無双OROCHI 2
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基本情報
2大無双の夢の共演を果たした無双OROCHIから4年、プラットフォームをPS2からPS3へと変え、ベースとするタイトルも真・三國無双6(以下単に三國)と戦国無双3(以下単に戦国)にバージョンアップ。
さらにBLADESTORM 百年戦争、ジルオール、TROY無双のキャラクタを追加。
加えて、テクモと合併したので以前は考えられなかったデッドオアアライブ、NINJA GAIDENからも参戦。
そして本作専用に有名な伝説・歴史のキャラを追加して総勢132人という、もう感想も限界を超えて「あー、すごいっすね」ぐらいしか言えないプレイアブルキャラ数に!!
声を録る作業だけでも気が遠くなるのに、かなりの部分が新録のようで恐れ入る。
なお、本作はナンバー的には2だが、2008年に出た無双OROCHI 魔王再臨(以下、魔王再臨)という、基本キャラやマップデータは第1作と同じもののゲーム内容が一新された続編を挟んでいるので、実質は3と言っていいかもしれないが、一応、前作の言葉は魔王再臨ではなく無印無双OROCHIを指して使う。
多機種展開としては同じ内容のものがXbox360に、4人対戦やキャラを追加したPSP用の無双OROCHI 2 Special、Wii U向けに新要素とキャラを追加した無双OROCHI 2 Hyperが発売されている。
基本的な内容は一緒だが、一応ここではPS3版を元にしたレビューであることを明言しておく。
なお、無双OROCHI 2 Ultimate(PS3・PS4・XboxONE・Switch)は、新要素程度ではない大きな追加・変更があるので、本レビューは参考程度で。
ストーリー
なんか時代も場所もごっちゃになった世界に無双のキャラが飛ばされてきて、世界を元に戻す為に戦うという雑なストーリー。
だが、時間を遡り過去で起きた出来事を改変していくというループものの面白さもあり、ちゃんとゲームの面白さに貢献していて合格点を出せる。
本作はストーリーが勢力毎に分かれていないので、より別ゲーム間のキャラクタの交流が激しくなって、キャラゲー的においしい。
キャラ・グラフィック
OROCHIシリーズはキャラクタもマップも三國・戦国の使い回しではあるが、魔王再臨を経て追加されてきたキャラや他のゲームのキャラも多く、それなりに独自性が出ている。
本作ではヨーロッパ系のキャラも追加されたので、もうADKワールドヒーローズかTYPE-MOONFate/stay nightかという混沌とした状態だ。
また、三國・戦国シリーズ本編ではいなくなったキャラも復活していたりする。
さらには過去作品衣装や本作用に追加された衣装やBGMが選択できるので、むしろ本編最新作よりキャラが丁寧に扱われてる気すらする。
キャラ出現条件はステージ選択時の説明でほぼわかるのは良いが、目的キャラが終盤で出るとか辛い。
メインストーリーに絡むキャラが偏りすぎているし、キャラ個別のエピソードやマップもなくまとめて追加されるのも雑。
ただし陣地ではRPGみたいに歩き回って、ストーリーの流れで登場するキャラや、キャラ毎に設定された数名と会話ができるので、ストーリーの主要キャラじゃなくてもプレイしていて完全に蚊帳の外という感じにはならない。
陣地に「R1で出るタイプアクションを使っているか?」みたいにアクションのコツとか教えてくれるキャラがいるべきだと思うのだが、ストーリーの補填やキャラ同士のじゃれあいに終始しているのは残念。
基本的には三國のシステムで作られているようだ。しかし一度のキャラ表示量としては三國と同じでも、雑魚が次から次に押し寄せてくる。
