テイルズ オブ リバース

対応機種・周辺機器
PS2 (PSP)
ジャンル
君が生まれ変わるRPG
著作・制作
(c)ナムコ/いのまたむつみ 2004

基本情報

 テイルズオブシリーズはアニメ風味のJRPG(日本産のドラクエタイプのRPG)のど真ん中という感じのビジュアル。
 しかし多くのJRPGと異なり、戦闘システムが対戦格闘的なアクションゲームとなっているのが大きな特徴だ。
 そのシリーズ(本編)は第6作であり、前作はテイルズ オブ シンフォニアとなる。

 主題歌はEvery Little Thinggood night
 キャラクタデザインにいのまたむつみ。
 アニメーションにプロダクションI.G
 そして「本当の」豪華声優陣。
 という感じの「いつも通りに豪華」なラインナップとなっている。
 逆にいうと、シリーズのマンネリ化も進んでいて、シナリオ・システム的に色々と新たな試みがなされている。

グラフィック

 グラフィックはフィールドは3D表示で、町とダンジョンは2Dという構成。
 シンフォニアが3Dを豊富に使った作品だったこともあってか、かなり3Dグラフィックが熟れている。
 2Dの背景画は奥行きがあり、キャラが奥に行くと小さくなるし、アングルも場面によって異なる。
 2Dでコレをやるのは、かなり大変だったと思うが、見やすさと美しさを両立していて、操作感も良い。

 世界の半分ぐらいが獣人という設定なので、ケモナー大歓喜!
 残念ながらパーティー内は、半分が獣人というわけではなく、ほぼ黒豹のおじさんだけなのは残念。

 ちなみにパッケージは主人公一人のしかも顔がほとんどを占める地味なものだ。
 おそらく、キャラクタがわーっと沢山描かれたパッケージが多かったので、店で目立たせようという作戦かと思う。
 とはいえ、裏に描かれているヒロインは表に描きましょうよ!! 折角のいのまたむつみデザインの美少女なのに!!

シナリオ

 人種(民族)問題を人間(ヒューマ)と獣人(ガジュマ)で戯画化して見せ、さらに宗教・男女問題や混血や肉体の入れ替わりや作られた生命などを絡め、人とは何かに迫る、なかなか骨太で考えさせるシナリオだ。
 他のシリーズでは、わりと愛とか正義で押し切ってしまっているが、本作は主人公の年齢が比較的高く(と言っても18だが)、真摯に問題に向き合っていて好感が持てる。
 ただテーマがテーマなだけに、魔王を倒して解決とは絶対ならないものなので、爽快感に欠けるところがある。

 操作キャラが6人に制限され、それぞれに濃い物語が展開される。個人的には、大抵一度は戦って絆を深める展開が熱い!!
 パーティー内での様々理由で対立しつつも旅を続け、それが解消され仲間を受け入れていくのが一番のカタルシス点となる。
 ただ多くは、「許す」というより「そもそも悪くなかった」という解決なので、踏み込みが浅いと見るか、ゲームで踏み込むところでもないと見るべきか。

 終盤はラスボスへ向けてのつじつま合わせの側面が強く、蛇足感と唐突感が拭えない。
 明確な敵も解決方法もない問題に対して、最終ボス倒してエンディングというRPGの文法が、ぶっちぎりにかみ合ってないのが残念な感じだ。

 メインヒロインは戦闘に参加せずNPCとしてくっつくのが伝統的ヒロインらしくてよろしい。
 ちょっと、いのまたむつみ画の小説ドラゴンクエストの姫を思い出した。
 ただ、自分で操作しないキャラは印象が弱くなりがち。
 それを補完しようとしてと思うが、主人公がヒロインの事を気にかけまくる。
 これを「うぜー」とも思うが「一途で可愛いな」とも思う。それがなければキャラが弱いし。
 それはそれとして、時折入るヒロイン操作シーン(戦闘なし)の比率をもう少し高くして印象を強めても良かったかも。

 ロボとか空中戦艦とか軌道エレベータとか出てきてなんだかよく分からない他のシリーズに比べ、蒸気機関がギリギリある程度の一貫性のある世界が作られているのも安心できる。

戦闘システム

 全体的に、理解できればだが、満遍なくシステムを使わせるような作りとなっていて、豊かなゲームプレイを促している。
 という感じで、戦闘システム自体は良くできているわけだが、シリーズ定番の闘技場がないのが不思議(PSP版にはある)

3ラインバトル

 戦闘シーンは餓狼伝説ガーディアンヒーローズのようなラインバトルが採用されている。
 3ラインを活かすように範囲魔法が採用されており、位置取りが重要となり面白い。
 R2ボタンでジャンプという作りだが、使い勝手が悪いので、思い切って廃止しちゃっても良かったかもしれない。
 ラインシステムはサイドビューを重ねるシステムだけに、画面がごちゃつく傾向があるが、本作は比較的見やすい方だろう。

 別ラインから敵がやってきて挟まれたり、当てようとしたら別ラインにひょいひょい逃げられたり、当たり判定の小さい(特に地面の)敵が多かったり、単純に攻撃力や体力が高いから強いというより、アクションゲーム的に敵が強い。
 また、状態異常攻撃が多く、体力がいつの間にか減りがち。
 ボタン連打してるだけではなく、システムを使いこなさないと、簡単にザコで全滅できる。
 楽しいと思うより先に意地が悪いように感じなくもないが、アクションゲーム的には非常に面白い。

HP回復(と各種ゲージ)

