ワンピース 海賊無双
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基本情報
無双シリーズと人気漫画ONE PIECEが組み合わされた、北斗無双に続く原作もの無双。
本作はガンダム無双と同様に、オメガフォースが開発しバンダイナムコゲームスから発売された。
ONE PIECEは長期連載の人気作であるだけあって、初代プレイステーションの頃(というか最初に出たのがワンダースワン)から連綿と手を替え品を替えゲームが作り続けられている。
大量の敵を仲間と協力してバッタバッタと倒していく乱戦状態の発生が頻繁な原作は、無双シリーズとのコラボレーションが発表された時点で「勝った!」という感じすらする。
システム
思い切った操作系の刷新
無双シリーズは「△数回+□」を攻撃の基本としてきた。
本作ではR1・R2ボタンも攻撃に使用しており、コンボも「△□△」とか「□△」とかも許容してセガバーチャファイター的になった。
その上、主役のルフィに限っては十字キーで技を選択することもでき、1キャラあたりの技がかなり多い。
△か□を連打していればなんとかなるので、それ以外はゲーム的にはあってもなくても構わない「死に技」になっているが、原作の技を自分で操作して出せるという嬉しさは確実にある。
加えて必殺技も各キャラ複数あり、キャラを操作してて楽しい。
「分岐が複雑になって使い分けが面倒」というより「ボタンを適当に押してればいろんな技が出る」と感じたし、慣れれば使い分けもできるし、いい調整かと思う。
さらに、ガードとジャンプを廃止するという思い切った変更も加えられており、これまでジャンプに割り当てられていた×ボタンはダッシュに割り当てられている。
ジャンプ漫画なのに!(笑)
ガードは戦闘が硬直しがちだし、ジャンプはキャラによっては不恰好になっちゃうし使い所もあんまりなかったので、これもいい変更かと思う。
加速に時間がかかって戦場の移動がもたつきがちだったので、×ボタンで一気に加速できるのは嬉しい(ただし、長押し操作は分かりづらいが)
とは言え結局は走って移動なので、移動距離が長くなった場合の冗長さは残っている。
あと、×ボタンで技をキャンセルしてダッシュし距離を詰めるチェインの使い勝手は良いが、対象のプレイヤー(子供層)に対してはマニアックすぎる気はする。
本作は全プレイアブルキャラが13人で無双としては少ないが、キャラごとのモーションが多様だし、無双第1作目の人数としては頑張っている。
ただ、その選択が主人公側のキャラばかりで、残念ながら深みに欠ける。
おそらく、敵側を操作可能キャラにするとマップやシナリオが共通化できず、追加マップが必須になるので避けたのだと思うが、そこはキャラ数減らしても頑張って欲しかった。
仲間ストライクは、ゲージが溜まった状態で特定の組み合わせの攻撃を出すと、設定した仲間が登場してしばらく操作できる、というシステム。
強いキャラを呼び出せて頼もしいが、突然入れ替わるのも不自然だ。
単純に護衛としてついてくるキャラを指定できる方が、自然かつ作りやすくかつ、プレイヤーも嬉しかったんではなかろうか。
あと、近くに仲間がいる状態で必殺技を発動すると合体技になる、無双シリーズおなじみのシステムが無いのは残念。
下手くそすぎるヒント
無双シリーズはヒントの出し方が下手で、本作もやっぱりそう。というか輪をかけてそう。
例えば、ヒントのカメラワークが、対象を見せた後に対象とプレイヤーの位置関係が理解できないほど移動が速く、最初と最後のボタンを待つタイミングもない。
もしこれが3D世界初とかだったらわかるが、もう世の中には任天堂のマリオを筆頭に3Dのアクションが数え切れないほど出てるのに、何の参考にもしてない。
なんというか「ヒント出したから分かるでしょ」という態度で、ヒントが伝わるかどうかは度外視という感じだ。
そもそも、ヒントマークを出すとかチュートリアルで解説文を入れるとかの工夫は、本当なら必要ない。
それまでにちょっとずつアクションが必要なところを超えてきた経験や、背景の作りからプレイヤーが正解を見つけた方が何倍も楽しいし、それこそがゲームだ。
テストプレイして先に進めない人が多かったんで、先に進めるように説明つけたという感じで、親切さよりバカにされたように感じる。
QTE
原作のストーリーを再現するメインログでは、リアルタイムイベントの名でかなり大胆にQTEが採用されている。
個人的にQTEが大好きなので、好感度高い。
QTEのメリット
- 強敵に対するとどめなど、印象的なシーンには派手な動きをさせたい
