ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城
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基本情報
ついに無双のオメガフォースがドラクエとコラボ。
ドラクエとローグを組み合わせたトルネコの大冒険 不思議のダンジョンのような化学反応を見せるのか。
タイトルに「無双」が入っていないことからも、「新しいタイプのドラクエ」として、売っていこうという意思が見える。
穿った見方をすると、ドラクエのプレイヤーには無双がブランドとしてはマイナスイメージと判断された、というようにも思えるが、このゲーム、方向性がかなり無双と異なる。
完全一人用、味方は軍隊でない、パーティーを組んで戦う、勢力ごとにストーリーが別れておらずメインシナリオは一本で難易度選択もない。
とまあ基本フォーマットから無双ではなくドラクエになっているので、素直に無双のシステムを流用したアクションRPGと捉えるべきだろう。
というか、スクエニもコエテクも無双とは言ってない。
歴代ドラクエの人気キャラを迎えた3DアクションRPGというのは、キャッチーすぎるほどにキャッチーだ。
PS3とPS4のマルチプラットフォームで発売され、後に廉価版のアルティメット ヒッツとなり、Ⅰ・ⅡをカップリングしたバージョンがSwitchで発売されている。
なおWindows(Steam)版も日本語音声の選択OKで文字は英語というバージョンが出ている。
本レビューはPS3版をプレイしてのもの。
戦闘システム
基本は無双シリーズでお馴染みの通常攻撃+強(チャージ)攻撃で、コンボのバリエーションは少なめ。
ただし、R2+ボタンでMPを消費して発動する「とくぎ・じゅもん」がキャラの個性を強くしている。
右の□・△・×・○ボタンに割り当てられているので、各キャラ4種類使い分けられ、一部はタメによる強化も可能だ。
またMP制なので、MPに余裕があれば連発できるのも派手で良い。
さらに、ジャンプと回避の使い勝手が良いもの快適だ。
本作ではかんたん操作モードが用意されており、□・△ボタンを適当に押すだけで呪文や回避を含めた操作をいい感じに実行してくれる。
これは結構快適だし、ガッツリ操作モードだと使い勝手の良い技ばかり使いがちなので、たまにかんたん操作にすると予想外に効き目がある技などの発見があったりするのもいい。
無双シリーズでは、敵の頭上に体力がゲージで表示されるが、本作ではボス級の敵以外には表示されず、攻撃した際のダメージ数がヒットマークとともに表示される。
これがすごくドラクエっぽい。
ただ、ゲージがないので倒したのと倒れたのの区別がつきにくいのが難点。倒した時は天使の輪がつくとか煙がポンと出るとか、わかりやすい演出が欲しかった。
パーティーシステム
パーティーは4人までを編成でき、L1ボタンで瞬時に操作キャラを入れ替えできる。
操作していないキャラは自動で近くについてきて戦ってくれる。
これは思いの外、ドラクエをリアルタイムのゲームにした感じで楽しめる。
エニックスドラクエⅣで導入されたAIバトルと、スクウェア聖剣伝説2のキャラ切り替えアクションの融合進化系と言えるかもしれない。
そういう意味で、両社が合併したスクウェアエニックスらしいゲームでもある(作ったのはオメガフォースだけど)
この自動操作のキャラは、比較的適切に強化呪文などを使ってくれるので、キャラ切り替えせずに戦っても、それなりに遊べる。
味方が自動で敵を全部やっつけてしまわない程度に消極的に調整されているのも、アクションゲームとしてはいい感じだ。
トレジャーガーディアンヒーローズのアンデッドヒーローなど、敵倒しすぎてプレイヤーがやることなくなっちゃってた。
ただ、クリフトが効かないザキ系を連発するのは、少々うざい。キャラ付け的には必殺技でザラキ連発するので十分かと思う。
できれば「ガンガンいこうぜ」などのさくせんを選択させて欲しかったが、本作のシステムに作戦はない。
種類は多いが使い勝手の悪い回復
回復はホイミストーンというものが導入されている。
戦闘前に拠点で寄付を払ってシスターに回復のじゅもんをチャージしてもらい、戦闘中に使うと一定量のHPを回復してくれる。
