グランド・セフト・オートⅣ

対応機種・周辺機器
PS3/Xbox360/Windows
ジャンル
オープンワールドクライムアクション
著作・制作
©カプコン/ロックスターゲームス

基本情報

 グランド・セフト・オート(以後GTA)シリーズは、犯罪(クライム)アクションの映画やドラマの影響が濃く、銃撃戦とカーアクションや音楽を重視することなど特に特捜刑事マイアミ・バイスの影響が強いように感じる。
 本作はタイトルこそⅣだがシリーズの6作目にあたり、旧ユーゴスラビアからの不法移民で元兵士のニコ・ベリックを主人公としたオープンワールドゲームである。
 日本ではカプコン(Win版はサイバーフロント)が販売を担当しているが、作ったのはロックスターゲームス(の英国スタジオであるロックスター・ノース)である。

 シリーズが数作で2Dから3Dに変わるのはコナミメタルギアシリーズなど多くあるが、本シリーズの場合は初代が3Dが当たり前の発売で、内部的には最初から3D指向で作られていたと言える。
 そういう意味ではグランド・セフト・オートⅢ(以後Ⅲ)では3D化したというよりビハインドビューに視点が変わっただけでもある。

 街中を自由に走れる3DポリゴンドライブゲームであるSpectrum HoloByteVette!からクライマックスランナバウトの流れ。
 そして3Dポリゴンで隅々まで構築された世界で、物語の主人公として非日常を楽しむも良し、ダラダラ日常を楽しむも良しの、セガシェンムーの流れ。
 この二つが合流した上でTPS要素も追加した欲張りオープンワールドに窃盗・殺人やりたい放題のクライム要素をまぶしたという「やりたいことは分かるが、成立させるの無理だろ」という企画を力技で成立させているのが本作だ。

 本記事はPS3のグランド・セフト・オートⅣ コンプリートエディションをプレイした上でのレビューだ。
 コンプリートエディションは、本作とその後に(DLCとして)発売された2作品を加えてひとまとめにしたものだがDLC部分は本レビューに入れていない。

インタフェース(UI)

 カメラの挙動が良くなく、3D酔いに耐性のある私も最初酔うかと思ったほどだし、常に右スティックでの視点操作が必要なくらい自動カメラの出来が良くない。
 ゲームエンジン(RAGE:ロックスター・アドバンスド・ゲーム・エンジン)の癖か、物理的な挙動がしっかりしている反面、リアルにシミュレートしすぎて全体に動きがもっさりしている面がある。これは好き好き。
 そもそもFPSがあまり高くなく、向きを変えられる角度も荒いようで、全体にカクついている。

 ×決定、○キャンセルかつ入れ替え不能で、特に携帯電話の操作でずっと決定ミスして、やる気を失くさせる。
 歩行時と操縦時で操作系が丸っと変わってしまうのもミスを誘発して困ったもの。

 歩行時は障害物の乗り越えや隠れる(カバー)、しゃがみなど豊富なアクションを持っているが、微妙な操作が思い通りにならずイライラすることが多かった。
 例えば素手の格闘では緊急回避やカウンターなどのアクションもあってシステムだけ見ると本格的に遊べそうだが、実際はシステムが使い辛く、拳をペチペチ当てる迫力のないケンカになりがち。
 登る時は壁際にぶら下がれるが、降りるときはぶら下がり状態に移行できず、ストンと落ちるしかなく無駄に落下ダメージを受けるのは嫌な感じだ。

 武器交換は十字キー左右なので種類が増えてくると操作に手間取る(ちなみに説明書には書いてないが、L1を押しながら十字キーで4種の武器を直接選べる)
 L2を深く押すとロックオン、半押しだと自由に(フリー)エイムできるのだが、半押し判定がシビアでロックオン対象がいる場面でのフリーエイムは事実上使えなかった。

 乗り物も細かいハンドルが効きづらい、タイヤが滑りすぎる、ブレーキとバックが同じボタンなのでミスしがちなど、無駄にゲームを難しくしている面がある。
 PS3のゲームでモーションセンサーがマトモに使えるものはあまりない印象だが、本作のモーションセンサーに対応した乗り物は割といい感じに操作できる(スティックの方が操作しやすくはあるが)

