テイルズ オブ レジェンディア
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基本情報
テイルズオブシリーズはアニメ風味のJRPG(日本産のドラクエタイプのRPG)のど真ん中という感じのビジュアル。
しかし多くのJRPGと異なり、戦闘システムが対戦格闘的なアクションゲームとなっているのが大きな特徴だ。
そのシリーズ(本編)は第7作であり、前作はテイルズ オブ リバースとなる。
主題歌はDo As InfinityTAO。
キャラクタデザインに中澤一登。アニメーションにプロダクションI.G(とスタジオジブリ)に豪華声優陣。
音楽担当も変わっておりオーケストラによる演奏とボーカルを多く取り入れた豪華なものとなっている。
という感じの「いつもと若干違うが豪華」なラインナップとなっている。
そして製作は本作のために作られたプロジェクト メルフェスが行っていて、シリーズの再出発的な意味合いのあるタイトルだ。
というか、本作で3本平行製作体制になったようで、本作の発売前に次回作の発表があるという珍事が発生している。ナムコさん、それは駄目でしょ。
グラフィック
神秘の世界エルハザードやFF:U 〜ファイナルファンタジー:アンリミテッド〜など数々のアニメのキャラデザイン、ゲーム関連ではD&Dリプレイミスタラ黙示録のイラストを担当した中澤一登が担当しているのが、ビジュアル的に一番のインパクト。
テイルズオブシリーズは、藤島康介、いのまたむつみ、の二人のローテーションで作られていたので、絵が良い悪いではなく「今までと違う」という点で注目を浴びた感がある。
毎回イメージを変えることができるようにナンバリングを避けていたのだから、むしろ今までキャラデザイン二人だけなのが変だったと思うが。
絵の善し悪しでいえば、前述の通り日本のトップクラス(というかキル・ビルのアニメパート担当など世界トップも過言ではない)アニメーターであり、本作でもその実力は遺憾なく発揮されている。
個人的には本編では原画の尖った部分が減ってマイルドな絵になっているのと、数々のアニメの名OPを手がけた氏がアニメパート(作画)監督まではやってないみたいなのが残念。アニメシーンの出来自体は良いので、べつにいいといえばいいんですけど。
グラフィックは戦闘シーンも含めほとんどが3Dで、テイルズ オブ シンフォニアに近い構成。
ただし、イベントシーンで3Dキャラのアップを使うことはなく、キャラの顔が大きく出る部分は2Dという使い分けをしている。
ポリゴンを選択したら全部押し通し通して欲しいとは思うが、PS2でアニメ調のキャラデザインを使う場合のベストな選択かと思う。
特にイベントシーンでキャラクタを大きく描いたものが使われるところは印象的で良かった。
3Dだと2Dに比べ、キャラのモーションを増やしやすいのと、例えば人間同士ならモーションを使い回せることがメリットだ。
本作では十分に活かされていて、キャラが小さくても表情豊かだ。
使い回しのモーションに若干手抜き感もあるものの、「こいつら仲いいよな」って雰囲気ともなっている。
背景3DはPS2の最高峰のひとつと言って良い。オブジェクトの作りも実に細かく、特に拠点の町はフィールド上で全景が把握できるほどの細かさだ。
ただそのせいか、フィールド上で戦闘したあとの復帰に2秒程度ラグがある。このラグが消せるならグラフィックを犠牲にして欲しかったところ。
またグラフィックに凝るとやりがちな、ライトに拘るあまり画面が暗くて良く見えなくなる症状を幾つかのダンジョンで発生させており、これも残念。
舞台がひとつの島に限定されていることもあり、フィールドの絵が変化に乏しいのもマイナス点。
フィールドやプレイヤーキャラに比べると、敵キャラクタがチープなのは残念。
シナリオ
本作のジャンル名である「絆が伝説を紡ぎだすRPG」が示しているように、家族・仲間といった絆をテーマとした作り。
結果的に世界を救っているわりに、行動原理がみみっちい、とも言えるが、ストーリーそのものよりキャラの魅力で見せる傾向の強いシリーズとしては良い選択だ。
特に後半はキャラクタ一人一人に焦点を当てたシナリオが展開され、個人の問題であるだけに物語に入りやすく、「研ぎすまされたベタな展開」で泣かせに来る。
人が死なないわけではないが、人を殺して感動させよう、という安直さがなかったのが高評価。
イベント時のキャラの掛け合いも冗長な面はあるが良い。
あらすじが日記形式でキャラクタの持ち回りで書かれているのも、キャラ表現として優れている。テイルズオブシリーズは全部あらすじは日記形式にして欲しい位だ。
パーティー内の個々人の問題が中心となっていることもあり、敵方の描写が薄いのは難点。
