TROY無双

対応機種・周辺機器
PlayStation3/Xbox360(1人)
ジャンル
戦術アクション
著作・制作
(c)コーエーテクモゲームス(TECMO KOEI CANADA)

基本情報

 三國・戦国に続く第三の歴史無双として、無双史上最古の紀元前1200年頃を舞台としたギリシャ叙事詩イリアスを題材にしたのがTROY無双だ。
 本作はTECMO KOEI CANADAが主体となり、今まで無双シリーズを担当してきたオメガフォースはアドバイザー的立場で作られたらしい。
 また物理エンジンにPhysXを採用しているのも、シリーズの他作品と異なるところだ。

 映画トロイ(2004)や300 〈スリーハンドレッド〉(2006)、タイタンの戦い(2010)があり、ゲームでもSCEゴッド・オブ・ウォー(2005)など古代ギリシャ関連の盛り上がりに乗っかろうという企画かと思う。
 ただ、イリアスの登場人物や出来事は、どこまで史実か神話かよくわからず、解釈のブレが大きい。
 以前は国の存在すら疑問視されていたぐらいの古い時代の話で、大量に文書が残っている三國・戦国の時代とはかなり前提が異なる。
 とはいえ、ポセイドンとか、アキレスやトロイの木馬などといった言葉は、劉備玄徳よりメジャーだったりもする。

ストーリー

 有名なトロイ戦争をモチーフにしているので、「みなさんおなじみの」みたいなノリで、ほとんどナレーションで進んでしまい状況が把握できない。
 ムービー中に地図が表示されるものの位置関係が理解しづらく、キャラ設定や人間関係もマニュアルにざっと書いただけで終わり。
 地図やキャラ設定を参照できる辞典のようなものをゲーム内に用意すべきだったろう。ギリシャの歴史・神話好きを増やして行こうという長期戦略が感じられない。

 一応、勢力ごとに赤と青で色分けされているのだが、地味な配色なので戦闘中は体力ゲージの表示しておかないと敵味方の判別が困難。色分けに気づかないままプレイした人も多そうだ。
 またアポロンなどのギリシャの神々が登場して話をややこしくしているし、リアリティレベルがどの辺にあるのか混乱させているのも困ったもの。
 加えてイリアスを元にしているものの、多くのアレンジが加えられており、私など大体の登場人物を既に知ってたはずなのに、イマイチ話を理解できなかった(笑)

 また、ストーリーモードはトロイ側とギリシャ側の2勢力を行ったり来たりするのも理解を妨げる。
 プレイアブルキャラ8人は新規タイトルとしても少ないので、1人ずつストーリーを用意した方が良かったのではないかと思う。
 ストーリーに関しては見せ方が悪く、ゲームとしての盛り上がりのタイミングを提供できないまま終了しちゃうのは、残念だ。

グラフィック

 カナダで作られただけあって、非常に「洋ゲー」っぽい絵作りがされていて格好良い。
 しかも、洋ゲーで陥りがちなライティングに凝り過ぎて背景が見づらい、ということもなく快適なプレイ環境で、夜戦でも比較的見やすくまとめられている。
 ただ、美しくはあるが全体に地味で残念。とにかく土煙漂う世界がずっと続く。

 エフェクトは控えめで、ビームのようなハッチャケた攻撃もない。
 しかし、血しぶきがブシャァっと飛び散るのは、流石はCERO C(15才以上)のレーティング! (と言っても海外版より抑え目らしい)
 バッサバッサと切っていけるのは、戦争映画的な枠内で考えると十分に派手だ。
 モーションは重みがあり、サクッというよりゴツッという感じで、敵を斬った手触りがすごくいい。

システム

戦闘

 雑魚もしっかり攻撃してくるんで、群れの真ん中に突っ込んだら死ぬ。
 防御とか前転回避とかが、しっかり機能してて適切に使っていかないと死ぬ。
 敵も盾をしっかり使うんで、崩しとか使っていかないとダメージが通らず死ぬ。
 つまり、雑なプレイ即死亡。

 これを逆にいうと、ちゃんと対策を立てて立ち回りをしていけば、急激に簡単になっていくということでもある。
 必勝法は「それを知ったらそれしかやらなくなる」危険もあるが、本作では必勝法見つけるまでが面白く、そこにそれなりのボリュームがあるので、まず問題ないかと思う。

