真・三國無双6
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基本情報
リアルタイムシミュレーションと格闘アクションの融合真・三國無双のシリーズ6作目(猛将伝、Empires含まず)が本作真・三國無双6(以下、無印)で、前作から3年以上経っての久しぶりの新作。
この間の2010年に、コーエーはテクモと合併してコーエーテクモゲームスとなっている。
イメージソングはKinKi Kids。
前作の真・三國無双5では大きくシステムの刷新を行なったが、本作では傑作と名高い真・三國無双4のシステムに近いものへ戻っている。
といっても、無双シリーズ全体の方向に沿って、ボタン一発での馬呼びなどの快適なシステムは搭載されており、懐かしさだけで古く使いづらいシステムを復活させる愚は犯していない。
ただ、なぜか十字キーでの移動は復活している…私は据え置きゲーム機を買うと必ずスティックも買うが、正直、無双シリーズだと使いづらいので使ってない。
操作キャラクタは、PS3用にハイクオリティ化した前作真・三國無双5の41人をベースに、62人と過去最高の参戦数となった。
要するに「身もふたもないいいとこ取りに、物量を組み合わせた」鉄板の仕様である。
さて、本作はその企画としては面白みに欠ける仕様が吉と出たか凶と出たか。
ほぼ同じシステムで、さらに操作武将が3人追加された真・三國無双6 猛将伝(以下、猛将伝)もまとめてレビューする。
後、PSPへの移植版である真・三國無双6 specialとPCの真・三國無双6 with 猛将伝が出ていて、海外版のみXbox360版があり、任天堂の機種への発売はない。
各モードの解説
ストーリーモード
三國志の名の通り「魏・呉・蜀」の3国で構成されており、武将個人のストーリーとしては構成されていない。
結果として、非常にすっきりと話がまとまっていて、比較的史実に沿った展開もされており、ちゃんと三国志の面白さが出ている。
また、多くの武将で重複した戦場を何度も「プレイさせられる」こともない。
さらにシリーズでは初の、3国を統一した「晋」のシナリオが追加されているのも白眉。
晋のシナリオは消化試合的な雰囲気はあるものの、三国志的には後半に登場して陰が薄い武将にもフォーカスがあたり、全体としては厚みが増した。
基本的に順番にミッションをこなしていくことで進行する露骨な一本道だが「一見自由度があるように見えるが、選択の余地はない」というパターンより断然いい。
ストーリーモードは、もうこの方向でいいのではないかと思う。
「魏・呉・蜀・晋」以外の勢力の描写が薄かったり、主要国でもで使える武将がステージごとに固定かつ、全体として偏りがあったりして、その辺りに不満もある。
猛将伝と組み合わせてシナリオセレクトを行うと好きな武将を選択できるようになるが、無印でも戦場にいる武将は選べるようにして欲しかった。
戦闘前に陣地の味方にRPGのように話しかけられ、ちょっとセガシャインニングフォースを思い出す。
確かに「RPGじゃないんだよ、まどろっこしい」という面もあるが、プレイのヒントや武将の性格・関係など情報を適当に分散させて知らせてくれ、ダジャレを言ってくる兵などもいて、全体としてはなかなか良い味わい。
このRPG的なシーンからロードや画面切り替えを挟まずに戦場へ突入する展開が売りだが、戦場に出る前はマップ確認ができなかったりして、シームレス感も中途半端。
櫓に登って敵の布陣の確認とかできるとトキメクのに。
ムービーから戦闘への入りは、どこまでムービーだかわからないぐらい自然に繋がってて、ここは出色。
シームレスといえば、HDDへのインストールをバックグラウンドで行うのは一見親切だけど、雑に電源切れない感じだし、プレイ中の動きも不安定になるし、微妙な感じ。
ストーリーモードは馬が最後まで貧相なままで、移動にメリハリがなく不快さが付きまとい、全体にうっすらダメな印象をつけてしまった。
これは、ひどいミス。
クロニクルモード
中国を模した平面にパネルが敷き詰められており、それを開いてステージをプレイし、クリアするとその脇のパネルも開けるようになる。
取り返されることのない陣取りだが、もう90%ぐらいエンパイアーズの雰囲気を楽しめる感じすらする。
武将別パネルもあり、2〜3ステージのシナリオが遊べるようになっている。
しかしストーリー性は薄く、似たり寄ったりのステージで残念至極。
多くの武将のプレイ条件となるパネルは各地に散らばってるが、裏返っているパネルも簡単な内容説明が見れるので、目的のパネルに向けて進めば簡単にたどり着ける。
これまでの作品では、出現条件がわかりにくいとか、無駄に手順が必要などの批判を受けることもあったが、本作はほとんど文句なしの解決策を示した。
猛将伝と組み合わせると、猛将伝のルールが適用され新キャラ含めて全キャラいきなり使えるが、特にマップに変化はない。
このモードでは、購入した獣をお供に連れて行ける。嬉しい。
また、絆レベルを深めた武将も一緒に戦場に出られる。すごく嬉しい。
特に回復してくれる仲間は、恋に落ちちゃいそうなほど嬉しい。パンダ好きっ、結婚してっ!!
