テイルズ オブ グレイセスf

対応機種・周辺機器
Wii、PS3(1人、戦闘のみ4人まで) PS3はHDDインストール必須
ジャンル
守る強さを知るRPG
著作・制作
(c)NBGI (c)いのまたむつみ (PS3版)

基本情報

 テイルズオブシリーズはアニメ風味のJRPG(日本産のドラクエタイプのRPG)のど真ん中という感じのビジュアル。
 しかし多くのJRPGと異なり、戦闘システムが対戦格闘的なアクションゲームとなっているのが大きな特徴だ。
 本作はWii版としてに発売され、にPS3版が発売され、廉価版のThe Bestも発売されている。
 テイルズオブはこのころ3チームぐらいに分かれてシリーズを回してたと聞くが、本作はテイルズ オブ ディスティニー開発チームらしい。

 櫻井孝宏や花澤香菜、浪川大輔といった「主役請負人」みたいな人気声優がいることは勿論、東地宏樹や 石塚運昇など映画吹き替えで多く活躍する実力派も配置される盤石の面子で、もはや「聞いたことある声しか出てこない」レベルだ。
 キャラクタデザインはいのまたむつみ、オープニングやイベントシーンのアニメはプロダクションI.G。
 主題歌であるBoAのまもりたい 〜White Wishes〜は、すでにできあがっていた曲を選んだらしいが、そうとは思えないほど作品に合った曲になっている。

 PS3版では高解像度化など各種調整の他、クリア後のシナリオが追加されている。
 逆にWii版にあったかめにんマーチャントというDS連携ゲームがなくなっている他、ゲーム内で入手できた衣装がダウンロードコンテンツ(DLC)になっていたりする。
 前作DC版のテイルズ オブ ハーツに続き任天堂プラットフォームで発売されたテイルズオブだが、本レビューで取り上げているのはPS3版のテイルズ オブ グレイセスf

キャラクタ

グラフィック

 Wiiの制約が大きな理由だと思うが、テクスチャにグラデーションを多用することで、ポリゴン数の少なさや陰影処理がないことによる情報量の少なさを補っている感じだ。
 結果として、ふんわりしたフェルト人形的質感となり、ファンタジーよりもメルヘンの雰囲気がでていて、テイルズオブというより風のクロノアみたいな感じだ。わっふー!

 イベントは本編に使用されるモデルを使ったものと、手描きのセルアニメ的なムービーがある。
 加えてグルーヴィーチャット(他のシリーズではスキット)では手描きのいわゆる立ち絵を使って展開され、そこにデフォルメキャラのカットインが多用されている。
 もうどのイメージを念頭にプレイすればいいんだか分からないカオスっぷり。

 キャラデザイン的には、初音ミクが流行ってる時に、よくこんな巨大ツインテ娘を出してきたなとソフィを見て思う。
「どう見てもパクリじゃん」って言われちゃうでしょ。いのまた先生ハートが強い。
 加えてDLCに初音ミクなりきりコスチュームまで用意されている…テイルズチーム、ハートが強い。これが、これがテイルズオブハーツか…。

機能としてのキャラ

 キャラクタが今ひとつゲームの機能(プレイヤーに対する情報提供やシステムの理由づけ)として活用されていない。
 まずゲームで解明すべき謎の存在であるソフィは、プレイヤーを牽引する装置として絶対必要だ。敵の雰囲気を察知できたりするのはシステムに組み込まれているとなお良かったが、イベントだけでも情報提供機能として成立している。
 戦闘および国際情勢については騎士学校の教官マリクが担当し、メカおよび神秘の種族は天才技師パスカルが担当する。ほぼ必要な知識はここでケリがつく。
 ゲーム的機能がしっかりしているのはここまで。

 パーティーキャラが6人+αと少なめなのは好感度高いが、半数のキャラのゲーム的機能が希薄すぎる!! 頑張れラント三兄弟!!

