戦国BASARA

対応機種・周辺機器
PS2/PS3
ジャンル
スタイリッシュ英雄アクション
著作・制作
©カプコン

基本情報

 にPS2で発売された戦国BASARAは、違うところだけ紹介するのが手っ取り早いほどコーエー戦国無双とあまりに似ている。
 当時の開発規模としても流石に一年半でリリースするのは無理だろうと思われるかもしれないが、雑誌などでの先行情報から考えると2年以上の開発期間はありそうで、真・三国無双から発想して基礎研究に入ったなら三年の開発期間があってもおかしくない。
 さらに言うと無双に比べるとかなりシステムやボリュームを簡易化しているので、一年半で開発していてもおかしくないと思える。
 どのくらい似ているかというと操作系や操作感がほぼ同じなので、無双プレイ済みだとマニュアルなしでいきなりプレイしても違和感なくプレイできてしまうだろう。

 なお、本記事はに発売されたPS3版の戦国BASARA HD Collection戦国BASARA部分をプレイしての感想になるが、キャラや背景のモデルが口パクするようになったなど上等になったことや、読み込みが早くなった以外の基本的な内容は同じようだ。
 PS3版でもPS2版からキャラ表示上限があまり変わってないようで、敵が何もないところから急に出現する⋯ここは良くなってて欲しかったなぁ。

 以後戦国BASARAは本作、戦国無双は単に無双と書く。

デコレーション

 コーエーは無双の声優について青二プロダクションと独占契約しているっぽく、そのおかげで大量の声優を安定的に使用できるが、逆に他の事務所の声優は使われていない(よね)
 そのため本作は若本規夫や玄田哲章などなど重点的に有名人気声優を起用できており、どのキャラも「どっかで聞いたことがあるいい声」をしている、個人的に上杉謙信の朴路美はハマり役だなと思う。

 イベントムービーは3DCG(制作:デジタル・フロンティア)で作られたものと、手描きアニメーション(制作:マングローブ、作画監督:サムライチャンプルーの中澤一登)が混在しており、とにかく素材を各所に発注して間に合わせた、という感じがする。
 またテーマソングはT.M.Revolutionのcrosswiseを採用している。
 この辺りのゲーム本体の出来と直接関係のないマーケティング的な部分の飾りつけは入念に行われており、少々えげつなさを感じないでもないが、そこは商売なので。

主な相違点

 制限時間がない、拠点を取り返されない、マップが直線的かつ平面的で城内外の区別がない。
 敵大将を倒すと勝利、プレイヤーの死亡で敗北と勝利条件がシンプルで、戦闘中の指令も1マップ1回あるかないか。
 固有技はコンボ回数によって変化しない。
 弓攻撃がない代わりにカプコンお得意のメガクラッシュ(本作ではバサラ技)があり、ピンチの場合に無敵状態の高火力技が使える。
 二人プレイモードがないし護衛兵もいないので、常に単独行動。

 日本地図を荒っぽく区切ったものから隣接する区域を選んで戦場に出て、戻るたびに他の区域同士で領土の取り合いが起きるが、どうもその結果は乱数のみで決まっている雰囲気で、だいたい5、6回戦うと日本統一に至り1キャラクリアとなる流れ。
 戦略性はほぼない上に、プレイアブルキャラ16人に対し戦場マップが18と少なく、ほぼ全キャラ同じようなプレイ感になる。
 おそらくこの日本地図による国取りもどき、少ない戦場数で何とかプレイの単調さを誤魔化すために入れられたアイディアではないかと思われる。

 ざっくり言えば、無双の持っているシミュレーション部分を丸っと削除し、アクションも簡易化したのが本作ということ。

 なお、天下統一や自由合戦というモードに入ったらタイトル画面に戻る方法が用意されていないので再起動する必要がある。…こういうダメなところまで無双シリーズを真似てるのは、流石に苦笑するしかない。
 ちなみにPS2版だとSELECT+STARTボタンでソフトウェアリセットが可能だったと思うのだが、PS3版ではできない。何なんだ。