 盾で攻撃を弾き返す動作が、特に一騎打ちでは重要で、なかなか攻防が熱いのだが、割と判定がシビア。
 特にベストタイミングで発生するカウンターは、個人的には狙って出すことはできなかった。
 また、威力が上がるパーフェクト攻撃のタイミングを示すマークは、重要なのに全然目立たないのは困ったもの。

 敵の落とした武器をボタン一発で簡単に拾って使える。
 拾った武器は、リーダーの武器は威力が強く範囲が広めだったり、槍は盾に強かったりと特性があるので、しばらくプレイスタイルを変えて遊べて退屈しなくていい。
 投擲も可能で威力も射程も十分だが、拾える数の限界や投擲モーションの時間の設定が適切で、それだけに頼らせないバランスの良さ。
 逃亡した敵を屠るのに最適なのも、仕留めた感あって良い。

 敵が体勢を崩したり、敵の背後に立てた場合などにマークが表示され、そのタイミングで強攻撃ボタンを押すと、様々なアクションとともに敵を一撃で倒すまさに必殺技が出る。
 強力で気分がいいことはもちろん、地味になりがちな画面にアクセントを与えてくれる。

 Furyは敵の防御を無効化しつつ攻撃を強化する技。
 ゲージがある程度たまると発動可能になり、Fury中の攻撃でもゲージは増え、さらに周囲に敵がいなくなると動作停止するので、割と頻繁に発動できる。
 頼りっぱなしになる程は発動できない、いい感じのバランスになっている。

 Kleosで購入したブロック状のアイテムをマス目に敷き詰めて能力を上げていけば、グイグイ強くなり超人っぷりを堪能できる。
 ただ、超強力なアイテムを得るのに難しいモードをクリアしなきゃいけないのはいただけない。
 ゲームが得意な人はアイテムが取れて楽になり、不得意な人はアイテムが取れずきついまま。どうにもつまんない仕掛けだ。
 高難度で入手できるのは、特に強くならない面白装備の方がいい。

戦場

 敵はリーダーと数名の部下からなる部隊の形をとっており、非常にリアル。
 特に敵が盾を構えて密集しているファランクス隊形はギリシャ歩兵の代名詞的な戦術で、それがゲーム中で再現されているだけで感動。
 さらに、盾をガンガン叩いたり槍でリーダーを刺して崩したり、実際やってたろうなー、という戦い方ができるのも嬉しい。
 ファランクスに限らず、リーダーが倒されると周囲の兵士があたふたするのもリアリティあるし、してやったりの満足感がある。

 敵兵のまばら感は、初代真・三國無双の戦場の感覚に近い。
 1人ずつを認識できるくらいの兵士の量は「そこに人間がいる感」があり、「本物の戦場」って感じの緊張感がある。

 メインミッションに沿っていけば、いい感じに敵が供給されるので、ひたすら足で移動しなきゃいけないと言っても退屈することはない。
 サブミッションは無視しても不利にならないものが多く、初見で全ミッションクリアできないが、うまく立ち回ればクリアできなくもない感じのバランスがすごくいい。
 ただ、隠れKleosを探したり、全兵士掃討したりとか、マップを雑巾掛けするようなプレイをすると、倒した兵士が復活しない場合が多いこともあって移動がたるい。
 周囲に敵がいない踏破済みの場所は倍速移動するモードに切り替わったりして欲しかった。

 ゲームオーバーのあと、直前のポイントから再チャレンジ可能なのはヌルい感じもするけど、「その直前のポイントまでは楽勝」だったりすると、やり直すの苦痛でしかないので、思い切りとしてとてもいい。
 難しい場面も再挑戦しやすいので、全体に難しめといっても、実は先に進むのはさほど難しくない感じだ。

ゲームの流れ

 本作は戦術部分が弱いというかほぼなく、あっちが押し込まれているから助けに行こう、みたいな行動を取ることがない。
 敵も味方もプレイアブル武将が戦場のあちこちにいることもなく、イベント的に行動を共にする感じだ。
 そもそも、マップは周囲の兵士しか表示されないので、戦場全体で何が起こっているか把握できない。
 この時代の戦争はそんな感じだろうとは思うが、戦場の不安な雰囲気と引き換えに、無双シリーズの戦術部分の面白さを捨てちゃってもいる。

