真・三國無双5

対応機種・周辺機器
PS3・Xbox 360・PS2・PSP(1〜2人)
ジャンル
戦術アクション
著作・制作
(c)コーエー(オメガフォース)

基本情報

 リアルタイムシミュレーションと格闘アクションの融合真・三國無双のシリーズ5作目(猛将伝、Empires含まず)
 本作はPS3での発売となり、高解像度化など順当にパワーアップしている。
 本シリーズはPS2でもHDDに対応していたが、PS3は本体に標準でHDDがあるので、読み込みが早くなる恩恵も標準となった。
 ちなみに、PS3用の無双シリーズとしてはガンダム無双に続き2作目となる。

 本作はXbox 360版も同時発売され、次の年にはWindows版も作られ、真・三國無双5 SpecialとしてPS2にも移植され、さらに次の年にはSpecialがPSPでも発売された。
 と、かなり広く展開されたが、追加データ版である猛将伝は発売されていない。
 なお、真・三國無双5 Empiresは発売されている。

戦闘システム

 本作は大胆なシステムの変更が加わっていて、直前攻撃回数によって技が変化するチャージ攻撃がなくなり、強攻撃・殺陣攻撃・特殊技が追加されている。

操作系の整理

 4もかなりシステムが整理されたと思ったが、本作ではサブウェポンとしての弓が廃止されている。
 そのため、右スティックが視点変更になって快適…これ戦国無双2でまるっきり同じこと書いた。
 シリーズごとに独自の方向に進もうとする面と、良いものはどんどん取り込む面が並行してあり、無双ブランドの強さを作っていることが伺える。

 また、今まで頑なに実装してきた十字キーでの移動が廃止された。
 十字キー対応はスティックでのプレイも許容したかったからと思うが、やはり3Dはアナログ移動でないと格段にプレイ感が落ちる。
 代わりに、十字キー下でいつでも馬が呼べるようになり、これが非常に便利だし、駆け寄ってくる馬かわいい。

連攻撃

 連攻撃ボタンをポンポン押しているだけで連続技が出る。
 これはユーザーテストなどで「同じボタンをひたすら押す」人が多いことが判明し、考案されたシステムと思う。
 が、ちょっと操作が単純すぎて面白くない。過ぎたるはなんとやらだ。

 攻撃を続けていると上がり、攻撃をしていないと下がる練舞ゲージがある。上がっていると強くなるので常に高く保つ方が有利だが、メンドくさい。
 これ「士気」を割り当てて欲しかった、士気が高ければ序盤でリーチや威力が高くても納得だし、士気が落ちると色々弱くなるのも納得感ある。

 セガバーチャファイターのPPKの気持ち良さを拡大したプレイ感が、無双シリーズの面白さの骨子と思うのに、それを廃止しちゃうの大胆すぎる。
 今回は失敗かもしれないが、チャージ攻撃に飽きてたところもあるし、チャレンジは評価したい。

ガードとガード崩し

 憶測だが「ガードボタン押してるのにガードできないの納得いかない」という意見を素直に取り入れて、本作は全方向ガードの上、ガード状態で移動できる。
 背中から切ってもガードするのは直感に反してるし、対抗策の強攻撃・殺陣攻撃のルールが分かりづらく、使いやすくもない。

特殊技

 無双シリーズはゲージ消費必殺技として無双乱舞があるが、本作はそれに加えアイテムを消費して発動する特殊技がある。
 特殊技には何種類かあるが、概ね発動するとアイテム出現率が高くなり、広範囲に攻撃ができる技だ。
 特殊技を発動すると、アイテム出現率がアップ→アイテムで能力が向上→敵をさらに撃破しやすくなり→アイテムがさらに出る、のサイクルが発生し、特殊技発動→特殊技発動アイテム出現のループが発生することも珍しくなく、フィーバー感が気持ちいい。
 所持アイテム消費型なので、発動タイミングが任意なのと発動回数に制限があるのも、発動に戦術が求められて「ここぞ」で使えると多幸感がある。

マップ

門と工兵

 門番を倒すと門が開くのではなく、門を将兵が直接攻撃したり、工兵が破城槌などを使って壊す。
 ひたすら敵を倒すのではなく、物を壊す段階を挟むことで、単調さが軽減されている。
 攻城兵器も壊せるので、味方の攻城兵器を守ったり、敵の攻城兵器を壊したりと選択肢が広がった。

移動手段の多様化

 今まで梯子を描いてあるのに登れなかったのが登れる。嬉しい!!
 これにより、攻城戦の際に塀の上に登って弩級などを破壊して工作兵を支援したり、門や櫓上の弓兵を直接倒しに行けたりする。
 特に射撃台という弓兵主体の拠点は、地味なダメージだが遠方まで矢を射てくるので、先に潰すか一気に射程圏内を駆け抜けるか、選択の妙味がある。

