アスラズ ラース
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基本情報
映画のようなアクションを簡単な操作で展開していくアクションゲーム。
インド神話(バラモン教・ヒンズー教・仏教)をイメージソースとした壮大な物語で、キャラデザインは仏像的な意匠とSFが融合した、他にない格好良さがある。
毎話、冒頭の映像に製作者のクレジットが入り、間にアイキャッチが入り「つづく」で終わり、幕間のイラストムービーが入り、次回予告があるというテレビアニメみたいな作り。
板野一郎や安元洋貴、釘宮理恵、井上喜久子、石塚運昇などなどを呼んだりと、期待も高まる。
発売当時では雑誌でも推されており、日本ゲーム大賞2011フューチャー部門受賞(要は発売前の期待のソフト)ともなり、テレビCMが多く打たれていたように思う。
PS3とXbox360で発売されているが、このレビューはPS3版をプレイしてのもの。
ビジュアルと物語
ムービーは絵画的なタッチを感じるテクスチャで面白い。
下手すると「テキトーにフィルタかけた」みたいなダサい画像になるが、本作はなかなかセンスが良く、格好悪いの一歩手前で踏みとどまっている。
格好悪いの一歩手前が、一番格好良いのだ。
また、映像の演出に合わせてゲージ量が変化し、怒りが定量的にプレイヤーに伝わるのはゲーム的で良い。
ただ全体としては、壮大な物語とか煽ってるが「ガイナックス→トリガー系のアニメ好きなんだね」あるいは「カプコンもたいがい地球のビジュアル好きだよな」程度の感想しか湧かない。
大きな声出せば熱い話だと思ってんのか? みたいなシナリオに、声優の熱演に反比例して冷めていく己。
なんか深そうなこと言ってるけど何も言ってない感じが、かっこいい絵を描く人が脚本まで書いちゃった雰囲気。
劇中のセリフが各話タイトルになってたり、クラシックを劇伴に使ったりという演出、やりたいよねー、そういうの。
ざっくり言うと「中二病罹患者に金渡したらできあがりそうな感じ」でむず痒い。
デザインの意味が絵だけで終わっている
デザイナーのセンスがダメな方にも暴走しているのが困ったもの。
「ユーザインタフェースを考えないデザイナーが格好よさだけで決めた」感じのダメデザインが横行している。
- 字幕やステータスが背景に埋もれて読めない。
- メニューがカーソルではなく背景の明暗でポイントするので、選択肢が2個の時はどっちを選択しているかわからない。
- ムービーのスキップ表示が出たり出なかったりするので、どこでスキップできるかわからない。
- 照準操作の上下左右設定がない。
- などなどなどなど…
映像はすごく凝ってるのに、声と唇を合わせることが全然できてないのも萎える。
全体に音の扱いが雑な感じがあり、仮置きした音がそのまま使われているような違和感のあるシーンが散見される。
また、フレームレートや画面の乱れも見られ、一枚絵として綺麗だったらいい、みたいなディレクションを感じる。
ますますイラストレーターが作った雰囲気だ。
QTEは好きだが擁護できない
本作は全面的に、映像の途中に出る表示通りに操作することで進行するQTEを採用している。
操作指示は基本画面中央に出るんだけど、たまに中央以外の成功時の映像出現箇所に出たり、レバーを動かす向きと近いポーズを取るとかあって、ちょっと面白い。
強打(カウンターなどタイミングあり) = △、連打 = ○ みたいな使い分けは徹底してるようで、(若干例外はあるものの)これはいい。
ただし褒めるのはこのくらいで、あとは「ダメなQTEの特徴」とかで検索して出てくるのを読めば、だいたい当たってるだろうというほど酷い。
なお、QTEのせいでつまらないのではなく、つまらないQTEだということを主張しておきたい。QTEは悪くないんだヨォ。
- 失敗時にルート分岐はもちろん絵的な違いもなくゲージが減るとかでもないことが多く、紙に描いたゲーム機でごっこ遊びしてるかのよう。
- 「あれ、このまま最後までムービー?」とか思い始めたころに急にQTEが来たりと、テンポがおかしい。
- ボタンの出現パターンや動画のリアクションのリズミカルさがなく、ボタン押しても気持ち良さがない。
- などなどなど…
せめてQTEが発生する場面には必ずゲージを表示するなどしてモードをはっきりさせるか、QTE間のムービーを数秒程度にするかしてほしかった。
緊張すればいいのか弛緩していいのか混乱し、映像にもQTEにも集中できない。
いわゆる「負け確定イベント」が多いのも爽快感や納得感に欠ける。
ムービーに合わせてボタンを押すゲームとしてセガスペースチャンネル5と同じジャンルと言ってもいいかもしれないけど、ゲームとしての本作の完成度は段違いに低い。
それはもうバンダイプレイディアのゲームの方がマシではないか? と思っちゃうほどの完成度の低さだ。
腑に落ちないシステム
QTEシーンとムービーの他に、3D格闘アクションと3Dシューティングのシーンがちょこちょこ挟まる。
カプコンとサイバーコネクトツーと言ったら、本邦最高峰のアクションゲームの作り手と言っても過言ではない。
なのに、打撃が当たってんのか当たってないのかわかりづらいなど、基本的な部分ができてない。
社内になんのノウハウの蓄積もクオリティチェック部門もなく、個人技任せだったということなのか?!
