ボタンレイアウトを考える

パッドのボタンの位置はどうあるべきだろうか

木目調のパッドとかだろうか
パッドは自然に持てる必要はある

ボタンに必要なデザイン

 ボタンをデザインする場合、プレイヤーが、各ボタンをどうやって区別するかという事を考える必要がある。
 形が違う事、大きさが違う事、色が違う事、場所が違う事、触感が違う事、名前が違う事。
 これらの事ができるだけ重ならない様にする事で、各ボタンの判別は容易になる。
 逆に言えば、これらの重なりが大きいとボタンの区別がしにくくなる。
 ボタンが2つ程度ならば場所が違うだけで確実に区別できていたものだが、今やボタンは10個近くあるのが普通である。
 とてもではないが何も考えずに置いたのでは区別できない。

 今回は、ボタンの形と位置、つまりレイアウトデザインに付いて考えてみる。
 ボタン名や位置と機能の対応に付いてはボタンの共通機能を、より具体的な使い分けは格闘のボタン使い分けアクションゲームコマンドを参照して欲しい。

決定とキャンセル

 初期の家庭用ゲーム機のボタンでは考えられていなかった事だが、現在のゲームにおけるボタンの重要な役割は「決定とキャンセル」である。
 極端な話、「決定とキャンセル」ボタン以外はおまけといっても良い。まずこの二つのボタンを中心に考えるのが妥当である。
 初期のゲーム機に置いて、決定の機能を持っていたのはスタートボタンだけであったと言える。
 Aボタンは決定ではなくショットジャンプの役割としてしか考えられていなかった。
 しかし、コマンド選択型のゲームが増えてくると、スタートボタンが決定ではあまりに使いにくいため、Aボタンなどの主要ボタンが決定ボタンとなっていったわけである。

 さて、現在のゲームではコマンド選択型のゲームに限らず、アクションゲームでも設定変更などでメニューの付いていないゲームは皆無、とにかく決定ボタンは一番多く押すボタンとして君臨していると言えるだろう。
 となると、決定ボタンは他のボタンに比べて大きめであることが望ましく、とにかく快適で何度押しても楽である必要がある。
 となると形としても、どの方向から力を入れても引っかかりが無く、丈夫な丸が必然的に決定される。
 とにかく一番良く押すボタンなので、パッドを持った時に自然に親指が来る場所に、その位置も占める事になる。

 キャンセルボタンは決定ボタンの近くにあり、それなりの大きさが欲しいが、決定ボタンより大きくてはいけない。役割が分かり易いように決定ボタンより小さい方が望ましい。
 場所としては、決定ボタンとキャンセルボタンは同時押しの必要が無い、というよりむしろ同時押しできない方が望ましいので、決定ボタンの左右方向、特に左側である事が望ましいだろう。
 左側が望ましい理由は、右だと決定ボタンと同時に押してしまいやすいという事もあるが、親指と人さし指が近付くため、心理的に「抱える・大事にする」というサインとなり、キャンセルの持つ意味と相反してしまう。

左右に並べる

 親指は前後よりも、左右の方が断然自由に動く。
 となるとボタンを増やす場合は、まず前後ではなく左右という事になるだろう。
 正確には親指は左右に動くのではなく、手首に近い位置を支点として弧を描く様に動く。
 となると、ボタンを直線的に並べるのは余り賢い配置とは言えないだろう。
 親指の描く弧にあわせて、心持ち左を下に、右を上に置くのが良い。
水平ボタンレイアウト

 決定ボタンを一番押しやすい場所に置いたとすれば、そこに近いほど押しやすいと考えられる。
 自然と、右と左にボタンが増えることになる。3つなら認識としては、「左、真ん中、右」と分かりやすい。
 これが4つになると「外の左、内側の左、内側の右、外の右」と、場所での認識が難しくなってくる。
 実際の所押すだけならば、左右に5つぐらい並べても押せるものではあるが、ボタンが小さくなってしまうとか、ボタンの位置が把握しづらくなるなどの問題もあり、現実的なのは3つ程度と言えるだろう。思いきって5つぐらい並べてしまうと、それはそれで別の面白さが生まれそうではあるが。

上下に並べる

 レースゲームでは、アクセルボタンを常に押し、時々ブレーキボタンを押すといった操作が主流である。
 経験上、アクセルを親指の腹で押し、ブレーキを親指の先で押すという配置が一番操作しやすい。
親指での同時押し