その他のキャラ

 本作では敵が組織だっていないこともあって描写が薄く、ポッと出ては退場する唐突さが強い。
 そのため延々パーティキャラとその内輪で話が展開し、世界規模の話のはずなのに小ぢんまりした印象だ。

マップ

グラフィック

 背景も含めて完全に3Dで作られているが無機的にならず、キャラに合わせてメルヘン的空気が強い。
 カメラは自由に動かせずキャラ位置で決まる方式で、折角3Dなのにもったいない気もするが、これはこれで見やすく操作しやすい。
 ただダンジョンでは使い回しが多く単調。カメラ固定にかかわらず、かなり迷いやすい。
 さらに過去のテイルズオブシリーズの使い回しっぽい箇所も見られ「あれ?これ完全新作じゃなくて続編だったっけ」みたいに思ってしまった。
 巨大化するゲーム作りにおいて省力化は大切な要素なのだが、ダンジョンマップに関しては露骨に手抜きが見えて残念。

ワールドマップ

 ワールドマップを移動する際は目的地をコマンド選択する方式になっていて、世界を駆け巡ってる感がほとんどない。
 なんだか「県内レベルでカタがついている」ような雰囲気だが、本作は完全に世界規模の話なのでチグハグ。
 また、行き先指定時に表示される全体マップをマーカーでポイント&クリックしていく探索システムなど、もう卓上レベルにちまちましてて冒険感皆無。

マップ上のアクション

 マップ上で可能なのが移動と[調べる]などの右下の表示されるアクション、あとはブロック状のものを押し引きだけというシンプルなもの。
 テイルズオブで定番だったソーサラーリングがないので意味もなく魔法弾飛ばしてみたりできないし、キャラごとの特に意味のないポーズが取れるボタンもないので、さすがに探索中で手遊(てすさ)び的にやることがなく窮屈だ。

 マップ上でL1を押すと、シナリオの次の目標や周囲の行き先が表示される。
 親切だが無機的で良くないので、お供の妖精が教えてくれるとか何か間に挟んで欲しかった。

 マップには「透明の壁」が存在して、見た目絶対いけそうなのに進めない箇所が呆れるほどにある。ひどい。
 加えて本作は .。(こっちに行くのはやめておこう)とかフキダシが出る。
 これ「根拠は!?」「お前が決めるな!!」という怒りが湧く。手抜きしないで番兵キャラ置いたりバリケード置いたりして欲しい。

 敵との遭遇はシンボルエンカウント方式なのだが、シンボルが近接していると戦闘時の魔物が増えるということもなく、絶対避けたい強敵というのも基本ない。
 これシンボルエンカウントにする必要あったかな、と思ってしまうほど活用されてない。
 加えて、シンボルに接触した時の向きで戦闘の有利不利が変わるのだが、大して演出がないので背後からの接触が成功したか、どう有利不利になったか分からないままプレイした。

マップ上の仕掛け

 店は主に武器と道具の2種類の店がある。この両者に重なっている商品やサービス(エネルギー補充など)が多く、入り口が違うだけのおなじ店みたいになっている。
 後半には武器屋・防具屋・宿屋の機能がまとまっていてコマンド選択だけで使える施設が出てくる。「便利だし、くっつけちゃおう」ぐらいのノリで、あまり深く考えず作ってるのでは?

 各町にはパスワードで開く宝箱がひとつ用意してあって、看板などにあるヒントを頼りにパスワードを入力する。
 これ、1回目2回目ぐらいまでは楽しいのだが、全ての町にあるともうそれは義務なので、どんどん楽しさが減り、苦痛になってくる。

 サブイベントが発生する箇所には☆のマーカーが出現するか、キャラの頭上にフキダシが表示される。
 これは非常に良くない。探索が完全に作業化する。それらのマークがあると調べにいかなくてはならなくなる。これは、やってもやらなくてもいいはずのサブイベントと非常に相性が悪い。
 それに、ゲーム的記号がプレイヤーキャラたちの世界に唐突に存在している気持ち悪さもある。
 メニューから解決済み、および進行中のサブイベントを確認できるのは親切。