操作キャラ8人を丁寧に描いたシナリオ自体が長い他、後述のようにダンジョンや戦闘も無駄に長い。寄り道なしでも60時間はかかるだろう。
後半のダンジョンが前半の使い回しなので、ボリュームはあっても薄味。
一応、新たに登場するスキャナで調べることや、アイテム合成の登場で、新たに挑戦する意味を作ってはいるが、一応止まり。
同じダンジョンを使い回すこと自体は微妙な違いが楽しめる良い効果もあるが、全部それではメリハリがない。
前半のダンジョン減らして、後半にいくつか新ダンジョン付けた方がバランスが取れたろう。
せめてダンジョン内に、前半で使われない仕掛けやルートがもっとあれば。
前半を完成させたあとに、それを使って後半を作ったという雰囲気、というか本当にそれに近い工程で作られているように思う。
あと、遺跡船という移動する島を舞台にしているので、後半は大陸編だろうと予想してたら、ずっと島の中というのも拍子抜けだ。
加えて町がほぼひとつだけなのも世界が狭い印象を強めている。町がひとつなこと自体は良いこともあるが、そのぶんゲーム進行による変化が多くないとダレる。
ちなみに船が舞台なので東西南北ではなく船の進行方向を基準に「○時の方向」と表現しているのがファンタジーっぽくて良かった。
あと、マップのレーダー表示の部分に歩いた軌跡が表示されるのも分かりやすくて良い。
乗り物はそれ自身が巨大な船であるマップ、湖で使われる船、それと列車が存在するが、プレイヤーが操れるものがなく、マップ全体の把握がしづらかった。
フィールド上もスキャンできて欲しかったが、移動がダクトと言われるワープポイント+徒歩のみなので、結果的にはフィールドをスキャンできなくて良かった。
キャラが勝手に動いてプレイヤー不在感が強いテイルズオブシリーズだが、本作は主人公が知っている情報がなかなかプレイヤーに知らされないことが多く、特にアニメの視聴者的な感覚が強い。
さらに情報収集のフェイズがほぼなく、イベントで行き先が決定→それに従ってダンジョンをクリア(→町に戻る)→イベントで…の繰り返し、一本道で迷わなそうだが、自分で集めた情報じゃないので、特に行き先がばらける後半はどこに行くべきかむしろ迷う。
こういう一本道さがシナリオの良さに繋がっている部分はあるが、だったらアニメでやれよ、と思わんでもない。
存在を忘れてしまうほどスキット(移動中に発生する会話)が少ないのも、シナリオでプレイが制御されてることを意識させる。
戦闘システム
戦闘シーンは原点回帰して、サイドビューのシンプルなものになった。
悪くいうと、攻撃ボタンをパタパタ押してりゃOK…地味。
アクションゲームが好きでない人でも楽しめるかというと、AIに全部任せるとあっさり全滅するという…どの客層を狙ってんだ? って出来。
そこそこ音声パターンはあって楽しいが、「敵に近づくな!」とか言って突っ込んでいったり、敵の近くで暢気に詠唱して「守ってよ!」とか、流石にムッとする。
戦闘シーンも3Dグラフィックになっているためモーションが滑らかになっている、というよりむしろ「もっさり」している感じ。
空中の敵に攻撃を当てづらいとか、高速で移動して逃げ回る敵がいるとか、無駄に時間が過ぎることも多い。
さらに終盤の敵は強いというより、ただ体力があるだけになっていて、色変えのものばかりということもあり、より単調。
加えて、ゲージをためて発動させるクライマックスコンボが1種類のみで、キャラの組み合わせによる変化もなし…地味。
↓入力(オート設定では敵につっこむ)で回り込むパッシングスルーや、連打で技が暴発しがちなのも良くない。
キャラクタの能力(特に回復系)に偏りが大きく、パーティーの組み合わせが事実上限定されるのも良くない。
主人公が格闘タイプで投げが使えること自体は楽しいが、敵が倒れているときしか投げられず、吹っ飛ばす・倒れるのを待つ・投げる、とテンポ悪い。
対戦格闘ゲームじゃないんだから、通常技から直接投げに繋げたっていいのに。
そもそも格闘系はリーチが短くストレスがたまりがちなのに、これでは投げでストレス解消ともならない。
また敵が倒れているときは、投げ以外の攻撃が効かず、魔法は無駄撃ちになるし、前衛の肉弾戦タイプのキャラは敵が起き上がるのを待つしかなく、これまたテンポ悪い。
ナムコの格闘ゲームのノウハウが使われたと謳っているが、どこに投入されているんだかよく分からない。
起きて防御してる相手を投げたり、投げにさらに投げのコンボを繋げられたり、寝てる相手を追撃したりとか、ナムコの格闘ゲームはできた気がしますが…。
もうひとつ我流奥義という、技を組み合わせて作れる奥義がある。
組み合わせるのが面倒くさい上に、効果のある敵が限定されて、さらに「AIは使わない!」…なんでこんなの付けたか疑問。
AIが使わないと言えば、主人公の特徴の筈の投げもAIは使わない…ひどい!!
