ベヨネッタ

対応機種・周辺機器
Xbox360/XboxONE/PS3/PS4/Wii U/Switch/Win
ジャンル
クライマックス・アクション
著作・制作
©セガ / プラチナゲームズ

基本情報

 カプコンの下でビューティフルジョー大神を制作したクローバースタジオの流れを汲む、プラチナゲームズの独立初作品となるのが本作。
 セガの大幅バックアップにより制作されているため、カプコンっぽさとセガっぽさが入り交じった、独特の味わいのゲームとなっている。

 簡単に説明すると「セクシーな衣装を着た魔女ベヨネッタが、襲い来る天使たちを相手に銃や剣を振り回す爽快アクション!」である。
 魔法使いが天使と戦うというと漫画BASTARD!! -暗黒の破壊神-だし、二丁拳銃じゃまだ甘いこっちはヒールに仕込んだのも合わせて四丁拳銃だ!というのも漫画ワンピースの三刀流のゾロと発想が一緒ではあるし、格闘とガンアクションの融合したバレットアーツは映画リベリオンのガン=カタが浮かぶ。
 中二病的には「いい子ちゃんどもをぶっ殺すぜ」「武器を沢山持ってたらかっこいいし強いだろ」というよくあるヤツだが、それはエンターテイメント的には全く正しい選択だ。
 ゲームが好きな連中など、己の中二病魂を炸裂させたい奴しかいないからだ!

 本レビューはPS3版で行っている。同時発売とはいえ内実は「プラチナゲームズが作ったXbox360版をネクスエンタテインメント(セガの子会社)が移植したもの」なので、FPS含め画質が悪いとかロードが遅いとかあるが、良い部分も悪い部分ももっと根本的なことなので、そう評価に関わる違いではない。

グラフィック

 カプコンデビル メイ クライのスタイリッシュアクションに対してクライマックスアクションを標榜している本作。
 どちらもディレクターを神谷英樹が務めることもあり、ゲームシステムやゴシック洋式の背景まで含めて類似点は多い。
 ベヨネッタの見た目はざっくり「ぴっちりスーツのアンジェラ・アキ」だ。2025年現在だと漫画ダンダダンの星子の髪を黒くした感じ、の方が通じやすいかもしれない。
 アイドス/Core Designトゥームレイダーシリーズのララ・クラフトを筆頭に、ゲームで女性主人公というのも珍しくないが、ずっとメガネをかけているのは…多分業界初では?ここは超高く評価したい!!
 本作よりだいぶ前に出たカプコンP.N.03のヴァネッサのサングラスは、メガネといえばメガネかなぁ。その前だとLSIゲームのアラレちゃんとかになる気がする。

 当時の映像のレベルでいうとXbox360版であっても頂点というわけではないが、とにかく衣装や敵、背景のデザインが突出して格好良いので、細かい部分は吹っ飛ぶ。

 ゲーム中に拾う貨幣に相当するエンジェルリングは、名前で天使と絡めているように思わせて、その見た目はセガソニック・ザ・ヘッジホッグのリングそのものだ。
 こういう嬉しい小ネタが絵的にも文字的にも大量に入っている。

ゲームシステム

基本的な戦闘アクション

 ゲーム部分は一本道で探索はメインではなく、ほぼ戦闘で構成されるアーケードスタイルな作り。
 基本はセガバーチャファイター的なパンチとキックを押す順番やタイミングで様々な技に派生する攻撃システム。
 それにジャンプボタンを追加し、1対多のステージクリア方式に組み合わされたセガダイナマイト刑事の系譜と言える。
 ただ、ベルトスクロール的な画面レイアウトと固定に近いカメラワークを守っているダイナマイト刑事に比べ、カメラが自由に動く本作は間合いの掴みづらさがある。
 そのためアクションは距離を無視できる銃撃、一度当てたら攻撃を継続できるコンボ、間合いによらずタイミングでどうにかする回避で構成される。
 にしても特に巨大な敵との距離感が掴みづらく、敵を攻撃してるつもりで「ひたすら空気を攻撃してる」ことがある。
 また狙って出せる投げ操作がないので、カプコンのベルトスクロールでお得意の「投げて敵を一方にまとめて攻撃」ということができず、1対1を繰り返す場当たり的対処になりがち。
 実際に本作では人間サイズの体力がある敵との1対1の戦いが一番面白く、その調整のまま別の戦いを作ってるようなバランスのチグハグさを感じた。

