TATSUJIN
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基本情報
本作は東亜系シューティングとかボムシューと呼ばれるショットとボムを駆使して戦う縦スクロールシューティングゲームの代表作である。
特に達人ボムは「個数制限があり、ボタンを押すと瞬時に発動し、画面全体の敵にダメージを与え、全ての敵弾を消す」という特徴を揃えていた。
このため東亜プランタイガーヘリ()以来の「広範囲の敵に大ダメージを与える」機能のほか、カプコン1942()の宙返りと同様の「避けきれない場合の緊急回避」の機能を持つようになり、プレイスタイルが大きく変わった。
この後のボムシューのスタンダードとなった記念碑的なボムなのである。
本作はにアーケードゲームとして登場し、翌年メガドライブ、さらに2年後にPCエンジンに移植され、誕生から30年以上経ってiOSやAndroidに移植、さらにイーグレットツーミニ、アストロシティミニ、メガドライブミニ2にも収録されている。
縦シューでコレというタイトルを挙げるなら必ず出てくる一本だ。
なおこのレビューは基本メガドライブミニ2版をプレイしての感想だが、メガドライブ版もアーケード版も持っていて当然プレイしているので、その辺も加味してレビューしている。
PCエンジン版やスマホ版は…プレイしたことないのでスルーで!
アーケード版がタイトー、メガドライブ版がセガ販売ということで、プレイヤーの記憶に混乱があると思うが、制作「東亜プラン」のゲーム。
ちなみに現在、東亜プランの版権を管理している会社の名前は株式会社 TATSUJINである。
共通するシステム
ナムコゼビウス()と同様に明確な面の区切りがなく、そのままスクロールして続行するシステムだが、ミス時は若干戻されることもある。
一見厳しい感じだが、難しい場所で復活し続けてみるみる残機が減ることが避けられるので、意外に親切なシステムだ。
ボスを倒せばステージが切り替わるというわけではないので、ボスを早く倒すとしばらく凪状態のごとく攻撃が弱まるのも、逆にボスを倒し損ねて画面下にスクロールアウトしていくのも、なかなかのワビサビ。
ボスの攻撃は多関節キャラがうねうね動くタイプはないものの、様々な工夫で使い回しもなくバリエーションに富んでいる。
雑魚は同じものでも出現パターンに変化があって道中も飽きない作りだ。
パワーアップアイテムと武器切り替えアイテムが別なので、迷わずパワーアップアイテムが取れる。
これが分かれてないと「武器を切り替えるとパワーダウンするんじゃないか?」と一抹の不安が残るのだ。
パワーアップは5つで1段階上がり発射弾数が増える、そして3段階目が上限(つまり2回上昇する)だ。
ミス時に取得していたパワーアップアイテム数は残るので、復活が絶望的になりにくい。
ショットは初期装備で扇状のパワーショット、直線状の達人ビーム、扇状に広がり押しっぱなしで敵を追尾するサンダービームの3種類。
サンダービームは範囲も広く威力は低いものの押しっぱなしで継続したダメージを与えられるため、避けに専念できて使い勝手がいい。後年の「ショットは押しっぱなしで避けるのがメイン」である弾幕シューの萌芽を感じる武装だ。
前触れもなく後ろから敵が出てきたり強力な中ボスが強襲してきたりと、初見殺しで難易度を上げるタイプのゲームだが、逆に言えばアドリブが必要な箇所は少なく、どうしても抜けられない箇所も高性能な達人ボムでゴリ押しできるので、達人の名から想像されるほどは難しくない。
特にスピードを最高まで上げれば、大きく避ける切り返しパターンで楽に進める場面が多く、初期設定では残機も増えやすい。
そのため本作はアーケードでは長く居座られがちなゲームとなり、それを反省してか次回作の達人王()では本当に難易度が上がってしまい、シューティング離れを後押しするゲームのひとつとなってしまったし、2作目にして達人シリーズにトドメを刺した。