 そしてシリーズおなじみの簡単な会話劇が発生するチャットが、ほぼセーブポイントかディスカバリー(特産品や史跡など)で発生するのも良くない。
 チャットは通常のゲームを単調に感じてきた時の箸休め的なものとしての効果が高いのだが、必ず発生する箇所があると、そういう箇所を見つけた時にチャットが見なければいけないものになって義務化する。
 ゲームというこれ以上ない位世の中でやらなくてもいいことを楽しんでいる時に、なんでやらなきゃいけないことを押し付けるような真似をするのか。

 ちなみに、これまでのシリーズでは四角い枠の中にキャラが閉じ込められたような絵面で展開されていたが、本作では大きくパワーアップして立ち絵や前述のデフォルメ絵によるカットインなどが組み合わされ、チャット自体は大変魅力的なものになっている。

シナリオ

少年期・青年期

 本作の特徴は少年期・青年期に分かれていることだ。
 エニックスドラゴンクエストⅤ、任天堂ゼルダの伝説 時のオカリナなんかが思い浮かぶ。
 しかし、本作は上記2作ほど時間の流れをゲーム的にもシナリオ的にも活かしきれておらず、「その設定なら定番だよね」ぐらいのところで止まっている。
 名作中の名作である2本と比べるなよという話もあると思うが、テイルズオブはそれらに比肩しうるタイトルになれるポテンシャルは十分あるはずだ。
 テイルズオブは、それらのタイトルより良いところもいっぱいあるが、設定・シナリオ・システムが組み合わずに、まいど「結構面白いゲーム」ぐらいに着地している歯がゆいシリーズと思っている。

チュートリアル

 少年期・青年期と分かれてるなら「なるほど少年期はチュートリアルにじっくり当てるのか」と思うだろうが、いまいちチュートリアルとして成立してない。
 チュートリアルらしいところは裏山に兄弟が出かける序盤も序盤のところで終わって、あとはエピソード作りに費やされて終わってしまう。
 少年期に港だけでも全世界回って主要システムの紹介も終わって良さそうなのだが、本作は両方とも青年期まで待つ必要がある。
 しかも、青年期になってからも世界を自由に移動できるタイミングが遅すぎる。
 全体的にシステムが解放されるタイミングが、プレイヤーの習熟度ではなく、シナリオの都合で決まっているような雰囲気があり、プレイしていて「これゲームだぞ!分かってんのか?!」と問いただしたくなる部分が多い。

 システムが決まってない時にシナリオ先行で作り始めちゃった感じだ。
 その制作方式は、個人的にはゲーム作りの順番としては最悪だと思っている。
 本作がその作り方をしたかは分からないが、そういう作りをした時の悪い部分が出ているところは、このチュートリアル部分を含め沢山ある。

セリフなど

 青年といっても主人公は18才学生な上に領主のお坊ちゃんで、なんとも浮世離れした理想論が鼻につく。
 ちょいちょい挿入される恋愛イベントと、ファンタジー世界なのになぜか昭和末期の日本の価値観。少々怪しい日本語。
 溢れる世界の独自用語と怒涛のシステム用語。御都合主義的に気持ちで解決する諸問題。
 ある意味安心の「いつものテイルズオブ」という感じだ。

 漢字+ふりがなでセリフが表示されるのがなぜか中盤も過ぎてからなので、漢字とカタカナがなかなか結びつかなくて困った。
 ふりがなに限らず、イベントシーンの演出なども尻上がりに良くなっていくのだが、大事なのはむしろ序盤。
 移植の際に序盤を大幅に強化することもできたと思う。んが、Wiiの序盤がつらくてやめたのに、PS3版やったら同様につらかった。
 とにかく本作は序盤が様々な面で拙い。
 確か任天堂の宮本茂が「最初が一番大事なので最後に作る」と言ってたと思うが、どーも本作は頭から順に作ったようだ。

 シナリオを見失わないように[あらすじ]メニューが用意されているが、本作は特に工夫なくあらすじなので、読んでも面白くない。
 なので、今何やってるんだかわからなくても、前記のL1ヒントを頼りに分からないまま突き進みがち。
 用語が分かりにくいこともあって、クリアした今もどんな話なんだか理解できてないところがある。
 用語といえば、特に本作の重要用語である大輝石(バルキネスクリアス)は長い上に頻出して声優さん大変そうだし、常にバルキネスクリアスって正確な名称が呼ばれるの不自然極まりない。