 人も馬も泳げるようになって水は通路の一種となり、マップの密度が上がった。
 しかしながらミニマップが見づらくて、最初のうちは一度川に落ちたら最後、二度と上陸できないままゲームオーバー、という切なすぎる展開もあるのは困ったもの。

 今までは割とジャンプの使い所がなかったが、本作は柵を飛び越えて崖などを降りることができ、大胆なショートカットができる。
 また、本作では騎乗のままジャンプが可能となっており、平地でも邪魔な柵を飛び越えたりできてカッコいい。
 間違って落ちてしまうと大きな痛手となったりするのも面白いし、敵の真っ只中に飛び降りると奇襲となる場合があるのも楽しい。

 マップもこれらの豊かになった移動手段を活用できるよう、非常に立体的になっている。
 ある程度マップを記憶すれば、川・池や崖・谷を利用して、戦場を縦横無尽に駆ける感覚が得られる。
 他の武将や一般兵も動きのバリエーションが増え、撤退時に川に飛び込んで逃げている一般兵といった光景が展開され、必死な戦場感が出てて良い。
 しかし、立体的でただでさえ迷いやすいのに、ミニマップや作戦マップが分かりづらく、不要なストレスになっている。

 なお、馬で走り回っていた時点で護衛は置いてけぼりになりがちだったので、これだけ行動の幅が広がると護衛の廃止は必然だったと思う。

兵士・武将

バリエーション

 武将が率いる兵士の中に副将というちょっと強めの敵がいて、ハンバーグの中に入った軟骨みたいに、いいアクセントになっている。
 武将を先に倒して敗走させるか、倒しやすい副将を倒して戦力を削ぐかといった、戦術シミュレーションらしい行動が取れるのが面白い。

 一群の中に将旗兵という兵士が存在し、その名の通り旗を持っていて、遠目にどの軍団に属するのか良くわかる。
 それだけではなく、周囲の兵士に能力上昇効果を与える能力があるので、優先的に倒したい敵であり、それを促すように倒すとアイテムを出しやすい。

 拠点には、副長と拠点兵長がいて、前述の副将のようなアクセントになっている。
 拠点の防御力ががくんと減るので積極的に狙うべき標的だ。

 雑兵も「今だ!」の声とともに突進してきたりジャンプ攻撃を仕掛けてきたり、動きに幅があって飽きさせない。
 後、記憶によると、勢力ごとに雑兵の鎧が異なるのは、本作が初めてではなかったか?

行動

 前述の飛び降りたり泳いだりの他にも、工兵が攻城兵器を組み立てたり動かしたり、かなりバリエーションのある動きをする。
 のほほんと突っ立ってる感の強かったこれまでに比べ、兵士が積極的に進軍しているので、「反撃だー!!」みたいな空気がリアルに感じられる。
 それにPS3の恩恵もあって、これまで以上に大量に兵士が出てくる。

 武将と戦っている際に周りを円形に兵士が取り囲み、包囲戦が始まることがある。
 突然画面が変わっていた真・三國無双3の一騎打ちに比べ、戦場にそのままシームレスに作られて自然。
 あまりに自然に囲まれているので、包囲戦になっていることに気づかなかったりする。
 もっと通常シーンと区別する演出が欲しいし、副将まで入ってくるのは邪魔だし、1対1の時は視点を敵に固定して欲しい。
 面白い試みだが、まだ色々と調整の必要がある感じだ。

 武将も極端に突出したり、意味もなく動かないということもなく、拠点を潰しつつ進軍し、拠点を占拠した後に防衛につくなど、的確な行動を取る。
 真・三國無双4のレビューで、防衛に武将がつけばいいのに、と書いていたが、それが実現されていて盛り上がる。
 ただ、最終局面で味方武将が沢山残っていると、敵総大将1人に対して大量の武将・兵士が群がる状態になり、何が何だか分からなくなるのはやめて欲しかった。
 一応、カメラ位置をほぼ真上にしてミニマップを拡大表示にすることで、ある程度見づらさは緩和できる。
 たまに総大将に対して包囲戦が発生することがあるが、これは敵が能力アップする上に1対1(タイマン)になるので、非常に盛り上がる。
 総大将に対しては必ず包囲戦が発生してもいいんじゃないかと思うぐらいだ。

能力の強化

 根元から枝分かれを順に辿ってスキルを選ぶ、スキルツリーというシステムが導入されている。
 最終的には表示されているスキルを全部つけられるので、誰がやっても同じ能力になるのだが、成長中はそれなりに選択の面白さがある。
 飽きさせず、面倒臭がらせず、の良いシステムかと思う。

