム本編で情報を出した方が印象が良いだろうという判断もあるだろう。
このあたり、アドベンチャーゲームがコマンド入力式からコマンド選択式に移行したのと同じような流れを感じる。
単語探しによりストーリー進行が阻害されることが嫌われたように、マップ探索でイベントを探すのも嫌われたという感じ。
また十分な選択肢が用意されればプレイヤーの選択権を阻害しないというのもアドベンチャーゲームと同様だ。
利用しやすい合成
前作では店の品揃えが全世界共通だったが、本作では場所ごとに内容が異なる。
また店のレベルアップシステムも廃止された。
そうなると素材の使いどころがなくなってしまうが、合成システムが特注という名前で復活し、素材の使い道に対応している。
本作ではヴェスペリアの「素材の組み合わせは複雑だが、完成品から選ぶ」方式になっていて必要な素材が分かりやすい。
ヴェスペリアは「合成必須、店は基本不要」ぐらいのバランスだったが、本作では逆に合成不要ぐらいのバランスで、合成で作れるアイテムも多すぎない。
合成好きなら合成をメインに、合成面倒臭い勢も店舗購入で十分なぐらいのバランスになっており、プレイヤーに選択権がある。
それに宝箱からは割といい武具が手に入るので、購入や合成は宝箱から手に入らない場合の補助ぐらいの感じだ。
これは借金を返済する目的があるため、非常に嬉しいバランス。
また買取価格が極端に安いので、借金返済が目的とはいえ武具を売って返済に充てるのは効率が悪い。
グレイセスで起きがちだった「売った途端に素材として必要になる」という場面に遭遇しづらくなっている。
なお合成前の素材は割といい金になるので、余った素材を売るのが金策の中心になる。
クエスト
本作ではRPGで一般的な仕事依頼の仕組みが用意されていて、借金返済は積極的にクエストをこなすことで行われる。
グレイセスのレビューで折角アイテムを用意しても人に渡さないとやった感じ出ないと書いたが、依頼のうちいくつかは直接渡すミニシナリオ方式になっていて仕事をこなした雰囲気がしっかりある。
仲介者に事務的にアイテムを渡す形式のクエストもあるので、煩雑さの回避と雰囲気づくりのバランスが取られている。
なお仲介者は街ごとにいるが紹介内容は同じで、だれでもクエスト完了処理をしてくれるので、煩雑さが抑えられている。
着地点の見つからない料理
料理に関しては前作とあまり変わっていないが、場所ごとに売っているものが違うので使う料理の偏りは減っている。
また道中拾うことが多く、各種類につき1つしか持てないので「無駄にするぐらいなら」と使用を促す作りになっている。
これに関しては、トイレで見つけたグミ食うのを躊躇してた身としては、拾い食いはどーなのというところが気になる。
それはそれとして、料理はゲームプレイに必要なシステムとは思えなかった。
ネコ派遣
街中やフィールドに逃げてしまった飼い猫を拾うと、今まで猫を見つけた地域に派遣できるようになり、しばらくすると素材を拾って帰ってくる。
地道に歩いて見つけるのが基本だがクエストに目撃情報が出ていて、ほとんどの地域はその情報で1匹は見つかるようになっているのは、丁寧なフォローだ。
ただ「シナリオ上必ず会う人が拾った猫が、捜索対象の猫と分かり返してもらう」ぐらい強制的に加わる地域が多くても良かったと思う。
猫は地べたでも物の上でもどこにいてもおかしくなく、音(鳴き声)で場所がわかるのでレーダーなどの装置は必要ない、というのは任天堂ゼルダの伝説 時のオカリナの黄金のスタルチュラと同じ特徴を持った探索対象だ。加えて猫は可愛い。
全部模様が違ってコレクション性があるし、歴代テイルズオブのキャラを彷彿とさせる名前や模様をしているのもいいし、まさかそのためだけに声優を呼んだとは思えないが、猫の鳴き声がかなり「寄せてる」声なのも楽しい。
実時間で戻ってくるため「本編やる時間はないけど、猫の回収だけはしておくか」とソシャゲのデイリーボーナスのような、毎日ゲームを続けさせる理由になっている。そしてまんまと本編も進めてしまうのである。
現実の曜日でボーナス(取得数3倍とか)がつくのも面白い。今日はマタタビ使って積極的にネコ派遣しよう、みたいなプレイの指針になる。
また、通常のマップ上に落ちている素材だけでなくネコ派遣でしか手に入らない特産品も持ってくるので、猫を探し派遣する理由もしっかりある。
グレイセスのレビューで素材収集をオートにしただけで面白くなる工夫がないと書いたが、まさにネコ派遣は面白くする工夫になっていて、確実な改善を感じる。
猫がアイテム探し回っているという時点でもう可愛いが、ネコ派遣メニューにはエルが表示されていて「行ってらっしゃーい」などと猫に声をかける。ソフトクリームにあんこ乗っける周到さだ。そんなもん美味いに決まってる。
成長システム
