戦国無双4

対応機種・周辺機器
PS3、PS VITA、PS4、Switch(1〜2人、オンライン対応)
ジャンル
戦術アクション
著作・制作
(c)コーエーテクモゲームス(オメガフォース)

基本情報

 リアルタイムシミュレーションと格闘アクションの融合真・三國無双の日本戦国版戦国無双シリーズの4作目である。
 PS3での戦国無双は2作目となるが、PS3では真・三國無双シリーズは勿論、ガンダム無双をはじめとしたキャラもの無双もシリーズ化しており「コーエーテクモやめて株式会社無双にしたらどうだ」と思ってしまうほど出ている。

 そんな中、戦国無双シリーズ10周年記念作品としてTVアニメシリーズが制作されるなど、かなり気合の入った展開がなされたのが本作である。
 新武将が追加された上に、戦国無双 Chronicleも含む歴代戦国無双シリーズのキャラも全て参戦し、ついに無双武将(プレイヤーキャラ)は50人を超えた。
 10周年の記念にふさわしい豪華パッケージと言える。

 PS3、PS VITA版が同時発売、半年遅れでPS4版が発売され、 ダウンロードコンテンツを含んだDX版がPS4とSwitchで発売されている。
 本レビューはPS3のもの。

 本作は追加パック的な猛将伝は出ておらず、戦国無双4-Ⅱという変則的なバージョンアップタイトルが出ており、また戦国無双4 真田丸という外伝的な作品も制作されている。

システム

 基本的なシステムはいつもの無双ではあるが、前作戦国無双3から大幅な変更がなされており、プレイ感はかなり異なる。

△ボタン

 △ボタンで出る神速攻撃は、猛スピードで突進する攻撃範囲の広い技で、雑兵を一掃しているときはT字レーキでグラウンドの土ならしをしているような気分になる。
 圧倒的に雑兵を倒しやすくなって、一騎当千も楽にこなせる。
 抜群に性能の良い神速だが武将には弾かれてしまうという弱点があるため技の使い分けが必要になり、プレイが単調になるのを防いでいて良い。

 今まで△ボタンはチャージ攻撃に使われていたのだが、本作でも通常攻撃の○に続けて△ボタンでチャージ攻撃になる。
 戦国無双は特殊技が各キャラクターごとにあって、チャージボタンで開始するチャージ1の立場が微妙だったので、空白地帯に見事にハマった格好だ。

 以上のように状況(コンテクスト)によって△ボタンの役割を変えることで「切り替えボタン」を必要とせずテンポよくスムースに2種類の性質の違う技を使い分けられる。
 非常に賢い(クレバーな)システムで、なんというか無双チームらしくない! 偉い!! 成長した!!!

 神速と機能がかぶるダッシュ攻撃・緊急回避は廃止されている。
 緊急回避は戦国無双特有のアクションだったので残してよかったのでは? という気もするが、廃止の決断ができるのは偉い。
 迂闊に残すとシステムが肥大化してプレイヤーが混乱する。

アイテム

 成長するとアイテムを最大8個までもって出陣できる。
 こうなるともう開始から終了まで途切れなくアイテム使っていける感覚だ。
 特に無双武将を条件に従って倒した時に落とす「家宝」は性能が良いものが揃っている。
 便利すぎる気もするが、基本的に無双シリーズはプレイヤー側の能力が底なしに上がる方が楽しくなるタイプのゲームなので正解だ。
 ヌルくて嫌なら難易度を上げたりアイテムを使わない制限プレイをしたりすれば良いのだ。
 が本作の場合、難易度が上りきれてない感じはある…簡単モードが簡単でないよりは断然マシなのでヨシ。

 敵やつづらから落ちるタイプのアイテムは、どうやら戦闘終了まで消えないようで、出たものをその場で拾わずにあとで取るために放置しておける。
 アイテムを慌てて取る必要もないし、今必要がないアイテムが出てもあとで取れるので無駄に感じない。
 2人プレイのとき、もう一人のために残しておけるのも非常に良い。
 マップ上に放置しておけるアイテム数に上限はあると思うが、個人的にはまったく制限を感じなかった。