大量にあるアクション操作

 本作の目玉システムである時間がゆっくり流れるウィッチタイムは、ジャストタイミングの(ダッヂ)で発動する。
 このウィッチタイムは最後までタイミングが取れなかった。コンボも含めて全体にタイミングが取りづらい。タイミングを測る目安となるマークや音が多分ない。
 こうタイミングを取るのが難しいと、ビューティフルジョーのSLOWのようにボタン一発で発動できた方が良かったのではなかろうか。
 最終的に自力発動は諦めて、失敗しても自動でウィッチタイムを発動するアイテムを使うことで多少プレイ感が向上した。
 ちなみに名称は映画マトリックスの撮影技法バレットタイムからかと思う。
 なお、ウィッチタイムとは別に敵の方向にレバーを入れることで発動する弾き操作もある。一回も成功した記憶がない。
 他にもダッヂオフセットという回避後にコンボを継続できる技もあるが、意識して出せたことは一回もない。

 基本的なチュートリアルはついているが量が多すぎて覚えきれない。相手の許容量を無視してひたすら食わせてくるお婆ちゃんみたいなサービス精神。
 ローディング中に技のトレーニングができるが、ローディング完了とともに強制終了する上に、敵も出ないし武器なども選択できない。独立したトレーニングモードを別に付けるべきだった。
 トレーニングはSELECTボタンでロード完了後も継続できる。ちなみにムービーを飛ばすのはL2+R2+SELECT操作。
 これらの操作がゲーム本編にもマニュアルにも書いてないことから開発終盤に慌てて追加した仕様と想像できる。デバッグ用に入れてた操作が残ってる可能性も高いが。

マップやギミックの作り

 マップは前述の通り一本道なのだが、その進路を強制する為に「透明の壁」(カプコン開発用語的には「大人壁」らしい)を多用しており、特に崖の縁はほぼ透明の壁で覆われている。
 ただ全てがそうではなく、落ちる場所もありかつ見ても落ちるかどうか分からないという酷い仕様が採用されており、マッハでストレスが溜まる。
 満月が出ている時は魔女の能力として壁を歩くこと(ウィッチウォーク)ができるのだが、歩ける壁と歩けない壁が分からず、これもストレス。
 おそらく大抵のプレイヤーは満月がアップになる演出が「ウィッチウォーク使えますよ」のサインであることに気づいてないと思う。
 これらことにより、行けそうもないなと思ってたらそこが正解ルートだったり、逆に不正解ルートに延々トライすることもあるし、不正解っぽいけど行ってみるとアイテムがあったりもする……。

 ところどころ先に進むために仕掛け(ギミック)があってそれをクリアする必要がある。
 このギミックの解法自体が難しいというより分かりづらい。解法として「こうすればいいのかな」と操作しても思ったように動かない。
 問題は色々あるが例えば、Lスティックを回す操作が顕著で、異常に沢山回さなければいけないのか、判定が厳しいのか、なかなか動いた感じがしないので途方に暮れる。
 他にもボスの倒し方はどの攻撃が効いているのか、どこか壊したり飛び乗ったりすると効果があるのかないのか分からず、ゴリ押ししているうちになんとなく勝つことが多かった。
 任天堂ゼルダの伝説シリーズのボスに対して、直前に手に入れたアイテムを使って、あからさまな弱点を攻撃することに「こう親切だと自分で閃いた気になんねぇな」などと、文句を垂れていたが「なんで倒したか分からないうちに倒す」ことの気持ち悪さに比べたら「私が悪うございました」という気になる。

 敵にキスマークみたいなのがつくけど、今もあれがなんなのかよく分からない。おそらくロックオンマーカーだと思うんだけど自信がない。
 こんな感じで、あらゆる場面でプレイヤーへのお知らせが下手。