そこそこ高い金を払っている上に全員に効果があるので、一人がピンチの時に使うのに躊躇してしまう。
たぶん、ホイミストーンはかなり開発後半になって、バランス調整として導入されたんだろう。チグハグ感が強い。
クリフトが僧侶のくせに回復呪文使えないのは酷い。即死のザキ系じゃなく回復のホイミ系をセットして欲しかった。
テリーのミラクルソードを使えば斬ると同時に回復ができるが、回復するのはテリー自身のみ。
結果、全キャラ中で味方全員を回復できるのがゼシカのハッスルダンスだけという偏り。
また、普段は画面に出ていない仲間のホイミスライムのホミロンが、操作キャラが瀕死の時に回復呪文を唱える…ことがある。
ホミロンを成長させて、回復頻度とか回復じゅもんのレベルとかを強化していくシステムがあったら、すごく良かったのに…。
演出も控えめで、クリアしててもホミロンが回復してくれていることに気づかない人だっていてもおかしくない。
ちなみに、装備アイテムで回復確率を増やせたりするが、これでは仲間感が薄い。
ツボに入ってたり敵が落とす「やくそう」は、拾った瞬間に回復する上に操作キャラしか回復しないので、今ひとつ使いやすくない。
プレイヤーがピンチの仲間の近くに行ったらホミロンが自動で回復用の「じゅもん」や「どうぐ」を使う、みたいなシステムがよかったんではなかろうか。
ステージ開始時に数枚の世界樹の葉を持っており、メンバーが死んだ時は近くで×ボタンで使って復活できる。
世界樹の葉の価値が低いな! とは思うが、一発死の無双と異なり優しいゲームバランスになっているのはドラクエらしく、評価できる。
そんなわけで滅多に全滅しないが、しても経験値とお金は減らないという、ドラクエとしても優しいぐらいのシステムだ。
テンション
MPの他にテンションゲージがあり、○ボタン押しっぱなしや戦うなどで上昇する。
ゲージが満タンの時に○ボタンを押すとハイテンション状態となり、しばらく無敵な上にMP消費なしでとくぎ・じゅもん使い放題になる。
この時さらに○ボタンを押すか時間を使いきると、超強力なひっさつ技が放たれる。
この演出が長すぎる。もう一回○ボタンを押すとかでキャンセルさせてほしい。ゼルダ無双だとキャンセルできてたと思うんだけど、なぜ退化?
ドラゴンクエストⅧで導入されたテンションが見事なほどのダメシステムだったのに比べ、本作ではきちんと機能しているのは嬉しい。
あと、強敵と戦う前にボタンでテンション上げができるの、真・三國無双シリーズではなくなったシチュエーションなので、一層嬉しい。
モンスターコイン
敵を倒すとコインを落とすことがある。これを拾うとモンスターが仲間になり、十字キーで選択して任意のタイミングで出撃させられる。
モンスターには一発技を出して消える消費型と、出現地点の周囲で体力がなくなるまで戦う設置型がいる。
設置型ののモンスターはパーティーメンバーと同様に、そこそこいい感じに戦ってくれるので頼もしい。
ただしドラクエⅤのように永続的なパーティーメンバーとなるわけではなく、ステージ内ですらプレイヤーに付いてきてはくれないのは寂しい。
逆に固定して設置されることにより、特に防衛型のステージではタワーディフェンスのようなプレイ感になっているのは面白い。
なお、ゲーム中ではコインであることにほぼ意味がないが、多分実体商品として展開することを視野に入れての選択かと思われる。
実際に限定版の特典や、コンビニくじの景品などにコインが作られている。
リアルタイム性を重視の操作
ほとんどの操作はメニューを開かず、リアルタイムに進行する中で行える。
個人的には不要なコインモンスターの整理や回復も、一時停止してゆっくりやりたかったが、ゲームの方向性をはっきりさせる意味でリアルタイム操作は悪くない選択とも言える。
オンラインでの共闘・対戦を視野に入れてたけど実現できなかった、というのが実際のところかと思う。
ただ、メニュー表示した時点でミニマップを消す必要はなかった。
3Dの問題点の克服
後方視点の3Dゲームは、プレイヤーキャラクタが邪魔になって奥が見えないという問題がある。
これを回避するには、セイブ開発ダイナマイトデュークのようにプレイヤーキャラクタを透過する方法や、少年など背の低い主人公にして見通しを良くするなどといった方法がある。