嬉しいが、連れて行けないパネルが多くてがっかり。その制限いらんだろ!
なお、絆レベルは常に上昇するし、キャラを切り替えることで変更されることもない。ガンダム無双2の友好度の仕組みがひどかったのを反省したと見える。
街では三国志クイズが楽しめる。楽しい。
チャレンジモード
時間内にひたすら戦うなど、無双システムを転用したミニゲームをいくつか用意したもので、猛将伝にのみ存在。
以前から特に面白くないモードだと思ってたが、本作でも特に工夫なし。
レジェンドモード
これも猛将伝のみに存在するモードで、基本的に時間軸に沿ってプレイしていくんだけど、特に全体としてのストーリーらしきものはなく、ステージを寄せ集めただけな感じ。
個別のストーリーはそれなりの量があるので、無印で欠けていた武将ならではの逸話を拾う役割は、ある程度果たせている。
DLCも合わせれば、ほぼ満足できるバリエーションを獲得したかと思う。
居城が育つという面白げなシステムがあるが、人がちょっと増える程度で建物も変わらないし、肩透かし。
無印で意味なかった高難度モードに、褒美の武器をつけることで意味を持たせたモード、と言っていいかと思う。
このモードで特定の条件をクリアすることで獲得できる将軍位。
これで付加される体力吸収能力が、雑なプレイを許容させゲームバランス崩壊させてる上に、一度ついたら外せないという仕様で、これは痛恨のミス。
戦闘システム
基本的に傑作である4と同じなので、面白い。
以下、それに加えて、いくつかある変更点を書く。
武器装備の自由化
今回はキャラクタ特有の武器ではなく、どの武器でも(一部例外を除き)使えるようになった。
RPGなんかだと当たり前のことなので、特にすごい感じはしない。
むしろ、武器を使うときの動きも共通化されて、武器と武将はセットでイメージを作っていたのに、なんだかイメージがあやふやになって悪い印象だ。
準主役級の武将でも共通の武器を使うのはがっかり。コレは猛将伝で武器が追加され、ある程度解消している。
モーション自体は、それぞれ使い所もあり、動き自体も格好良く、上下方向も含め攻撃範囲は大きめで、非常によくできている。
武器とキャラの組み合わせを固定にすると、ユーザの持つ武将のイメージとずれた時の「やっちまった感」が凄い。
実際、前作では「これはどうかな」という組み合わせがあり、その反省が強く出すぎての全部選べるシステムだろう。
キャラごとに得意不得意の武器が設定されていたり、特定のEX攻撃が用意されていたり、無双乱舞が武将固有となっていたりして、全くの無個性というわけではない。
キャラ変えても同じことやってると不満に思いつつ、最終的には使い勝手のいい刀と弓ばっかり使ってしまった自分がいる。
前作までは「使いづらいなこいつ」とか思いながら頑張ったキャラは印象に残って、いいプレイ体験になっていたように思う。
新たに導入された、ロケットランチャーとかドリルとか(ビリヤードの)キューとか、変な武器はそれなりに楽しく使った。
ヴァリアブル攻撃
本作では2種類の武器を、特殊攻撃を出しつつ切り替えるヴァリアブル攻撃というシステムがある。
ヴァリアブル攻撃は他の攻撃をキャンセルしつつ出せるので、隙なく技が繋げるなどメリットが多い。
が、個人的にはいまいちピンとこなかった。
組み合わせが多すぎて、ベストな組み合わせを探すのが「楽しいというより面倒臭い」領域に入っている。
で結局、前述の通り使い勝手のいい刀と弓ばっかり使い、ヴァリアブル攻撃はほぼ使わないという体たらく。
戦闘中にメニュー開いて簡単に装備を変えることすらできるのに、全然変えない。
心理学的には「選択肢が多すぎると選択することをやめてしまう」というが、まさにその通り。
EX攻撃
キャラごとに設定されているEX武器を装備した状態で、特定のチャージ攻撃に続けてもう一度チャージ攻撃ボタンを押すと発生する特殊技がEX攻撃だ。
これは個性を残すための方策だとは思うが、それならいっそ2種類の武器の片方はEX武器に固定でよかったんじゃないか? という気もする。
[R2]ボタンに特殊攻撃を割り当てる戦国無双2方式でも使い忘れていたのに、キャラごとに出し方の違うEX攻撃は、かなり長い時間プレイしたキャラでも、使うどころか出し方の確認すらしてない状態だった。
無双乱舞
無双乱舞のゲージが本数制になったのに伴い、真・三國無双シリーズではおなじみだった、ボタン長押しでのゲージを貯めができなくなった。