キャラクタとストーリー

 本作は年齢や年代など全く気にしていない歴史考証ガン無視上等で作られている。
 そのため、伊達政宗が「レッツパーリー(Let's party)!」と叫ぶ馬に乗った暴走族の頭だったり、本多忠勝がどう見ても機動兵器(ロボット)だったりと、キャラ起ちに全振りした作りをしているのが本作の独自性と言える。
 戦場にも映画スターウォーズのスノーウォーカーみたいなメカが登場したりする。
 この本作の特徴の大半を担っているキャラ作りにしても、幸村が信玄の直属(というか弟子)みたいな扱いなど、史実より無双を底本にして作ってるような部分が散見というか⋯概ねそうなの、流石に武士なら恥を知って切腹せねばならんのでは?と思うぐらい類似してる。武士じゃなくてよかったね!

 武田信玄、真田幸村、猿飛佐助の武田軍、織田信長、濃姫、森蘭丸、明智光秀の織田軍と、キャラの所属軍に変な偏りがある。どうもこのあたり無双を参考にしただけで、キャラが集中していればムービーを使いまわせる程度の考えしかないのでは?という気がする。
 プレイアブルキャラに前田利家に加えて妻のまつまで登場、戦国武将から厳選しての選択としてはかなり意外性があるが、直近のNHK大河ドラマの利家とまつ~加賀百万石物語~を参考にしただけな気がする。
 島津義弘がプレイアブルなのも結構謎で、本作では本多忠勝のライバルという設定なので葵 徳川三代からなのか。
 逆に豊臣秀吉および配下の武将が(モブとしてしか)出てこないという歪な戦国が発生している。

 上杉謙信の軍には直江兼続を差し置いてオリジナルのプレイアブルキャラ「かすが」という忍びがいる。それと青森あたりに配置される「いつき」は、どこから持ってきたのか謎。
 同じくオリジナルキャラだが、おそらくフランシスコ・ザビエルをモデルにした「ザビー」が領地を持っているのも違和感がすごい。
 この辺のオリジナルキャラは同社のデビルメイクライ鬼武者のボツキャラで水増ししたと言われたら納得してしまいそうだ。

 そしてプレイアブルでないボスキャラとして徳川家康、長曾我部元親、北条氏政、毛利元就、今川義元が登場する。多分これらの武将はプレイアブル予定だったけど独自モーションや戦場マップが間に合いそうにないからカットされた雰囲気。
 各戦場ごとにモブ武将として5人程度の名前が出るのだがそのチョイスも結構謎で、歴史好きが喜ぶ武将をハズしているのは、なんかテキトーに無双で見つけた武将を配置した、みたいな雑さを感じる。
 特に好きでもないジャンルをうろ覚えの中学までの教科書とドラマと無双の知識だけで設定したような雰囲気とでも言えば良いか。
 こんなに史実を無視するんなら最初からキャラも地図も日本じゃなオリジナルにすればいいのにと思ったりもするが、曲がりなりにも日本を舞台にしたことで戦国ブームを産むのだから世の中わからない。

パクリについて

 カプコンは過去にデータイーストファイターズヒストリーを自社のストリートファイターⅡとの類似性で訴えたが、最終的に和解で決着している。
 この記憶によりカプコンが「法的に問題ない模倣のライン」を学んだ結果出てきたのが本作戦国BASARAではないかと邪推している。
 江戸の仇を長崎で討つじゃないが、コーエーとしてはとばっちりもいいところである。
 余談だが、カプコンがコーエーを「ディスクでゲーム内容を追加する」特許で訴えて勝っている…コーエーが散々追加ディスクを発売した後に訴えるの悪質感がある。