本作では同じオメガフォースが作成した討鬼伝や Epic Games/Chair EntertainmentInfinity Bladeのように、敵を大きくするという方法が取られている。
本作の敵は大きな敵ばかりではないが、「強い敵=でかい敵」とういう法則は一貫していて、小さくて見辛い敵に知らないうちに倒されるということはほぼ無い。
ただ、カメラが近すぎて「敵の腹までしか見えない」事が多いのは困ったもの。
マップ
背景は登れる箇所に絨毯を敷いて通り道感を作ってたり、ジャンプでギリ登れる感じの箇所なんかが意外なショートカットになってたり、ゲームのための背景として中々こなれてる。
後半に出てくるマーニャが扇で飛べるので、それを使った意外なショートカット探しも楽しい。
同時に、作りがしっかりしていて実際に建物として機能しそうな雰囲気もある。
ただ、あちこちに梯子があるのに登れないのは残念。
序盤のマップは一本道の単純なものから、徐々に複雑になっていくことでゲームに慣れさせていて、チュートリアルもストーリーの中で展開され最小限で終わって煩わしくない。
シナリオによって、同じマップの扉を閉じたりして領域を狭めているだけではあるが、マップの種類が豊富にあるように感じられて良い。
扉などで明示されていないのに通れない箇所には赤い線が引いてあり進めない。それ以上進もうとすると「そちらへは 行けない」とメッセージが出る。
絵的には不自然極まりないが、なんの目安もメッセージもなく突然透明な壁に阻まれて進めなくなるより、ずっと操作としての納得感は高い。
マップ上の大仕掛けは、敵味方ともにある銃座と、スイッチで切り替える扉ぐらいで、かなり控え目な感じだ。
ステージごとの目的は基本的にクリア条件一つだけで、プレイ中にああしろこうしろとミッションが追加されることは少ない。
これは自由に動けてストレスがないが、マップのシンプルさと相まって単調にも感じた。
ステージ毎の勝利条件にもっとバリエーションを持たせることで解消できると思う。
ミニマップを拡大すると画面半分を占めるぐらいに大きく表示されるのは見やすいし、意外に邪魔じゃない。
思えばトルネコの大冒険なんか、画面全体に半透明マップが乗っかってたが、邪魔ではなかった。
ただマップの枠は邪魔に感じた。半透明のシートみたいなの表示しとくだけでよかったんじゃないかと思う。
あと拡大時は、拾ったアイテムの情報が出なくなるの地味に困る。
そんなに広くないマップが多いので、基本的には問題ないが、走る以外の馬などの移動法がないのでテンポが削がれる。
野外ならルーラによってポイント移動が可能でほぼ問題ないが、屋内はルーラで頭を打つ本編リスペクト仕様なので、旅の扉的なワープポイントを適切に配置して欲しかった。
戦い以外の部分は?
しょっぱいストーリー
基本ラインはドラクエの本編と同じく「魔王が現れて大変なので倒しました」という作りだ。
問題はそこにたどり着くまでのストーリーに工夫なく単純なものが続くこと。
ドラクエ本編の道中はかなり意外性のあるシナリオとなっていたので、グレードダウン感がすごい。
また台詞ひとつひとつも実に素人くさいというか、説明台詞か二次創作的キャラ萌え台詞になっている。後者は嬉しい部分もあるし、ある程度必要でもある。
しかし台詞で全部説明しちゃうのは流石に「なんのための絵と音だよ!」と言いたくなるし「こっちに想像の余地を残してくれよ」とも思う。
オープニングの祭りで射的をやってて「ドラクエ世界に銃?」と変な気持ちになった。
その後出てくる銃は水鉄砲か殺虫剤の噴霧器みたいな形してる…まさかオープニングの銃って射的専用に発明されたの?。
魔物と人が仲良く暮らす世界から一転、魔物が人を襲ってくる展開なのだが、主人公たちが躊躇なく魔物を倒して血も涙もない。
さっきまで仲間だったじゃないの?!
全編に、そういう安直な世界、物語作りがなされているので、どーにも引っかかる。
主役の長広舌など、ジョーク的なものも終始滑っていた。
本編のシナリオを担当する堀井雄二が書かないとしても、ドラクエ大好きだったり、ノベライズを担当したりした有名作家とか、両手・両足で足りないぐらいいるでしょ! ちょっとそこに資金投入しなさいよ!!