個人的には「強敵に挑む前に静かにゲージを貯める時間」が好きだったので残念。
武将ごとに特徴的な無双乱舞が用意されており、さらに「ジャンプ中に出す」か「R1を押しながら出す」かで選択できる二つ目の無双乱舞もあり、場面によって使い分けられる。
これはなかなか嬉しいのだが、前述の通り他の要素が多すぎて二つ目の技を試し忘れるキャラもあった。
空中乱舞は敵の攻撃を受けて運ばれているときにも発動できて極めて便利だが、逆に敵が空中で出してくるのが思いの外厄介。
敵武将の無双乱舞は予兆マークが出てから発動まで、かなり間がある。
簡単に避けられるかと思いきや、自分の攻撃モーション中に無双乱舞を出されたら、発動ギリギリか初弾食らうぐらいでカウンターで無双乱舞を出す以外の選択肢がない。
ゲージが溜まっていなかったら、ガードすらできずに食らってしまう。
過去の無双シリーズでもそういう傾向は強いが、本作はより強いように感じた。
なお、軽功(水平ダッシュ)を使う手もあるが、標準装備の技ではない。
本作でびっくりしたのは、味方も無双乱舞に巻き込まれて吹っ飛ぶこと。
おそらく、味方の攻撃によって敵武将に止めが刺されがちだったことへの対策と、見た目の派手さが理由だと思う。
ダメージを与えないとはいえ、味方を吹っ飛ばすのは気がひける。
無双ゲージを増やすアイテムに限らず、やたらとアイテムが出現する。
ゲージひとつはカウンター用にとっておく必要があるが、残りはもう何も考えずにゲージが溜まったら使うぐらいで使える。
派手さを出したかったのだろうが、雑に無双乱舞を使うプレイではメリハリがない。
その他の技
武器との相性によって、特殊な技が使える。
軽功は追撃手段としても回避手段としても優れているし、つかみ技はガードが硬い敵への対策とともに密集時の緊急回避策ともなるので、使えない場合の「行動制限されてる感」が強すぎる。
このふたつはシステムを整理して、基本的に全キャラ同じ操作で出せるようにして欲しかった。
マップ
兵器
巨大弩砲などの奇想兵器が使えて楽しい。このままシリーズ進むとロボに乗り込むんじゃないか?
しかし、前作に比べて雲梯や破城槌などの攻城兵器の存在感が弱くなっている。
また、虎戦車のような派手なものだけでなく、木牛のような地味な発明品も登場させて欲しかった(本作では登場しない…よね)
できるというだけの移動手段
前作同様に梯子を登ったり水路を泳げたりするのだが、いまいち活用されてない。
例えば前作は、魯の上の弓兵倒しに行くのが、割と重要だった。
面倒臭いという意見が多くきたのかもしれないが、せっかくのアクションも持ち腐れ状態になっている。
使い回し
前作のマップの多くがアレンジして使い回されていて、それに加えて新作マップがあるので、ボリューム的には十分かと思う。
猛将伝ではシリーズの懐かしのマップがリニューアルされて収録されていたりして、それも嬉しい。
ただ、そういう使い回しを基本としたマップからは、本作ならではという部分は感じられなかった。
それに、BGMやセリフ、ムービーなどの再現性は低く、昔を懐かしむには微妙な感じだ。
夜戦場の見づらさとか再現しなくていいのに…。
セレクトボタン
本作は、セレクトボタンで戦場の詳細マップを確認できるが、かなり長い間この操作に気づかなかった。
ショートカットとしてセレクトボタンでも開けるならいいが、セレクトボタンでしか開けないのはおかしい。
兵士・武将
雑兵
前作の将旗兵(いるけど特に意味なし)や副将のような特徴的な兵が減り、工兵的行動をするものもおらず、個性がない。
とにかく敵が大量に発生してバッサバッサと薙ぎ倒せる、という方向に舵を切っているようで、無双シリーズ的には正しい判断かと思う。
個人的には薄味にすぎて残念至極。
ただ、拠点を制圧されると見事に退却していく様は、メリハリがあって良かった。
後、弓兵が地味にダメージが大きく、火弓兵に囲まれると、武将に囲まれるより体力減ったりする。
本作は3Dテレビに対応している。
3Dに見せるには単純に右左の目に対応する画像が必要で、特に工夫をしなければ倍の描画パワーがいる。
その影響かと思うが、3Dでない場合でも全体のフレームレートが低い感じだ。
高いフレームレートよりも、敵兵が大量に出るほうが大事なゲームかと思うので、コマ落ちさせる判断は間違ってないと思うが、そもそも30FPS固定の方が安定した動きになってよかったかと思う。