音楽が違う
最初、メガドライブ版をプレイした時に明らかに軽い感じがしてダメ移植に思え、それが基板を手に入れる切っ掛けのひとつになったのだが、久しぶりにメガドライブミニ2でプレイして、どこがダメだったのかハッキリ分かった。
実はメガドライブ版はPAL(ヨーロッパのTV規格)のフレームレートに合わせて曲が作られたため、NTSC(日本の規格)だと1.2倍のテンポで曲が流れてしまうというミスがあったらしい。
しかもミスに気づいてたけど開発終盤だったし打ち上げの旅行にも行きたかったので、そのまま出荷したという話で「コラー!!」と思うが、もう時効なので許す(偉そう)
ちなみにこのミスは他のメガドライブのゲームでも発生しそうな気もするが本作以外にはないようだ、他の開発者はちゃんと仕様書を読んだんだね。
メガドライブミニ2では[アーケードBGM]が選択でき、テンポが修正される上に音色もアーケードに近い。
逆に音楽以外はメガドライブ版のままなのだが、これでプレイするとアーケード感バッチリで「音楽だけでダメ移植と感じていたのか…」と自分の感覚の頼りなさと音楽の偉大さを知った。
ちなみに、レトロフリーク(メガドライブなどのカートリッジがそのままプレイできる互換機)の本体の地域設定をPALにすると音楽がオリジナルのテンポで流れるらしい。
その他、移植にあたっての変更
縦画面のアーケードゲームを家庭用に移植するにあたって問題となるのは、家庭のテレビを縦にするわけにはいかないので、なんらかのアレンジが必要になるということだ。
本作の場合は少し縦方向を切って、スコアや残機などの情報を右側に出す方法がとられている。
そのため画面の小さい昔のテレビ(20インチ以下)ではかなりゲーム画面が小さくなる。これも移植度が低いと感じた理由のひとつかもしれない。
ただ、現在主流のテレビは30インチでも小さいぐらいで50インチも珍しくないので、カットされていても大きさはアーケードと遜色ない。
基本的には情報がメインの画面から消え右に大きく表示されるため見やすくなって良いのだが、本作の場合宇宙空間で位置の目安となるのがスコアの桁などになるため、安全地帯の確保がちょっと難しくなっていたりして痛し痒しである。
あとラウンド(周回数)とステージ表記が右側に付いて現在地が分かりやすくなった。
他にアーケード版で問題があった部分の調整がいくつかある。
赤のパワーショットの最大パワーアップ時の弾数が減る代わりに機体周囲にバリアがついた。
最大パワーアップ後はパワーアップアイテムがストックされなかったのが、ストックされるようになって最大パワーアップ時からの復帰が容易になった。
Cボタンに連射機能がついた(これはアーケードでは連射ボタンを増設している店が多かったので事実上存在していた機能とも言える)
またメガドライブ版(とPCエンジン版もそうらしい)には難易度と周回数に応じてエンディングが追加されている。
アーケードとメガドライブのCPUが同じMC68000であることや、開発も東亜プラン自らのもので、音楽以外は高い移植度を誇っているし、問題のあった仕様も改善されている。
つまりメガドライブミニ2の[アーケードBGM]によって決定版のTATSUJINが完成したと言ってもいいだろう。
ちなみにPCエンジン版は同じ時期に開発がアナウンスされたが、発売されたのは前述の通り2年後であり旬を逃してしまった。CPUがアーケードと異なることが、その理由のひとつかもしれない。
まとめ
本作の達人ボムによって、ボムシューは縦シューのスタンダードスタイルとなった。
以後ケイブ怒首領蜂()によって弾幕シューの時代が開けるまで、縦シューは全て本作の影響下にあったと言ったら過言だが言いたくなる(笑)
あと、音楽大事。
参考
そこで結論。
縦シューを作る時に、本作の影響から逃れることは難しいほどのスタンダード