イベントシーン

 イベントシーンには以下のパターンが存在する。

  1. マップ上でフキダシ表示、音声なし
  2. マップ上でフキダシ表示、音声あり
  3. マップ上で字幕表示、音声あり
  4. ムービーで字幕表示、音声あり

 3. のパターンではボタンを押してセリフ単位でスキップできないのがつらい。
 Wii版で4:3比率の画面に対応していたこともあって、16:9でプレイしているとキャラがとにかく中央で演技していてレイアウト的に間抜けなのもつらい。
 なんでこんな中途半端なイベントシーンを作ってしまったのか。2. との使い分けもよくわからない(気分?)
 3. 方式を使っていいのは、過去の映像みたいなプレイヤーがそもそも関われない場面くらいだろう(それでもやめて欲しいが)

戦闘システム

戦闘の基本

 円形に設定された範囲で戦い、基本はターゲットの敵と自分を結んだ線の上を前後に移動でき、ボタンとスティック入力方向で様々な技を出すというあたり、戦闘の基本はテイルズ オブ ヴェスペリアを踏襲している。

 本作ではカメラ位置がターゲットとプレイヤーキャラを上下方向に結び、プレイヤーキャラを背中から見るような形が基本となる。
 ターゲットとプレイヤーキャラが左右方向に配置されサイドビュー的な戦闘となっていた従来のシリーズとは大きく異なるプレイ感となっている。
 背後視点は敵と相対している雰囲気となって臨場感が出る、左右のステップで攻撃を躱す場合の入力やアクションが分かりやすいなどのメリットがある。
 この背後視点は任天堂ゼルダの伝説の3Dシリーズが採用しているもので、対戦格闘ゲームからアクションRPGの視点に変わったとも言える。
 ただし本作の場合は多人数戦闘なのでかなりキャラが小さく、臨場感的にもアクションの見やすさ的にもかなり劣るし、距離が掴みづらいというデメリットを強く感じたし、横長画面の縦シュー的窮屈さもあった。
 カプコンモンスターハンター的になったというのが近いのかもしれないが、ちょっとやって挫折しているので、はははー。

 その他、全方位に移動できるフリーラン機能は、便利すぎない調整で良い。
 ジャンプできないのは多少残念だが、これまでさほどジャンプを活用できていなかったので、そこは分かりやすくなって良かった。
 4キャラ切り替えが十字キーの向きに対応してて便利だが、横一列のステータスの並びに合わせて左右入力で切り替えてほしかった。
 ターゲットマーカーが敵のHP残量表示も兼ねているのは見やすくていい。
 乱戦中の範囲攻撃が、敵か味方かよく分からないので、もうちょっと工夫が欲しい。

CC(チェインキャパ)

 CCという数値を消費することで大技や連続技が可能になるのはテイルズ オブ ディスティニー(PS2版)から。
 CCは戦闘中の防御や回避などの行動で回復し上限も戦闘中に増えるが、戦闘ごとにリセットされる。
 特にガードによって簡単に回復するので、とにかく突っ込んで連打となりがちだった他のテイルズオブに比べ、ガードの重要度が高いのは良い点だ。
 また何をするにもCCが必要なので、仲間に攻撃をしてもらっている間にCCを溜めて、途切れそうなところで追撃という感じに、共闘感ある戦いができるのも良かった。

 このシステム自体は良し悪しではあるのだが、マニュアルもゲーム内のヘルプも説明が分かりにくく、チェインキャパって言葉も意味不明だ。わりあい一般的に使われるAP(アクションポイント)にして欲しかった。
 私の場合は同様のシステムのテイルズ オブ ディスティニー(PS2版)プレイしていたのに、少年時代終わってもCCを理解してなくて「デバフ受けてるみたいに、剣が振れなくなるんですけど」みたいな、アホっぽい感想を持ってた。
 そんなに分からなかったのなんでだと思って序盤確認したら「顔の右下にある数字がCC」みたいな説明している画面が戦闘終了時に出るからCCの数字が表示されてなかった…ひどい。