 ミッションに入ったらセーブができず、ミッション失敗した場合の再開ポイントがかなり前なので、ミッション実行場所まで移動するところから始まることも多く、ストレス。
 服を着替える時にデータ読み込みを伴うこともありモタモタするので、着替えしたくないほど。少なくとも服を買い足すのは途中で止めた。

マップ

 上記のように、操作の不満を並べると酷いゲームのようだが、とにかく「透明の壁」が使われておらず行けそうな所は全部行ける!
 なんならヘリから飛び降りたりして、行けそうもないところにまで行ける!
 大人が越えようと思えば越えられそうな壁や段差は全て越えられると言って良い。
 もちろん落ちたら死んでしまような高さであっても制限はなく、自由に死に放題だ!素晴らしい!!
 マップ移動の自由度が高ければ、大抵の操作の悪さは帳消しになる。先ほど書いたダメUIは帳消しです!

 ゲーム起動時のロード時間こそ長いが、一旦ゲームが始まるとマップ移動時にロード画面が挟まることがほぼなく、それでいて遠景までしっかり表示される。
 入店可能な店はロード画面を挟むことなくそのまま入れる!ヘリで飛んでも降りてもロード画面が挟まらない!凄すぎる!!
 そして移動不能になるなどのバグがほぼ無い。個人的にはおよそ50時間かけたクリアまで1回しか遭遇しなかった。

 パッケージには大きな紙の地図がついていて、膝の上に乗せておけばすぐ参照できる。
 この紙の地図を見ながら適当に観光しているだけで、みるみる時間が溶けていく楽しさ。
 車で通過するだけでは見つけられないようなところに「鳥インフルエンザ鳩」がいて、これを駆除するのがやり込み要素として用意されているのもいい。
 クルッポーと鳴いているのが聞こえると近くにいることが分かるのも気が利いているし、飛ぶ生き物なので見つかる高さが一定でないのもいい。

 公園や空港、港、工場地帯など様々なロケーションが用意されているものの、都会の一言でくくれる範囲内ではあるため、風景の変化に乏しいきらいがある。
 そのためマップをちまちま確認しないと、現在地を見失い迷う。

 セーブポイントとして隠れ家が用意されるのだが、今ひとつアクセスが良くない。
 隠れ家の出口には必ず地下鉄のホームに続くエレベータ口があり、路肩には常に(ファストトラベルができる)タクシーが止まってるぐらいで良くない?
 なお出口の前の駐車エリアに(ヘリも含む)乗り物を置いておけばロード後にもそこに残っているというシステムはある。

グラフィック

 PS2で作られていた前作に比べると落ち着いた色調で格段にリアルな映像となっているが、現代の大都会を好きなだけ動き回れるという物量大盤振る舞いなマップなので、個々の人や建物の作りはPS3のゲームとしては荒い方と言える。
 しかしテクスチャやライティングが良いため、ふとした瞬間現実と見紛うような印象を与えることがある。
 その上で、信号の色をおおげさに道路に反射させるなど、プレイしやすい工夫も多く見られる。

 リアリティという意味では、車のダメージ表現に異常に凝っていて、ボディの凹みやガラスの破壊がちゃんとダメージの受け方で変化し、車体がひしゃげたまま走るとボンネットが風圧でめくれて飛ぶ、タイヤも空気が抜けながらパンクするといった凝りようで、最終的には爆発炎上する。
 車体ダメージに関してはソニー(PSYGNOSIS)デストラクション・ダービーの流れを汲むゲームとも言える。

ストーリー

 渋めのグラフィックがゲームの作りそのものにも影響を与えているようで、Ⅲとその続編で実装されていたようなコミック的な派手さはなりを潜めている。
 またストーリーも移民の悲哀を描いたシリアスなもので、自由と栄光の街リバティーシティに来たものの何も手に入れられないどころか失っていくばかり、というビターなテイストに支配されている。

