メトロイド アザーエム
|
基本情報
メトロイドシリーズはメトロイドプライムでFPSになり、それはそれで(海外では)ウケていたが、従来のサイドビューアクションのファンを取りこぼしていたところもあった。
本作は「最新技術を使ったファミコンゲーム」をコンセプトに、ヌンチャクを使わずリモコン横持ち(ファミコンスタイル)を基本にしたゲームとなった。
開発を担当したのはデッドオアアライブやNINJA GAIDENのTeam NINJAで、近接戦闘を取り入れたアクションを実現。
アクション主体のゲームにもかかわらず、メトロイドシリーズに長く関わり続けていて、本作ではプロデューサーを務める坂本賀勇のシナリオ先行で開発されたという。
異例づくめの本作はどのような着地を見せたのか。
ストーリー
主人公のフリーの賞金稼ぎサムス・アランは宇宙を航行中に救難信号を受診し、研究施設であり巨大な宇宙船であるボトルシップへと航路を変更した。
そこには、サムスが以前在籍していた銀河連邦軍のメンバーがかけつけていた。
なお、時系列的にはスーパーメトロイドの後、メトロイド フュージョンの前に当たる。
不自然なモノローグ
主人公の独白が多いシナリオは駄目シナリオ率が高い、というのを個人的な経験則として持っているが、残念ながらその経験則は強化された。
直前に映像で十分表現されていることを独白で繰り返すパターンが多く、その独白はプレイヤーがやることで画面の向こう側でやることじゃないよ!! と強烈な拒否反応が起きた。
百歩譲って、モノローグ主体のゲームがあったとしてもいいとは思うが、サムスじゃない誰かでやってほしかった。
独白の内容も、プレイヤーはサムスを「完全無欠のヒーロー」(あえてヒーローと書く)と思っているのに、坂本さんはサムスを「自分の愛娘」として表現してしまった感じでズレを感じた。
それとは別に、時系列的に何体も倒しているはずのリドリーにサムスがビビりまくるのは、全く意味がわからない。
これまでプレイしてきた人としても、リドリーは「手強い相手だが勝つのは私だ」みたいな好敵手感覚だと思うのだが。
個人的には精神を落ち着かせるため、サムス・アランはコード名でバウンティハンター集団の名でもある、という設定を心に作っておくことにした。
不可解なシナリオ
プレイヤーのサムス像とのズレがよくないというだけなら、「個人の感想です」で終わりにすることもできる。
新規プレイヤーを獲得したくて新しいサムス像を提示したにしては、オープニングから一見さん置いてけぼりなシナリオである。
そして、いくつかの主要な問題がプレイヤーと関係ないところで解決してるのは疑問。その部分を取り上げられたらプレイヤーはどこを楽しめばいいのか?
コナミメタルギアソリッドのように、こちらから仲間に通信できて良さそうだが、それはできず一方的に指示の通信がなされる感じだ。
それどころか、目の前に仲間がいても話しかけることができず、イベントでしか話さないのは変。
その他大勢以上の描き方がされていない登場人物が多く、サスペンスものとしても盛り上がりに欠ける。
犯人探しをさせるなら、まず容疑者を丁寧に描写しないと意味がない。
たぶん多くの人は、裏切り者が誰だかわからずにゲームを終えちゃったんじゃないだろうか?