操作武将切り替え

 本作で特筆すべき変更は、戦国無双 Chronicleから輸入された2人の無双武将をSELECTボタン一発で切り替えるシステムだ。
 操作キャラクターを常にふたり投入でき、片方のパートナー武将はコンピュータが操作し、プレイヤーもある程度指示が出せる。
 広いマップでも二手に分かれるよう指示をしておけば、瞬時に離れた2箇所をプレイヤーが行き来できる。
 以前は、ミッションが発生しても「どーせ行っても間に合わない」となりがちだったが、本作ではそのようなことはほとんど起きないし、次々と必要な任務をこなせるので、移動によるだらけた時間が圧倒的に減った。

 ちなみに、二人プレイ時に武将切り替えはない。

馬による移動

「馬を呼んで走りながら飛び乗れるぐらいになるとテンポを崩さず良かったのだが」と前作のレビューで語ったが、そうなりました!! 超快適!!!
 これは真・三國無双7で採用されたシステムの転用だが、それに加えて馬が近くに即時移動(ワープ)してきて、馬が駆けつけるまでもたつくことがなくなった。
 なぜかもう不要なはずの×ボタンでの乗り降りのシステムが残っているため、馬のジャンプはダッシュして△という、変則的な形になっている。
 そもそも神速が移動手段としても優秀なことと、武将切り替えによる実質のワープ機能がついたことで、馬の必要性はかなり落ちている。

ミッション

 本作のミッションは、前述の武将切り替え以外にも、ターゲットにマーカーが表示されたり、近くによるとターゲットの方向を示す矢印が出たり、さらにパートナー武将の近くにミッションがあると!マークで知らせてくれるなどして、取り落としが少なくなった。
 マーカーの類が多いとゲームをやらされている感がでてきて興を削ぐのだが、本作ではうるさくない程度の画像で、表示される範囲も広すぎず適切なので、「教えてくれてありがとう」という範囲に落とし込まれている。
 割と無双シリーズ「そもそも指示の意味がわからない」というゲームとして成立してないレベルの酷さのミッションが多かったので、とにかく快適だ。

「自身の体力が落ちた状態で撃破」などというような、ただ意地悪なだけのミッションも存在しないようだ。
 敵を倒す、たくさん倒す、早く倒す 、といったポジティブな内容で構成されており、ミッション遂行に躊躇する必要がない。
 でも…「家宝」の取得条件に体力ゲージが赤い時にだけ発生する無双秘奥義で倒す、というのがあった気もするな。

士気の復活

 前作で廃止された士気システムが復活し、敵武将の撃破、拠点の占拠、旗持ちの撃破などの行為で敵の士気を下げていける。
 まず士気を落として慎重に進むか、先に強力な武将を倒して味方の損耗を防ぐか、といった戦術を選ぶ意味がでて、アクションだけではないシミュレーション的な面白さが出た。
 敵武将はプレイヤーを追いかけてきてくれるので、味方の士気の高いフィールドまでおびき寄せて戦うなどといったこともできる。
 万事素晴らしい。

兵士の挙動

 無双シリーズ、例えば素人のサッカーのように敵総大将(ボール)に群がりがちなど、頭悪い挙動が目立った。
 本作はかなり挙動が賢く、無駄に突出して討ち死にということも起きづらくなっているし、パートナー武将も特に指示を出さなくてもそれなりに動いてくれる。
 ただミッションの内容までは理解しておらず、「まちぶせ地点までおびきだせ」というミッションの最中におびき出すはずの武将を撃破してしまう、というようなことはある。

 逆にいわゆる当身系の技を出した時に、結構敵が攻撃してきてくれる。
 無双シリーズ、こっちの技をガッチガチにガードしがちで、おもてなしの心に欠けることが多いのだが、本作は適度にガードを解いてくる。
 と言って、ただのやられ役というわけでもなく、士気の高い武将や、士気が低いところでも数人の武将に囲まれると結構なダメージを食らう状態になる。
 もっとこうしてほしいという部分はもちろんがあるが、雑兵も含め「技術的に可能なはずなのに、なんでこうしないの?」という部分がほぼないという素晴らしい挙動で、まっこと天晴れだ。