 このCCシステムに付随して、戦闘中以外では回復も含めて術が使えないシステムとなっている。
 ただイベントシーンでシェリアが回復術を使いまくっているのでシステムとの矛盾がすごい。「やっぱり使えるんじゃないか?」と思ってマニュアル何度も読んでしまった。

A技・B技

 ボタンがアーツ技(A技)とバースト技(B技)に割り当てられていて、押すボタンによって系統の違う技を使用できる。
 マニュアルにはABの使い分けのことをスタイルシフトって書いてあって、その名前の印象からはカプコンストリートファイターZERO2の元とかの流派切り替えっぽい雰囲気だけど、実際はそんな感じもなく…ネーミングセンスが酷い!!

 A技はスティック入力方向とボタン入力回数によって技が変わる。
 これにより攻撃のバリエーションが格段に増えた、んだけど嬉しくない。もうコンボ探し楽しくない。パターン多すぎる、つらい。
 また、攻撃時は忙しくスティック入力する必要があって、いわゆる暴発が発生しがち。
 そもそもボタンと違って、方向入力わけてもアナログスティックがどっちに入っているかプレイヤーは正確に判断できない。
 さらに敵との位置関係がキッチリ上下一直線というわけでもないので、これも入力方向を分かりづらくさせている。
 結果として、自分で出した技がどの技なのか分からないレベルで理解しづらい。

 B技は自分でスティック入力方向に対応した技を登録して使うのだが、上下で同じ技が出る設定なのは解せない。
 従来のサイドビューに近いバトルだと敵味方の左右が入れ替わることがあって、左右の操作と敵に近づく遠ざかるが入れ替わるので、左右で同じ技が出るのも分かる。
 しかし、本作はで上下が入れ替わってもすぐにカメラ位置が背中ごしになって、上下と近づく遠ざかるの関係はほぼ一定だ。

 スティック入力なしにB技ボタンを押す場合のみ[おまかせ]が設定できる。
 これはとにかくボタン押せば色々な技が出て、なかなか楽しい。

 結局プレイスタイルは「近接ではA技ボタン連打してスティックぐりぐり、遠距離はおまかせB技ボタン」って感じになった。
 これが面白いかというと面白いんだけど、自分で操っている感覚は非常に弱い。
 心の中の4歳児ぐらいまでは楽しんでいる、というと伝わるだろうか。

ボタン設定できない!!

 後びっくりしたんだけど、ボタン配置の変更オプションがない。
 これ、格闘ゲーム的には致命的なミスだと思うんだけど、なんでつけなかったんだろうか。

 個人的にはWiiでは[Z]ボタン(左手人差し指)に割り当てられていたガードが、PS3では□ボタン(右手親指)に変更されていたのが納得いかない。
 Wiiのクラシックコントローラの時点で[y]ボタン(右手親指)で、同じ機種上でも位置が統一されていないのも謎なんだけど。

チャレンジバトル

 タイトル画面から[チャレンジバトル]を選ぶと、いくつか用意された固定の敵グループから好きに選んで戦える。
 本編に闘技場もあるが、より気軽に本編と雰囲気の違う敵と戦うことができて、なかなか良い。
 ちなみに、ネットワークで勝利点を競うランキングに登録もできる。

その他のシステム

全体として

 シリーズの定番であった敵を調べるアイテム(スペクタクルズ)と、周回条件購入点(グレード)を戦闘で稼ぐシステムが廃止された。
 これはもう本当に邪魔な機能だと思っていたので、任天堂スーパーマリオ オデッセイで残機が廃止された並みに納得かつ、なぜ廃止までそんなに長くかかった案件だ。

 起動時のロゴがボタンですっ飛ばせるのが、このゲームで一番の美点。
 その他、イベントシーンなど全てポーズ後△ボタンでスキップ可能。素晴らしい。

デュアライズ

 本作では料理も武器強化もアイテム生成も「デュアライズ」というシステムに一本化されている。
「あっ! これ全部合成じゃん。一本化しちゃおうぜ」という安直な背景が透けて見える。
 これ非常に良くない。二重三重に良くないどころか、十重二十重(とえはたえ)ぐらい良くない。