 武器は相変わらずの、無限くじ引き方式で、良いのが来るまでひたすら繰り返しプレイするもの。
 代わりに馬に経験値とレベルがあり、育っていくのは愛着が湧くし、結構便利なスキルが付くこともある。
 馬は全武将に共通なので、武将を変えた時に、まるっきり最初からとならないのは嬉しい。
 すぐにレベル上限に達するので、馬も時間がかかるくじ引き、でしかない面もあるのだが。

 能動的に高性能を狙い出すと、相変わらずの運頼みの繰り返し作業になってしまうが、だらっとプレイしている段階ではなかなか楽しい。

シナリオ

 プレイ可能な武将は41人と十分以上の人数が用意されているが、キャラデザインをフルリニューアルしたこともあって、モデル作った時点で力尽きたというか時間切れになったようだ。
 ストーリー仕立ての無双モードがあるのは17人、技を出す動きを共有している武将も多い。
 17人もプレイすれば1ステージ20分としても各キャラ6ステージなので、20×6×17 = 2040分 = 34時間かかることになり、ボリューム不足というほどでもない。
 難易度「普通」でも結構な歯ごたえがあるので、ゲームオーバーになって再プレイしたり、レベル上げのためにフリーモードをプレイしたりして、実際はもっと時間がかかるだろう。

 ただ、個別のムービーを作っているのにシーン的には似たようなものだったり、各ステージは密度も広さもあり、繰り返しプレイに耐えるものではあるが、無双モードが17あるのにマップが19種類しかないのは被りすぎで、同じこと繰り返してる感が強い。
 武将ごとの話を追うのではなく、前作同様に勢力ごとに用意したほうが良かったかもしれない。その上で、単純なもので良いから関羽千里行のような武将個別のマップが欲しかった。

 無双モードは、三國の後、晋の建国に向けての司馬懿や、プレイアブル武将でない陳宮がムービーで強い印象を残したり、色々と面白みがあった。
 ただ、エンディングでみんな旅立ち過ぎかと思う。

 本作は無双モード以外は、好きなステージがプレイできるフリーと、サバイバルとかタイムアタックとかできるチャレンジがあるだけで、延々遊んでいくタイプのモードがないのは、寂しい点。
 無双モード(ストーリー)がない武将は、特に長期的展開がないこれらのモードしかプレイできないので、喪失感大きい。
 ムービーなしで武将が出陣したことのある戦場をいくつか繋いだだけの簡易的な無双モードであっても、用意したほうが良かったかと思う。

その他

 グラフィックが強化されているのは当然だが、PS3になったことで余裕のできた処理能力を、倒した敵をしばらく残すとか、狼とか虎とかの戦と関係ない生き物に割いているのが、単なるゲームではない世界を感じさせて良い。
 ただ、兵士がたくさん画面に登場すると処理落ちすることが多く、遠景でなくてもポリゴン数の低いモデルを使ったりして、軽くして欲しかった。
 後、ちょっとしたアクションでもカメラが揺れて、画面がうるさいし見辛いのは要改善。

 メニュー全体に「はい・いいえ」のデフォルト設定が変で、最初のうち武器入手画面で間違ってポンポン捨てていたし、セーブしようとして進む戻るを繰り返してなかなかセーブできなかったりした。
 会社として細かいインタフェースのコツを蓄積をしていないの勿体無い。

 難易度はそこそこ手応えがあり、ゲームやってる感じがある。
 レベルアップシステムがあるゲームは、最初から簡単だと強くなった時の嬉しさがないので、このくらいの調整が良いかと思う。

まとめ

 2007年のωフォースは、本作の他にガンダム無双無双OROCHIBLADESTORM -百年戦争-を発売した上に、Xbox 360・PS2・Windowsとのマルチプラットフォーム展開も行なっている。
 また、Fatal Inertiaはコーエーカナダ開発だが、ωフォースはプロデュースを行なっている。
 どー考えてもオーバーワークじゃないかと思う。

 そんな最中発売された本作は、システムもキャラのモデルもモーションもほとんど総とっかえという状態であったにも関わらず、かなり高い完成度を叩き出している。
 キャラを少しずつ増やして積み上げ、尋常ではないボリュームを誇った4と比較すると、ボリュームが減っていることは否めない。
 ただ、単体で見るとボリューム不足というほどではないし、むしろ結構頑張ってる。
 単純に量で勝負する方向に行かず、本作で取り入れられた戦闘以外のアクションやマップに干渉できる部分を増やして、濃いゲームを目指して欲しい。

参考

 そこで結論。

人気シリーズをガラッと変えた上に、高い完成度を出すコーエーの強さ。