ラストストーリー

対応機種・周辺機器
Wii(Wiiリモコン+ヌンチャク / クラシックコントローラー / ネットワーク対応)
ジャンル
RPG
著作・制作
(c)ミストウォーカー / Nintendo 2011

基本情報

 ディレクション・ストーリーに坂口博信、音楽に植松伸夫のファイナルファンタジーの黄金コンビの新たな挑戦。
 任天堂が苦手なRPGジャンルの大作とあって、開発のバックアップや盛大な広報活動も行われ、Wii本体に本作が同梱されるバージョンも発売された。
 これが最後になっても構わないぐらいやりきるという意味がラストストーリーのタイトルには込められており、これがファイナルファンタジーと同じ(注)ということは、ゲームファンならすぐに気づく。
 発売直前は、期待するなという方が無理なぐらいな盛り上がりがあったように思う。

注:坂口さん曰く、特に意味は考えず略称をFFにしたかっただけで、やりきる云々は後付けの理由とのことだが。

ストーリー

振り切ったコテコテぶり

 次の展開の予想が容易につく王道の話なんだけど、その王道(ゲーム)作ったの坂口さんだったわー!! みたいな感じ。
 ただ、その上での一捻りがなく、台詞もストーリーの流れ上そう言ってるだけの薄っぺらく陳腐なものが多い。
 逆にストーリーの流れに乗ってない、掛け合いの台詞は生き生きしていて、聞いてて楽しくなってくる。

 また、プレイヤーに提示される情報が少なすぎて、画面の向こう側の人たちだけが分かってる、という疎外感を味わうことが多かった。
 作った設定を全部出すのは下策だが、情報が少なすぎると登場キャラクタの決断に説得力が欠ける。
 特にインタラクティブなメディアにおいて「勝手に決まってしまう部分」に説得力がないのは致命的だ。

 主人公やヒロインより、メンバーの最年少キャラの方が過去を掘り下げられている感じで、その辺のバランスの悪さも気になった。

イベントシーン

 とにかくイベントシーンが多く、感覚的には1〜2戦闘ごとに入ってくるような感じだ。
 戦闘が終わった後、アイテムを拾う前にイベントが始まってしまったり、ひどい時にはそのまま次のシーンに移ってしまって取り損ねることもあり、非常なストレス。
 そこそこ面白い芸人がいるんだけど、前に喋ってた人がオチをいう前に俺が俺がと出てきて印象最悪、みたいな。

 リアルタイムムービーは早送りできるという珍しい仕様、しかし音声が消えてしまうので使い勝手が悪い。
 再生中にちょっとだけカメラを操作できて退屈は紛れるが、そもそもムービーが退屈って…。
 そして、プリレンダムービーはスキップできるが早送りできない、なんとも統一感に欠ける。
 あとムービー再生中にポーズできないのは、どういう嫌がらせなのか。

 ほとんど必ず、ナレーションで直前の展開を繰り返すのが蛇足もいいところ。
 街の人とかパーティーメンバーの台詞に散りばめるとか、日記(あらすじ)機能を用意するとかして欲しかった。

キャラクタ

 道中や戦闘中にパーティーメンバーの間での掛け合いが音声で展開されるのは、素晴らしく臨場感があって良い。
 しかし、戦闘が早く終わったり次のイベント箇所まで進んだりするとバッサリ切られてしまうのはイラっとくる。
 そんなよく喋るメンバーに、ダンジョンでの待機中は話しかけられず無視されてしまうのは寂しい。

 本作は、いきなりパーティーメンバーが揃っているので「遠足のグループ分けで人数合わせに入れられた孤立しがちな子」みたいな疎外感がプレイヤーにある。
 最初から楽しい仲間がいて嬉しい、と思う人もいるかもしれないが、複雑で特異なルールを理解させる為にも、ひとりから始めて基本操作に慣れたところで、メンバーを追加して欲しかった。

 あと特筆すべきなのは声優の豪華さ。宮野真守、藤原啓治、中田譲治、石田彰など、個人的に好きな声優が多いのもポイント高い。

グラフィック

 Wiiとしてはトップレベルで、プレイステーションのスクウェアベイグラントストーリーのように、色調を抑えることによって美しさを実現している。
 ただし、扉や階段、宝箱、そして「敵」など、はっきり見えてほしいものまで背景に埋もれてしまっているのは残念。

