二ノ国 漆黒の魔導士

対応機種・周辺機器
ニンテンドーDS
ジャンル
ファンタジーRPG
著作・制作
(c)レベルファイブ 2010

基本情報

 スクウェアエニックスドラゴンクエストⅧの開発で一躍注目を浴びた開発会社レベルファイブの、オリジナル大作RPG。
 アニメーションにスタジオジブリ、音楽に久石譲を起用し、声優に長澤まさみ・古田新太・大泉洋・八嶋智人・渡辺えりと手堅い役者を揃え、ガッチガチに一般層を狙った布陣。
 それに加え、タッチパネルを利用した魔法入力と、実際に印刷された本を使った謎解きといった、特徴的なシステムを備えた本作は、どのような仕上がりとなったのか。

操作性

 移動は十字キーで行うぶんにはスムースだが、タッチペンでの移動はもうひとつ。まぁ、DSのトップビューのゲームでタッチペンで移動するのが快適と思えたのはゼルダの伝説シリーズぐらいなのではあるが。
 メニューの操作は、アイコンと文字を併用して2次元に配置し、タブの切り換えにLRボタンを割当てるなど、基本的なところはしっかりしている。
 ただしメニューの階層が今ひとつ整理されていない。上手く整理すれば階層をひとつ減らせるような箇所が幾つもあるし、階層が深い割に全階層を一気に抜けてフィールドに戻るボタンもない。
 同じ機能がメニューのあちこちに散らばっているのもいただけない。

 本(マジックマスター)を使った謎解き自体は面白い、これまでもパッケージにヒントがあるというゲームはラグランジュL2とかメタルギアソリッドとかあったが、本をまるっと付けて頻繁に参照させるのは大胆だ。
 本の内容そのものも凝りに凝っていて、この本があったら攻略本は不要、というほどの充実っぷりである。
 ただ誰もがダメだろうと思うのが、携帯ゲーム機であるDSに対して、ゲーム機本体の面積で倍以上、体積で4倍以上あるような本が常に必要なシステムって…。企画の初期段階でダメだって気付いて欲しい。
 起動時の注意文(マジコン使っちゃダメよー)と合わせて、本がないとクリアできないというシステムは、ゲームとしての面白さというより、コピー対策としての意味が一番強いのではないか、という印象。
 ただ、本を使った謎解きそのものは面白いので、この根本で間違っているところは、今後無視してレビューを続ける。

ストーリー

 産業革命後、蒸気からガソリンへと内燃機関が移行する時期のアメリカ、あるいはイギリスっぽい雰囲気の世界(一ノ国)と、ファンタジー世界(二ノ国)が平行に存在し、その間を行き来することで物語は進行する。
 この構造はドラゴンクエスト的であり、特に ドラゴンクエストⅥと近いものだ。この二重世界によって、登場人物の内面を分かりやすく表現している。
 ただ、折角そのような作りにしている割に、一ノ国の描写が弱く、特に後半はあまり活用できていない。終盤は特に説明的な展開が多く、どーも「まとめ損なった」感が強い。
 あー惜しい。いいところまで行っているだけにしくじり感が半端ない。

グラフィック

 どこまでジブリが作ったのか分からないが、画像は極めてジブリっぽい。特にハウルの動く城っぽい。大泉洋も出てるしな!
 そこに久石譲の音楽が乗るのだから、ムービーはジブリの新作と言われて信じない人がいないのではないか、というぐらいのジブリっぽさだ。
 そこはクオリティが高い、ということでもある。

 ただ、容量の制限が厳しいロムでソフトが提供されるDSとムービーの相性は良くない。なぜこんな選択をしたのか理解に苦しむ。
 それ以前に、3Dで作られたゲームシーンとセルアニメーションのようなムービーを流すイベントシーンでゲームを構成するというのは、なんともチグハグ。
 そのへんゲームアーツグランディアやナムコテイルズ オブ シンフォニアでも感じたんだが、アニメーションのイベントシーン、ユーザーにとって嬉しいものだろうか?
 ただ言っておくがドラゴンクエストⅦのムービーのチグハグさと比べると、断然この二ノ国のゲームとムービーは馴染んでいる。

システム

 魔法をタッチペンで書くことによって発動させるというシステムは非常に面白い。
 とは言えバンダイナムコ怪盗ルソーの方がタッチペンで図形を描くことを利用したゲームとしては優れていたように思う。
 というのも、ほとんどの呪文は一度タッチペンで発動に成功すると、あとはメニューから選べば発動できるようになる。
 呪文の種類を1/5ぐらいにして、タッチペンでないと発動できないような作りにするぐらいの覚悟が欲しかったところだ。

 イマージェンというモンスターを仲間にして共に戦うことができるが、任天堂ポケットモンスターと比較すると、特にそのシステムがなくてもゲームとして成り立つ程度の役割しかない。
 エニックスドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁に近いと言えば近いが、それ以前からあったアトラス女神転生シリーズやNECホームエレクトロニクスリンダキューブ」に比べて、敵を仲間にしたり収集したりといったところにゲーム全体のフォーカスが合っておらず、とって付けた感が強い、というか強すぎる。

 また、アイテム合成というシステムも、もはや使い古された印象で、ガストマリーのアトリエシリーズや前述の女神転生シリーズの悪魔合体のように、ゲームの中心となるものかといえば、とって付けた感が強い、とういか強すぎる。
 だいたい、レベルファイブが制作したドラゴンクエストⅧのアイテム合成のまんまやん!! オリジナルなんて今や存在しないと思っている私でさえ、お前に「オリジナリティ」ってものがあるのかと問いたい、と言いたくなるぐらいだ。

 戦闘シーンも、敵が最大3体しか登場しないとか、今どき(2010年)のゲームとしてどーよ、と言いたくなる。
 いや、別に作りは悪くないんですよ、ただ!!、悪くない止まりなんですよ。

まとめ

 大作ゲームとして「失敗はできない」という事から、あちこちから無難なシステムを継ぎ接ぎして、結局失敗したというのが冷静な見かたかと思う。
 評価できるところは、これが人生の最初に出会うゲームだとしたら、ほとんど悪く評価する人はいないだろう、というところ。

 言うならば、味の素で旨味成分をたっぷり入れた料理。
 料理らしい料理を食ったことがないなら美味いと思うだろうが、もう既に三ツ星レストランを体験している人にとってはどうかというと…「味の素の味しかしねぇ!!」という感想。

 そこで結論。

全体にレベルは高い。だがあえてこのゲームをプレイする理由もない


2011-12-16