アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団

対応機種・周辺機器
PS3・PS4(1人用、オンライン対応(PS3のみ)、ブルーレイディスク)
ジャンル
アクションアドベンチャー
著作・制作
(c)ノーティードッグ

基本情報

 アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝(以後、前作)で老舗の貫禄を見せたノーティードッグ。
 前作発売から2年後という、その規模からすると脅威的なスピードで投入された本作。
 主人公のネイサン・ドレイクを始め主要キャラクターはそのままに舞台を大きく世界に広げ、映画レイダースばりの冒険を繰り広げる。
 基本的なシステムは前作を踏襲しているので、詳細を知りたい方は前作のレビューを見ていただきたい。

 本作はPS3での前作とのセットと、ベスト版、さらにPS4でシリーズ3作品がセットになったリマスターバージョンも発売されている。
 本レビューはPS3版をプレイしてのものだ。

物語

 凄腕(自称)トレジャーハンターのネイトが挑むのは国際犯罪組織にマルコ・ポーロの秘宝、伝説の理想郷シャングリラ。
 普通はもう少し遠慮しません?って言いたくなるぐらいアクセルベタ踏みのコッテコテ冒険ものだ。
 基本的にそれはいいのだが、高いところから落ちそうになるシチュエーションがあまりに頻発するのは、流石に食傷気味ではある。

 本作では新たに峰不二子的な立ち位置の、黒髪褐色のインド系美女クロエが登場し、セクシー方向でもCEROレートがちょっとアップ!
 前作から引き続き登場のエレナも頼りになるが、クロエに至っては全員任せてしまっていいんじゃないかというぐらい敵を倒してくれる。時間をかければ全滅させてくれるシーンも普通にありそうだ。

インタラクティブカットシーン

 本作では純粋に映像が流れるカットシーンを極力減らし操作可能な状態を保つ方針を前作からさらに進め、道中の特定ポイントで音声による会話が発生して、進行を阻むことなく自然に情報が与えられる。
 特にネイトの軽口はバリエーションが多く、面白い言い回しなので飽きない。
 そのせいで「会話をさせるための通路」みたいなマップが作られがちではあるのだが、そんなただ歩くだけの背景も手を抜かずに作られているので、ほとんどの人は違和感なく通り過ぎてしまうだろう。
 かなり長く同行者と協力して進む必要があるシチュエーションがあるが、その場合の同行者を言葉が通じない相手にすることで「会話で意思疎通すればすぐなのに」という不自然さを除去しているのが上手い。

 前作はQTEによる演出を多用していたが本作では抑え目。
 武器を取り上げたりするなどして操作を限定し、自然に操作を減らす工夫がなされている。
 QTEが減ったというより作品全体が「自由度の高いQTE」になったとも言える。

進化した映像

 ハイエンドゲームの映像は、この頃から「もう実写じゃん、これ以上どうすんの」と言われ続けている感じだが、PS3初期で限界に達したかと思われた前作からさらに良くなっている。
 リアルになるとゲーム的な操作可能部分(インタラクション)が分かりづらくなるという問題があるが、本作は前年発売のDICEミラーズエッジのように、進める部分に色をつけるという対処を入れてきた。

 本作の場合はアクション映画のごとく、どんどんストーリーや場面が展開していくことを志向しているはずなので、リアル一辺倒にならず引っかかりを少なくする方を取ったのは正解だ。
 とはいえある程度は背景に馴染ませているので「行けない箇所も行けそうに見える」場合がある。
 この辺の塩梅は個人差や作品の方向性もあるが、前述のように引っかかりなく進める方向性の作品にしては中途半端と言える。
 特に扉はこの傾向が強く、開けそうなのに開けないことが続き、開いて進む箇所に来た時に気づかず進行が止まることがままあった。
 前作から実写映画に近づけるより、イラストっぽい方向へ進化させた方がインタラクションの分かりやすさの点では良かったかもしれない。

 物理エンジンによって制御される範囲が大きくなり、冒頭の列車のシーンを始め背景全体がダイナミックに動くシチュエーションが多く、アクションのハラハラ感が大きく上がっているのも見所だ。
 ネパールの街はかなり遠くまで作り込まれていて、UBIアサシンクリードみたいな行動自由なシティアクションになるかと心配したが、お得意のリニアな進行で行けそうなところに行くと進む。

 ただこの「行けそうなところに行くと進む」方式はどうしても「なぜそっちに行くのか」という部分がなおざりになりがちだ。
 残念ながら本作もその傾向はあり、ネイトが「よし、こっちだ!」って言ってくるので進行に不安はないものの不満はあるという感じ。ネイト君、その発言に根拠まったくないでしょ!