失敗としか思えない飛行拠点
かなり序盤で飛行拠点が手に入るため ワールドマップが「絵が描いてあるメニュー」でしかなくなって、トキメキがない。
そして「拠点→(防衛対象を守りつつ)敵を全滅させる→拠点」のルーチンが続き、メリハリに欠ける。
HDDインストール機能がないこともあってローディング時間がそこそこあった挙句に「目新しさのない場所」である拠点に戻るのでゲームが進行している感じが弱くなっている。
そもそもの話、ルーラという全世界をワープできる呪文があるドラクエに飛行拠点があるのは座りが悪い。
少なくとも中盤ぐらいまで徒歩や馬車での移動を続けて、道中で敵を倒していくようにした方が「冒険してる!」って感じがしてよかったと思うし、勝利条件もバリエーション出せたろうに。
加えて本編以外のクエストも、指定マップの敵の全滅・指定素材の収集・指定した敵の一定数撃破がほとんどで、やっつけ感が強い。
街を解放した後は、普通に街を歩いて宿屋に泊まりたいし、住民と会話したり探索もしたいのに、拠点に戻ってしまうのでできない。
探索要素自体は戦闘中に宝箱を探したりとかあるが、ゼルダ無双でも書いたように、戦闘と探索が同時にあるのは煩わしさが勝る。
一応、拠点の中に限り乗組員と話したりできるが乗組員は固定なので新鮮味に欠ける。
普通に暮らしている住民というわけでなく、主人公と密接な関わりがあるのに金とるのかよ! とも思う。
どこかの街で助けた人が乗り込むとか、セガエターナルアルカディアのように、船に資金を投入すると機能強化できるとかあれば間がもったろうに。
拠点の宝箱や樽を調べてアイテムが探せ、カラがあることで多少の探索感は出るものの、位置が固定なのと戦闘から帰って来ると復活する方式で作業感が強い。
ついでに宝箱を開けるボタンが戦闘中(×)と拠点(○)と異なっているのもやな感じだ。
×がジャンプ○が必殺技に割り当てられるので、暴発した場合にジャンプなら問題が少ないという理由だと思うが、なら拠点も×にしといてくれよ。
ツボを押さえた登場キャラクタ(一部のぞく)
バトルアクションであることからドラクエⅣから格闘姫アリーナが登場し、そのお供としてクリフトが登場するところまでは鉄板かと思う。
ドラクエⅤから花嫁候補として印象深いビアンカ(with ゲレゲレ)とフローラ。
ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドというスピンオフがあるテリーはドラクエⅥから順当な人選。
またドラクエⅧからエロかわいくて人気のゼシカ、意外な感じのヤンガスのおっさんもドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョンというスピンオフゲームが出ていることから知名度もあり、間違いない人選だ。
ドラクエⅠ・Ⅱ・Ⅲ、およびⅨ・Ⅹはメンバーがプレイヤーの分身である勇者かプレイヤーが作成したキャラなので、独立したキャラとして喋ったりすると「誰だお前」という雰囲気になり、ゲストとして呼びづらい(Ⅱはギリ行けそうな気もするが)
で、残ったドラクエⅦから呼ぶとなると、マリベル一択でしょ! なんで呼ばないの!! バカなの?!
事もあろうにドラクエⅣから踊り子マーニャが参戦した上に、ダウンロードでもう一人ピサロまで…いや、人気キャラだけど! Ⅳに偏りすぎじゃありません?
Ⅶってめっちゃ売れたんですよ! マリベル! マリベル!! 肌の露出が少なくてコンプライアンス的にも正しいマリベル!!!