- ムービーで派手な動きをしても、操作の必要がなければプレイヤーにはコーヒーを飲む時間を提供するだけで印象が弱まる
- パワーが溜まった程度の条件で、派手な動きができるようにすると印象が薄くなる
- 発動タイミングをプレイヤーに託すと、肝心なとどめの時に使ってくれないかもしれない
- といって、それなしにボスが倒せないほど技の威力が大きいとゲームが崩壊する
- 最終的に、とどめが最弱の通常パンチだったりするとしょんぼり
といった諸々の問題を、ムービーの途中にボタン操作を挟み込むことで解決したものがQTEだ。
印象的な必殺技で強敵を倒していく原作と、非常に相性が良いシステムと言える。
良いQTE
本作ではとどめの際に、ラッシュのムービーと共に□を連打を指示して「コンチクショー!!」って気分を高め、ラストに○ボタンを指示して「これで終わりだーーっ!!」と必殺技を使い敵を倒すムービーを再生するのが定番だ。
攻撃は□、とどめに○というのは、ボタンに通常アクションと同じ関係づけがあり、他の場面でも関連付けが明確なボタンが使ってある。
ここに関しては、ほぼ完璧なQTEの使い方と言える。
また、別ボタン押しなど多少ミス入力してても、時間までに指定のボタンが押せればOKな、ゆるい受付も良い。
特に、移動シーンで発生するQTEのうち×ボタンで発生するジャンプ系のものは「押しっぱなし」でクリアできるのも良い。
失敗で致命的なことにならず、戻っても近くからの再開というところも、なかなか熟れている。
この辺、QTEを使いがちなバンダイのノウハウが反映されていると見て良いと思う。
分かりづらいボタン配置
しかし、同時に問題点も多い。
ごく基本的なこととして、PSのコントローラの○×□△および、L1・L2・R1・R2の位置が分かりにくいので、画面にボタンが表示されてから押すまでに戸惑いやイラつきが発生してしまう。
基本的には、こんなコントローラ作ったSONYが悪いんだけど、それに対策を打ってないのも大概良く無い。
序盤のQTEではコントローラ全体の絵を表示していて分かりやすいので、少々邪魔でも全編でコントローラ表示するオプションがあってよかったんじゃなかろうか。
茶飯事で使われるQTE
メインログで主に使うルフィは体が伸びるゴムゴムの能力を持っており、原作の漫画の中でも、手を伸ばして遠くの物を掴んだり殴ったりして様々に活用する。
このアクションにQTEが使われているのだが、前述のQTEの導入理由とかけ離れている。
鞭やロープを使ったアクションは、コナミ悪魔城ドラキュラやTNN海腹川背など「ワイヤー(グラップリング)アクション」というジャンルを作っているぐらいメジャーだし、本作の主人公のルフィにとっても日常的なことだ。
腕伸ばしなどの行動を限定した状況でしか行えない本作は、QTEによってできることが広がるというより、「いつでもできるはずのことが意味不明に制限される」という感覚で不愉快だ。
本作は感覚的には1/3以下の頻度が適切レベルではないかと思うぐらい「無駄に」QTEを使っている。
長く走って移動しなきゃいけない場所を、一気にショートカットするために使うのなら納得できたのだが、QTEでの移動以外の選択肢がないので、やらされている感が強い。
そもそもの問題として、QTEによる移動自体が特に工夫もなく面白くないのだ。
逆に、ムービーでは必死に攻撃をしているのにQTEが入らない場面が少なくないのも、調整不足を感じる。
ムービーで攻撃してる絵が出てるとこは、ボタン押させてくれ。
QTEに関するその他
このゲームやっててびっくりしたのは、QTEシーンがスタートボタン一発で飛ばせることがあること。
QTEはゲームではなく演出だということが分かっているなら偉いが、分かっていなくてムービー扱いにしてたんで飛ばせちゃった、という感じがするのが本作。
というのもムービーを飛ばすときは「はい・いいえ」の確認が入る、これは良いのだが、キャラの登場シーンのような何度でも同じものを見せるタイプのムービーでも確認を入れてくる。統一感があるというより、TPO考えず同じシステムを使い回してるだけに思えるのだ。
R2ボタンを押して掴みアクションを発動しQTEに突入というパターンが多いが、掴めるオブジェクトを探して一人称視点でキョロキョロする必要があり、極めてテンポが悪い。
しかもその操作がカメラの設定に沿っておらず、戸惑うことおびただしい。
この掴みアクションがボス戦で必要とされることが多く、操作に戸惑っている間にダメージ受けたり操作がキャンセルされたりする。ムキーっ!!!