 キャラクタは「ファイナルファンタジーの新作です」と紹介されたら、なんの疑問もなく信じてしまいそうな感じの、美男美女揃い。
 本作では、リアルでもなく漫画的でもなく、あまり表情豊かではないのだが美しいという絵になっており、人形劇的な雰囲気を感じさせ、アリだなと思わせる。
 ただ、装備の関係から極端に体型の違うキャラを入れるのは難しかったかもしれないが、獣人を入れるなどしてもっとキャラを差別化して欲しかった。

 カメラワークがあまり良くなく、3D酔いを起こしやすそうだ。任天堂の秘伝を授けられなかったものだろうか。
 目の前と遠景がやけにボケボケなのは3D酔い対策のような気もするが、ちょっとボケすぎかと思う。
 戦闘シーンも壁際とか敵が多い場合、何が何だか分からなくなることがよくあった。

システム

戦闘

 本作の白眉と言えるのは、リアルタイムの戦闘。
 見た感じも操作感もほぼアクションゲームだが、自分に注目を集め囮になるギャザリングを使えば、簡単に戦況全体を操れる。
 これは、仲間の危機を救ったり、敵の集団をばらけさせたりといったことが、ボタン一発で行えるナイスシステムだ。

 プレイヤーを攻撃対象としている敵とは細い直線で繋がれており、凄くわかりやすい。
 全体の状態は掴めないが、敵意の気配ははっきりわかるという感じ。
 なんでこれ一般化してないの? というぐらいのベリーナイスシステムだ。

 魔法は直接ぶつけて効果があるのと同時に、着弾点で円形の範囲・持続型となり、さらに主人公の特殊技で散らして効果を発揮する。
 このように、ひとつの魔法にいくつもの機能を乗せていて、使い勝手が良い。
 魔法詠唱中はキャラが空中に浮き上がって狙い(狙われ)易くなるのも、見た目と機能がリンクしたいい仕様だ。

 たまに戦闘中にQTEが挿入されて盛り上がるが、適用されている箇所が少なく、すごく残念。

 ほぼアクションゲームとはいえ、レベルを上げて装備を固めるとゴリ押しで勝てないこともなく、戦闘が終了するとHPは完全回復するので、難易度は低い(低くできる)。

戦闘フィールド

 通常移動しているマップがそのまま戦闘フィールドになるのもいい。
 しかしマップ初見で戦闘が始まるパターンが多く、通い慣れた場所での戦闘で地の利があるとかはなく、イマイチ活かしきれてない。

 ボス戦を中心に特別な仕掛けが存在し、それらに対応した手を打っていかないとなかなか倒せないのは面白い。
 はずなんだけど、仲間が戦闘が始まった途端にアドバイスという名のネタバレしちゃう。
 また、特に面白い戦闘は後半に集中していて、そこまでたどり着く前にダレちゃうのも残念。

攻撃操作

 敵の方向にスティックを倒し押し付けると攻撃となるシステムで、まずまずの使い勝手。
 ただ、ボタンで攻撃できるオプションに変えてみると、攻撃の暴発もなく、より戦闘している感が強い。
 自分がディレクターだったら、スティックだけで攻撃モードは採用しないだろう。

仲間の行動

 仲間の行動がアホっぽく「○○するな」とアドバイスした本人がそれやる、みたいなことをはじめ、延々壁に向かって魔法撃つとか、いやーその辺はもうちょっと注意してプログラムすれば回避できたんじゃないの? ってところがままある。
 とはいえ、仲間が指示せずとも戦ってくれるシステム(いわゆるAI)は、エニックスドラゴンクエストⅣの頃から大好きなので本作も楽しくプレイできたし、音声で掛け合いが入るのが特に楽しかった。

 ゲージが溜まるまでメンバーに指示ができない上に必ず全員に指示を出さなきゃいけない仕様は、ただストレスを与えるだけの結果になっている。
 常に個別に指示できてよかったのでは?

