テイルズ オブ エクシリア
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基本情報
テイルズオブシリーズはアニメ風味のRPGで戦闘システムが対戦格闘的なアクションゲームとなっているのが大きな特徴だ。
本作はテイルズオブ15周年作品として、別れてほぼ交互にリリースしていた2チームの合同開発に加え、いのまたむつみ&藤島康介の二人がキャラクタデザイン担当するという「テイルズの全力」と言ってもいい体制で製作された。
なおプレイ感は非常にテイルズ オブ ヴェスペリア(以後ヴェスペリア)に似ており、発売時期から考えてもテイルズ オブ グレイセス(以後グレイセス)チームが後から合流した形のようだ。この後解散したため本作はテイルズスタジオの最終作ともなっている。
また主役が二人用意されており、どちらを選択するかで2通りのルートをプレイできる作りなのも新しい試み。
そのほかにも対となる要素が多く意識されている。
声優は沢城みゆき、早見沙織、置鮎龍太郎、坂本真綾といった人気声優に加え、麦人、大塚芳忠、銀河万丈、大塚周夫というイケオジボイスの大盤振る舞いなのがポイント高い。
オープニングやイベントシーンのアニメはこれまでのプロダクションI.Gから、こちらも作画クオリティに定評があるufotableに変わった。
そして主題歌は浜崎あゆみprogressと、考えうる限りの豪華を詰め込んだ感じだ。
これまで背景が3D化されつつもカメラはキャラ位置によって固定だったのが、本作ではカメラを自由に回転できる仕様になっているのも大きな変化だ。
ヴェスペリアがXbox360から、グレイセスがWiiからの移植だったので、本作は初のPS3オリジナルタイトルでもある。
本体同梱版TALES OF XILLIA X Editionや廉価盤も出ており、さらに直接の続編であるテイルズオブエクシリア2も出ている。
キャラクタ
グラフィック
本作のまず第一の特徴は、いのまたむつみ×藤島康介のダブルキャラデザインであることだろう。
テイルズ オブ レジェンディアの中澤一登はどうしたんだよ!
と言う気持ちも多少あるが…。
まずつかみで「豪華夢の共演」の雰囲気を作ることには成功している。
また、両者のキャラクターは違和感なく共存している。
これまでのテイルズオブでは少し(からかなり)デフォルメされていて低い頭身だったが、本作はイラストとほぼ同じ現実味のある頭身で作られている。
また関節の自由度も上がっているようで、男性主人公のジュードは首をかしげて考え込むポーズが多用されて印象的だ。
以前は解像度やモデルの質の問題で体全体での演技が主体だったが、本作では目や表情の演技もできている。
テクスチャはアニメ調ではなく厚塗りっぽいイラストの雰囲気。
アニメムービー担当のufotableは正確な人体描写やグラデーションを多用した絵作りで、手描きなのにCGっぽいのが特徴の制作会社。
本編のCGがアニメに、ムービーのアニメがCGに寄ってきた結果として、両者のイメージがかなり揃ってきて、違和感が少なくなっている。
衣装変更はクリア時の3着だけしか手に入らなかった。
メガネなどの細かなアクセサリは本編中で結構豊富に手に入り、取り付け位置を調整できるので時間を溶かして遊べる。
どっちもオマケの域ではあるし、ダウンロードコンテンツで追加もできはするが、流石に2ルートクリアして3着は衣装の出し方が渋すぎる。
キャラの役割
主役のジュードは「医者の卵」の優等生で落ち着いた性格。テイルズオブ主人公でありがちな「ほぼ感情で行動してるのに、なぜか難しい話の流れを完全に理解している」変なキャラになってない。
もうひとり主役のミラは精霊については詳しいが普通の人間の生活についてはほとんど本の知識しかない。
また考え方もフラフラしてて事件に巻き込まれただけのジュードと、確固たる信念と使命を持ったミラの対は物語的な深みにもなっている。