 まず、料理の意味がよく分からなくなっている。
 全てのデュアライズは店でしかできない…野外で料理するから冒険感あるのに…もう弁当屋で良くない?
 シリーズの定番回復アイテムとしてグミという食べ物があるのだが、生成方法が料理と同じになり、料理の方もアイテムとして保持できるようになったため、両者の差が戦闘中にキャラが使用できるのがグミ、エレスポット(後述)が生成するのが料理という違いになっていて、もうプレイヤーにはその違いの理由が「システムですからー」ぐらいしか思いつかない。

 武器・防具の強化は敵から入手できる「鉱石の欠片」を合成して行う、しばらく使うと熟練武具となり、2つの熟練武器、あるいは2つの熟練防具から宝石を抽出できる。
 抽出した宝石同士を合成して、さらに強力な宝石にでき、装備することでキャラの能力が高まる。
 なお、宝石は「鉱石の欠片」ではないので、さらに武器と合成することはできない。
 …書いてて自分でも意味分からんのですが。
 数字だけで考えたシステムで、プレイヤーの感覚をまるっと無視しているように思える。ピンとこない。

 あと「鉱石の欠片」がメニューのどこにあるか、めちゃめちゃ分かりづらい。
 メニューの[合成用素材]にあるんだけど、様々なシステムを一本化してしまったため素材数が爆発的に増え、序盤でも「鉱石の欠片」は一覧の1ページ目に出てこなくなっている。
 こんなん一生気づかないよ!!

 金策は主にデュアライズで生成した換金アイテムを売ることで行うのだが、[換金]マークがついているアイテムが、合成素材に必要になったり依頼品として出てきたりするため、迂闊に換金すると必要な時に手元にないという事態になる。
 これが「もういいか」と売ってしまった直後に起こりがちで、マジファッキン!!

 武具は上記のように合成で強化されて +1、+2と強くなっていくのだが、新規に手に入れた武具は基本性能が良くても強化前なので、強化した+5の武具より弱い。
 新規武具を強化していくべきか今持っているのを使い続けるべきかの判断が難しいというか無理。
 加えて武具は欠片以外の素材と合成することで別の武器に変化する。これもやったほうがいいんだかやめたほうがいいんだか全然判断できない。
 なので「見た目がカッコ良かったら合成する」みたいなプレイになる。

 武具や宝石は攻撃力・防御力みたいな数値以外に、[毒防御]とかの特性も持っている。
 加えて[やさしい]みたいな性質という要素も持っているが、今だに性質の意味が分からない。何これ?
 パラメータ多すぎて、価値を比較するのが人類の能力の限界を超えている。
 勢い「名前がかっこいい武具を強化し続ける」みたいなプレイになってしまう。

 武器以上に宝石の合成は何を合成したらより良いものになるのか判断しづらい。
 加えて宝石には「研磨」という加工方法が別に用意されているのだが、これもいまだにどういう意味があるのか理解してない。
 店の前を通ることがあったら、なんとなく選んだ宝石を磨きに出すという以上のプレイはしていない。

 あと割と致命的なのが、すでに合成できたアイテムが何を組み合わせて作ったのか後から確認する方法が用意されてない。多分。
 これ、暗記しておくか自分でメモしておくの? (攻略本や攻略ページを前提に作ってあるとは思いたくない)
 デュアライズ、要素多すぎて分からなすぎてつらすぎる。

依頼システム

 アイテムを提出すると見返りに別のアイテムや報奨金およびSP(スキルポイント)が手に入るシステムがある。
 これまた非常に良くない。
 まず、手元に依頼のアイテムを持っていれば即依頼達成可能なのだが、全く何にも面白くない。