はぁはぁ…
ゲストは以上の全8+1人と、歴代キャラ集合というには少ないので、マリベルに限らず誰もが出てほしいキャラがあると思う。
基本的に「まさかこいつが出るとは…」みたいなキャラがいないのは残念。
ルドマンさんとかミーティア姫(馬)をプレイアブルキャラにしちゃうぐらいのサプライズが欲しかった。
ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔のキャラとか参戦させればよかったかもしれない。
出てたら出てたで「それ入れるぐらいなら、こっち入れろよ」と文句言ってたに違いないが(笑)
これらの人気キャラが加入する際のドラマが「こんにちは、じゃあ一緒に行きましょう」ぐらいのノリのムービーだけで片付けられ、極めて弱い。
各シリーズごとのシナリオはDLCとして用意されているが、本編にうまく組み込めなかったものか。
DLCは全て無料なので「全部出すまでは中古屋に売らないでね」って意味だけのように思える。
この追加シナリオは色々と本編より凝ってるし歴代の魔王たちも出現するので、アップデート必須。
ちなみにSwitch版は、最初から入っている。
主人公の男女二人は新規デザインだが「本当に鳥山明がデザインしたの?」と思うくらいの、パッとしない普通のデザイン。
早期購入特典のⅢ勇者コスチュームでずっとプレイした人も多そう。
主人公の他に、本作のキャラとしておじさんの王様と、お姉さんの発明家が入ってて、この辺はゲストと被らない良いキャラづけ。
絵的にはさほどパッとしないが、王様など声が銀河万丈で必殺技が国王会心撃とか、三条陸・稲田浩司DRAGON QUEST -ダイの大冒険-のクロコダインを彷彿とさせニヤリとさせる。
こういうダイの大冒険ネタが他にもちょこちょこ入ってるのも、ドラクエファン的には嬉しい。
ただ、他のスピンオフ作品のネタは特になかったよーな。強いて言えば、空艦バトシエって名前がバトエン(ドラゴンクエスト バトルえんぴつ)に似てるぐらいか。
メッセージの使い分け
ドラクエは音声がないどころか、基本的に主人公の台詞が表示されないシステムだ。
声がつくと違和感が強いと思ったが、大抵は声なしか「そうね」みたいな一言ボイスなので邪魔にならない。
ムービーによるイベントシーンでは普通に音声で喋る。
ゼルダ無双では間違ったリスペクトで、おかしな演出になっていたが、本作はちゃんとTPOをわきまえて使い分けられている。
ミストウォーカーラストストーリーを思い出す戦闘中の音声は一体感があり、ゲーム進行を妨げないのも良い。
ゲームのヒントを喋るのも嬉しいが、出現したスライム系の感想など、割とどーでも良いことを喋ることがあるのが特に良い。
メッセージ送りは左スティックや十字キーR2ボタンなどでも送れる他、メッセージのみのイベントシーンもスタートボタンを押すとスキップできるのも行き届いた配慮だ。
しかし場面によってこれらの操作ができないこともある。多くは気づく人ほとんどいないレベルだと思うが、微妙な違和感は残る。
例えば、開始直後の会社ロゴすらスキップできるのに、錬金釜の演出がスキップできないのは地味にやる気を削ぐ。
メッセージのフォーマットはドラクエらしく、適切な漢字量・空白や改行のタイミングで書かれている。
ウィンドウも黒背景の白字に角丸の白枠なので、書かれる内容が今一つでも、しっかり雰囲気が出ている。
ずるい感じはするが、これがブランド力というもの。
ただ、メッセージウィンドウのキャラ画像とキャラ名表示はドラクエ的には必要だったか疑問だし、ウィンドウデザインのパターンも多すぎて散漫。
他のドラクエ作品でもそうだが、ウィンドウにキャラ名がつくと、メッセージの頭のカギカッコ(「)がもうドラクエっぽさを出すための記号にしかなってない。
ついでに、キャラに話しかけた際にカメラが話した相手の正面にグッと回り込むのが少々うるさい。店以外はカメラ位置そのままかユーザが任意に動かせるのでいいのに。
声については、客寄せ的に松坂桃李と桐谷美玲が主役に、アリーナ役に中川翔子がキャスティングされていて不安な感じ。
しかし、桐谷美玲は若干素人っぽいが十分上手いし、松坂桃李と中川翔子に関しては声優一本に絞っても食っていけそうなくらい自然な演技だ。
客寄せ(というか問屋納得させ)キャストではあるが 、片岡愛之助は実力十分で全く問題ない。