そのほかのキャラもそれぞれ重要な役割を持っているが、唯一レイアが戦闘以外でこれという役割を持たないのは残念。
ボスキャラにチラ見されて「こいつ誰?」って思われてる空気を感じて、こっちが辛い。
物語的には「普通の子」がいた方がいいとは思うし、ゲームでカチコミ仲間になる理由なんか「なんと ひきょう きわまりない! せっしゃも すけだち いたす」byガイfromカプコンファイナルファイト程度でいいっちゃいいんだが。
チャット
シリーズお馴染みのパーティキャラ同士の掛け合いであるチャット(スキットとも)は種類が増えて3種類があり、全て音声付きだ。
- 移動中に知らせが出て[SELECT]ボタンを押すと、モードが変わり四角い枠の中にキャラが描かれる従来のロングチャット
- 移動中にモードが切り替わることなく左下に小さく自動的に表示されるショートチャット
- 戦闘中の画面隅にカットインしてくるファイティングチャット
1. はグレイセスで立ち絵になったのにまた枠に押し込められて残念だが、発生タイミングは良い。少々多すぎる感はあり、本編カットされたので密度上がったのではないか疑惑が湧く。
2. は移動を止めることなく聞けるので移動の退屈さが紛れて良いし、キャラと旅している感が出るのも良い。
しかし戦闘などで中断されたり、最後まで聞くためにマップのエリア移動などを待たなければいけない、など問題も多い。
3. はほぼ雰囲気。戦闘中に聞き取る余裕はあまりないがカッコいいのでよし。
1. と 2. に関しては、プレイヤーが見ない可能性も高いのにゲームの印象を左右するぐらいの重要なやりとりが行われていて、その製作者の胆力には敬服する。
自分で作ったら「ここ重要だからメインルートで説明しよう」ってやってしまいそうだけど、プレイヤーごとの情報に差があってこそのゲーム。
せっかく作ったから全部見て、と押し付けてこないの偉い。
あと多分テイルズオブ初、ロングチャットはセリフがボタンでスキップできる。
今までなぜできなかったのか謎だったけど、特に理由はなかったようだ。
その他のキャラなど
本作では主人公たちだけではなく敵対・周辺のキャラの掘り下げが丁寧で、パーティーキャラと対になる人物が各所に配置されているのは分かりやすい。
特にサブイベントで語られている部分が多いのがいい。
本編で周辺人物まで延々語られるとヤメてくれと思うのだが、サブイベントだとプレイヤーが自分で選んでいる形になるので、邪魔に感じないどころか「儲けた」ぐらいに思える。
おそらく周回する理由を作るため、サブイベントは大胆に本編から移動されたと思われる。
ただ切り取りが大胆すぎて、本編のパーティメンバーの持ってる情報に矛盾が発生してる気がする。
映画はむしろカッティング作業こそ映画づくりな面があるが、ゲームの場合はプレイヤーの行動によって受け取る情報が変わってくるので、声付きゲームのシナリオを後で修正することの難しさが出てる。
ジュードの対でもありコメディ担当のミラのお世話役イバルの存在は、物語がシリアスになりすぎないでいい。
ただしイバルはやらかしが激しすぎる。やらかしが激しいといえばアルヴィン君も相当なものだ。
2人とも不思議なほどに高い許し力でパーティメンバーに受け入れられてる。
その他の重要情報やショッキングなシーンに対するリアクションが淡々としているのは本作の良くない点のひとつ。
比較的まともなリアクションをしているエリーゼ(ティポ)が、逆になんか変な子に感じるほどだ。
マップ
グラフィック
背景は写真的ではなく描きこまれたイラストという感じだが、それでもゲームシステムとしてはリアルに寄りすぎているところがある。
キラキラのセーブポイントやでかい宝箱や袋が浮きまくっている。
その嘘をなじませようとするなら、背景のリアリティレベルはもう少し下げるべきだったかと思う。