パーティーへの指示は一度メニューを開いて行うので、その度に流れが途切れる。
戦闘後の結果がウィンドウ開かないと見れないのも、テンポ悪い。
クライマックスモードを発動させるとグレードが上がるので、最後の1体を倒す前にとりあえず発動させるのだが、やりたくてやるわけでもないので極めて作業っぽい。
そうやってためたグレードが、クリアしてみると大量に余る…グレードなくして2周目の要素は任意に選べる方が良かった。
というか、そもそもこんな長いゲームを2周プレイ前提で作るのおかしくないか?
とにかく、ほとんどあらゆる面でテンポ悪く作業感の高い戦闘となっており、シンプルにするのはいいが奥深さもなくしちゃった残念な仕上がり。
ただ、戦闘がアクションになっているRPGという点だけで考えると、そもそもの地力が高いので、それなりに楽しく遊べる。
ゲームシステム
メッセージ速度やマップの回転方向や戦闘のキー設定など、普通付いてるだろってところが付いてない。
単純なサイドビューなのに戦闘の複数人プレイができないとか、それに付随してか戦闘中のカメラ設定もない。
システムを簡略化するのは良いが、こういった「ここは削っちゃダメでしょ!」ってところまで削っているところが多い。
アンケートを取ってほとんどの人が使っていないシステムはバサッと切ったような気がする、でも使う人にとってはゲームの善し悪しを左右するのよー!!
ダンジョンはカオティックゾーンという敵が発生しやすい場所が可視化されている。
その奥には大抵アイテムがあるが本道ではない、という分かりやすさがあり、なかなか良い。
とはいえ、全体的にダンジョンが無駄に長い上に途中保存ができない。これはひどい!
システム全体として作りやすい(悪く言うと安直な)方式になっていて、なんともシステム的トキメキ度が低いゲームとなっている。
個人的にはセリフがフキダシ式でない普通のウィンドウ式で表示されるのが残念。調べると反応するオブジェクトが少ないのも寂しい。どちらも実装に手間がかかるのは分かるが。
魔法を覚えるのに特定の敵を倒してスカルプチャというアイテムを一定数ためないといけないのだが、モンスター図鑑がない。どういうこと?
倒すべき魔物がどこにいるか思い出せない! しょうがないのでマップを雑巾がけ! 個人的にはこの部分で、かなり無駄に時間を費やしてしまった。
まとめ
テイルズオブシリーズはこれまで、システムを調整して深みを出すのではなく、システムを追加して複雑さにより深みを出す手法を取っている。
そのゲームから単純にシステムを削ってしまい、シンプルというより浅いシステムとなってしまった。
シリーズの定番である料理やスキット、称号、グレードなどは外せず、結果として薄味なシステムが沢山ある状態となり残念。
テイルズオブシリーズはシステム過剰傾向が常にあったので、本作でのシステム軽量化チャレンジは(全体としては失敗とは思うが)大きく評価したい。
おそらく本作は「対費用効果を最大にしよう」を目標に作られたんじゃないかと思う。
また、工期に乱れが出ないよう、各部署が他の部分に影響を与えないよう別に開発できるようにしているようだ。
前後半の作りもそうだが、特にパズルブースという倉庫番型パズルがダンジョンの途中に挿入されるのが顕著で、完全に別ゲームがいきなり入っていて違和感バリバリのツギハギっぷりである。
もちろん、対費用効果を最大にし製作期限を守るのは、企業としては当たり前だし良いことだが、ゲーム全体としては統一感に欠け、調整不足の印象が強い。
とはいえ実際の製作には3年以上かかっているらしく、これまた憶測だが当初の想定製作期間はかなり超過してそうだ。
人によってテイルズっぽさを感じる部分は異なるだろうが、ほとんど全方面でテイルズっぽさが減るか無くなるかしているというのは、思い切りが良すぎたか。
テイルズオブを新規チームで作ったことにより、削っていいところ悪いところがかなりはっきりしたのはシリーズ的には良かったのかもしれない。
そこで結論。
奥深さに欠けるシステムだが理解はしやすく、絆をテーマとしたシナリオ後半は傑作