本作に限らず、無双シリーズ全体にカメラ関連が雑すぎる。色々と作り込んだ部分が、これ一つで台無し。
メインログ
主人公ルフィとなって、原作の物語を追体験するのがメインログだ。
原作再現
本作の売りのひとつは「原作のストーリーを再現」することにあった。
しかし、戦場を自由に駆け回る無双のシステムと、一本道の物語を語ることは決定的に相性が悪い。
これは散々無双シリーズを作ってきて気づいていて欲しかったし、最悪でも北斗無双を作った時点で悟って欲しかった。
原作を再現するにしても、シャボンディ諸島まで(61巻)のストーリーを1本のゲームでやろうというのに無理がありすぎる。
せいぜいアラバスタ編(23巻)までが良いところかと思う。
案の定、登場キャラは大幅に減らされているし、あらすじにしてもスカスカで、本作が初見の人は原作の流れどころか、なんで人気作なのかすら分からないだろう。
大まかな流れをナレーションで説明してるのも酷いが、思い出話をしているという設定で展開される漫画のコマ割りっぽいイベントシーンなど、ほぼ静止画で口パクすらない上に、会話しているキャラ同士の目線も合ってないし、なぜか服だけアニメーションして風になびいてたりする中途半端具合。
もう断言して良いと思うけど、物語が分かってないか、物語を軽く見てる(多分後者)
宣伝文句として「原作の物語を完全再現」とか入れたかっただけで、物語として成立させるかどうかは度外視だったとしか思えない。
ゲームシーン
前述の通り、QTEの使い方は悪いし、ヒントは余計だったり分かり辛かったりで、極端な話ストレスを受けるためにプレイしてるようなもの。
幸い、物語を大幅に端折っているので、比較的短時間でクリアできるのが救い。
ボタンを押して仕掛けを起動したりする謎的なものが用意されているが、ゲームあんまりやったことない製作者が「ゲーム好きな人ってこんなことすると喜ぶんでしょ」って感じで作ったような雰囲気を感じる。
もうゼルダの伝説とか世の中にはあるんですよ! 中途半端な気持ちで、そこ狙うのって負けしかないでしょ!!
例えば、病気のナミを背負っていくシーンは、原作エピソードをゲームらしい制限として再現してて面白いが、操作・マップ構成など諸々が洗練されていない。
そのシーンに限らず、雰囲気を味わわせてくれれば良いだけなのに、無駄に長いのも問題だ。
無双シリーズなのに、戦闘シーンの割合が少なすぎるのも、狙い所不明な感じだ。
ボス戦
道中に比べ、ボスが無闇と強い。
正確には強いというより、卑怯というか面倒臭いというか、特定の攻撃しか効かないとか、特定の手順を踏む必要があるとか、無敵状態が長いとか、いらないストレスを与えてくる。
前述の通り、ヒントが分かりづらいことと、掴みアクションが使いづらいことの合わせ技で、とにかくイライラする。
敵は起き上がりに闘気を放つので、近くにいたら吹っ飛ばされる、というのも面倒臭い。
こういう敵は結局「一度浮かせたら落とさないように攻撃する」といったハメ技で倒すことが最適解となってしまい、むしろ原作で強かった印象が弱まってしまう。
本作に限ったことではないが、無双シリーズは対戦格闘ゲームを研究して、1対1の面白さを演出してほしい。
そもそも対戦格闘ゲームとして始まったシリーズなのに…。
アナザーログ
ルフィ以外のキャラを使い、無双シリーズらしい戦いが繰り広げられるのがアナザーログ。
ルフィ以外のキャラが使えるけど、マップもシナリオも同じものの繰り返しで、水増し感がすごい。
基本的には無双なので面白いは面白い。
しかし、無双らしからぬ、といってアクション(アスレチック)ゲームとしても微妙なできのメインログをプレイしないとキャラが使えるようにならないのが酷い。