背景は色の傾向を合わせているのとオブジェクトの種類が少ないので、どっちを見ても同じような印象に見えてしまい、迷う。
特に夜の都市や暗い洞窟は見づらく、カメラを自由に回転できるシステムと相まって、迷う。
このせいでゲーム中の4〜5時間はただそこらにあるなんてことないものを探す時間に費やしてしまったように思う。
最終的に左上に表示されるミニマップばかり見てプレイしがち。
迷うほどでない狭いマップを除けば、唯一カラハ・シャール中央の大風車がランドマークとして機能している。
おそらくオブジェクトやテクスチャ量を減らしてロードやリアルタイム処理を軽くする目的と思うし、実際に各シーンの切り替わりはノーストレスだ。
とはいえ、同じオブジェクトとテクスチャでも、もう少しマップ構成で緩急を工夫する余地はあると思う。
加えて各国の海停(港)と宿のレイアウトはほぼ使い回しで、ダンジョンのマップも使い回しが見られて新鮮味に欠ける。
挙句にダンジョンの仕掛けが極端に少なく、ほとんどが通路だけの作りで淡白だ。
ついでに言うと、デザインどころかモデルそのままヴェスペリアの使い回しでは?という敵もチラホラいる。
西洋風と東洋風に分けることで国の特徴を出しているのは良い。
東洋風の街はテイルズオブではひとつ登場するかしないのが常なので、国まるごとは新鮮だったしローエンが元軍師とかも含めて三国志っぽい雰囲気を感じるのも良かった。
この辺も後述するセリフ表示と同じく海外展開(主に中国・韓国)を意識した部分かと思う。
ワールドマップ
自由に移動できるワールドマップはなく、コマンド選択で移動するものと割り切っている(選択画面で地図は出るので位置関係は分かる)
驚くのが、移動に呪文などの理由づけもなくダンジョンの最奥からもコマンド選択一発でどこにでも行ける点だ。
最初はワイバーンを理由づけにしてたと思うのだがワイバーンに乗るのはシナリオではかなり後、思い切って序盤から特に理由もなく自由に移動できるようにしたのだろう。
サブイベントはすでに通った場所に戻って探索を行う必要があるためシステムとしては正解ではあるものの、無味乾燥なのは否めない。
シナリオの都合で特に説明もなく移動できなくなるのも後付け感の強いところだ。
マップ上のアクション
マップ上で段差を登り、かなり高い位置からでも飛び降り、しゃがむこともでき自由度が高まった。
ただ既にPS3にはノーティードッグアンチャーテッドやユービーアイソフトアサシンクリードシリーズが出ている。
3Dカメラによりプレイ感がこれらのゲームに似てきたため、比較するとかなり自由度が低い。
カメラは常に右スティックで操作する必要があり古臭い印象。
マップ上で[R1]を押すとシナリオの次の目標が表示され、[□]ボタンでロケーションマップ(ミニマップ全画面版)が表示される。
ある程度の大きさに区切られたエリアに入ると、エリア全体が全く行ったことのない箇所も含めロケーションマップに表示されるし、はては敵シンボルや話しかけられる住人まで表示される。
探索の楽しさが大きくそがれる仕組みだがメイン画面だけだと確実に迷うので、このくらいしてもらわないと投げ出しかねない。
そんなダメなところばかりのような本作のマップだが、憎むべき「透明の壁」がほとんど存在していない。
「こちらに行かないほうがいい」とかのキャラのセリフが出る時も、多くは番兵が配置されていて絵的な理由づけが一応されている。
この点だけで他のテイルズオブより俄然ストレスが少ない。
敵との遭遇はシンボルエンカウント方式で大抵の場所では避けようと思ったら簡単に避けられる。
ヴェスペリアと同様にマップ上に大きく強力な敵がいるのは良いが配置が悪く、不意に遭遇して「うわ!何このでっかい魔物!」という驚きがない。
到着したレベルにそぐわない、強力な魔物が存在するエリアに行ける箇所がいくつかある。
これは自分の実力を測る指標としてよく機能していて素晴らしい。