 次に、同じ部屋にいる人物はおろかパーティー内のキャラからの依頼もあるが、依頼した人物に渡すのではなく、依頼が出してある場所(主に宿屋)まで届けないと依頼を達成できない。
 特にパーティ内の人物だとその依頼の品を発見したのが依頼者本人であっても、依頼システムのあるところまで行かないと完了できない。…おかしいよね。
 依頼完了コメントにパスカルが「まどろっこしいけど、システムだからしょうがないかー」みたいなこと書いてるんだが…
 そもそも、マップ上のキャラに渡した方が圧倒的に達成感は高いと思うのだが、この依頼システムの場合、掲示板的な文字ベースの依頼と完了コメントで終了である。
 パーティー内の人物からの依頼であっても、誰の依頼か気づかないことすらある。
 これで依頼者の立場とかドラマを想像して楽しむのって、ちょっと遊びとして高度すぎないか?

 そして依頼内容はいちいち各地の宿に行かなくてもアイテムからマップを見れば調べられる。
 達成可能な依頼があったとして、結局その宿までいって依頼品を渡す必要がある。
 この「依頼内容確認 → 移動 → 依頼品提出」のルーティン(そうルーティンワークだ!)楽しい?
 パーティー合流前にヒューバートが依頼出しているのを達成して、「誰かわかりませんが助かりました」ってコメントをもらった時に「はっはっは、それは君のお兄ちゃんだよー」ってちょっと楽しくなったのが唯一というぐらい。

称号システム

 他のテイルズオブシリーズで割と死にシステムだった「称号」は、スキルが付随してくることで付け替えに意味がでた。
 しかしその数が1キャラ当たり100を優に超えていて、1スキルあたり5レベルあってレベルごとに能力が強化される。
 こうなると通常のレベルの意味が希薄になるし、とにかく戦闘すると何か能力が強化されるため、じわーっといつの間にか強くなっており、RPGの醍醐味である苦労した相手をレベルアップでコテンパンにできるようになった、という感覚が非常に得にくくなっている。
 また、次々に能力が変化するのでキャラの能力がいつまでたっても把握できない。

 それに大量に称号があるのを付け替えるのが面倒。
 これは作っている側も把握していて、ある程度のレベルに到達したらオートで付け替えるシステムがある。
 ただこれ、ダメなシステム作ってそれを解消するためにさらにシステムを追加するという、ダメサイクルに陥っている。
 まず最初のシステムがダメじゃないようにしなさいよっ!!
 称号の数はせいぜい20個ぐらいでいいと思う。

 例えば「盗む」をとういうスキルがあるのだが、それがどの称号で付与されるのか確認するのに100*6以上ある称号とそのスキルを全部確認するのか?しないよね普通。
 もちろん面倒くさがりの私は「盗む」がどういう仕組みのスキルかは分かっていない。
 結局、大量に用意してあるスキル能力は、いつの間にかオートとか偶然で実行されているが、なぜそれが行われているかよくわからないものになっている。

エレスポット

 本作の特徴的なシステムがエレスポットである。
 これが何か説明するのは難しいというか面倒くさい。
 システム過剰な本作を象徴するようなシステムがエレスポットである。
 これまでもダメダメ言ってきて何だが、エレスポットは本作の癌ともいうべき致命的なダメシステムだ。

 エネルギーを補充しておくと、自動で素材・アイテムを生成したり、戦闘中・後に材料なしに料理を出現させたり、その他自動的に様々な効果を発揮するアイテムだ。
 何の役割を持っているかと言われると、ほとんど万能ポットとでも言うしかないシステム過剰の権化である。

  1. 料理による回復操作の面倒さの解消
  2. 素材収集の面倒さの解消
  3. その他システム調整の不満点の解消

 という感じの、システムの歪みを解消するために導入したシステムではある。

 まず、従来のシリーズでの料理のメリットは次のような感じだ。

  1. 各地の特産物として店に食材を配置して雰囲気を出す
  2. キャラが食事を作ることで個性を出す
  3. それを一緒に食べることで味方意識と結束感が高まる
  4. 戦闘で減ったHPの回復を、戦闘終了時に即座に行う

