真・北斗無双

対応機種・周辺機器
PS3、Xbox 360、Wii U (1〜2人)オンライン対応
ジャンル
アクションアドベンチャー + 戦術アクション
著作・制作
(c)コーエーテクモゲームス / 武論尊・原哲夫 / NSP

基本情報

 無双シリーズと人気漫画北斗の拳が組み合わされた北斗無双(以後、前作)の続編であり、北斗の拳連載開始30周年記念作品。
 前作同様に漫画原作をアニメを経由せずゲーム化する方針により声優はTVシリーズと異なるが、前作からの続投に加えビッグネーム多数の参加に安心感がある。
 またテーマソングROCK YOUR SOULにV6を起用し、プロモーションにも力を入れた本作。
 前作のバージョンアップに止まったか、新生に成功したか。

 本作は前作のPS3とX360に加え、Wii U版も発売されている。
 以下PS3版をプレイしての感想だ。

ストーリー部分の原作再現

 前作では原作の半分もないラオウ編で終了の上、それまでのエピソードもかなり端折っていた。
 本作の伝説編では原作の最後まで再現していて、抜けはほぼない。
 これだけでもかなり高評価を出していいだろう。めちゃくちゃ面白い原作を再現しているのだ、面白いに決まっている。
 実際ファミ通のクロスレビューではプラチナ殿堂入りを果たしている。

 本作では①ゲーム本編に会話ウィンドウ、②ムービーという演出方法に加え、③漫画のようなコマの枠を出し、その中でゲーム本編のモデルを使った静止画像をカメラの動きと擬音語(オノマトペ)を重ねて音をつける独特の方法が採用されている。
 コマ割り風の演出はワンピース 海賊無双シリーズでも、カットインやイベントシーンで採用されていて、いわば「ジオラマを使った紙芝居」みたいな感じのコスト削減手法なのだが、原作が漫画なのでモデルが動いてなくてもなんか納得させられてしまう。

 これらのイベントシーンのUIが良くない。
 まずポーズ機能がないし、①はスキップできない、③は漫画のコマ割りしているんだからコマ単位で飛ばせても良さそうだが、そんな繊細さはない。
 いちいち紹介しないが、イベントシーンに限らずUI全般がちょっとずつ出来が悪く、ストレスが積み重なる作りだ。これは無双シリーズ全般に言えるのだが…。

 原作は男泣きがちょいちょい出てきて感動を呼ぶのだが、本作では本編のモデルを採用しているため「涙だけ後付けした」状態であり、光源と関係なく光っていたりカメラが動くと頬とズレたり、気づかない人は気づかないかもしれないが、個人的には「感動返して!」と言いたくなるぐらいの雑な処理でがっかり。
 本編のモデルを利用しているため原作と人物の比率が著しく異なる場面があり、特にしょっぱなのリンが捕まっているシーンなど「リンでかっ!」と思ったりした。実のところ原作のそのシーンだけリンが異常に小さいのだが「原作は聖典」でもあるので違和感がすごい。
 ついでに言うとモブのモデル数が少ないため、例えばミスミの爺さんが使い回されてなんども出てきて「貴様…死んだはずでは」みたいになりがち。
 予算が無限にあるわけではないので、しょうがない部分ではあるとはいえ、フィールドに出ているモデルとメッセージウィンドウの顔ぐらいは合わせて欲しかった。混乱する。

 また戦闘シーンからイベントに移った途端に背景がまるきり別のものになるパターンも多く、これも没入感を削ぐ。
 完全に動画として作ったムービーもあるが、前作のようにやたら高精細にするのではなくある程度本編のクオリティに合わせているため、違和感なく見れるのは良かった。
 声優の演技は素晴らしいのだが、なぜか全体に声の音量が小さく聞き取りづらいことがあった。
 幸い個別にボリューム設定ができるので、声を大きめにその他を小さめに設定することをお勧めする。