後ろから接触することで発生するバックアタックは、敵に気づかれた状態で行うものと気づかれずに行うものの2種類がある。
気づかれないためには([×]ボタンを押しながら)ゆっくり近づく必要がある。ゆっくり歩く機能はこれまで死に機能だったこともあり、マップ上でできることが増えて嬉しい。
住人のマーカー
本作では頭上にフキダシマーカーがついている人物のみ話しかけられ、雑踏の声を背景音として出して雰囲気を出している。
これはセガ龍が如くなどが採用しているシステムだ。
背景と人物がリアルになると都会に人が10人ぐらいでは嘘っぽさ全開なのでたくさん配置する。たくさんいる人全員に話しかけられると開発コスト的にも大変だし、プレイヤーも人と話すのに嫌気がさす。
なので取られた手法は現代日本を舞台とした龍が如くなら必然性はあるが、どんな設定でも自由自在なファンタジーなのだから、都会が存在しないシナリオを選択して欲しかった。
話を聞いたらフキダシマーカーが薄くなる。
マーカーのような異物は極力避けてほしいとは思うが、会話内容が変わったことが一目で分かるこのシステムは快適。
サブイベントが発生する人物には!マーカーが出現する。
前述のように話せる人にすでにマーカーがついているし、サブイベントは(たぶん)全て!マーカー起点なので違和感は少ない。
シナリオ
独自用語
ゲームシステムとともに独自用語が過剰なのもテイルズオブの特徴なのだが、本作は少なめだ。
精霊とかマナとか普通のファンタジー用語だし、シェル、ブースターも聞き覚えのある英語の転用だ。
霊力野のように漢字+カタカナ英語表記されているので意味も分かりやすい。
しかし、テイルズオブにしては分かりやすい方だとしても独自用語過剰なのは否定できない。
なのに用語の説明がヘルプにないのは致命的だ。
システム用語も共鳴術技という感じで分かりやすい。
また戦闘のヘルプは画像が多用されており理解しやすいし、戦闘シーンからも呼び出せて必要になったら即見れる。
しかしヘルプには戦闘の説明しかなく、その他のシステムについては紙のマニュアルを併用する必要があり。少々中途半端。
W主人公
本作のシナリオは、主人公ふたりで2ルートの周回を行うのがいちばんの特徴だ。
周回前提のシステムを持っている割に周回する必然性の低かったテイルズオブだが、本作は少なくとも2周する必然性がある。
多分事前情報で期待していたのはジュード編・ミラ編をクリアすると発生する最終決戦編のラストダンジョンを2人とその仲間が合流してクリア、ただしクリア前に合流したパーティで世界を回って素材やサブイベント収集ができるというエニックスドラゴンクエストⅣ方式に近い感じではなかろうか。
実際出てきたものでは、いきなり主人公2人は合流する。
各ルートはほぼ同じ内容で、別行動するのは印象としては全体の2割ぐらいだ。
つまりは今までのテイルズオブにもあったパーティ分割イベントを連続でプレイする方式ではなく「全部通してやり直さないといけない」代物だったのでファンの落胆ぶりはいかばかりか。
グレードシステムによって所謂「強くてニューゲーム」できるので2週目の進行は速いものの、すでにやったイベントを再クリアするのは面倒臭いし、もし違う内容だったらと思うと迂闊にイベントのスキップもできない。
これではプレイヤーから「水増し」と言われても致し方ないかと思う。
とはいえ、謎だらけの傭兵アルヴィンと謎だらけのぬいぐるみティポは、2周目で同じイベントを見て「なるほどそーゆーことか」と理解できる仕掛けとしてよく機能しており、2周プレイ前提の作りが完全に破綻していると言い切れないところもある。
セリフ表示
テイルズオブの代名詞みたいになっていたセリフのフキダシ表示がなくなって、映画の字幕方式になっている。
おそらく本作は世界展開を視野において開発されたため、翻訳した文をうまくフキダシに収めることが困難との判断かと思う。
