アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝
|
基本情報
製作はPS1でクラッシュバンディクー、PS2でジャック×ダクスターをリリースし、すでに名声を得ていた設立の老舗ノーティードッグ。
PS3発売から、およそ一年後に投入してきたのが本作で、ベスト版も発売されている。
またPS4でシリーズ3作品がセットになったリマスターバージョンも発売されている。
本レビューはPS3版のものだ。
それまでのノーティードッグの子供向けのカートゥーン的イメージから、ハリウッド映画的な冒険活劇へと大胆な方向転換をはかっている。
キャッチコピーは「PLAYする映画」…あー知ってる、勘違いして目指しちゃって駄作ができあがるやつだ。
そう思いますよね。
驚いてひっくり返っちゃうんですけど、これ本当に「PLAYする映画」です。しかも良い意味で!!!
大枠としては映画レイダース、そしてそれを下敷きにゲーム化された感じのトゥームレイダーを経て、その延長にあるゲームである。
ただ、本作は両者の影響というより両者のネタ元である1930年代のパルプマガジンやアメコミ、そして土曜の映画の冒険活劇を、現代風にアレンジしてゲーム化したものと捉えた方が良さそうだ。
レイダースが1980年代に映画でそうしたように。
映像
非常にリアルに感じるビジュアルで、一瞬実写か?と発売当時は思ったぐらいだ。
しかしよくよく見るとモデルもテクスチャも適宜デフォルメが施されており、プレイしているときの印象としてはアメコミっぽさを感じる。
背景のぶら下がれる箇所や掴める箇所はだいたいわかりやすいが、ツタなどの掴めるひも状のものと、爆発するドラム缶がわかりづらかった。
拾えるアイテムは光っているので分かるが、木漏れ日や水たまりの光を誤認して無駄な探索をしてしまうことも多かった。
ゲームのグラフィックとしては、まだリアルに寄りすぎな調整かと思う。
映画的な演出というとムービーをやたら挟むということが思いつくが、本作の場合は通常のプレイ中に音声で会話が行われ、適宜QTEによる演出も挿入されるため、操作不可能時間が少ない。
逆に、要所で使われるカットシーンではアクションはもちろんカメラ操作も一切できないのだが、それゆえにしっかりした構図が使われ、より一層映画的雰囲気を高めている。
また映像はプレイ中のクオリティと揃っており断絶を感じない。
本作は映画的雰囲気を損ねないように、画面には基本的にHPや残弾数、ミニマップなどのインジケータは表示されない。
戦闘シーンでのみ残弾数やターゲットが表示され、体力は画面がモノトーンに変化することで表される。
それにオートセーブが採用され、武器の選択も十字キーで即時可能、アイテムの使用も最低限となっており、メニューを表示する必要が基本的にない。
メニュー表示はゲームへの没入感を大きく削ぐので、この判断はすこぶる正しい。
美しい画像を作る際にモノトーンに近いかつ暗めの色彩を採用することは定番だ。
本作発売の頃の特にFPS・TPSジャンルはモノトーンっぽい映像を使う風潮が支配していたが、本作はそこにカウンターをかけてピーカンの緑のジャングルを主な舞台としている。
メタルギアソリッド3がにPS2で挑戦したジャングルに、ノーティードッグがPS3で再挑戦したとも言える。
メタルギアソリッド3も非常に良くできていたが、流石にPS2とPS3の差は大きく、木漏れ日や水の表現には目をみはる。ふとゲームプレイと現実がリンクしたような錯覚すら生じさせる。
物語
まず、先祖のが残した宝を探しに行くというコッテコテのプロットだ。
そしてナチスが絡んでいたり海賊が敵になったり、これは爆発するなというところでは爆発し、崩れるなこれというところでは足場が確実に崩れるコテコテの上にコテコテ。
主人公は2枚目半、仲間の口のうまいおじさんと生意気なヒロイン。そして冷酷な敵役。
冒険小説をAIに学習させて自動生成したのかな? というぐらいのお約束の塊だが「面白いを外さない」姿勢は見事だ。
主人公のネイトが実にB級っぽいというか、動きにスタイリッシュさがない。
それに、ひーひー、はぁはぁ言いながらアクションする。
あまりに主人公が超人でリアリティを感じなくなるところを、動きや声の演技で普通の人感を出して相殺していて、気のいい友人のような親近感が醸し出されている。
サリーおじさんの声優は千葉繁。もう千葉繁が喋るだけで、胡散臭さと軽さが抜群だ。
本作の会話の軽妙さは、ほぼこのキャラクターが担っている。
ヒロインのエレナの造形はちょっと現代的で、自身の目的もあり、そのための知識もあり、騒ぐだけでなく冷静に対処もできる。
同行しているときは一緒に戦ってくれるのだが、敵に照準を合わせるのに2秒ぐらいもたもたする僕より頼りになる(笑)
ほぼ完璧なQTE
QTEという「動画の途中にボタンが表示されて、それを押すとアクション成功となる」システムがある。
これは動画を見ているときに緊張感を持たせ、最低限プレイヤーの操作を担保し、特別に派手なアクションを画面に組み入れるという素晴らしい仕組みで僕は大好きだ。
が、導入に成功しているゲームは少ない。
本作は数少ないQTEの成功例と言える、というかノーティードッグが上手い。みんな真似ろ!!