アナザーログの他にチャレンジというマップが用意されている。
これが相当育てて挑まないとクリア不可能な難易度で、プレイ時間稼ぎ感丸出し。
キャラは性能差が大きく、その性能差は原作に準拠している感じで、これは好感度高い。
ざっくり、原作で強いキャラは雑に戦っても強く、原作で強くないキャラは工夫して戦う必要がある、という感じだ。
プレイヤーがいない場所の味方キャラは、ボスはもちろん、中ボスや隊長クラスの敵と戦わないので、救援に行かないとみるみる体力が減っていく。
逆に、見えるところにいると、体力の残りにかかわらず強敵に突っ込んでいくので、味方が倒れることが敗北条件のマップの難度が高い。
雑魚敵の量は無双としては少なめだ。辺りを一掃した後、追加の雑魚を待つことが多いのが、より少なさを感じさせる。
また、盾持ってたり銃を撃ってきたり、縄で捕まえたりという特殊雑魚の比率が大きくて、イライラすることが多いのも難点。
その他
ビジュアル
グラフィックは、アニメ風でもなくといってCGっぽいテカテカした感じでもなく、斜線のテクスチャが入って漫画のカラー原稿っぽい質感で、なかなか良くできている。
前述のように多くの原作の技が再現されているのも嬉しいし、セレクトボタンを押すとキャラ固有の、見た目が変わるけどゲーム的に特に意味のないモーションが付いていたりするのも楽しい。
戦闘シーンでの動きもかなり良い。
背景はチープに感じるが、モノトーンよりにして格好つけた絵に比べると視認性は高く、何しろ明るい原作の雰囲気と合っている。
ただ、広場を道で繋げたマップばかりでバリエーションに乏しく、原作で描かれた風景の再現という意味でも、迷路状のものばかりで疑問がある。
成長要素
成長はレベルアップ方式+様々な条件で手に入るコインを組み合わせることで行う。
必ずしも武器を使うキャラばかりではないので、この辺は割と良い感じ。
コインの付け替えに、制限がないのも良い。
それに付随して、探索要素としてコインが入った宝箱があるんだけど、ステージの作りやゲームシステムが探索を積極的にさせる感じでもない。
無双シリーズも原作も探索よりバトルって感じではあるが、海賊のゲームなのに、宝箱見つけてもトキメキがないというのは、何か間違ってる感じはある。
オンライン
ネットを介しての共闘ができるモードがあるが、接続できてないので評価はなし。
まとめ
ボリューム不足というより、水増し感がすごい。
この薄味の本編の上に発売日当日にDLCを出してこられたら、「本編に入れとけよ!!」と怒るのも無理はない。しかも内容に比して高い。
商売的にも、DLCの配信は1月後を予定していますとアナウンスだけしておいた方が何かと良かったと思う。
発売日が3月1日なので、決算の上乗せ狙いの間に合わせ発売の上に、DLCでとにかく日銭が欲しかった、と勘ぐられても否定できない感じだ。
セリフが合ってなかったり、表記が間違ってたり、その他細かいバグをちょいちょい見かけたのも、見切り発車の雰囲気を感じさせる。
PS3本体直後の発売だったガンダム無双と違い、PS3での制作ノウハウもコラボゲームを作るノウハウも蓄積されていてしかるべきだったのに、本作は質的にも量的にも少々残念なできと言わざるを得ない。
しかし、PS3では異例と言えるほどの80万本を超えるヒットを記録しているので、この作りが正しかったと考えることもできる。
ただし、次回作であるワンピース 海賊無双2は、ゲーム内容の評価も上がり、ゲーム機本体の普及も進んだにも関わらず、売り上げは格段に落ちているので、やはりその場限りの商売は長続きしないと考えた方がいいだろう。
参考
そこで結論。
基本は良かったが、盛り込んだものがスカスカだった