単純に文字が小さく背景もないので見づらい。字幕OFFだと翻訳が出ないので日本語以外のセリフの意味が不明になるなどの問題がある。
ボタンでセリフが飛ばせる・飛ばせない、文字は飛ばせるが結局待ち時間が発生する、入力待ちのマークが出ているのに自動でセリフが進むなどなど、非常に混乱している。
前述のようにキャラの演技など絵で伝えている部分が多いので、全部スキップできないようにするべきだった。
その他シナリオについて
シナリオそのものは二転三転する展開は面白く、全員が同じ目的に向かって一致団結…のような嘘っぽい流れでなく、それぞれに判断した上で共に行く決断をするのも好みの展開だ。
ただ前提条件が何度もひっくり返ることもあって、目的がフラフラしてイマイチ乗れない面もある。
奴隷の幸福と選択の責任の対立のシナリオもいい。英明な王の独裁と愚集の民主主義の対立は銀河英雄伝説はじめ定番。
他も、いろいろ都合よく解決はしないけど、愛と友情の奇跡で解決とかでないのは誠実で好感度の高いシナリオだった。
ただ、民主主義選びましょうってシナリオに、モンゴル由来が多い地名、キリストを下敷きにしたミラの造形(だよね)で中国に売っていこうというのが無茶な感じもする。
その辺のシナリオが問題だったのか、韓国でのシナリオ流出が問題だったのか、海外の売り上げはさほどではなかったようだ。
リーダーをミラにしてニ・アケリアを散策すると住人がひざまずくのは、ゲームらしい手法で非常に良かった。
またイベントだけでなく、状況によって戦闘時の声の調子が変わることもあったりするのも良かった。
ただ、手間がかかることもあってかこの手のイベントに頼らないキャラ表現は、主にミラに集中している。
イベントがほとんどエリアを移動するたびに発生するしチャット発生も多いので、ずーーーっと会話聞いている感じでシナリオ(セリフ)はボリュームがありすぎるぐらい。
にもかかわらずサブシナリオを考慮しても特に後半はシナリオが飛んでる雰囲気が強く「先週の放送見逃した」かのような感覚を味わってしまった。どうにもバランスを欠くできとなっている。
戦闘システム
戦闘の基本
円形に設定された範囲で戦い、基本はターゲットの敵と自分を結んだ線の上を左右に移動でき、ボタンとスティック入力方向で様々な技を出す、戦闘の基本はヴェスペリアを踏襲している。
グレイセスからはHPゲージを兼ねたターゲットマーカーなどが採用されている。
また、ステータスの並びが十字なので十字キーによるキャラ指定が分かりやすい。
特に控えメンバーとの入れ替えもできるのはテイルズオブ画期的。
AC(アサルトカウンタ)とTP(テクニカルポイント)
ACはグレイセスでのCC(チェインキャパ)で戦闘中の行動回数を制限する値。
しかし消費は攻撃行動のみで消費量は技によらず1固定、加えて回復スピードが速いため、魔神拳(剣)連発も余裕だし、フリーランやり放題。
TPは術・技を出すときに使う数値で、MPと思って間違いない。
ACは使わず、通常技のモーション調整とかでボタン連打プレイの対策した方が良かったように思う。
使い切れないほど多彩な技
以下、キーカスタマイズができるのでボタンは規定値を書く。
本作では通常技ボタン[○]と術・技ボタン[×]があるのに加え、[L1+○]で強攻撃が出る。
それより通常技/技/術と3ボタンを割り振って、組み合わせのバリエーションで面白さを出して欲しかった。
同時押し操作は分かりづらく使いづらい、強攻撃を使わずにプレイした人も多い気がする。
各キャラ固有操作を持っていて、例えばミラは[×]のチョイ押しと長押しで技を区別する。
対戦格闘ゲームなんかではまずキャラ固有の特殊技として新たなシステムをテスト実装して、評判が良ければその操作やシステムを次回作で全体に実装するパターンが多いので、これもそういう意味があるのだろう。鉄拳チームの入れ知恵っぽい。
あと[L3]押し込みでアピールを行いTPの回復ができるが存在を忘れがち。