武器の強化

 拾った武器が溜まりすぎると捨てるしかない、というシステムも当たり前だった無双シリーズだが、本作は武器を解体し、お金と素材として受け取れるようになった。
 武器を集めすぎて虚しくなる、ということがない! 素晴らしい。
 いや、普通のゲームだと当たり前なんだけど、以前はとにかく当たり前ができてなかったのでホッとした。

 武器ごとに決まった性質をもつスロットに素材を追加して強化するというシステム自体は、もうふた工夫ぐらい欲しい感じだが、本気で強化するようになるまでは、そんな悪くないシステムだ。
 無料DLCで手に入る武器が、無料にしてはむやみと強いのは、ちょっと首をかしげる。

その他

 無双ゲージは○ボタンでためられる上に敵を倒せばガシガシたまり複数ゲージ保持までできるので、無双奥義を頻繁に使っていける。
 その上、練技ゲージが最大の時にR3スティック押し込みで発動する無双極意(無敵モード)もあり、とにかく自分が強い! 無双!! って感じだ。

 盛り上がりはするもののテンポが悪い鍔迫り合いは廃止され、鍔迫り合いの後に発生していた殺陣(一方的に切りつける技)は、攻撃を受ける直前にガード(ジャストガード)するなどの条件で発生するようになっている。
 これはなかなかかっこいいし、鍔迫り合いと違って、そこそこ狙っていけるのもいい。

 前作同様に攻撃(ガードされても良い)の直後に×ボタンで、練技ゲージを消費しガード崩しの突進技の影技が使える。
 これは通常攻撃・チャージ・神速と組み合わせて複雑なコンボを作れるのだが、正直複雑すぎて使いこなせなかった。
 単発で十分強い。

シナリオ

新武将

 今回は前述の通りプレイヤーとパートナー武将の2人が必要なため、今までの無双武将で孤立しているキャラに新規武将をあてがう、というような選出方法が取られたようだ。
 そのため、伊達政宗に片倉小十郎というような、大名ではなく家臣みたいなチョイスもあり、多少バランス的にどうだというところもある。
 真田信之など嫁の稲姫が出てるのだから遅すぎぐらい順当な武将、そもそも人気のある大谷吉継など、概ねその選択は納得できる。
 ただ井伊直虎以外の追加女性は、かなり無理矢理感のあるラインナップだ。

 新キャラはもちろん、古参のキャラも数が多くなって差別化の必要が出たためか、アレンジが思い切りすぎな感じもある。個人的には連獅子みたいになった石田三成に馴染めなかった。
 そもそも美男美女で揃えようとするのが良くないと思うのだが……そういう意味ではボンバーマン松永(弾正)久秀のワル親父なキャラは良かった。

無双演武

 無双演武はいわゆるストーリーモードだ。
 無双武将が50人超となると、流石に「また関ヶ原かよ」が耐えきれない状態になる(というか3の時点でもうキツかった)
 そこで本作では地域ごとにシナリオを分けて、無双武将を配分するシステムとなった。
 正直これは失敗している。

 三国志では魏・呉・蜀というわかりやすい大勢力があるので、さほど問題はなかったのだが、日本はずっと群雄割拠状態か豊臣・徳川の2大勢力の状態なので相当に無理がある。
 特に困るのが、どの武将がどのシナリオで使えるのか全然わからないことで、結局どこでも使えない武将が何人かいるし、あっちの地方やこっちの地方に出現する武将、困ったことに史実と異なる戦場に出現する武将も珍しくない。
 推しの武将をたどってプレイすることができず、物語的が散漫かつ薄っぺらい印象となってしまった。

 分けるなら、地方ごとではなく時代で分け、信長、秀吉、家康を中心としたシナリオを作り、戦場ごとにその敵対勢力も選べる、みたいにしておけば良かったのではないかと思う。
 実際、真三國無双7の晋が実質時代区分されたシナリオとなっていて問題なく機能している。
 あと、どの戦場にどの武将が登場するか事前に表示され、ある程度は特定の武将を中心にプレイできるようにする、とか。

