名詞としてのマップチップ

アクションゲームで使われるマップチップを整理する

刃こぼれするだろとか考えるな!
とりあえずアクションボタンを押すのは正義

共通言語があるのです

 文章に文法があるようにアクションゲームにも文法がある。
 と、以前「アクションゲームコマンド」で語った。そこでは主に入力の文法、つまり動詞について分類した。
 アドベンチャーゲームで使われる動詞の分類は「CUIコマンド動詞分類」で行った、さらに今回は「CUIコマンド名詞分類」で行った名詞について、アクションゲームの観点から分類する。

 2Dアクションゲームの場合の背景は、一般的にマップチップと呼ばれる四角い小単位をタイル状に並べて構成されている。
 そのマップの上に、プレイヤーキャラ、敵、アイテムなどが配置されてゲーム画面ができあがる。
 今回はアクションゲームを構成する名詞の中から、特にマップチップを分類する。

マップチップの性質

マップチップがない

 Steve Russel lスペースウォー!の画面の背景は星が描かれているものの、ルール的には単に空間であり、背景の持つ意味は希薄でマップチップは存在せず、あったのは自機、敵、ミサイル、太陽(重力発生源)といった個別の部品であった。
 画面のどの部分であっても性質が同じで、いくつかの部品との関連でゲームが成立するというのが、ごく初期のゲームの作りだ。アタリ ポン等もここに含まれる。

通行不可

 ナムコ パックマンなどのドットイート系ゲームは、ほぼ通行可・不可のマップチップのみで構成されている。
 また、2DのRPGのマップはほぼこれだけで成立する。迷路のための名詞といえるだろう。

 サイドビューの場合、通行を妨害するものという意味だけでなく「乗れるもの」を意味する。
 ジャンプアクションの場合「上方への移動手段」という意味も持っている。ちなみにジャンプアクションでない場合は、ハシゴなどを使って上へ移動する。
 逆に言えば、この通行不可部分がなければ到達できない、(ジャンプで届かない)通行不可部分ができる。

 また、ジャンプ上昇中は通過するが下降中は通過せず、[レバー下 + ジャンプボタン]を入力すると下へ通過できる、というものもある。
 このパターンのマップチップは、サイドビューであってもかなり自在に動けるため、画面を無駄なく使うことができ、プレイヤーも窮屈さを感じずにすむ。
 ただし、迷路的雰囲気は減るので、大抵は完全通行不可のマップチップが併用される。

破壊可能

 ごく初期のゲームであるアタリ ブレイクアウト(ブロックくずし)で導入されたので、ゲームといえば破壊可能な壁が存在する、というのがもう大前提となっている。
 むしろ「壁といったら破壊してなんぼ」ぐらいの勢いである。
 任天堂 スーパーマリオブラザーズのブロックは、下から突き上げて壊すこともあって、ブレイクアウトの印象をそのまま持った壁である。多分、あれを「ブロック」と呼ぶのもブロックくずしからの影響と思われる。

 何らかのアクションが発生するまでは通行不可だが、アクション発生後は通行可となるマップチップが「破壊可能」だと定義すれば、扉も「破壊可能」のバリエーションと考えていいだろう。
 任天堂 ゼルダの伝説の「爆弾で壊せるヒビの入った壁」は、逆に爆弾が万能鍵として使われている扉とも取れる。

動かせる

 ゲームは、「撃つ」「叩く」「掘る」などの破壊的動詞を獲得していくが、シンキングラビット 倉庫番が「押す」を発明したのは革命だった。
 セガ ペンゴのようなすべる氷ブロック()、デービーソフト フラッピーなどサイドビューで押せるものなどのバリエーションも出てきた。

※おそらくペンゴ倉庫番の変形というより、「その場に落ちている弾を撃つ」という、シューティングゲーム的発想から生まれたものと思われる。

 パズルゲームのナムコ バベルの塔で動詞「持ち上げる(降ろす)」が導入され、マップチップに対する動詞のバリエーションは増える。

 このへんまでくるとパズルの面白さだけで商品にするには難易度が上がりすぎ、「動かせる」は他のゲームの中で使われるスパイス的な仕組みとなる。
 例えば、任天堂 ゼルダの伝説などで謎解きに使われて定番化する。
 このようなスパイス的な使い方の場合、「押す」だけでなく「引く」こともできるようにすることで、パズルの難易度を落とす工夫がされることが多い。