せっかくモーション作るなら、マップ上で意味もなくポーズを取れる方ようにして欲しかった。
リンクシステム
ステータスに配置されたキャラの方向に十字キーを押すと、リンクが発生しキャラ間がゴム紐的なもので繋がる。
リンクしたキャラは一緒に行動しサポート技などを駆使して連携してくれる。
コンボやカウンターが発生しやすく、爽快感もあり共に戦っている感が強くなっていい面がある。
バッドステータスがリンク相手と連動してしまうデメリットもあるにはあるが基本リンクすると強い。
しかし近距離型と遠距離型のキャラが組んだ時に、パートナーが必ず近くに付いてくるかつ敵を囲む動きをするので、遠距離型キャラがサンドバッグになってしまいがちという面があり、もう少し役割をわきまえて立ち回って欲しかった。
別に設定できる作戦との競合なのか、パートナーが何もせず突っ立っていることもあり、いまいち使えねー感もある。
また、理想を言えばリンクで指示しなくてもいい感じに連携して欲しいとも思う。
あとリンクすると片方がオートになってしまうので、かなり致命的に複数人でのプレイと相性が悪い。
左にあるリンクアーツゲージを消費してリンクした相手との協力技が出せる。ゲージフルの場合は秘奥義が発動できる。
ややこしいと思っていたヴェスペリアを超えるややこしさで、リンクアーツと秘奥義の出し方を理解したのはもう後半もいいところ。
秘奥義の発動アニメーションとか、テイルズオブの華でしょ。なんで隠すみたいにややこしい操作を割り当てちゃうンダァァ!!
コンピュータが秘奥義を全然出さないので、存在自体気づかずクリアした人がいてもおかしくない。
あと、リンクアーツが発動に必要なので、ひとり旅の時は秘奥義が出せない!! 嘘でしょ!
その他戦闘のシステム
今回も戦闘後の掛け合いの種類が多く、非常に楽しい。
ボス戦後は専用の掛け合いが用意されており「しんみりした雰囲気なのに空気読まずはしゃぐキャラ」問題は発生しなくなっている。
ボス戦以外にもパーティの雰囲気がギスギスして気まずくなっている時のやりとりが専用にあって、マジ気まずくて好き(笑)
オートアイテムは条件設定で適切な使い方を指定でき、仲間がアイテムを使ってサポートしてくれて共闘感がある。
振り向き動作が思ったように行われず、敵とはあさっての方向に攻撃することがままある。
一部の技やリンク特性が強すぎる、リンクアーツのキャラによるばらつきなど、全体的に調整不足な感じがある。
多くのボスの挙動が鋼体でダメージが通らず、バリアを破壊すると広範囲の吹っ飛ばし(や気絶)技を使う。
調整としては「とにかくあらゆる攻撃方法に無理やり対処できるので、開始からコンボ受け続けて何もせずに負ける最悪な状況だけは回避した」感じのものになっている。かなり残念。
あと闘技場にはリングアウトルールがあって何気に物語の要素が取り入れられているが、そんな特殊ルールがあると闘技場が戦闘の練習にならないし面白いルールでもないので、闘技場はほとんど遊ばなかった。
その他のシステム
大幅に整理された定番システム
テイルズオブらしいとされるシステムの多くが大規模リストラされている。
〇〇にん(着ぐるみ種族)、ナム孤島、温泉(リゾートビーチ)、カジノやミニゲーム、(武器・料理)合成、ディスカバリー(名所・名産)、キャラ個別の称号、闘技場での他のシリーズからのゲスト、セリフのフキダシ表示。
グレイセスで廃止された敵を調べるアイテムと、周回条件購入点を戦闘で稼ぐシステム、乗り物で移動可能なワールドマップも引き続き廃止。
個人的にはディスカバリーとワールドマップ、フキダシ表示は欲しいなぁと思うし、ファンごとにこれらのシステムに思い入れのある人も多いと思うが、これらの廃止は英断だと言いたい。
とにかくシステム・コンテンツ過剰だったシリーズを一度リセットするぐらいの気持ちで大鉈が振られており、プレイのストレスが大きく減った。考えることが少ないって素晴らしい!