 という感じで、ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッドのような、とにかくセリフ全部喋らせときゃいいだろ、みたいな雑な全部再現でなく、コストを抑えつつもしっかり物語として楽しめるものとして作られている。
 例えば、声に関しては極力断末魔のセリフを再現しようという努力が見え「ちゃんと原作が好きな人が作ってる」という前作では感じられなかった信頼がある。
 また、ひたすらイベントシーンが続くわけではなく、こまめに戦闘シーンが入っていい感じに飽きさせないのは原作との相性が非常に良かったと言える。

素晴らしきQTE

 QTEが採用されていて、これは「派手な必殺技でとどめを刺す」原作との相性が抜群に良い。
 開始のボタンは制限時間がないかかなり余裕があるし、途中で挟まる制限時間付きパターンも一瞬ではなくバーが縮んで行く間の数秒の余裕がある。
 ボタン位置を間違えないように○×□△の位置込みで表示され、場所がわからなくなりがちなL1・L2・R1・R2のうち使われるのはガードのL1のみ(だったと思う)。
 加えて攻撃や回避という動作とボタンの対応が本編と同じで、レバー方向もアクションの向きに対応している、というほぼ完璧な対策が取られている。
 嫌われがちなQTEであるが、本作はQTEのお手本にしていいぐらいの文句ない出来だ。
 原作再現としても、ボタンを押した瞬間ビシッと効果音が響き、アタッ!と秘孔を突いた感が完璧に近い。
 ちょっとだけ不満をいえば、もう少し連打させてくれるシーンが多いと嬉しかったのと、レバー回転が受け付けられているか分かりづらいので画面に反映して欲しかったというぐらいか。

戦闘シーン

 さて、メインゲームである戦闘シーンだが、前作で問題だった全体的にもっさりした動きや、敵の攻撃によって怯むことでテンポが悪くなるなどの問題は解消され、快適に動ける。
 また逆にジャンプ動作は特定の場所でしかできなくなり、ピョンピョン飛んで原作の重厚さが台無しになっていた部分も解消され、加えて緊急回避・ダッシュにボタンが割り当てられたので、より戦闘がスピーディーになった。
 チュートリアルも段階的に提示され、自然に操作が身につくようになっている。

 こんな感じでかなり良い感じのアクション部分だが、ものを持って投げるとか乗り物に乗るとかの特殊アクションの作りが悪く、突然操作感が悪くなる。
 少々のメリットがあっても使いたくないぐらいのストレスで、ない方が良かったのでは?と思うほど。

 原作のストーリーをなぞる「伝説編」では、ほぼ分岐のない道中に雑魚敵が湧いてきて倒す→(中)ボスの繰り返しで、見た目こそ3Dだがベルトスクロールアクションに近い構成だ。
 直線的な原作をなぞるというという行為に対して素直な作りで、途中の謎解き要素も謎というほどでなく、ちょっといつもと違うルートを探す程度のもので、プレイヤーを飽きさせないという役割をきちんと果たし、無駄に難しくて進行を止めるほどではない。
 ただ道中の雑魚敵のバリエーションは乏しく、十数人出てきて減ったら「上から追加が降ってくる」という感じで、時間がかかり作業感が強い。
 一応、挑発を行なって敵を集めて一掃はできるが、その段階を踏むのはテンポが悪く、さほど爽快感はないし時間短縮できている実感もない。
 前作のレビューで書いて否定したが、やはりセガ・マークⅢ版北斗の拳のように、音ゲー的にテンポよく雑魚を排除していくゲームに近づけたほうが正解のような気はする。

 原作で人気の北斗神拳奥義は、十字キーで技を選択し□ボタン一発で闘気ストックを消費して発動という分かりやすいもので「原作のあの技を使いたいのにコマンドが難しすぎて出せない」などということに絶対ならない仕様。
 主人公のケンシロウなど、後半になると奥義が多すぎて選択が面倒臭いレベルの再現度だが、そこは嬉しい悲鳴として許容できるところだろう。

 ボス戦に関しては奥義を出し合うと両方無敵で虚無の時間が発生するといった問題はそのまま残っている。
 とはいえ、ガード・回避・投げを適宜使うことで一方的に攻撃を食らう場面は少ないし、相手の起き上がりで発生する気合も強すぎず離れすぎずでテンポを崩さず、まぁまぁいい感じに戦えるようになっている。
 ボス戦はQTEがカッコい良いので、そこに至るまでに多少難があっても及第点にはなる。