 救急車・消防車・パトカーのサイレン、あるいは車の盗難防止アラームがひっきりなしに鳴っている街だが、それが単なる環境音ではなく「実際に住人が犯した犯罪」に対応して鳴っており、一部始終を野次馬として見物できたりする。
 このように住人の行動アルゴリズムもただ左右に移動するだけのような単純なものではなく、出退勤や観光をしている様子が見て取れたりと、かなりそれらしく動いている。
 またプレイヤーの干渉にもきちんと反応し、ぶつかれば荷物を落とし、銃でロックオンすれば慌てて逃げ出したり、殴れば殴り返して来たり、車を強奪しようとした時に銃で反撃して来ることもある。
 昼夜の時間の流れや天候に合わせた挙動もする。

 犯罪が日常の世界であっても、コメディ要素をもっと増やしても良かったのではないかとは思う。
 個人的にはⅢまでにあったというオモシロ日本要素がほぼ見られないのが残念。

 公園にブランコとかあるのに一切子供が出てこないのは奇妙ではあるが、子供を撃ち殺し放題だと流石に自由に過ぎる。
 子供は無理にしてもブラックラグーンみたいな魅力的な女性キャラを用意できなかったものか。
 特に後半の主要人物は「白人のおっさん」ばかりになるため、話がよくわからなくなるまである。

 ストーリーは「誰かから指示されて殺しを行う」ミッションの繰り返しが基本で、その手段が各種操作のチュートリアルとなっていて、ほぼ全ストーリーを費やしてチュートリアルが完了するという感じだ。
 リバティーシティはニューヨークを思わせる4つの島で構成された街で、ストーリーを進めるごとに封鎖されていた島が解放されて行動範囲が広がる。
 また知り合いが増えるごとに請け負うことのできる仕事が増える。ということで段階的にゲームが理解できるように作られている。
 それにいくつかのミッションが同時に発生し、解決の順番はプレイヤーに委ねられているので、一本道感は少ない。

難易度

 ただ困ったことに、いくつかのミッションはチュートリアルと言うには難易度が高めで、私も途中で「これ詰まったかも」と何度か思った。
 乗り物を使ったミッションは標的を追わせることで、かなり道中を限定して特定のポイントを通過した際に荷物が崩れるなどの決まった事象が発生する。
 また防弾チョッキや救急キット、武器や爆発するタンク、狙撃やカバー可能地点などは、ミッション発生場所が分かっていれば多くは事前に下調べが可能だ。
 このため覚えゲーの側面が強く、繰り返しチャレンジすることでクリアは近づくようになっている。

 それと同時にミッションによっては「初手に大ダメージ与えればカタつくんじゃね?」みたいなショートカットが実行可能だったり、ランダム要素によって勝手に標的が自滅したりする。
 天候や時間帯が変わることによって難易度が変わったりもするので、とりあえず他のミッションをこなした後にやり直したら、あっさりクリアできたりもする。
 あまりに何でもできるので、特定の操作を使うのを忘れて(あるいは知らなくて)意味なく縛りプレイして難易度を上げてることもある。

 オープンワールドのゲームなので、ストーリーを無視して女の子とデートしたり、悪友とつるんで遊び回ったり、意味なく警察と銃撃戦やカーチェイスをしたり、お気楽なプレイもやりたい放題でもある。
 パトカーを奪えば、そこに記録されている犯罪者をハントしてダーティハリーを気取ることだってできる。
 ただし、一部の仕事やサイドミッションなどストーリーを進めるとプレイできなくなるのは明確な欠点。

 時間をかけてマップ全体を踏破し実績を埋めていきたいゲームの楽しみ方と、周回前提の分岐が存在するメインストーリーは食い合わせが悪い。
 メインストーリーは難易度低めで周回前提の分岐はなくし、ボリュームもそんなになくて良かったのではなかろうか。