主に15周年の納期に間に合わないのでカットという後ろ向きな理由だと思うし、〇〇にんの村やナム孤島が消えるのはともかく付随するムービーライブラリとサウンドライブラリが無くなってんのはダメだろって思うが。
簡易化され分かりやすくなったシステム
店の品揃えが全世界共通な代わりに、素材を店に納入するとアイテムが開発されて店に並ぶ。
これは素材という細切れなアイテムの収集と店の成長を楽しめ、レベルアップ以外に強くなる方法を用意し、面倒臭い合成をなくすという一石四鳥のシステムだ。
次の街へ行く楽しみがないというデメリットはあるが、一挙に問題を解決するベストに近いベターだと思う。
頑張って素材を集めると大きく段階を飛ばした装備を手に入れて、ガツンと強くなることもできて気分がいい。
武器防具を敵のドロップアイテムや宝箱などから入手するパターンがかなり少ないので、割と迷わず購入できるのもいい。
テイルズオブの定番の称号は本作でもあるが、機能的にはほぼトロフィーというか5つに1つぐらいが完全にトロフィーと被っている。
これは「トロフィーはSONYさんの要請で入れますけど称号の一種ってことにします」って割り切りで良い。
ゲーム的役割は周回時の特典を購入するためのグレードとしての価値だけという部分もいい。
料理に関しては…これも完全になくして良かったんじゃないかと思う。
普通のアイテムのように店で売られているが1種類1個しか購入できなくて、使うと戦闘で防御力が上がるとかの機能が決まった戦闘回数継続するという代物。
使い分けるのもいちいち食べるのも面倒くさく、ほぼ経験値が増える系の料理しか食べなかった。
効果が切れたらショートチャットでやたら腹ペコ発言があるのも、煩わしい感じだ。
イベントリスト
メインシナリオとサブイベントの進行状況をイベントを単位として一括で表示するシステム。
カテゴリが「ジュード編・ミラ編・進行中・完了・ALL」と分かれていて、見たいイベントを探しやすい。
あらすじが別に必要でなくなり、同じUIでメインとサブを確認できる。これは賢い。
進行中のイベントを目的として設定することで、[R2]で出る次の目標になる。
サブイベントをこなしている時に本編を進めるように急かされるとイラッとくるが、ここで目的を設定しておけば解決だ。
ただ、イベントリストに書かれた内容は無味乾燥な文章で全然面白くなく「内容よくわからなかったのでイベントリスト確認→つまんないので読むのやめる」のコンボを何度も体験した。
リリアルオーブ
リリアルオーブという、能力を蜘蛛巣状に配置したものがある。
能力の成長はレベルアップで自動的には起きず、レベルアップ時に手に入るGP(グロウアップポイント)を消費してリリアルオーブを中心から広げていくことで成長する。
最終的には満遍なく育てなきゃいけない調整がされているが、選んでる感は十分ある。
戦闘がキツくない間は成長を保留して自分の腕前の成長だけで戦闘を楽しむ、なんてプレイもできる。
その他
素材は敵のドロップアイテムの他に、宝箱・探索袋およびキラッと光る探索ポイントから入手可能だ。
これらがないとマップは敵シンボルを追ったり避けたりして走り回るだけになり、ものすごく退屈になるだろう。
そういう意味でも、ショップの成長システムはよくできている。
宝箱は一度とるとマップ上で蓋が開いた状態で二度と取れないが、探索袋と探索ポイントはランダムで発生する。
取った場所はロケーションマップに記録されて、再収集と踏破の目安ともなる。