おまけ

「原作完全再現ありがとうございました!」で終わってもいいのだが、その他のモードについて一応言及しておく。

 パワーアップ要素として経絡図というものがあり、3マスにパワーアップ要素が書かれた巻物を5枚セットでき、その接続によって効果が強くなったりするというもの。
 宝箱や戦闘の評価で手に入るが、余った経絡図を合成して強化するみたいなことができず使えない経絡図は捨てるしかない。
 とにかくキャラを育てるのが好きなタイプのプレイヤーは、いいのが出るまで祈りながら集め続けるしかないという地獄のような仕様だ。
 例によってUIも良くないが、設定が面倒くさくなるほどではないのが救い。

 伝説編でも時々別キャラクターを使えたが、好きなキャラクターを選んで個々の外伝的ストーリーを楽しむ「幻闘編」が別にある。
 ストーリー的には本編の空白を埋めるというものなので「まぁそんな感じですよね」という話がほとんどで、そんなに面白くない。
 ぶっ飛んだ話も入っているが、ぶっ飛びすぎているので北斗の拳正史として欲しくはない、という両極端。

 幻闘編は伝説編のような直線的なつくりではなく、無双シリーズの定番のマップに拠点があり好きな順に攻略していくタイプだ。
 しかし拠点を5つ落とすと全拠点が味方のものになりボスが現れるので撃退というパターンに統一されていて、無双シリーズらしい兵力の押し合いや武将を倒すタイミングを計るといった面白さは全くない……というか面白い点がない。なにこれ。
 また、拠点以外にほぼ敵が出ないので拠点間の移動が単に走ってるだけで緊張感も何もない。
 びっくりするぐらいオマケの域を出ていないので、ケンシロウ以外のキャラで遊ぶことを楽しみにしていたプレイヤーからすると、クソゲーと言われても否定できない。
 個々のキャラのアクションなどは、それなりに良くできているのが悲しい。
 こんな出来なら幻闘編はつけずに真・北斗無双 猛将伝としてしっかりとしたものを別に出す方が良かった。パワーアップキット商法となじられてもいいじゃないか!良い商品を出していこう!!

 ところでDLC商法はどうなのかというと、例えばキャラ一人762円と内容の割りには高く、バンダイナムコが関わってないのにアコギな印象ではあるが、幸い(?)幻闘編のできが悪くあまり欲しくならない。
 2人プレイやオンラインモードに対応しているが、これもオマケの部類。

まとめ

 無双の定型パターンにこだわらず原作の流れに沿ったゲームとしてまとめた手腕は見事。
 原作にない部分のやっつけ感が強く「新たな聖典」とまではいかなかったものの、全体としては「真」の名に恥じない北斗の拳と言える。

 とはいえプラチナ殿堂入りは評価し過ぎで、すでに落ちていたファミ通の信頼がさらに落ちた感じだ。

余談

 上記のようにかなり良くなった本作だが、前作より全然売れていない模様。日本国内で前作の約50万本が半減しているらしい。
 微妙なできの前作の続編は、できが良くても売れないというのは、ほぼ決定的な事実。
 タイトルが前作+アルファ程度の内容と思わせる感じなのも良くなかったかもしれない。

 本作のコンテンツを利用してその後、サミーぱちんこCR真・北斗無双パチスロ真・北斗無双などが作られヒットしている。
 もしかしたら、こちらの方で制作費は回収できたかもしれない。

 また、スマホ用に本作とほぼ同じシステムにガチャを追加したバージョンがリリースされたが、スマホの操作ともガチャとも食い合わせが悪く、無敵の北斗神拳のはずが育成なしでは序盤のボスにも苦労する有様。こちらはあまり売り上げに貢献していない雰囲気。
 いわゆるソシャゲ離れ進行中であったり、そもそものユーザ層がソシャゲよりパチンコな層であることもあって、現在サービス継続中ではあるが、最終的に厳しい結果を迎えそうだ。

参考

 そこで結論。

「真」の名にふさわしい伝説編と、蛇足感の強い幻闘編