少々雑魚の湧き方がおかしくなるぐらい気にすんな! いいからどんどん出せ! という雰囲気で、この辺は「いい方向にブレーキが壊れてる」感じで、過去の無双シリーズでも随一の撃破数が稼げ、気分がいい。
三國本編で武器が自由選択になり個性が薄味になった面もあったが、本作では武器とモーションがキャラ固有で、本編より使ってて楽しいキャラも。
戦国キャラ(やマップ)は後づけ感があり、カプコンX-MEN VS STREET FIGHTERのX-MENのシステムに追加されたストZERO勢みたいな感じがある。結論:ほとんどの人は気にしない。
システム
チーム
前作に続き3人でチームを組むシステムだが、これだけキャラ数が多いとそれでも使い切るのが大変。
戦国無双 Chronicleみたいに出撃した味方キャラを自由に切り替えて操作できる、ぐらいにしないと捌き切れない。
ダッシュ技からさらに攻撃を繋げるダッシュチェインは、移動から攻撃を途切れさせず群れの掃討に入れるのでゲームのテンポを良くしている。
しかし、攻撃中にキャラ替えしつつダッシュ攻撃に繋げるスイッチコンボは、うまく繋がらないキャラもいて、いろんなキャラを使わせるためのシステムのはずなのに存在意義に疑問がわく。
いっそ出現ポーズが違うだけでリーチやスピードは全キャラ同じにするのが良かったかもしれない。
専用ゲージを消費しL2・R2同時押しで発動する「真・合体技」は、チーム全員が出現して攻撃し、敵がスローになり、接触するだけでダメージを与え中に浮くようになり、倒した敵から貴石(通貨)が回収できるという稼ぎに欠かせない技だ。
ただこれ、倒しても敵がその場に残るので、すぐに倒せる敵がいなくなり、倒せる敵を探してウロウロする結果「かっこ悪い」のが痛い。
最後に三人集まって見得を切るのが、なんだか照れ隠しに見えてくる。
もっと雑兵が次々現れては倒されて貴石がビュンビュン集まってくるような、フィーバー感が欲しかった。
攻撃
キャラはパワー・スピード・テクニック・ワンダーと4タイプに分けられていて、同じ系統のキャラは共通する特殊技が使える。
キャラの性格や技の特性を考えて振り分けられてる気がせず、「この豪快な人がテクニック?」みたいなことも。
また、特殊機動系の技がタイプによって違い、操作感や戦闘スタイルがかなり異なるが、使い分けるの面倒になって基本技で戦うことになりがち。
さらにタイプと別にあるEX技は発生攻撃回数がキャラによって異なるし、無双技は三國・戦国で大きく性質が異なる。
戦闘画面で使用キャラのタイプと所属を表示した上で、タイプごとにゲージの枠デザインを変え、EX技は画面下に表示、ぐらいして欲しい。
個人的には20人ぐらいでもう技覚えるの無理なのに、130人超ですよ、無理!! 絶対無理!! 歴史上の(すでに知ってる)人物じゃなかったら、名前を覚えるのだってきつい。
全体的に攻撃力が高いため馬上攻撃も当然強く、特に本作は雑兵が密集しているので馬上で武器振ってるだけでなんとかなる局面が多い。
自分の場合、馬超などもう馬上に改名してはどうかというぐらい馬から降りなかった。
実際の戦場でも馬上は強いと言われるんだけど、プレイ感としてはあんまり面白くないので、要改善。
操作系
右スティックを押し込むR3ボタンがマップ切り替えにわり当てられているのはいい。
押し込みにありがちな誤操作はあるもののマップ切り替えは致命的なことではないので、ベストな配置ではなかろうか。
十字キーは移動ではなく、馬呼びとか割り当てて欲しかった。十字キーとセレクトは設定変更できないので、いかんともしがたい。
そもそもの話だが、無双シリーズが中途半端にしかキー割り当てできないのはなんなの?