ゲージの付け替えでキャラの性質が微妙に変わるシステムは、武器・防具がわりにつけたんだろうが蛇足感が半端ない。
初回限定版のダウンロード特典として特別なゲージを用意してるんだけど、貰って何が嬉しいんだかわからず、営業的にもゲームシステム的にも全方位的にダメ。
バースト表示が出ている箇所では[R2]ボタンを押さない限り先に進まないので、バトルポイントが無限に稼げる(多分、体力がなくならない限り)
これはもうゲームシステムが崩壊してる。
戦闘能力を高めるアンリミテッドモードというやつがあるんだけど、これのために専用ゲージと発動用のボタンがある。
ムービー見てる間に忘れて、どのボタンで発動するか思い出せないこと請け合い。…いらんだろこれ。
その他、回避・ジャンプ・ショット・ターゲットロックのボタンがあるんだけど、なくていいんじゃないかなこれらも。
映像体験を前面に出すなら、レバー + ボタン×2ぐらいに制限して良さそうなのに、本作は全ボタンを使わせるのだ! バカなの?!
説明の下手さ
最初からクライマックス方式は、映像作品の掴みとして観客を引き込む効果があるが、ゲームに使うのは甚だ疑問だ。
まず序盤は、ボタン配置などのシステムはもちろん、どれが敵で味方で自分(プレイヤーキャラ)がどれか、攻撃の威力や効果、何もわかってない。
ゲーム好きが興奮して「一撃で10万ダメージだぜ!」とラストバトルを見せるが初見の友達には1ミリも響かない、みたいなゲーマーやらかしを製品としてやらかしてる。
はっ…恥ずかしい! プレイしてて恥ずかしい!
1話に△を連続で押すシーンがあるんだけど、これだけ近接した間隔で押させるのゲーム全体で多分ここだけ。
これだけでももうチュートリアルとして機能してないのが分かるかと思う。
そして、2話で地上戦の全操作方法を一気に教えるというダメチュートリアルを繰り出してくる。
そんな一度に覚えられるわけないだろ!!!
阿漕なダウンロードコンテンツ
ダウンロードコンテンツ(DLC)として外伝的なものや、ストリートファイターのリュウや豪鬼と戦うシナリオを売るのはいいと思う。
システムを流用して遊んでみましたよ、本編が気に入ったら買ってみてね、って事で、楽しめた人により楽しみを提供する良い商売だ。
でも本編全4章のうち最終章が有料DLCってどういう事よ! 無料でも本編がDLCはダメだと思うのに、700円近いとか強気にもほどがある!!!
DLCといえば、同じサイバーコネクトツー開発のバンダイナムコジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトルでも「当然入ってると思ってたキャラが有料、(時間でも回復するものの)シナリオ進行アイテムも有料」として問題になっている。
こうなると、カプコンやバンダイナムコではなくサイバーコネクトツーの感覚がちょっとおかしいのではないか? 疑惑が湧く。
中古や違法コピー対策としても、むしろ正規に購入した人がバカを見るようなバランスではないか?
虐待(違法コピー)された子供が、自分の子供に虐待(ユーザいじめ)を繰り返す悲劇を見ているようだ。
本作は前述の通り初回版正規購入品にダウンロードコードの封入も行っていて、ネットワーク環境がない人は? という問題はあるが、その辺で止めておくべきだった。
まとめ
とりあえずプレイすれば先に進み、そんなに時間がかからず(5時間ほど?)に最後まで到達する(条件付きシナリオやDLCを含まず)ので最後までプレイできた。
しかし、ゲームとしての面白みをどこに見出していいんだか、さっぱりわからないし、多分作ってる方もよくわからずに作っちゃったんだろう。
テレビアニメ用の企画が通らなかったから、ゲームのガワ被せて流通させたような雰囲気の作品だ。
ムービーゲームの問題点である「一度映像作っちゃったらゲームバランス悪くても調整しづらい」という点がモロに出てしまったようにも見える。
なお、アスラズ ラースはスロットマシンとしても発売されているようだ。
参考
そこで結論。
自慢のキャラとシナリオを延々説明されているような、プレイヤー置いてけぼりゲーム