ただ宝箱はランダムのものと同じような内容のものが多く、どうも終盤で「やべぇ宝箱少なすぎる」と気づいて無難なもの入れて水増しした感がある。
前述のように踏破済みかどうかマップで直接確認できる唯一のオブジェクトが宝箱なので、少ないとその役割をなさないのだ。
前述したとおりにマップ上でしゃがむアクションを使えるので、穴をくぐれる。
ショートチャットでレイアが「探検してるって感じー」的なこと言うが、まさにしかり。
クイックセーブがついて、いつでもセーブができロードしてもデータが消えないのは中断しやすくて良い。
もう一歩頑張って、オートセーブを実装してくれても良かったかもしれない。
まとめ
一時期「日本のゲームは剣を持った少年が背中を見せて走り回っているのばかり」と揶揄されたものだが、テイルズオブも遅ればせながらそのタイプに参入したと言える。
…やっぱり、3Dフリーカメラ方式はやめたほうがよかったんじゃないかな、というのが本作をプレイしての感想だ。
マップのスカスカ具合は内製のゲームエンジンで3D作るのは無茶だったのではないかと思わせる。
テイルズスタジオが扱うには仕様が大きすぎかつ3Dのゲームの文法に不慣れというか。
せっかくカメラを動かして見上げられるようになった空もただ空があるだけで、ドラゴンや飛空挺が飛んでるようなファンタジックな演出はない。
一部のダンジョンに飛び降りアクションを利用した立体的な仕掛けがありはする。
またアイフリードの宝は壁を回り込んだ箇所や少し上に配置されていて3Dマップの探索の面白さを出しているが、後付け感が強い。
戦闘システムとチャットを除いては、テイルズオブの悪癖であった過剰なシステムを大幅に削減することに成功しており、プレイ感は非常に良い。
テイルズオブとは何かを問うて「アクション戦闘とアニメのような物語」と外すことなく答えを出している。
問題はそのふたつの融合が弱い、というか特に繋がりがないことだ。
例えば本作の目的のひとつとして、ミラがなくした四大精霊の力を取り戻すことがある。
なら各地のボスを倒して四大精霊をひとつずつ解放し力を取り戻す、といったシナリオにならないといけないと思うのだが、実際は四大は一気に返ってくるしゲーム的にも強力な技が4つ手に入るにすぎない。
他にも傭兵のアルヴィンはチュートリアルの先生として設定されたと思われるが、ミラに剣を教えるタイミングは明らかに遅く、画面が暗転して「いいんじゃないのー」とセリフが出るだけでチュートリアルにもなっていない。
実際のゲームでは「最初の戦闘だから」以外に特に理由もなくチュートリアルが入っている。もっと前に入れなきゃダメだと気づいたが話を修正できなかったのだろう。
こういったゲーム部分と物語部分がズレている箇所が端々に見られる。
本来きちんと両者が融合するようにシナリオを練り直す必要があるが、音声の収録が終わってからシナリオを修正するのは極めて困難。
システムとシナリオの融合に欠ける仕上がりになりがちな宿命を構造的に持っているのがテイルズオブと言え、他のシリーズでも多かれ少なかれ見られる問題だ。
初週売り上げ50万本突破のテイルズオブ新記録をマークしたものの、その後は出荷本数に見合う売り上げが出ずに在庫過剰から価格下落を招き、マーケティングの失敗で内容とは別に悪い印象を与えてしまったのは残念。
あまりに安かったので、私なんかは間違えて2枚買ってしまったほどだ(笑)
廉価盤出す時も新規プレスの必要なかったんじゃないかと思う。
参考
そこで結論。
シリーズの仕切り直しとして良い仕事もしたが、崩壊ギリギリの危うい作品でもある