不自由なシステム
ムービーがゲームシーンと違和感なく繋がっているのが、本作の売りのひとつとなっている。
しかしプレイした感想としては、駄目な点の筆頭となっている。
ゲームシーンとの境が少ない分、操作の自由が取り上げられてしまった不快感が、より強くなっているのだ。
TPSっぽい後方視点で左右で回転し前後で移動、あるいは前で進むのみ、という半ムービーのモードに入る時がある。
エレベーターはまだしも、女子トイレでこのモードになるのが大いに謎。
操作感としては今更ワープDの食卓をやらされている感じで、移動も遅く、新しくも快適でもない。
さらにムービーに入ってからは、一時停止を含め、全く操作を受け付けないのも嫌な感じだ。
イベントシーンでもセリフ毎にボタンを押させて、プレイヤーに関わりを持たせようとしていたゼルダの伝説シリーズがいかに繊細な作りをしていたか、同じ任天堂のゲームで確認させられることになろうとは。
ムービーの映像的クオリティはかなり高いので、逆に「無駄なところに金と労力と容量を使っちゃったな」という悲しみがある。
グラフィック
メトロイドシリーズはSFではあるものの、鳥人族などの神秘性が独特の雰囲気を作っていた。
しかし本作では連邦が作った人工物の中で展開されるので、自然物も遺跡もない。
逆に、プロジェクションマッピング的に人工物に投射して自然風の景色を作っていて、そのスイッチのオン・オフがヒントになる、みたいな仕掛けは面白い。
ただ、映像的には進めそうなのに実際は壁になっていて進めない、いわゆる透明の壁が頻出する要因ともなっている。
困ったことに、プロジェクションのない箇所でも透明の壁は頻出するので、透明の壁の言い訳にもなっていない。
崖の端で進めなくなるのは、落ちそうなところで止めてくれて親切、というより行動が制限される不快感の方が強い。
一旦落ちるが、崖側にキーを入れると端にぶら下がってセーフみたいにしてほしい。
止まる箇所がある場合、低くていいから目立つ柵を描いてほしかったし、ジャンプして飛び越えられそうな柵は、実際飛び越えられるようにしてほしかった。
それで奈落に落ちてゲームオーバーになっても、プレイヤーとしては本望だ。
グラフィックは良い部類だが、ディティールにチープさがあり、クリーチャーも変に作り物っぽいところがある。
背景は暗い箇所が多く隠し要素が探しづらいため、ストレス要因となっている。
つまりは、建物や機械・生物としてもゲームとしても機能がデザインされておらず、ただ綺麗な絵が表示されている段階で終わっているものが多いということだ。
サムスが美人なところが救いとも言えるが、ゲームオーバーになるとスーツが脱げるなど、変なところで女性であることが強調されていて、「いや、別にサムスの女っぽいところが見たいわけじゃないから」と若干引く。
システム
パワー制限システム
連邦軍の元上官にパワードスーツの機能を制限され、状況に応じて機能が解放されるというシステムには納得感がない。
しかも解放タイミングが遅く。例えば「灼熱環境に行け !」と指示しておいて耐熱機能を解放しないのは嫌がらせ以外にどう考えたらいいのか?
あと、ファンにはおなじみのパワーアップ時の「桃屋」ジングルがなくなっているのも、地味に高揚感が落ちる。
近接戦闘
十字キーのちょい押しという簡単操作で敵の攻撃を華麗に避ける、センスムーブというアクションがある。
その際、ビームが高速チャージされるので強力な反撃も可能となっていて、格好良さと実用性が高い。
ただ、使用回数や間隔に制限がなく、ちょっと強力すぎる。
また、敵の上に乗って、あるいは倒れている敵に近距離から撃ち込む特殊アクションが用意されていて、その際カメラアングルが変わり、かっこいい。
特にボス戦でこれらのアクションを発動させると、画面の動きがダイナミックで良い。
これはソニーゴッド・オブ・ウォーのCSアタックっぽいが、画面に表示されたボタンアイコンに合わせるのではなく、敵の状態を見てプレイヤーの判断で行うので強制感は少ない。