 装備や行動の異なる敵リーダーが数種類いるが、固有の名前を持っているわけではなく、中ボスみたいな感じ。
 一本道をどんどん進んで、決闘や神との戦いでボスを倒すと面クリアという、プレイ感としてはカプコンファイナルファイトなんかに近いものだ。
 個人的にはこの戦術性のなさが、本作の一番無双らしくない部分に感じた。

 決闘は真・三国無双5の円陣の一騎打ちをシンプルにした感じで面白い。
 神との戦いは、大型の敵と戦う普通のアクションゲームのノリで、無双感は全然ないけどメリハリがあっていい。
 ただボス戦で発生するQTEの出来はイマイチ。
 QTE自体が無駄に長いし、失敗すると敵の体力が回復して、さらに戦闘が間延びする。

 敵をたくさん倒したりすることで、Kleosが得られる。
 Kleosとはギリシャ語で栄光みたいな意味らしい。
 単純にスコアとしても見れるが、前述のように通貨的にアイテム購入にも当てられる。

 面白いのが回復に使われるKleosだ。
 このゲームは、周囲に敵がいない状態がしばらく続くと獲得したKleosの量に応じて回復する。
 逃げれば回復できるのはもちろん、周囲の敵を全滅させて敵がいない状況を作る、という手もあるのが面白い。

モード

 ストーリーモードはステージごとにキャラが固定で、クリア後も変更できない。
 21ステージあるのに、担当ステージが1つしかないキャラまでいるというのはひどい。
 QTEシーンを全員分用意できなかったのかなんなのか、理由はわからないが、遊びの幅が断然狭くなっていて、残念というしかない。

 無双シリーズではおなじみの、連戦したり体力の限り戦ったりするチャレンジモードも付いているが、個人的にはどうにもやりこむ気になれない。
 おにぎりの中の梅干しは美味いけど、梅干し山盛りにされて「さあどうぞ」と言われても「そうじゃないんだよ!」という感じだ。

まとめ

 無双シリーズは「大量に出てくる敵を、すごい勢いで倒していく爽快感」という方向に舵が切られて、それが本流となっている。
 シリーズ開始当初は、歴史で知っている戦場に実際に出てみたらどんな感じだろうか、という部分を叶えてくれるのも無双シリーズのコンセプトだったんじゃないかと思う。
 割とアンケートのなりたい武将に「一般兵」と書く人が多いらしい。その気持ちわかる。無双乱舞は「りょ、呂布だー!!」って叫んで拠点の向こうに逃げる、みたいな(笑)
 本作のプレイアブルキャラは英雄ではあるものの「戦場にいる感じ」を強く感じることができ、無双の「もう一つのコンセプト」を体現できているように思う。

 システムとして存在しているけど使い所がない「死に技」がなく、使わないと進行が困難なバランスは、プレイヤーの腕前が上がるのを体感できる。
 ジャンプ操作がないことからも分かるように、アクションは荒唐無稽さが少なく、戦場の雰囲気にもリアリティがある。
 ただ、戦術性が少なくアクションゲームっぽい進行をし、ボスに神の使いとか出てきて、どの辺のリアルを目指したいんだかよくわからない感じもある。

 操作のカスタマイズがちゃんとできるとか、アイテム装備を他のキャラからコピーできる、ムービーは何かのボタンを押すとスキップ方が表示される、などインタフェースがこなれている。
 無双にありがちな時代遅れのインタフェースが少なく、「カナダのコーエーは、ちゃんと他のゲームをプレイしてる」と思った。

 ストーリーがわかりづらく、キャラを中心にプレイできず、戦術的面白みも少なく、クリア後のやり込み部分の薄い本作は、何だか「アーケードゲームを完全移植しただけ」のゲームみたいな雰囲気だ。
 家庭用で、好きなようにだらだら遊べる要素に乏しい。

 その後、猛将伝に類するソフトも続編も出ていないのは、無双シリーズ全体としては不幸なことのように思う。
 この方向性は、シリーズを豊かにしてくれたろうに。
 てゆーか、カナダスタジオってこの後解散しちゃった?

参考

 そこで結論。

あふれる戦場感!これは別世界から来た無双だ!

別世界っていっても、カナダなんですけど(笑)