 難易度的に NORMAL では装備を整える意味でもゲームに慣れる意味でも繰り返しプレイは必須の難しさ。
 VERY EASYを選択すると、簡単にはなるがコンボ使うまでもなく敵が倒れ、薄味のゲームがより薄味になってしまう。
 どちらにしろ、あまりバランスが取れているとは言い難い。

微妙なUI

 UIの細かい部分での作り込みが甘い。
 特に個人的にはステージクリア後の射的シーンで上下の操作方向を入れ替えられないのがストレスで、それが原因でゲームを放り出したくなったほどだ。
 他のミニゲームやカメラ操作の上下は設定できるのだが。
 ロックオンと回避がR1とR2ボタンに割り当てられていて、ロックオンしつつ回避という操作に人差し指と中指が必要になってしまう。なのにボタン入れ替え設定がない。
 そういうちょっとしたダメな部分が大量にある。遊べるんだけど遊びやすくはない、みたいな隔靴掻痒感。

 アイテムを十字キーに装備して使えるが、長押しが必要なので忙しい戦闘中は使いづらい。ならポーズ中に使わせるだけでいいのでは?
 ちなみにいくつかのアイテムは道中で拾う材料から合成できる。嬉しいというより面倒臭いが先に立つ。
 正直、任意にアイテムを使用できるより、拾った瞬間に発動するタイプの方が面倒がなくて良かった。

 そして、ちょいちょい画面に表示されたボタンやスティック操作をすることでアクションが実行されるQTEの場面があるが、即死が多い、たいてい連打やスティック回転しかも長い、出る位置が狭い、ボタンが行動に対応してない(例えば避け動作が避けボタンR2じゃなくてパンチ+キック△○)ことがあるなど分かりづらい、ダメなQTEの見本市。
 QTEをさせる気だったような戦闘ムービーも多いが、想像するに「お出しするのが憚られるぐらいダメ」だったのでQTEが削除されて動画だけ残った雰囲気だ。
 そのため戦闘ムービーでは、操作が入らないのは勿論、物語の進行もない虚無の時間が過ぎてしまう。極め付けにムービーの半分ぐらい戦闘の印象。
 ここで戦闘ムービーはゲームの面白さに寄与しないから削除、と決断できなかったのがこのゲームの負債になっている。
 そういう経緯でなかったとしても、カッコ良い動画を見せるんじゃなく、カッコ良いプレイさせてくんないかな。映画じゃないんだから。

 幸いメインの移動やカメラワーク、攻撃などの基本的な操作感については、おおむね快適。
 ただコンボのタイミングが掴みづらく、クリアした後もPP・Kみたいに間に一拍置くタイプのコンボは狙って出せなかった。

ストーリー

 「良いバトル漫画はバトル中に話も進む」という格言(?)があるが、本作の場合は次のような感じで話がさっぱりわからない。

  • アクションパート:背景に物語を感じさせるわけでもなくNPCと話すこともない
  • 戦闘ムービー:戦闘しかしてない
  • 会話ムービー:格好つけた思わせぶりなセリフと意味不明な用語で構成される

 PS3版の場合は英語音声に日本語字幕なので、余計にセリフが脳に留まらずに滑っていく。
 さらにはムービーは固定したキャラをカメラワークだけで動かすとか、ほぼ静止画みたいな部分が多く、水増し感がハンパない。
 そういうムービーが数秒挿入されるのなら「容量も使わずテンポも損なわない上手い手法だ」と思うが、本作はとにかくダラダラ長い。
 フィニッシュ技(トーチャーアタック)のなど戦闘中にもかかわらず演出が長いし、連打みたいなただ疲れるだけの操作が必要なので、一回見たからいいやってなりがち。
 ムービーのスキップもしづらい(QTEが入っているとそもそもできない)など全体に動画の押し付け感が強く、ストレスになっている。

 こう書くと「ストーリーないの?」って事になるが、世界設定や経緯は道中で拾う本などに書かれている文章で提示される。
 この大量の文章が面白いわけでもなく、物語の背景がわかって嬉しいより「読むのめんどくせぇ」の方が圧倒してしまった。
 中学生に「俺が作った超絶面白い世界の妄想ノート」を見せてもらったみたいな、なんとも言えない感じというか。
 ストーリーだけ外注とかした?という感じにゲームと融合してない。