ローカライズ

 日本語対応はカプコンが中心になっているようだが、音声は日本語を選べず英語を聞き取れない場合は、字幕を読む必要がある。
 これ自体は洋画の字幕版のような雰囲気で悪くはないのだが、本作の場合はプレイヤー操作による車での移動時にミッションの説明などが音声でなされるため、字幕を読んでいる余裕がない。
 車の運転中に会話が進行するのは素晴らしいゲームデザインなのだが、字幕を読むとなるとその体験は地に落ちる。
 しっかり字幕を読むために会話が終わるまで路肩に停車すると、ただ移動する時間が増えるという酷い体験となる。つらい。

 Ⅲ(サンアンドレアス)では薬物関係などぼかして訳したため意味不明になっていることがあったようだが、本作ではそのような部分は感じられなかった。
 テレビやカーラジオ、インターネットの内容、通行人のセリフなど日本語(字幕)化されていない部分も多く、英語がわからないとその辺のニュアンスを汲み取れないのが残念なところ。

 そんな感じで予算さえ許せば日本語音声を収録して欲しかったところだが、許さなかったんだろうなぁ。

問題点

 ゲーム内では多様な車(フォークリフトもある!)・バイク・ボート・ヘリの強奪と操縦、そこらに落ちているものを拾うことから拳銃・マシンガン・ショットガン・突撃銃・ライフル・手榴弾・ロケットランチャーまでの多様な武器をいつでも誰に対しても使え、自由を満喫できる。
 ただ個々の要素はそこまで作り込まれていないし、なんでもできる故に全部の操作を適切に使い分けるのも難しい。
 前述のようにカメラワークが悪いのがあらゆる場面で足を引っ張っている。

 そんなこともあってオンライン要素は「馴染みのある街でプレイヤー同士の対戦ができる」という魅力以上のものは感じられない。
 とは言え2025年現在Ⅴをベースにしたグランド・セフト・オート オンラインの課金収入がロックスターゲームスに経済的安定をもたらしていることを考えれば、この時オンラインモードを用意したのは慧眼であった。

 一旦専用モードに切り替わるダーツやボウリングなどのミニゲームは比較的良くできていて、特にビリヤードは本格的だ。
 とはいえ、セガ龍が如くのように自社のアクションゲームが丸ごと入っているものに比ぶべくもないが。
 遊園地やバス停など「使えるようにするつもりだったろうに動いてない」施設が割とあちこちにあるのも残念な点と言える。

 運転した乗り物や使った武器の一覧や、鳩の駆除箇所・カースタントやヘリでの橋潜り(成功直後は表示される)のマップ表示など、コンプリート要素の補助としてあって良さそうなものがなく、意外にやり込み勢に優しくない。
 仲間がやたらと遊びに誘ってきて無視すると有効度が下がるのは、正直煩わしい。

まとめ

 GTAは気軽に犯罪を犯すプレイスタイルであるため、世界中で様々な規制を受けることとなり(代表的な例について詳しくはホットコーヒー問題 - Wikipediaを参照)、教育に悪いゲームの代名詞ともなった。
 ここで日和らずに、本作を開発し累計2500万本を超える大ヒットを記録したロックスターゲームスの気骨には拍手を送りたい。
 ちなみに、本作の自由の女神のパロディ像である幸福の女神が右手に掲げているのは松明ではなくホットコーヒーである。
 犯罪は犯罪だが、犯罪をテーマにした創作は犯罪ではない!

 操作系の詰めきれなさは、これだけ巨大な世界が作られていると迂闊に変更するとギリギリ取っていたバランスが崩壊しかねないところもあり、「既にゲームとして成立しているなら変えたくない」と言われると「確かにね!」と答えざるを得ないところはある。
 アクションなどⅢから増えている部分もあるが、基本的には武器や乗り物の種類など「やりすぎた」ものを減らして安定を取っていることもあり、問題がありつつも全て「平均より上」がキープできていて面白いのは大きい。
 Ⅰ・Ⅱでゲームの方向性を探り、Ⅲで3Dポリゴンによる再構築をし、本作Ⅳでシステムを整理しGTAの完成を見たといっても良いだろう。

参考

 そこで結論。

できそうな事ができる!この自由(Liberty)こそが尊いのだ!!