戦場
攻撃力強めのバランスはこのシリーズの特徴で、サクサクゲームが進み、雑兵の多さと相まって、無双シリーズ随一の爽快感がある。
が、敵も攻撃力高めなんで、出会い頭に必殺技やコンボ食らって一気に死亡というパターンが少なくない。
個人的には卑弥呼の土偶レーザーだけでも3回ぐらい殺された。
さらに敗北条件が「味方が敗走」とか「敵が脱出地点に到達」とかのマップが割とある。
百歩譲ってそれはいいととして、それまでに集めた経験値も金もワヤになってしまうのはキツイ。事故で数十分の努力ふっとばすのヤメて。
途中に大蛇を倒すガンシューが挿入されるんだが、全然面白くない上に、時間がかかるし、操作法も分かりづらい。
個人的には押しっぱなしで連射することに気づかずに、ゲームを投げ出してしまうところだった。
演出として入れるにしても、このゲーム買った人はガンシューしたいわけじゃないので、ボタン押せれば間違いなく倒せる程度でいいのに。
なお無双っぽくないシステムといえば、ステルスアクション的なステージがある。
ここは、隠密行動しない方法も用意されているし、失敗しても無双の作法でゴリ押しできる。
飽きさせないために入れる別ゲーム要素としては、このくらいまでかと思う。
途中で入る落石なんかの状況説明ムービーを飛ばそうとスタートボタンを押すと、ポーズがかかるだけで飛ばせないの酷い。
他にも全体にムービーの挿入タイミングやロード時間など、どうにもプレイのテンポを削ぐ。
味方の武将はそこそこ賢く立ち回ってくれ、ちゃんと敵を撃破する。
敗走しやすい傾向はあるが、それは全体に攻撃力高めの調整だからであって、無駄に突っ込んで死ぬ感じではない。
無双の戦場
今回「無双の戦場」という、プレイヤーがマップをカスタマイズして遊べ、ネットワークを通じて公開もできるシステムが追加されている。
非常に夢が広がるシステムだが、実際に出てきたのはダウンロードコンテンツが売れなくなると困るから中途半端な仕様にした、と思われても仕方がないぐらい期待外れな作り。
マップ自体のカスタマイズはできないのはもちろん、兵の配置もできない。
できるのはセリフや武将、雑魚の種類の入れ替え程度の上にコスト制限がありそれすらも自由にできない。
Mojangマインクラフトにまでする必要はないが、戦場を3×3に区切ったタイルを入れ替えられる、程度のマップ作成機能は欲しかった。
マップの絶対数はそれなりにあるが、キャラ数に比して少ないので、「無双の戦場」が不足分を埋めてくれなかったのは痛い。
大体のマップのクリア方法を把握すると、収集・育成が作業感丸出しになってしまう。
しかもフリーモードとストーリーモードの違いはほぼ無く、事実上フリーモードは存在してない。
周辺システム
130人超の武器を合成するシステムは、面白いよりも面倒臭い方に天秤が傾いている。
購入もできるとはいえ、武器に性質を乗せる印は運任せなのも面倒。
快適なインタフェースを提供しようという意思も感じないので、余計邪魔臭い。
アイテムを2つしか装備できないのでガチに必要なもの以外付けられず、結果「同じ装備をさせるための操作」を延々やることになる。辛い。
キャラごとではなく共通にして、4つぐらいは装備できるようにして欲しかった。
経験値ストックという全員に任意に経験値を分けられるシステムがあり、それ自体はとてもいい。
しかし、こまめに経験値を割り振ってやらないとすぐにカンストして、プレイヤーに余計な負担をかける。
友好度のシステムはガンダム無双2のような酷いものではないが、キャラ別に友好度の値があったり、友好度が下がる要素もあったりして、あまり良い機能ではない。
友好度最大でないと、協力技などが出せないのも厳しすぎる。
キャラものとしては、友好度でセリフが変わるのも戦闘中に援護攻撃をしてくれるのも嬉しい。
貴石を払って宴会すれば狙って友好度を上げられるので、友好度にふりまわされないプレイもある程度できる。
とはいえ「無いほうがまし」という状態はかろうじて脱している程度で、「あって嬉しい」ほどでもない。
まとめ
いい意味での割り切りがなされていてキャラも起っているし、ゲーム部分も色物というよりむしろ「もっとも無双らしい無双」と言っていいかもしれない。
というより、そもそも「無双は色物なんだから、色物として作った方がしっくりきた」という感じだ。色物サイコー!
「あーなんか久しぶりに無双やりたいなー」と思った時に引っ張り出す可能性が一番高そうな作品と言うと、伝わるかもしれない。
前作のレビューで言ってた「世界の有名武人大集合的なもの」がかなり実現されていて、楽しい。
複数のシステムや世界観のものを組み合わせていることもあって全体に雑だが、他の無双も大概雑なので、混ぜ合わせてダメになったというより、混ぜてもクオリティを維持している、なんなら上がっていると言ってもいい。
すでに作って反響もあるゲームを元にしているので、単純に上位バージョンとして良くなっている面が優った、という格好だ。
無双シリーズは「無双しかゲームがない世界で作られている」んじゃないかと思うほど非常識なポカをやらかすが、ガンシューを筆頭にそういうロクでもなさはしっかり残っていて残念無念。
参考
そこで結論。
無双の良い面が多く出た、お得な傑作!