水増しを感じるボリューム

 対戦格闘ゲーム並の攻撃バリエーションがあり加えて武器の装備によるバリエーションもあるが、「全く覚えられる気がしない」ので使いやすい数種類の攻撃方法を見つけたら延々それを繰り返すプレイになってしまった。
 そういえばロックオンと挑発、武器切り替えボタンは最初に試したきりで、全然使わなかった。やれることが多すぎて頭がついていかない。
 選択肢が多すぎると人は不幸になるという「選択のパラドックス」という心理そのものだ。
 アクションを理解できてないので、いくつかあるチャレンジステージ(アルフヘイム)はひとつもクリアできず、ただただ理不尽な気分を味わった。

 どんな敵が出てきても技の使い分けができず結局ゴリ押しをするため、ステージが進んでもやることが変わらず、ボリュームがあっても特にバリエーションを感じることができなかった。
 そこに危機を感じてミニゲームを入れて変化を出そうとしたのだろう。
 セガのレースや3Dシューティングの名作っぽい作りだし名曲も聞けて最高!となるかと思いきや、別操作系になる上に操作感が悪いにも関わらずクリアに時間がかかるので、プレイ経験そのものを悪化させている。

 このステージとムービーの長さと、繰り返しプレイ前提のランキングシステムとの相性がまた悪い。
 チグハグの極み!

 作っている方は一生懸命にボリュームを出してサービスしていると思っているのだろう。
 しかしボリューム出すことに邁進することで、ゲーム本体が今ひとつ面白くないという根本的問題から目を逸らしてしまったように思える。
 マップやボス敵の使い回しなど、プレイ時間を伸ばすことそのものが目的化してしまっている。
 象徴的なこととして、決めのシーンで使えば感動を呼んだであろうFly Me to the Moonも「またかよ!」って印象の曲になっている。
 最終的に、受け手としては水みたいに薄いカルピスを飲む羽目になるという、誰も得をしない結果となってしまった。

まとめ

 カプコンはデビル メイ クライ戦国BASARAアスラズ ラースと、ベルトスクロールのアクション部分を3Dにしてステージの間をムービーで繋げるようなゲームをたくさん出し、本作もこの系譜と言える。
 しかし、この方式でボリュームを出すのはいよいよ難しい段階になったのだなと感じる(というか最初から無理があるとは感じていた)
 プレイヤーが期待する(あるいは制作者が値段に見合っていると判断する)ボリュームと、ゲームシステムとして適切なボリュームに齟齬がありすぎる。
 たぶん、本作はムービー、技数、システム、ステージ、その他、1/4ぐらいが適切なサイズだったかと思う。
 増やすにしてもただ技とステージを増やすのではなく、4キャラ選べるとか4ルートあるとかのほうが変化があって良かったろう。開発の体力がなくて、できなかったこととは思うが。

 そもそもアクションパートとムービーパートが交互に来るようなゲームは、アクション好きも映像好きもどちらも満足できないものになりがち。
 本作の場合はゲームや物語そのもののの面白さより、格好良いキャラとアクションに洒落た台詞回しと音楽、荒唐無稽なバカバカしいアクションシーンといった、デコレーション部分で満足させる荒技で押し切っている。
 カッコイイキャラと音楽が最高でコメディっぽさもあるアクションゲームである本作、セガマイケル・ジャクソンズ ムーンウォーカーと同じジャンルかもしれない。

 個々のゲームシステムを取り上げると魅力的な物が揃っているが、合わせてみると不協和音。
 そして、ほとんどの場面に共通する難点は「プレイヤーの誘導が下手」で言い表せる。

 ちなみに本作(のXbox 360版)はファミ通クロスレビューのプラチナ殿堂入りソフトになっている。
 クソゲーとは言わないが「ファミ通の目は節穴」と言っても製作者ですら同意するのでは?

参考

 そこで結論。

デコレーションは神ゲー!ゲームは冗長にして(いびつ)