真・三國無双 MULTI RAID SPECIAL
|
基本情報
真・三國無双5をベースにPSPで作られた外伝的作品が、スペシャルとなってPS3(とXbox360)に逆輸入移植!
5には猛将伝が出ておらず、本作が真・三國無双5 猛将伝の位置と言えなくはない。
なおレビュー対象はPS3版。
ぱっと見、既にある三國キャラ使って、流行ってるカプコンモンスターハンターみたいなことやったら面白いんじゃないの? みたいな安直な企画だ。
オメガフォースは、モンハンのパクリではない、あるいはそれ以上の何かを作り出すことができたのか。
既存のリソースを最大活用
ざっくり言うと無双シリーズの特徴である軍隊VS軍隊の部分を取り去り、いわゆるハックアンドスラッシュなアクションRPGに仕立てたもの。
レベルアップに加え、拾った素材を使って武器を作ったり、スキルを手に入れたりしてキャラを強化していく。
一応三國志の流れに沿って話は進むものの、ストーリーらしいものはほぼない。
挿入されるムービーは真・三國無双5のものを切り貼りした、やっつけ感溢れるものだ。
シナリオを新たに作る予算がつかなかった、という世知辛い理由が有力だ。
プレイヤー的には、クエスト受注方式で、大量のマップをクリアしていけば良い。
5のキャラが一通り揃っている。
んが、なんで増えたのが真・三國無双5 Empires追加された孟獲だけなんだよ!
一緒に祝融だろ! 加えて大喬だろ! そんな予算なかったんか! …なかったんでしょうね。
そして、魏・呉・蜀の3勢力からストーリーが選べるものの序盤と終盤の展開がほぼ同じで、カルピスの原液をケチったような印象の薄さ。
デッド・オア・アライブと無双OROCHIからゲストキャラが登場するため、三國志っぽさはますます薄い。
しかし、プレイアブルキャラとしては使えないという中途半端!
ちなみに、同じ会社のゲームのキャラを「コラボ」とか言ってるの、友達いないのかな。
なんか見た感じのシステム
ゲージが溜まると無双覚醒を発動でき、ジャンプやその他能力が向上する。
基本この無双覚醒の状態を維持していく。
強力な無双乱舞は無双覚醒状態から出すのだが、出すと無双覚醒状態が途切れる。
本作の無双乱舞。マニュアル読んだ段階で意味なしと分かるほどの死に技! ひどい!
無双覚醒状態は姿が大幅に変わり、ギラギラ光った魔物か神みたいな雰囲気になる。
本作に処理落ちは多いが、特に無双覚醒しているキャラが増えると落ちている気がする。
なお、無双覚醒状態は本作の数少ない新規素材だが、三國無双ファンが喜ぶかは微妙な感じだ。
能力を上げていくと、ガンガンダッシュして空中をビュンビュン飛び回る。
これは、ガンダム無双に近いプレイ感だ。
巨大な敵が出てくるので、ガンダム無双2っぽいと言った方がいいかも。
正方形の中規模マップをいくつか繋げて全体のマップにしており、区切り感が良い。
正方形マップ移動時にローディングがあるものの、HDDにインストールしておけばもたつきはない。
ただ、使い回しが露骨で、ずっと同じことしているような感覚に陥る。
単調さはあるものの、だいたい1クエスト10分以内でクリアできるので、プレイ開始に気合が必要ないのは良い。
負けてもアイテムや経験値は減るものの持ち帰りできるのも気軽だ。
色々雑
アイテムやスキルに妙に強力なものと何の役にも立たないものが混在しているの…本編も似たようなものだが…本作は特に極端。
相性が色々設定されていて、武器や属性を適切に選ぶとかなり効果的だが、面白いよりただ面倒くさいが先に立つ。
割と投擲アイテムが有用だったりするが、やたら種類が多く、これも使い分けがめんどくさい。
睡眠攻撃を加える蝶や突っ込んでくる鳥、風の術や各種兵器など、とにかく邪魔なだけで特に面白くもない障害が多い。
ジャンプアクション的に足場を渡って行くシーンなどでも、そういう邪魔を仕掛けてくるので、ただ意地悪。
くわえてカメラワークも悪いので、足場に着地するのに半ばカンに頼らなきゃいけないという酷さ。
囲んでボコられたり、兵器の集中砲火を受けたりして一気に死亡するパターンが多い。
ボス敵が無双覚醒し、さらにハイパー状態となり、ほとんど仰け反らないか完全に仰け反らない状態が長く、一方的に負けることも多い。
前述のようにダッシュや空中戦のような派手な要素から「ハイスピード爽快アクション」と評したいところだが…しかし。
画面内の黄忠は空中コンボを食らってお手玉にされている最中、爽快? みたいな気になる。
インタフェースもこなれておらず、知りたい情報が表示されないとか読む前に消えるとかざら。
メニューが深すぎる上に整理されておらず、基本的なシステムを使うのが謎解きみたいになってる。
他にも計略とか町の施設の成長とか、色々とシステムあるんだけど、どれもそれほど楽しくない。
そんなに楽しくない程度はまだマシで、武器のタイプ切り替えとかトラップに近いダメ機能だ。
とにかく要素増やしすぎて個々の調整が雑。
よくこんな雑な調整で「オンライン対戦」モードつけたなと、悪い意味で驚いてしまった。
実はオメガフォースのキーとなるソフト?
仲間を連れて行くと攻撃がある程度分散するが、特に序盤は仲間がいないので難易度が高い。
なお、PSPは複数人が集まって近距離通信での共闘プレイを前提に作られていたようで、ソロプレイだと本当に独り旅になっていたらしい…マジ?
仲間と一緒に戦えるシステムは、のちに発売されるドラゴンクエストヒーローズにプレイ感が似ている。
いろいろと荒削りではあるが、仲間に作戦を指示できるのはヒーローズにはない本作の魅力となっている。
真・三國無双BB(後の真・三國無双Online真・三國無双OnlineZ)は2006年から既にあったが、Windows版のみでゲーム機には発売されていなかった。
本作の場合は従来の無双と異なり、軍隊を率いないため無双っぽさは弱い。
なので「オンラインの無双」というキャッチーさはそこそこではあるが、以前からオンラインに積極的だったコーエーが、いよいよ本格稼働したタイトルと言えないこともない(弱め)
本作では2種類の装備のうちサブ武器は好きなものを持て、プレイ中にボタンひとつで切り替えられる。
これは真・三國無双6に、ヴァリアブル攻撃として洗練された形で採用されている。
また、モンハン的な作りは討鬼伝の試験運転版と言ってもいいかもしれない。
まとめ
どこを取っても中途半端なできではあるが、5を素材としてアレンジしているため、ビジュアルとサウンドは悪くない。
2009年であっても「どっかで見たことある」ものばかりのシステムは、言い換えれば「面白さに定評がある」システムでもある。
故に本作は、これ単体で評価すると「そこそこ遊べる良作」となる。
ノリで様々なシステムが投入されているので、後の多くのオメガフォースのゲームの原型となるネタが多数詰め込まれている。
以前から、各社せっかく作ったリソースをもっと有効利用するべきだとは思っているので、こういう作り方も良いと思う。
しかし、ただでさえ荒っぽさが目立つ無双シリーズのインタフェースやデータ周りが、さらに荒くなってるのは勘弁してほしい。
参考
そこで結論。
呆れるほどの薄味だが、そこそこ遊べてしまう