 とはいえ「二つ目ならパクリだが三つあればジャンルになる」という言葉もある通り、鎧伝サムライトルーパーだけなら和風聖闘士星矢という認識だが、インド風の天空戦記シュラトがあるのでこれはイケメン鎧バトルというジャンルという認識になる、本作もある意味この流れにも乗っている。
 ただパクるにしても普通はモチーフ程度は変えるものだが、本作は無双からゲームシステムはもちろん戦国モチーフまで丸パクリで、流石にこれはカプコンも落ちたなぁ⋯と発売当時も話題になったものだ。
 しかし勝てば官軍。戦国BASARAはいわゆる歴女を中心に大ヒット、というか歴女を生み出した起点とすら言える。
 この人気は凄まじく、2009年にアニメシリーズが作られ、2013年には宝塚歌劇で舞台化までしており、続編は2025年現在に4まで作られている。

 本作によって無双シリーズがジャンルとしての力を持っていると(再)認識したコーエーが、他社で乱発されるぐらいなら自社でジャンル全体を賄ってやれ!と大きく舵を切りガンダム無双以降多数の巨大IP無双を開発し無双ジャンルの寡占化に繋がったのではないかと、個人的には夢想している。
 大抵の無双風ゲームも他社タイトルに見えてコーエーテクモ(オメガフォース)開発であり、他社開発でヒットしたのはマーベラスFate/EXTELLAぐらいか?
 2025年現在戦国BASARA 烈伝シリーズ 真田幸村伝でシリーズが絶えていることも、コーエーテクモの無双飽和攻撃の成功を意味している。
 カプコンは一戦場(タイトル)で互角の戦いをしたが、無双系という領土を戦略的に支配したのはコーエーであったという感じだろうか。

 創作のパターンのひとつとして「あの人気作を自分が作ったとしたら?」というものがある。それが文化を豊かにしている側面は確実にある。
 カプコン的には「これは鬼武者の流れを汲む作品です」という言い訳を用意していたかもしれない。どの作品も複数の潮流の中に存在しているものではある。
 また類似の作品があることにより内容が洗練されて、より素晴らしい作品が生まれる土壌ともなる。
 もちろんオリジンとなる作品を作った側の苦労にただ乗りするのはどうかという倫理問題はあるが、少なくとも日本の法律的には「このくらいなら類似性は高くない」と判断されるレベルであり、そのような創作を制限しない方向に調整されている事は、基本的には良い事だと考える。
 最終的には市場が判断すればよく、本作は市場によって「問題ないむしろ良い」と判断されたわけだ。

まとめ

 見た目やゲームシステムの類似性だけでは、よほどでないと違法とはならないことの例として非常にわかりやすいのが無双と本作の関係であり、それはそんなに悪いことではないだろう。
 とはいえ類似のゲームを出されたくないがために防御的に大量の特許を保持し、特許取得合戦になるのも困る。
 大局的にはあまりに類似した作品を出すのは業界全体を息苦しくさせる悪手であると言えるのも確か。

 本作に関しては類似性がある故に、凝りに凝って手間のかかった作品より、むしろ軽く遊べるものをプレイヤーが求めている、という気づきを与えてくれる面もあったかと思う。
 ほとんどの改変点は「シンプルにしてプレイしやすくしよう」というより「実装に時間かかるからやめとこう」という突貫工事的な判断がなされているように思う。
 ただ「大ヒット作を真似れば大ヒット」と安直に作った作品は大抵は大ヒット作の芯を外した「似てるけど他はクソ」みたいなものになりがちだが、本作はきちんと芯を捉えている。
 なんなら無双がシリーズを重ねることで見失っていた部分すら捉えていて、実際後の無双シリーズに逆輸入された要素もいくつかある。
 とは言え似すぎである。カプコンぐらい大きな会社には、独自性の高い作品の開発を行なっていただきたい。

参考

 そこで結論。

このくらい露骨にやっても大丈夫!という参考になるな!!(ただし特許や商標は別)