探索や謎解き

 あまりに一本道だとやらされている感が強すぎ、それを緩和するために短い枝ルートの先に宝が置いてある。
 前作で間違いがちだった宝の光と背景の反射部分は、宝の光のわざとらしさによってある程度区別つくようになっている。
 宝があるとメタ的には「ここ行き止まりだな」と分かり迷いにくくなっているが、同時に没入感を削ぐ部分でもある。

 セガソニックザヘッジホッグと同じように「ハイスピードで進むのが魅力だが、道中にあるアイテムを探そうとしたらスピード感が削がれる」という問題が本作にはある。
 本作ではチャプターをクリアしてしまえば今までのチャプター選択が可能なので、宝探しは後回しが正解のような気もするが、そうすると初回プレイでの一本道感はより強くなり痛し痒し。

 トレジャーハンターは宝探しが目的のはずが戦闘が頻発するので、落ち着いて探索できないのも方向性がチグハグに感じる点だ。
 探索シーンと戦闘シーンを明快に区別したほうが良かったかもしれない。
 ヒントになるノートが開けるようになる謎解きシーンでは、戦闘が始まらないので落ち着いてパズルに集中できた。

 敵の強さとヒントのON/OFFが別に設定できるため、アクションは手応えが欲しいけど謎を解くのに苦労する、あるいはその逆のプレイヤーが適切な難易度設定ができて良い。
 ただヒントのメッセージは微妙に役に立たないものも多く、前述のルートを示す色付き背景のようなヒントをもっと露骨にしておく方が良かったかもしれない。

銃撃過多(ガン=カタ)

 前作からそうだったが、とにかく銃撃戦が多い。
 本作は無駄に銃器に対する解像度が高く、機種ごとに細かな使い勝手がいちいち変わるのが面倒。
 戦争物ではなく冒険ファンタジーなんだから、実際の機種が特定できない拳銃・(アサルト)ライフル・手榴弾、残弾数はリロードの必要はあるが無限、ぐらいの緩さで十分と思うのだが。
 また敵をやり過ごして進むことができない(あるいは難しい)シーンが多く、なんとも殺伐としている。
 敵は音を立てても全然こちらに気づかないアホ揃いだが、配置的に向かい合っているものが多く、そうなると全員をステルスで倒せるシーンはほぼない。

 主要な舞台が孤島で完結していた前作に比べ、本作では舞台が頻繁に変わり、ゆったりとした時間を過ごせる村も存在する。
 ただ比率は、戦闘×20、謎解き×4、落ち着ける場所×1みたいな雰囲気で、戦闘で緊張するというより逆に「またか」と変化のない印象すら受けた。
 前作のレビューでは制作期間が短いことによる、水増しとしての銃撃戦ではないか?と書いたが、余裕があるはずの二作目でもこうだと「銃撃戦=サービス」である確信を持っているようだ。
 本作はクラフトのような「とりあえず入れておけば面白くなる」ような安直なシステムがほとんどなく、要素を絞り込めている。
 そうなると多発する銃撃戦は製作者側としては「砂糖たっぷりで美味しいでしょ」って気持ちなのは間違いない。
 しかし甘いのは他にいっぱいあるんで!本当に甘いの食べたい時は、そっち食べるんで!!トレジャーハンターは殺人鬼じゃないんで!!

 ただ同じトレジャーハントもののトゥームレイダーシリーズはもちろん、運び屋のミラーズエッジですら「銃撃戦多すぎ、銃器の種類にこだわりすぎ」の傾向があるので、これは欧米の抱える宿痾のようなものかもしれない。
 世界と比べて日本で売れてないのも「また銃撃つ洋ゲーか、イラネ」と避けられているようにも思う。

まとめ

 前作よりボリュームアップしているとはいえクリアまで12時間ほどで終わった。薄味でも意味不明でもいいから時間使わせようという魂胆を感じるゲームも少なくない世の中で、この割り切りは素晴らしい。
 おまけのメイキングと開発者インタビューの動画はいい。相当できが良くないと痛いだけの企画だが、本作は「相当できが良い」ので楽しく観れる。大量の設定画も鑑賞できるしね。

 本作はAIAS Game of the Year他多くの賞(ファミ通プラチナ殿堂など)を受賞しており、ゲームに求められる基準を一段上にあげた傑作と言える。
 ただ、そのゲームシステムや雰囲気などは前作でほぼ完成されており、このレビューを書く時も前作の体験だったか本作の体験だったかよく分からなくなることがあった。
 前作の時点で、とりわけ新しいシステムがあるわけでなく既存のものを強化した「究極に無難なゲーム」だが、本作はさらなる強化により突出したゲームとなっている。
 「どんな映画もスクリーンの形式(システム)に大きな差はないが、映されるのは千差万別」という映画的思想による制作とも言えるかもしれない。

 なお、オンライン対戦に対応しているが、(おそらく僕が持っている本体の問題で)読み込みが安定しなかったのでプレイしていない。
 PS4版ではオンライン機能は削除されているのでオマケの域であることは間違いないが、割と好評だったらしい。

参考

 そこで結論。

さらに磨き上げた「映画的ゲーム」の金字塔