 アクセルは決定ボタンと同じボタンを使うのはまず間違いないので、決定ボタンの上に何かボタンがある事が望ましい。
 この決定ボタンの上のボタンは、決定ボタンより面積としては小さく、形としてはとにかく決定ボタンと同時押ししやすい形と位置が良い。
 となると、一番大事なのは、決定ボタンとの距離であり、これは別のボタンと認識できる程度に離れている必要があるが、離れ過ぎるよりも、いっそくっ付いていた方が良い、と言える。
 高さは、決定ボタンを中心として、すり鉢状にボタンが配置される事が望ましいと私は考える。そこで、決定ボタンよりやや高め、手前に向かって傾斜があるのが望ましい。
 また、自然に持った場合に親指がパッドの内側に傾くので、決定ボタンの真上ではなく、少し内側、つまり気持ち左上に配置されるのが望ましい。
垂直ボタンレイアウト

 レースゲームに限らず、ボタンの同時押しという操作は、多くのアクションゲームで採用されているので、決定ボタンの上には何か一つボタンが欲しいものである。

 さて、縦に3つ以上のボタンを並べている標準ゲームパッドは、私の記憶にある中では(ジャガー等のテンキーは除き)Xboxのみである。
 縦に3つ目のボタンの使いやすさは、私がXboxを持たないので検証できていないが、少なくとも縦3ボタンの同時押しはほとんど不可能であるようだ。
 先に書いた様に親指は縦の自由度は横ほどではないが、手全体を動かせばいくらでもボタンを増やしたって構わないのが縦でもある。
 店頭デモで触った限りでは、下のボタンは主要ボタンより小さく低い位置にある事もあって、 間違って押してしまう事は無かった。
 補助的なボタンの位置としては、パッド中央にレイアウトされる事の多いスタートボタンよりも押しやすい。
 Xboxの白黒ボタンは、ボタンレイアウトのダークホースかもしれない。
 ケータイによって、縦に3つ以上のボタンレイアウトに、多くの人が馴れている事も、縦にボタンを増やす方向に作用するだろう。

親指ボタンのレイアウト

 以上の事から、親指で無理なく操作できるボタンは、決定+左+右+上という4つという事になる。

 ゲームによっては3ボタン4ボタン同時押しという操作も少なくないので、できれば3ボタンまでは親指で対応できるようにしてほしい。
 そうなると、決定とキャンセル(左)の組み合わせは、その意味からも同時押ししにくくなっているので除外して、決定+右+上の3ボタンの同時押しができる事が望ましい。

 同時押ししやすくするには、ボタンを小さくして近くに寄せてレイアウトするのが良いのだが、そんなレイアウトでは「同時押しは簡単だが、単体では押しにくい」という、ワケの分からんものになってしまう。
 となると、ボタンを小さくせずに、3つのボタンが親指の下入る面積を増やすようなレイアウトにするしかない。
 親指は当たり前だが縦に長い、となると、右のボタンの縦の面積を増やすのが一番手っ取り早い。
 そして、決定と右ボタンの間を上に伸ばした位置に上ボタンが存在すると、3ボタン同時押しが可能になる。
 コレを素直にやったのがゲームキューブ、という事になる。

ボタンの革命LRトリガ

 親指だけで4ボタン同時押しとなると、ボタンのレイアウトが乱れ、2ボタンで十分なゲームの操作が不自由になってしまう可能性すらある。親指だけで4ボタン同時押しを実現するのはかなり難しいと言えよう。
 コレを一気に解消するのが、任天堂スーパーファミコンで採用されたLRトリガである。

 人さし指を使う事によって、親指の負担を増やさずにボタンを2つ増やした事もすばらしいが、同時押しを容易にした事も大きな功績である。
 また、各ボタンに指を一本割り当てているので押し間違いが少ない。
 位置と名前が分かりやすいため、左右方向を意味する役割を持たせやすい。
 人さし指がコントローラの前に来るためコントローラの持ち方を規定する。このため親指ボタンのレイアウトが考えやすくなったのもいい。