 といって、全くの無策というわけでもない。
 シナリオの途中から出現する育っていない武将も、他の武将の武器を「武器錬金」により作り変えて装備することができるのと、序盤のレベルアップ速度が早いこともあって、むしろ育てたキャラより爽快に楽しめると言っても過言ではない。
 レベル低い状態に下駄を履かせるこれらの施策は、武将数が多い本作において非常に良い設計だと思う。

流浪演武

 日本全国の戦場を転々としながら、無双武将との親交を深めていく、戦国アンジェリーク的なモード(笑)
 おまけモード的なやつだが、前述の通り無双演武に登場しない武将もいるので、ある程度本編的役割を担っている。
 のだけど、イマイチ面白くない。

 進捗感出すための武将列伝(図鑑)だろうけど1000人以上いるので無限に遠く感じるし、図鑑の記述が増えるとはいえ、数字が増えるだけの印象。
 国取りや築城(街づくり)といった、見た目に分かりやすい進捗感を出す仕組みが欲しかったところだ。
 あとは友好度MAXと、「目標」と呼ばれる撃破数などいくつかの条件を満たすともらえる称号あたりが退屈しない工夫として用意されているが、逆にこれらが作業感を増している面もあり、痛し痒し。
 真・三國無双7では仲間武将が増えると雑魚しか出てこない問題があったが、本作ではちゃんと敵としても出てくるので、そう言った面での退屈感はなくて良い。

 戦国武将を1000人以上実装して、兜など一部特殊装備したりしてるのほんと偉いし感心する。
 自由にカスタマイズできる新武将のパーツも豊富で、変更できる部分も細かく、かなりイメージ通りのキャラが作れるのもいい。
 ただやっぱり、戦場マップのバリエーションも少ないし、イマイチ面白くないんだよね。流浪演武。
 流浪演武に限らず、作品全体に戦場マップは種類・作り・仕掛けなども含めて、ちょっと淡白な印象でもある。
 もしかしたらパートナー武将が変な動きをしないように、マップが淡白になっているのかもしれない。

まとめ

 いらんだろこれ、って思ってた腕試し(チャレンジモード)が無くなってる。惰性で入ってた仕様を無くす決断できて偉い。
 他にも色々褒めたいところはあるんだけど大抵は「アイテムが拠点の向こうに行って取れなくなるということがなくなった」とか「チュートリアルを一気にやらず、小出しにしてくれる」みたいな「他のゲームなら当たり前のことがちゃんとできるようになった」ということなので、褒める…ところか? ということもあり、この辺にしておく。

 この辺りの劇的な改善は、同時期に制作されているゼルダ無双の任天堂チェックで、しこたま絞られたからなんじゃないかと邪推するが、実際どうかはわからない。
 とはいえ、まだまだ「普通のゲーム」レベルの作りになっただけで、セーブメニューの位置が異次元的とか、馬上だとアイテム取りづらすぎるなど、不親切なUIなどはかなり残っている。

 大量に敵が出るが処理落ちもほぼなく、近くの敵が消えてしまうような不具合もない。ロードも短い。
 神速システムを筆頭につばぜり合いを廃止するヒットストップを短くするなど、とにかくテンポを落とさないような調整がなされており、普通にクリアしたいだけなのに1時間以上戦場をいったりきたりということもない。
 これまで「爽快アクション」を売りにしている割に、イライラ、ダラダラすることの多かった無双だが、本作は「爽快アクション」の看板に偽り無し!

 その他、オンライン協力プレイや、オートセーブといったゲーム業界全体の進化に追従したシステムも採用されている。

 全体に、開始からモードクリアまでは快適だが、それ以上やりこむ部分はあまり作り込まれてない。
 今までの無双シリーズもやり込み部分のバランスはぶっちゃけ無茶苦茶ではあるので、クリアまでは快適になったけどあとはいつもの無双、と言えないこともない。
 やり込み部分を作りこむのはコスト的に割に合わないので、この配分はすごく正しい。

参考

 そこで結論。

確実に高いステージに上がった戦国無双。プレイしやすく入門にお勧めできる。