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ファミリーコンピュータで発売されたオリジナルを、プレイステーション用にリメイクしたもの。
気になるのが、パッケージは鳥山さんが描いたのかどうかってこと。どーも違う人のような気がするんだけど。
それはともかく、ロト3部作という壮大な物語が終わり、次のステップへと移る事になった本作。
そのため、馬車、AI戦闘、章立て、キャラクタ付けなど、新しい試みが多くなされた。それは吉と出たのか。
インタフェースについては、良くも悪くも、ほぼドラゴンクエストⅦと同様。
気がつく変更点は、スクロールバーが無くなりページが続いている事を示す矢印がついた事位か。ただこの矢印は、ウインドウデザイン全体からすると浮き過ぎに感じる。矢印じゃなくメッセージ送りに出る三角、と同じものにして欲しかった所だ。
グラフィックもまたドラクエⅦ。ⅣのリメイクではあるがドラクエⅦツクールというツールを使って、Ⅳを再現したかのような印象。
元のⅦのグラフィックレベルが極めて高いので、無難な策ではあるものの、ファミコン版のⅣの背景が立体になった、という驚きや懐かしさは少ない。
その割り切りがあったからこそ、Ⅶ発売から1年程というペースで発売可能になった、とも言える。
Ⅶのようなヒドい出来のムービーが無いのは、本当にホッとした。イベントシーンは本編と同じリアルタイムポリゴンで展開される。
システムはオリジナルのⅣを踏襲しつつも、ポリゴンで作られた背景やアニメーションするモンスター、便利ボタンによる持ち上げ、さらにはモンスター図鑑や移民の町など、極めて「ドラゴンクエストⅦ」に近いものとなっている。
リメイクに伴って、かなり大きなシナリオの追加変更が行われている。特にパーティーの仲間に「はなす」事ができるⅦのシステムが採用されているため、別のゲームと言っていい位に変わっている。ただ、基本ラインは同じだし、キャラクタの印象を変えると言うより強化する方向に働いているので、特にドラゴンクエストの中でもキャラクタ性の強い本作では、仲間と「はなす」システムの採用は成功と言えそうだ。
ただ、5章となると、主人公+7人のパーティーとなるので、全員の台詞を読もうと思うと、4人パーティーで、編成を変えて2回はなす必要がある。姉妹(2人)の掛け合いと、王女一行(3人)の掛け合いを同時に楽しむことができない訳で、痛し痒し。
加えて主人公は喋らないので、「はなす」での会話を楽しもうと思ったら、主人公不在のパーティーになりがち。
また、あらたに一章追加されているのも大きな変更で、この変更により完全に別のゲームになったと断じても構わないかもしれない。
ゲームバランスとしては、これまでのリメイク版がかなり楽な方向に調整されてきたのに比べると、比較的オリジナルに近い感触を得た。
ただし、特に高性能アイテムの手に入りやすさ、ふくろの高性能化、他諸々により、それなりに簡単になっている。
オリジナル版のストーリーは、オムニバス形式の5章構成を取っている。これは、物語的必要性からよりも、複雑化したドラクエのシステムを、自然に理解してもらうための「チュートリアル(練習)」の要素が強い。
3章では「しょうにん」という職業がプレイヤーキャラとなり、成長よりも金儲けに力点のあるという実験的な章だ。これはオムニバス形式の面白さのひとつと言える。
4章までは、章あたり2〜4時間程で終了するテンポの良いものだが、練習であるが故に「ちょうどシステムを理解して、面白くなってきた頃に章が終わる」という、なんとも腹立たしい事態も発生する。
ただ、ゲーム本番である5章では、次々と今までプレイしたキャラクタが集まってくるので、映画七人の侍や、小説里見八犬伝を彷彿とさせる喜びのある展開で、感動ひとしお。
オムニバス形式の長所短所を、はっきり感じさせる作品でもある。
また、5章の主人公以外は本作では正確には主人公ではないため、バンバン喋る。頑に主人公が喋らないドラクエシリーズとしては、違和感を覚える。
その後のシリーズでも、章に類似した区切りを入れているものの、主人公は常に同じになっていて、プレイヤーキャラが喋ることはない。
さらに、ドラクエシリーズとしては珍しく、敵キャラクタの物語を描いている。物語に深みが出るものの、「悪いヤツを倒そう」というゲームを進める根本的な推進力を落とす「もろはのつるぎ」でもある。
これもまた、その後のシリーズとしては影を潜める、本作の独自性となっている特徴だ。
このようにドラクエっぽさに欠ける部分の多い本作であるが、それ故の面白さもあり、多くのプレイヤーにとって、思い出深い作品たり得ているのではないかと思う。
個人的には、オムニバス形式がお気に入りだ。
本作は、4章までがこれまでのシステムのおさらいや練習の面が強く、主な新システムは5章で登場する。
まず目につくのが、馬車システム。
主人公+導かれし7人の場合、4人が戦闘を行い4人が馬車で待機する。戦闘中の仲間と馬車の仲間は、戦闘中も自由に入れ替え可能なので、「命をふたつもっている」状態であり、かなり全滅しにくくなっている。
8人いるなら8人全員で戦えよ!、と思わんでもないが、そうなると戦闘の1ターンが時間がかかり過ぎて退屈になってしまうとか、色々問題もある。
馬車の入れない場所もあるが、そのとき主人公を含めない組み合わせも可能であり、主人公の立場が微妙になっている。
ファミコンでは、スプライト(キャラクタの表示システム)の制約上、4人までしか横に並んで表示できなかったため作られた苦肉の策でもある馬車システム。しかし、今のゲーム機なら表示できるからといって、8人がぞろぞろと歩きまわるようになったら、その変さ加減はいかばかりか。
端的に言って、パーティー8人は多すぎる!
5章以降では、主人公以外はAI戦闘システムによって解決されるのも、本作の大きな話題となった特徴で、このシステムは以後のシリーズで採用され続けている。
AI戦闘は、プレイヤーのコマンド入力によらず、コンピュータが行動を決定するシステムだが、プレイヤーの負担軽減と言う意味よりも、プレイヤーは主人公そのものであるから、他のキャラクタまで主人公が操作するのはおかしい、という意味で取り入れられたものだろう。
そのためファミコンのオリジナル版では、プレイヤーは主人公以外を直接操作する事はできなかった。しかしこれが不評で、以後のシリーズは本作を含め、主人公と同様のコマンド入力も選択できるようになった。
ロールプレイングの本質からすると退化ではあるが、プレイヤーを納得させる程のAIシステムが本作でも作れているかというと、オリジナルのⅣよりは賢いものの、キャラクタの人格を感じさせる程というわけでもない。またロールプレイングとしてより、戦闘ゲームとして遊びたい場合には隔靴掻痒感が強いので、無難な変更かと思う。
ただ、オリジナルと同様にクリフトがザキを連発してくれるのには、制作者がプレイヤーに印象づけられた「クリフト=ザキ連発」の図式(キャラクタ性)を尊重してくれたんだと、勝手に解釈して感動。
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そこで結論。
「大胆な試みが、良くも悪くも出た傑作」
2006-01-31