 一度デュアライズした料理はエレスポットで生成できる。この際エナジーから生成するので食材は不要だ。
 ここでもキャラは調理しない。はい、シェリアの料理好き設定死んだ! 不憫!
 HPの自動回復をアイテムで行う場合、オートキャラが戦闘中にグミなど使うとかなくエレスポットに設定した料理に一本化されたため、仲間よりエレスポットの存在感が強い。
 なお、前述のように移動中は回復術が使えないため、食事が持ち物として保存できて回復手段のひとつになっているようなのだが、それもうグミでよくね?って感じだし、実際それで十分だ。

 素材についても「素材収集が面倒くさい」なら「自動で収集しよう」という方向での修正がエレスポットだ。
 これも全くおかしな話で「収集要素は無くそう」か「収集を楽しくしよう」が結論に来ないといけないだろう。

 その他システムの不満点の解消については言わずもがな。
 ほとんどゲームバランス調整作業をプレイヤーに丸投げしているようなもの。
 不満点の多いシステムに別のシステム追加して調整するの、すぐ殴る彼氏が「ごめんな絆創膏貼ってあげるよ」「やさしい!」みたいなもん。

 やさしかねぇよ!!

追加シナリオ 未来への系譜編

 追加シナリオの未来への系譜編は、テイルズ オブ グレイセスfのfの意味する要素だ。

 散々文句をつけているが腐ってもテイルズオブ、基本的には面白い本作。
 そして本編の演出などが尻上がりに良くなっていたところで、16:9前提に作られているイベントシーン。
 幼馴染の王子というRPG的にフラグが立ったキャラのプレイアブルへの復帰。
 本編終了しているので、バランス崩壊もなんのそのと追加されたアイテムや派手なシステム。
 公式の二次創作みたいな、愛あるキャラのじゃれあい。キャラの新モデル。周辺キャラの深掘りなど。
 まぁーこれ面白い。

まとめ

 様々な部分を共通化、記号化してシステマティックにゲームが作られているため、鼻につくほどの作業感がでてしまっている。
 どうも本作は「与えられた定型作業するのが楽しいもの」とゲームを定義しているみたいだが、自分の定義とほぼ真逆でつらい。

 パーティーキャラがやるべき役割を、デュアライズやエレスポットがやってしまっているので、ゲームシステムによるキャラ()てが全然できてない。
 特にRPGに顕著だが、ゲームはごっこ遊びの側面があるのに、その楽しさを放棄しているのだから何をか言わんや。
 これに限らずシナリオ(キャラ・世界設定などを含む)とゲーム部分の乖離が散見される。
 シナリオとゲームを別々に作って最後にくっつけたとまでは思わないが、大枠はそんな雰囲気だ。

 これらの点から「ゲームメカニクス的な視点を導入して数字的な帳尻を合わせたが、それをプレイするのが人間だとは思ってなかった」みたいな雰囲気を感じる。システムが肌感覚的にピンとこない。
 ディスティニーチームの悪いところ詰め合わせ、みたいな仕上がりになっている。

 システム過剰がテイルズオブのお家芸みたいなところあるが、本作はいくつか伝統のシステムを削除したにも関わらず、歴代でも過剰さで図抜けているところがある。
 システムの量が多いのも問題だが、システム自体が分かりづらいのに加えて解説や演出も分かりづらい。
 チュートリアルも弱く、全体に文字で説明してるから事足れりとしている感じだ。
 さらに用語から役割を想像するのも難しい。例えば「エレスライズ」はどんなシステムだろうか。
 私の場合、システムの多くを理解できない、あるいは理解するのが億劫になったままクリアに至った。
 結局、戦闘時に顔の周りに出るリング状の青いゲージの意味が分からなかった。なんだあれ?

 とある学者が手紙の文末に「今日は時間がなかったために、このように長い手紙になってしまったことをお許しください」と謝罪を入れたという有名な話がある。
 本作が過剰な量のシステムを持ったままリリースされたのは、まさに時間がなかったからではないか。
 ちなみに、その手紙を書いた学者の名前はパスカルである。

参考

 そこで結論。

ゲームとシナリオ、機能と体験が結びついてない。頭でっかちな作品。