他は、小松未可子、釘宮理恵、緑川光、、沢城みゆき、小野大輔、 井上麻里奈、花澤香菜、神谷浩史、立木文彦、竹達彩奈など人気実力ともに十分な、豪華声優陣と呼ぶに相応しいキャストで固められている。
グラフィック
絵的にはリアル系のグラフィックエンジンを使って、テクスチャの工夫でリアルに行き過ぎないように作り上げた感じで、単体で見るとかなり良いでき。
贅沢を言えば、もうちょっとⅣぐらいのパッケージイラストっぽい雰囲気か、それが無理でもドラゴンクエストⅧに近いテイストを期待したかったが。
またトバルNo.1を皮切りに数々のドラゴンボールのゲームやⅧ以降のドラクエでも証明された通り、鳥山明のキャラクタは立体として破綻がなく3D映えする。
その他
オンライン要素として、Ⅸのように情報が届く機能があるが、発売から時間がたっているので意味なし機能になっている。切っててOK。
付属の紙の説明書にゲームの説明がほとんどなく、キャラのコマンドリストみたいになっているのは驚いた。
以前から「説明書を見なくてもプレイできるのが良いゲーム」と言われていて、紙の説明書の意義が問われてはいたが、本作は説明書はキャラ紹介程度の立ち位置で、説明自体は全部ゲーム内部でもつという割り切りになっている。
紙の説明書は制作・印刷に手間暇がかかり、物理媒体であるだけに一度作ると迂闊に変更できなくなる問題があった。
この時期ダウンロード版ゲーム(本作にもある)が増えたこともあり、業界全体に紙の説明書をなくす方向へ舵が切られた印象がある。
本作のゲーム内マニュアルの構成はすごく紙の説明書っぽく、ムービーによる説明や操作練習モードなどもなく、開発終盤で紙から移植したっぽい。
素材を合成してアイテムを作る錬金釜はⅧの時からドラクエに必要かなぁ…と思うシステムではあるが、あるとやっぱり面白い。
このシステムがないと素材収集の面白さもなくなるので、全体にさらに淡白になってしまったろう。
本編のストーリーをクリアするぐらいまでなら、ドロップする素材や錬金にかかる費用などのバランスは良い。
ただ、やり込みだすと、付加能力が運頼みすぎるとか、必要な素材が全然ドロップされない、みたいなバランスの相変わらずのオメガフォースで、なぜか少し安心(笑)
ステージクリア時に拾ってないアイテムがあった場合、自動で回収される。
これ、無双シリーズで地味にストレスが溜まる点だったので、すごく嬉しい。
こういう細かい点が、ことごとく改善されていて「やっぱりオメガフォースのダメだと思ってた点は、できない理由があるわけではなくてフツーにダメだったんだ」という認識を新たにした。
まとめ
歴史のあるシリーズをベースにしているだけあって、キャラクタ・モンスターデザイン、音楽・効果音、ユーザインタフェース、システム、アイテムなど、雰囲気を壊さないように作った時点でもう面白い。
新規のモンスターやBGMが少なく新鮮味に欠けるきらいもあるが、ドラクエファンとしては新しいシステムに馴染みのあるドラクエのエッセンスがしっかり乗っているなら、それが「求めているゲーム」なのだから大正解だ。
キャラやネタ元に偏りがあったりするが、マリベルがいないこと以外は許容範囲だ。マリベルがいないこと以外は!!
さまようよろい系は正面からだとガードが固いとか、マシン系は電気(デイン)でショートするとか、メタルスライム系は素早く防御力が高いけど経験値が大量にもらえるなど、これまでに培った面白さが、アクションゲームの挙動として反映されている。
さらに敵単体の挙動の工夫だけでなく、回復役と盾役みたいな組み合わせで群の面白さも再現されている。
これらのバリエーションが付いていることで、無双シリーズでありがちな雑兵の単調さがほとんどない。
原作の再現に関しても、ゲームとしての作り込みにしても、誰もがツッコミを入れたくなるような難点がなく、このレビューもほとんどは重箱の隅つつきに終始している。
個人的には、ルイーダさんの前髪がすごい寝癖になってるのに遭遇したぐらいで、挙動は安定していた。
オメガフォース作品プレイしてて、進行不能などの致命的バグが一回も発生しなかったの初めてかもしれない。
ただ、本作はカジノや「あそびにん」みたいな非実用的な仕掛けは「ぱふぱふ」程度で、必要なものを揃えたところで終わって余裕がない感じはある。
参考
そこで結論。
面白そうな企画を、ちゃんと面白く仕上げた、原作愛のある傑作