- 失敗時は即ゲームオーバー。直前のオートセーブポイントからのリスタート。
- カットシーンの途中に入ることがなく、通常のゲームプレイ時に発生する。
- 基本はボタン一回のみで、シビアなタイミングやリズムを要求しない。
- ボタンで発生するアクションが通常のプレイとリンクしている。
最後が多少わかりにくいので補足する。
本作は□ボタンがパンチ操作で、QTEでも□を押すとパンチが繰り出される。
そして×がジャンプでQTEでも×を押すとジャンプをする。他のボタンも同様。
つまり、もし画面にボタンが表示されてなくても、今までのプレイと同じ感覚でボタンを押すと大抵正解なのだ。
これにより強い一体感、没入感が生まれる。素晴らしい!!
マップの作り
主要な舞台となる孤島の全体のマップは切れ目なく繋がっていて、遠くに前に通った箇所が見えたりして空間の広がりを感じる。
しかし、本作はこまめにエリアが区切られ、様々な方法で進んだら戻れない一方通行の作りをしているので、歩き回ってその繋がりを体感することはできない。
後ろで扉が閉まるのを筆頭に、落ちて登れなくなる、掴まる場所や足場が崩れて戻れなくなるなど、手を替え品を替え一方通行を作り出している。
このように直線的な展開は、プレイヤーが干渉できることが魅力であるゲームと相反するが、迷いづらくテンポも良いため、スーパーマリオブラザーズの半強制スクロールみたいなノリで、とにかくどんどん進んでいけて気分がいい。
行き先が固定されているのでデータの先読みが可能になる。
ゲームのプレイを開始すると読み込みのための「ナウローディング」画面は一切出ないし、ほとんどの場合暗転すらない。
メニューとともにローディング画面は没入感を削ぐ要素なので、かなり力を入れて排除に取り組んだのだろう。
ただ、PS3初期にギリギリのチューニングをしたためか、手持ちの後期型PS3ではちょいちょいフリーズする箇所があった。
システムソフトウェアのアップデートや、特定の場所に行かないなどで、どうにかフリーズを回避してクリアできた。
ゲームでは「このくらい乗り越えろよ」という段差を乗り越えられないパターンが多いが、本作はほぼ確実に乗り越えられる。
また透明の壁もほぼ存在しないので、ほいほい飛び降りて死ねる。
オートセーブと非常に相性が良く、僕のネイト君は滑落死しまくりだ。
自殺する権利の行使により、ルートが固定されている割に窮屈さを感じずに済んだ。
難易度
オープニングから銃撃戦で結構難しい。
これは冒頭でゲームの難易度を決めさせてくれるので、クリアした今思うと親切な作りだった。
僕はもちろん、即「初級者」モードに変更した。
その後序盤は典型的な遺跡探索が展開されるが中盤以降は銃撃戦が多く、普通のTPSのような雰囲気になってくる。
冒険物としては移動先に必ず敵がいてドンパチで死体の山を作るのは辟易だし、銃撃戦が難しくて進めないのもやな感じだし、戦闘ばかりで単調にも感じた。
また、武器はハンドガン・ライフル・グレネードの3系統を1種類ずつしか持てない割に種類が多い。
その辺に捨てておいて、あとで拾って切り替える方式なので、たくさんあって嬉しいというより煩わしい。
弾倉をフルにした武器を置いた場所を忘れたりすると、イライラも絶好調だ。
戦闘になると音楽がかかり、フェードアウトすることで周囲に敵がいなくなったのがわかるので、常に緊張する必要がないのは良い。
初級でプレイしたせいか、L2を押すと怪しい場所にカメラが向くヒントが発生するタイミングが早い。
これは急かされているように感じて、あまり良くなかった。
ジャイロを利用してバランスをとったり、敵を振り払ったり、手榴弾の軌道を決めたりする。
これがどうもゲームと馴染んでおらず、開発終盤でソニーから「ジャイロはPS3の目玉機能なんで入れてくださいよ」とねじ込まれたような感じ。
ジャイロを使うシーンでは画面にコントローラが表示されて操作を促すのだが、画面に極力インジケータを表示しないコンセプトにそぐわない。
QTEの他にも時々ミニゲーム的に特殊操作のシーンが挿入され、単調さを和らげる。
これらは無駄に難易度が高いこともなく、演出の一環として良い効果を上げている。
ただ水上バイクについては、爽快にスピード出して水上を駆け抜けたかった。
なのに敵が撃ってくるし爆発するドラム缶が流れてくるので、ゆっくり進みながら確実に障害を排除して進むのが無難。
しかも操作感も悪く、爽快より不快が先にたって残念だった。
まとめ
クリアまで7時間ほどでさくっと終わり、映画的なゲームとしては割と理想的な長さかと思う。
周回要素として各種アチーブメントや、財宝収集などが用意されているが、さほど魅力的でない。
とはいえクラフトシステムのような、映画を体験するコンセプトと外れるような余計なシステムがなく、すっきりまとまっているのは本作の美点と言えるだろう。
PS3初期のものとしては驚異的な映像とスムースなローディングを実現しており、モーションキャプチャーによる動きもリアル。
QTEやムービーが本編の邪魔になるゲームも多い中、短くテンポよく挿入されてしっかり盛り上げる見事な構成で、やめどきが見つからない。
なるほど、映画的なゲームってこうすればよかったのか、と感心しきりだ。
製作期間の短さが影響したのか、比較的容易に安定した面白さが作れる戦闘に傾きすぎて、戦闘以外のシーンの量も作り込みも弱いのが問題点。
戦闘やりたいなら、プレイヤーはFPSやTPSのタイトルやればいいのだ。
参考
そこで結論。
2007年当時の「映画的ゲーム」の到達点!