成長システム

 シナリオの展開と関係なく、すでに行ったことのある場所へ行っても戦闘の経験値が入らない。ひどい。
 じゃあいわゆるレベル上げはどうするのかというと、サモンサークルという場所で敵を呼び出して戦う。
 同じ場所だと出てくる敵が(ほぼ)同じでやること一緒なので作業感がすごく、本作のダメシステムの筆頭ではないかと思う。

 経験値を排除すれば良いと思うが、そこまで思い切れなかったのは残念至極。
 簡単にレベルが上がるのが救いだ。

 いわゆるフィールドがない上に街がひとつだけしか存在しないが、街には沢山のサブイベントが用意されている。
 街はエリアごとに区切りがあるわけではなくシームレスに歩いて行ける。
 こう聞くとオープンワールドっぽく感じるかもしれないが、街で自由に探索できるタイミングはシナリオ全体からすると半分もなく、本編の一本道のシナリオと街のイベントの食い合わせの悪さが目立つ。
 あと、進行中のサブイベント一覧は欲しかった。

 怪しい場所ではSEEKマークが光る、そこで周囲をズームして見回すと、特定のポイントにマークが出て解説が出たり選択肢が出たりする。これはなかなか面白い。
 落ちているものを拾うと連続してそこらにアイテムが見つかるという仕掛けがあるが、これは作業的になりすぎて面白くなかった。
 「海岸を調べたらカニがいる」みたいな、たわいのない隠れキャラとか入れた方がよかったかもしれないですよ坂口さん。

 人々のそばを通るだけで会話が音声で再生されることがあり、会話に聞き耳を立てているという雰囲気が抜群に良い。
 ただ、音声なのでそれなりに時間がかかるし早送りもできないので、感動も数回までだった。
 街の人にぶつかるとよろけるのは、ごめんなさいという気持ちになるので、基本は避けるようにして欲しかった。
 街に出没する行商人はよかった。物売りメッセージが表示されるけど居場所はわからないので、そこらを探して見つける。プレイに緩急がつくし街の作りにも詳しくなれる。

オンライン

 本作、かなりオンライン共闘・対戦の比重が高く、評判を読んでみると高い評価が与えられている。
 残念ながら2017年時点ではオンラインサービスが終了しているので、プレイできていない。
 ただ、ゲーム本編で使われた大量の音声から自由にピックアップしてチャットに使えるという、非常に面白いシステムがあり、その音声選択はオフラインでも可能である。

まとめ

 ナレーションで直前の展開を繰り返したり、戦闘が始まってすぐに攻略法を仲間が教えてしまったりと、作品全体に「プレイヤーを信用しきれていない」空気があるのが本作の欠点だ。
 インタラクティブな作品では、どれだけプレイヤーを信頼して操作を委ねられるかが面白さに直結するので、随所にある余計なお節介が返す返すも残念。
 その割に情報不足があって、ストーリー展開が唐突に感じたりもするちぐはぐさ。
 新しい体験のあるシステムや演出が多くあり、洗練度がもうひとつな部分もあって「ひとこと言いたくなる」ゲームである。

 どうもクラシックコントローラ前提で開発されたようで、画面をポイントするのにWiiリモコンを使わないし、Wiiリモコン振って攻撃したりもできない。
 せめてオプションで変えられなかったのか、なんでWiiで開発したの? と疑問が湧く。
 クラシックコントローラでプレイしても思った通りの動作が出しづらく、操作はギリギリ及第点というところ。

 ラストまでのプレイ時間は36時間かかっているが、もっと早くもクリアできるだろう。
 本作はRPGではあるが、システム的にはファイナルファンタジーより、カプコンバイオハザードやコナミメタルギアソリッドの方に近い作品ではないかと思う。
 それらの作品は比較的短い時間でクリアできるのだから、本作が短いと文句言われるのは理不尽に感じる。

 個人的には、最終決戦が終わった後もいくつかのイベントが残っていて、それをクリアするとエンディングが始まる作りなのは好み。
 自分が救った世界をうろつきたいじゃないですか!

参考

 そこで結論。

もう一回作ったら、すごくいいものになる雰囲気はあるが、今回は良作止まり