 直接のHP回復術がなくて、術・技を使う事で少量ずつHPが回復するというシステム。
 戦闘中はアイテム回復が重要となっていて、戦闘終了後の料理の重要度も高い。
 術・技はセットした4つそれぞれにゲージがついており、同じ術・技ばかり使う戦い方になりにくくなっている。

 積極的行動でラッシュゲージが上がり、攻撃力が増し防御力・回復力が落ちるというシステムがある。
 ひたすら攻撃し続けるプレイを避け、ヒットアンドアウェイ的な戦いを促す仕組みと言える。
 武器・防具・フォルスキューブ、そして隊列・コンピュータへの戦術指定の回復への影響が地味に効いていて重要だ。
 が…システムが理解できてたらの話で、そもそも猪突猛進プレイをするタイプの人は、このシステムに気付かないのでは…。

 考える事が多くなり過ぎで、ちょっと過剰なシステムという印象を持った。
 攻撃やガードをしないと回復、位の方が分かりやすかったよーな。
 ラッシュゲージに付随したシステムで、チャージ後の攻撃でガードを崩せるという、戦闘の硬着を防ぐ工夫はなかなか良いのだが。

 特技→奥義と技を繋げることができて大ダメージが狙える、のだが奥義の出し方が分かりづらい。
 ラッシュゲージによる制限は、つけない方が良かったのではなかろうか。
 回復しようとするとラッシュゲージを落とす事になるが、その状態では奥義は出せず、安全ではあるが地味な展開になる。
 シナリオでの爽快感が弱いので、戦闘は気分よすぎる位の調整で良いように思われる。
 ただし、残りの敵が1体などの条件で発動する秘奥儀は、ツープラトン攻撃で演出もダメージやヒット数も派手で、確実に戦闘が終了して爽快だ。

ゲームシステム

 料理のカスタマイズは3種の派生料理から選ぶだけで料理担当を選ぶ必要もないとか、称号を選択することによる効果はなく取れば効果が加算されるなど、従来のシステムを簡易化して整理しようとしているのが伺える。
 伺えるのだが、他にフォルスキューブという成長のカスタマイズや、宝石の合成などもあり、やはりシステムの詰め込み過ぎであるのは否めない。
 また、全体にルール分かりづらい。ヘルプは充実しているのだが、やはりその前に分かりやすいシステムを作るべきだろう。

 フィールドには、発見物や食材チケットの箱のような、ちょっと嬉しい仕掛けがあるのでウロウロする甲斐があり、退屈しない。
 二度と手に入らない宝は少なめで、クリア後のダンジョンの雑巾がけのやりがいがあるし、その際クリア前とはちょっと違う反応があったりして飽きさせない工夫もある。

 ダンジョン攻略だけではなくシティアドベンチャーが充実しており、表示キャラを切り替えることで住民の反応が変わるなど、単純にしらみつぶしに話を聞くだけでない、凝った作りになっている。
 これは人種差別テーマとの親和性が高く、システムと融合したナイスシナリオといえるだろう。

 また、ダンジョンの仕掛けが、ちょっと手強い傾向がある。本作では□ボタンでその場に応じたキャラの能力が使われるのだが、仕掛けがある場所でしか使えないので、まず能力を使って仕掛けを解くことに気付かず数分ウロウロすることも良くあった。

チャット

 チャットは、バストアップ(いわゆる立ち絵)と音声で表現されるパーティキャラのおしゃべりを覗く、という感じの機能で、SELECTボタンで再生できる。
 これが非常に多く内容も面白いのだが、音声が終了しないと次のセリフが読めないので、なかなかつらい。
 本作ではイベントシーンでも積極的に立ち絵を使っていて、その際は音声の途中でもボタンで次のセリフに送れるため、チャットの際に飛ばせないことの理不尽感が強い。
 ボタンを押さないと発生しないので見たい時に見れるとも言えるが、シナリオが進行すれば見れなくなるので、結局一気に見て食傷するというパターンが繰り返されてしまう。

武器継承

 武具の能力を成長させ継承していくシステムがあり、武具に名前もつけられるので、思い入れを持って「育てる」ことができる。
 また、継承はまっさらな武具に能力を移すので、育てたもの同士を合成はできない。間違えて育てちゃうと時間が無駄になる。
 宝箱から手に入れた武具は、継承を行わないと手持ちの武具より弱いことが多いのに、継承は町でしかできない。つまり手に入れて即使えない。
 他も頻繁にパラメータを割り振るタイミングが発生して楽しいより面倒が先にたつ、などなど、今ひとつ収まりの良くないシステムだ。

 さらに、育てたものを簡単に売ったり捨てたりできるのは、システム的にチグハグな感じだし、継承元の武具は消えてしまうので、店に売ってない武具をコレクションする楽しみもない。
 例えばグランディアⅡのスキルブックように、成長部分と武具は別のシステムにすべきだったろう。
 成長する装備が、武器と防具の二種類だけのシンプルさは良いのに、継承システムがストレス発生器になっていると言っても過言ではないだろう。

その他

 クリアした後にピンとこなかったら、ラスト直前の世界を回って欲しい、かなりゲームの印象(特に漆黒の翼のw)が良くなると思う。
 これ、クリア後の世界を回れるようにしておいた方が、見逃しを避けられて良かったろうに。
 クリア後の世界なら、サブイベントも落ち着いてクリアできるし。

 そこで結論。

相変わらずのシステム過剰だが、一貫性、テーマ性の高いシナリオと3ライン戦闘は傑作