センスムーブに関しては、戦闘シーン以外でもQTEのように使える。
ボタンの指示もないので押し付け感もなく、失敗してもダメージを食らうものの(ほとんどの場合)ゲームオーバーにはならない。理想のQTEのひとつの形が実現されていると言っても褒めすぎではないだろう。
中途半端に戻ったスタイル
Wiiの新作ゲームとしては珍しく、リモコン横持ちを基本として操作する。
一見サイドビューの2Dゲームに見えるが、奥や手前方向にも移動できる3Dのゲームだ。
と言っても カメラ位置は固定されている上に、ほとんどの場面は通路なので、カプコンファイナルファイトのようなベルトスクロールと、ノーティドッグクラッシュ・バンディクーのような奥スクロールが入れ替わるような雰囲気で、ある意味コナミ魂斗羅と似たシステムと言える。
3D空間を十字キーで操作するのはちょっと無理がある。本作は様々な工夫があって操作感は割といいのだが、素直にヌンチャク(アナログスティック)使えば、苦労せずに操作感よくなるのに…と思わずにいられない。
3DグラフィックのサイドビューアクションとしてPS時代にナムコ風のクロノアがあり、任天堂も大乱闘スマッシュブラザーズシリーズや、DSのニュー・スーパーマリオブラザーズでは大成功を収めていたのに、十字キーにこだわるなら奥行きを捨ててそちらに行けなかったのは大失敗だった。
奥にも動ける3D空間で敵を狙うのはかなり難しい。
本作では対応策として大体の向きが合っていれば自動照準で撃つシステムを採用している。
結果として、たいていの戦闘はセンスムーブと合わせ、十字キーと①ボタンを連打していればなんとかなるという状態になっている。
これ自体は「俺、上手くね?」と思わせて気持ちよくプレイできるシステムであり、一概に悪いとは言えないが、プレイが単純・単調になっている面も強い。
サーチングビュー
リモコンを画面に向けるとサーチングビューという一人称視点に代わり、ポイントした対象を調べたりミサイルを打ち込んだりできる。
この状態では移動できないし、Bボタンを押しながらでないと視点変更できないのもストレス。
一人称視点でもセンスムーブが可能だが、横持ちの時と違いリモコンを振る操作になっている。同じ動作に別の操作が割り当てられているのは、使いづらいし分かりづらい。
敵が妙に攻撃してこないタイミングが発生したり、視点を変えた時に動きがスローになったりするのは、持ち替え時間を確保するためのバランス調整だろうが違和感がある。
隠し通路の類はサーチしないと見つからないというより、前述の通り単に暗くて見つからないことが多い。
一部の隠し場所に妖精みたいなのが特に説明もなく飛んでるのは、ないよりはマシかもしれないが後付け調整感が強い。
明らかに怪しい場所や品物がサーチに反応しないことも多く、隔靴掻痒感がある。
逆にサーチに反応するけど特に解説がないものが多くあって、意味不明。
また、強制的にサーチングビューになって、特定の箇所を調べないと次へ進まないシーンがちょいちょい入る。
このシーンでの、どこを調べればいいか分からない度合いは、T&E SOFTスターアーサー伝説I 惑星メフィウスの砂漠のシーンに匹敵する。つまり、全く分からないのでしらみつぶしに調べるしかない。酷い。
こんなに使いこなせないんだったら、一人称視点を無理に入れることはなかった。
それに、 FPS(プライム)が苦手なプレイヤーを取り込みたいんだったら、一人称視点は悪影響しかない。
回復システム
敵を倒してもアイテムが出ない。
代わりに、リモコンを縦に持ってAボタンを押し続けるとミサイルが補給され、体力が低いときはある程度回復する。
ボスが「はい今です、回復しちゃってくださーい」みたいな隙を見せるのも嫌な感じ。
ミサイル無限補給にしちゃったら、ミサイル弾数にほとんど意味がない。
序盤では即死に近い攻撃を食らうことも多かったが、操作に慣れて装備も整った中盤以降の雑魚戦は攻撃を喰らうこと自体が少ない。
結果、ミサイルタンクとエネルギータンクの意味が薄く、探索する気を削ぐ。