味方武将
味方武将は、やたら敗走する事も無いが積極的に拠点制圧したり敵を倒したりすることもなく、かなり空気。
敵武将を倒して出る成長アイテムが無印では唯一の能力値成長要素なので、味方武将が敵を倒さない調整なのだと思うが、もうちょっと活躍してほしい。
戦場で起きる決定的な事は全部プレイヤーが対処することになり、忙しいし共闘感が薄い。
苦戦している味方武将を救援すると、味方武将の体力が回復するのは嬉しい(若干効果がわかりづらいのは問題だが)
敗走しないといえば、シナリオの展開上で必要な武将は、そもそも体力ゲージがなくて、絶対敗走しない仕様になっている。
これはいくらなんでもやりすぎで、緊張感無くなること甚だしい。
一騎打ち
個人的には前作の円陣方式を洗練させて欲しかったが、本作は完全にイベントとして砦を封鎖して発生する方式になっている。
ストーリーモードでしか発生しないし、相手もタイミングも固定なので偶発生の面白みはないが、初プレイ時は盛り上がる。
一応、鍔迫り合いは発生するが確率が低く、ステージ通して1度も発生しないことも珍しくない。
一騎打ちに限らず、本作では偶発的に発生する要素を低めにして、予定通りゲームを進行できる方向で調整したようだ。
この調整はイラつくこともないが、ドキドキ感も薄く、無難にすぎる気はする。
その他
チャラ男やギャルみたいな新キャラたちは新世代感あっていい感じだが、オッサン勢の鄧艾や郭淮の印象がちょっと薄い感じ。
能力値の成長が敵が出すアイテムに一本化されたのはシンプルで良い。
しかし、雑兵は成長アイテムを出さないので、キャラ育成時には単なる邪魔者になるのはいただけない。
猛将伝では無印で持て余しがちだった金で能力を購入でき、プレイの苦手なキャラでも能力を上げやすくなっている。
また、難易度が高いと手に入る金も多くなるなど、無印の難易度の意味不明感を解消。
最終的には全スキルを取得できるタイプのスキルツリーがある、これは無難で鉄板の面白さだ。
しかし、取得に必要な武功(経験値的なもの)がストーリーモードでは取りやすいがクロニクルでは全然たまらず、無印では辛い。
武器に印を装備することで能力をカスタマイズできる。印は付け替え自由なので気軽に試せるのも嬉しい。
これまでのシリーズでの延々ドロップ武器のくじ引きするシステムは辛かった。
これまでのシリーズでステージに必ず設定されていた制限時間が撤廃された。
普通に戦っていたら制限時間を迎えるほど時間がかかることがなくなっているのに、なぜついているのか疑問だったルールではあった。
逆に、だらだらと残党狩りを楽しんでいる時に、突如制限時間が来てそれまでのプレイが無駄になる理不尽感も凄かった。
撤廃は必然だと思うが、理由を考えず前のについてたから付いてるってルール、シリーズ物には多いので、それをちゃんと外せたのは偉い。
まとめ
5で武将数が減ったことや、大幅な戦闘システム変更が不評だった模様で、全力で武将数を増やし、基本システムを4に戻した本作。
前作で悪かったシステムをことごとく改善してきているが、よかったシステムもなくなっており「羹に懲りて膾を吹く」とは正にこのこと。
3D対応や、4人までのオンライン共闘、自由な武器装備など、新しいことをやってないわけではないが、他のゲームでやってるようなことでもあり、全体に無難な作り。
前作の感想で次回作に期待した方向とは真逆の作りとなっていたわけで、そういう意味では残念。
初プレイ時はすごく面白いが、二週目や育成・やりこみと言ったプレイをする際の工夫が浅い。
制作リソース配分としては間違えているわけではないが、「前はできてたろ」という感想もある。
即中古に並ぶのも困るが、同じ作品を延々遊ばれるのも困る、って気持ちを邪推させるバランスだ。
これらの部分に不満がなければ、本編は充実した分量がある。
しかし、長く遊ぶための工夫は猛将伝でなされているし、バランス調整パッチ的な役割もあるので、やり込む人は無印より猛将伝を長くプレイするだろう。
なんだかんだ言っても、無難な方向性は、本作では良い方に結実したといえる。
「脳内で美化された過去の無双が、そのまま現実化した」と言っても言い過ぎではないだろう。
たくさんの要素も、好きな・理解できるシステムだけで遊ぶという贅沢な遊び方ができる、とも言える。
参考
そこで結論。
シリーズ10周年記念にふさわしい傑作! これぞ無双!