 動かせるもののバリエーションには、自機が直接動かすもの以外に、別の場所にあるスイッチで動くものもある。
 他にも、自機のアクションのひとつとして作り出せるブロック、水に浮いて水位に応じて上下するブロックなどもある。
 そのような仕掛けは、プログラム的にはマップチップとは別の仕組みで作られていることが多いと思われるが、ここではマップチップの一種として扱う。

作用点

 弾が反射する、ロープを引っ掛けることができるなど、自機の特定の能力を作用させるマップチップ。
 それぞれのゲームデザインに密接に関係し、一般化していないもの。
「破壊可能」や「動かせる」も、様々なゲームで使われ一般化しているが、作用点の一種といえる。

能力変更

 スプリング、砲台など、そのマップチップのある場所だけ、自機の能力が変わるものはバリエーションが多い。
 ナムコ マッピーの扉は、前述の「破壊可能マップチップ」であると同時に「超音波(弾)を打ち出す能力が得られるマップチップ」である。

 ベルトコンベアやエレベータ、浮遊床のように「移動する」のも、このバリエーションのひとつといえる。乗り物もその一種と考えても良いがマップチップとは考えない。
 1箇所に設置されるのではなく、氷の上(すべる)、水(泳げる)など、広い面に設定されるものも多い。
 タイトー バブルボブルの場合、マップに気流の動きが設定されており、自機ではなくバブルがその設定に沿って移動する。

機能起動

 セーブポイントやショップなどは、自機の能力を変えるのではなく、別の機能を呼び出すマップチップだ。
 これらのマップチップは、パソコンのファイルなど、別のモードに遷移するアイコンに近い感覚をもつ。
 任天堂 スーパーマリオブラザーズのゴールの旗も、この一種といえる。

ダメージを受ける

 多くのアクションゲームでは敵に触れるとダメージを受けるが、マップチップにも炎やトゲのように触れるとダメージを受けるものがある。
 広義にはこれも能力変更の一種といえるが、かなり普遍的な存在なので、別枠で捉えることにする。

 大抵はダメージと同時に特殊な軌道で無敵のジャンプが発生する。このダメージ時のジャンプを利用しないと到達できない場所が設定されているゲームも少なくない。
 この変則ジャンプを含めると、ダメージを与えるマップチップは、確実に能力変更の一種である。

 画面外まで落ちるとミスとなる「奈落」はマップチップではないが、画面下の見えない部分に即死のマップチップがある、と捉える事もできる。

 他にダメージを受けるマップチップとなると、システム的にはマップではなく、破壊できない敵扱いかと思う。
 迫る壁やスタンプのような踏みつぶし系の仕掛けは、触ってもダメージとはならないが挟まれるとダメージとなる。
 電流が流れる場所や、炎が噴き出す場所、振り子になっている刃物なども同様のバリエーションで、時間によってダメージを受ける場合と受けない場合が存在する。

宝箱

 攻撃を当てるなどすると開いてアイテムが手に入るもの。アイテムやエネミーの変形かマップチップかといえば、どちらとも言いがたいものだ。
 スーパーマリオブラザーズのブロックは、宝箱の一種といえるので、少なくともマップチップの一種ではある。

 宝箱は奥深いし、マップチップに限った話でもないので、別に語りたい。

スイッチ

 攻撃を当てるなどで起動し、扉が開くなどの効果が起きるものを総称して、スイッチと呼ぶ。
 スイッチは非常に奥が深いので、別に語りたい。セガ スイッチについても、そのうち別に語りたい。

総括

アクションゲームコマンド」では、ゲームの自機はポインタの一種であると語った。
 マップチップはアイコンにあたるかというと、あたる場合もある、というのが正解だ。
 ゲームの自機は、周囲の環境から移動の制約などのアクションを受けることが、パソコンなどのポインタとは大きく異なる。
 この制約を発生させる環境のひとつがマップチップだ。

 制約というと不自由な感じしかしないが、「リアクション」と言い換えると印象が異なるかとおもう。
 もっと言い換えると「感触」と言ってもいいだろう。

 マップチップという記号的な絵が、感触と視覚を分かりやすくリンクしている。
 つまり絵に感触を与え、インタラクティブであることを担保する仕組みが、マップチップというわけだ。
 マップ作り(レベルデザイン)とは「名詞を配置して、プレイを制限し、感触を作る」こと、というわけだ。

 そこで結論。

マップチップとは「見る絵」を「触れる絵」にするもの