セーブステーションの間隔が短くて、失敗しても完全回復して出直すのが容易。
またゲームオーバーになっても、直前からコンティニューできるのも難易度を落としている。
ただ、ボス戦でコンティニューした場合は閉じ込められていてセーブステーションに戻れず、体力が低い状態で再戦することになるのは、他がヌルいのに比べてバランスが取れてないように感じる。
また2010年はプレイ動画が珍しくない時代、ボス戦でコンティニュー5回ぐらいしたら、シアターモードのボス戦を手本として解放しても良かったんじゃないかと思う。
探索要素
進行の基本は「セーブステーション→道のりがマップ画面に表示される→道を進む」の繰り返し。
線を繋げたマップでわかりやすいとも言えるが、立体的な繋がりが薄く単調でもある。
また、戻ろうとしても扉が閉まっているので先に進むしかなくなり、アクションが苦手な人がアイテム収集で救済されないおかしな作りだ。
終盤でやっと移動が自由になるが、マップのショートカットが少なく、あちこち行ってみようという気がおきづらい。マップが広くないので行ってみるとすぐ着くのではあるが…。
マップ画面に拾っていないアイテムの位置が表示されるのは一見便利だが、探索気分が薄れてしまう。
一応、周囲の敵を全滅させたら出るといった制限はあるが、少なくとも序盤は出ないようにして欲しかった。
敵の倒し方、調べる箇所、隠し通路などの探索・謎解き要素が、解いても「なるほど」とは思えず「わかるか!」とか「なんでだ!」と思っちゃうようなものが多い。
例えば、行き止まりで20分ぐらい探索して心折れそうになって、一旦戻ってみると進行するパターンに何度か遭遇した。この辺り、スムーズに誘導できなかったものか。
前述の強制サーチングビューもそうだが、ヒントの出し方が下手。
従来のメトロイドシリーズはビームやミサイルを打ち込むと扉が開くシステムで、これが攻撃の練習台として機能していた面があるのに、それがほぼなくなっているのは痛い。
扉やその他の機器は、近くに行くと自動で動作するため、ゲームの手触り感が弱くなっている。
新たに敵に乗れるアクションがあるのに、敵に乗ることによって普通のジャンプでは届かない場所に届くようになる、みたいなことがなく、近接戦闘によって破壊できる障害物があったりもしない。
戦闘と探索が密接な関係にあったシリーズなのに、本作は両者が乖離しているということだ。
ひとまずのクリアまで10時間程度とアクションゲームとしては十分以上のボリュームではあるが、繰り返しプレイに耐えられる密度はなく、プレイ時間の多くをムービーが占めるので、結局アクションゲームとしてもボリューム不足感がある。
ちなみに、完全クリアで追加されるのはハード難度のみで、いやーそこまで厳しいのはちょっと…という気に。多分Team NINJA的にはノーマル難度だと思うが。
まとめ
他人に制限される装備、透明の壁、指示された場所にしか行けないように閉まる扉、自動で操作される装置、唐突に切り替わるモードなど、本作ではプレイヤーに許される行動が製作者の都合だけで決まっているように思え、不快だ。
それに加えて、シナリオの核をプレイヤーが解決できない上に、プレイヤーの心境までもムービーによって横取りされるため、不愉快も極まる。
また、システムもファミコンゲームを目標としていたのに、実態はサターン・プレイステーション時代のゲームになっていて、よりにもよって一番中途半端な時期に戻しちゃったな、という感じだ。
一応クリアして、アイテム取得率も100%を獲得したので、全くつまらないわけではない。
もし、サターンのゲームとして出ていたら大絶賛したと思うが、その時代からNintendo64→ゲームキューブ→Wiiと2世代から3世代移っているのに、とても褒められるものではない。
難易度調整的にも整っておらず歪なままリリースされており、任天堂らしからぬ作品となっている。
参考
そこで結論。
システム・ストーリー共に誰に向けたものかわからない中途半端な作品