装備した環珠に対応した属性にエレメンタルコア(以下コア)を吸収させ、その吸収量により術・技やスキルを習得していく。
コアは戦闘でも手に入るし、マップ上のキラキラしたポイントからも得られる。
前作の宝箱・袋・素材ポイントに加えてコアがあるため、マップに関与できる頻度が上がっていてスカスカ感が緩和されていると同時に戦闘が得意でないプレイヤーの救済になっている。
のだが探索も戦闘も好きなので、後半に突入したぐらいの段階で上限に達してしまった。
そうなると手に入るコアと環珠がまるきり無駄になり、マップのスカスカ感はむしろ前作より上がってしまった。
環珠は育てたい属性のものが手に入るとは限らず、いまひとつ自由にキャラを育てている実感もなく、むしろ強制的にいびつな形に育てられてしまう。
また直近に身につく術・技とスキルは分かるが、育てて行って先々何が手に入るのか分からず、戦略的に育てることもできない。
吸引力が強く属性も多い環珠は終盤に手に入るが、すでにカンストしていて、まるきり役に立たなかった。
それに「いつの間にかスキルが増えているので役目を理解・実感できない」というグレイセスと同じ陥穽にハマっている。
一応、取得した技・術やスキルは自分で設定するので、そこで把握できるという理屈かと思うが、とにかく量が多い。
スキルはお任せ設定がついているので設定の手間はかからないが、それでは内容の把握はできない。
コアの他に経験値もあって、一般的なRPG同様にレベルアップもするが「LEVEL UP!」としか出ないので何が嬉しいんだか分からない。
マニュアルには「Lv 現在のレベルです」という箸にも棒にもかからない記述があるのみ。
かと思っていたが良く読むと「能力値が増える」という記述があった。レベルアップ時に教えてプリーズ。
そもそも根本の問題はテイルズオブのスキルが多すぎることにあるが、成長にコアと経験値の2種類の数値が関わるのも理解を阻む。
成長システムに関しては、失敗と断言してもいい。
まとめ
前作までの「こうすればいいのに」とレビューに書いたことが「空にファンタジックなもの置けばいいのに」という細かな部分まで含めて、かなり実現されており「え、僕のレビュー見て作った?」とか思うほどだ。
もともと優れていたユーザインタフェースもメニューの各種項目に分類やソートがつくなど、細かい改善が施され快適だ。
そういう細かな部分ではない改善要素は前作の評判を聞いてから取り入れるには制作期間的に厳しいので、問題と認識し解決策も考えていたが前作に入れきれなかった要素かと思われる。
レビューで例に挙げたゲームを実際に参考にしたかどうかはわからないが、数々の名作・傑作が導入した解決案と同じ答えにたどり着いているのは事実で、それはもちろん良いことだ。
分史世界を様々なゲーム的な制限の理由づけに使っているのが上手く、"選択"というテーマもシステムに落とし込まれていて、借金をうまく進行に利用しているし、ゲームとストーリーの融合度が高い。
ただ戦闘の関連付けは変身システム以外は弱く、合成や成長それに料理、ネコ派遣システムも、特にストーリーと絡んでおらず「テイルズオブにしては」融合度が高いというレベルではある。
ストーリー内のトマトスープや歌、懐中時計といったガジェットの使い方は上手いが、これらもゲームとは雰囲気程度しか絡んでいない。
エルはシステム上は主に「にぎやかし」の役割だが使いどころが上手く、もはや本作にはなくてはならない感じだ。
しかし居なくなることもあり、ほとんど寂寥感すらあるのは演出として素晴らしい効果を上げている。
選択によってずっと居られるルートを作って欲しかったなとも思う…という感想が出ること自体が成功の証かもしれない。
前作のレビューでも書いた通り、音声を大量に使って進行させる手法でストーリーとゲームを融合させるのは極めて難しい。
しかも"プレイヤー=主人公"だとさらに難度が高く、まず主人公の名前を変えられないあたりでもうキツい。
そういう意味で本作の融合度は、この手法では限界に近いぐらい高いレベルを達成している。
これ以上を目指すには声優を使わず音声合成で行う、みたいにさらに別の手法が必要なレベルというか。
本作の開発期間は一年程度と、このサイズのプロジェクトとしては異常に短く、短期間で仕上げたにも関わらず前作のリソースを利用することで名作となった任天堂ゼルダの伝説 ムジュラの仮面に匹敵する快挙だ。
また正統な続編でありながらも、かなり大胆に新システムを採用したテイルズ オブ シンフォニア ラタトスクの騎士と近い外伝的な作品でもあり、ストーリーにおいてもテイルズオブらしからぬ領域に踏み入った本作は、シリーズの枠を超えた評価を得てしかるべき作品となった。
参考
そこで結論。
ゲームとシナリオの融合度が高いテイルズオブ。傑作です。