 LRトリガは、十字キーに次ぐコントローラの革命であると言えよう。

ちなみに、セガのSC(SG)で使われてたボタンは、LRトリガに似ているものの、実際の所親指と人さし指で押すものであり、LRトリガとは全く発想が違うものである。

 ただし、親指に比べて人さし指の自由度は低く動きも悪いので、連打など複雑な操作はさせられないし1本で複数のボタンを扱うのも困難である。

 人によって人さし指の長さはかなり異なる上、自由度が低い。親指ならば、多少のずれは稼動範囲の大きさで修正できるが、人さし指はそうはいかない。
 ということを考えるとLRトリガの形も自然と決定する。つまり、とにかく大きく特に左右方向に大きいのが良い。
 LRトリガが丸くて小さいボタンだと考えたら、だれでもダメなデザインである事が分かるだろう。

 人さし指で押す事から拳銃のトリガを考えると思うが、あのトリガというものは「確実に引ける」と同時に「簡単に引けてはいけない」デザインなのである。
 簡単に使えない装置はコントローラには向かない。だいたい縦長のトリガは痛い。ドリームキャストのトリガは、この点で完全に失格である。
 また、ゲームキューブのLRトリガは押し込みのストロークが長くて人差し指に負担がかかり、これもあまりよくなかった。

その他のボタン

 スタートボタン(PCエンジンはRUNボタン)は、ゲームのコントローラのボタンには珍しく、はっきりと機能が名前となっているボタンである。
 しかし、その機能はハードウェアで実現されているのではなく、ソフト次第でどうとでもできるものである。
 そのため、スタート/ポーズ以外にも使われているゲームが多いのが実情である。

 名前通り、スタート/ポーズに使われるとするならば、あまり簡単に押せてはいけないものであるから、場所としてもコントローラの中央のような簡単に押せない場所、大きさも小さめであった方が良い。
 しかし、最近はメニューボタンとして使われる事が多いため、あまり押しにくいのも困る。
 理想的には、スタートはスタート/ポーズ以外には使うべきではなく、そこそこ押しやすく、そこそこ押しづらい所にメニューボタンが別に存在するのが望ましい。
 メニューボタンは、左の方向キーの下あたりにあるのが良いと思う。
 標準のコントローラで、そこにボタンがあるのは、記憶ではXboxだけだと思うが、GCの十字キーをボタンだと考えると、それをメニュー用のボタンと考えても良い(実際は地図ボタンとして使われているようだが)

 適当に押しやすく、適当に押しにくいボタンの位置と形は、現在それなりの需要があると思われるので、今後ある程度の共通化が起きそうである。

より上のデザインを目指して

 これらの事は、現在発売されているゲームをプレイする際に必要な機能を実現するのに良い、という事から導き出された結論であるから、当然「今までに全くないゲーム」に対しても良いレイアウトとは断言できない。
 逆に、突飛なレイアウトがゲームのアイディアを生む事もある。
 新しいコントローラは、ここで書いた事を守ってほしいと同時に、これらを打ち破る新しさを期待したい。

 そこで結論。

手を見て、ボタン位置を見ろ、そのメーカーは正しいか?

追記

 プレイステーション3のPSボタンのような、ゲーム機のグローバル機能呼び出しボタンがある。
 あれ、スタートボタンとの押し間違いが多い。
 そもそもスタートボタンとセレクトボタンの時点で押し間違っていたのに、さらに増えたら押し間違うに決まっている。
 PS4になって真ん中にタッチパネルがついたこともあり、セレクト・スタート相当のボタンは左右に離れて、押し間違いを避けるレイアウトになった。

 という感じで、家庭用ゲーム機のパッドは他にもアナログスティックの押し込みによるボタンなど、とにかくボタンの数が増えて正しいレイアウトをしようにも隙間が足りないみたいな状況になっている。
 任天堂は、その状況をWiiである程度リセットすることができたが、結局Wii Uで複雑化が進み、 Switchでは「そこそこ複雑なパッドを用意し、さらに複雑な操作が必要な場合に2つ使う」というアクロバティックな解決方法をひねり出した。
 Wiiリモコン+ヌンチャクがあってこその発想だと思うが、まさかのアイディアだ。

 流石にボタン数に関しては普通の人類が扱うには多すぎで、PS4の18個(十字キーは4個換算)で上限に達したと思いたい。
 …アタリ ジャガーの6ボタンコントローラー(と言いつつ26個ついてる)の方が多いですけどねっ!