テイルズ オブ シンフォニア

対応機種・周辺機器
ゲームキューブ ディスク2枚組み 1〜4人プレイ可能
ジャンル
君と響きあうRPG
著作・制作
(c)NAMCO 藤島康介 2003

基本情報

 ナムコの看板RPG、テイルズシリーズの完全新作が、なんとゲームキューブに向けて制作された。
 格闘アクションのような操作で行う戦闘、人気イラストレータや漫画家を起用したキャラクタ、漫画アニメ的なキャラクタ性の強いストーリー。
 本作のキャラクタデザイナーは藤島康介。オープニングは、day after tomorrow。そして、豪華な声優陣。

 Nintendo64でRPGがほとんどなかったことから、やはりRPGが必要だと反省した任天堂の肝いりであったことが容易に想像できる。
 そういう、政治的やりとりは置いておくとしても、GC用にテイルズシリーズの新作が発売されると言うのは、なかなかに衝撃的なニュースだった。

ストーリー

 所謂「ライトファンタジー」である。それにしてもである。
 ハーフエルフが、人間とエルフの混血であることが、はっきり説明されず、既知のこととして話が進行する。だいたい、一般的なファンタジー世界では稀にしかいないはずのハーフエルフが沢山いるってのが良く分からん。
 世界設定上のドワーフの立ち位置も、なんだかぞんざい。ドワーフいらないんじゃないかなぁ…
 テクノロジーレベルもピンとこないし、住人の考え方なんかも今風過ぎて、世界設定部分での薄さを感じる。

 幾つもの勢力が登場するややこしい状況だが、頭の良くない主人公がすごく状況を把握してたりする。最後まで各勢力の目的がイマイチ分からなかった、私は主人公以上にアホなのか…
 一応あらすじがいつでも読めるので、とりあえずの目的が分からなくなることは無い。
 しかし、キャラクタ性の強い本作では、あらすじではなく断然日記にすべきだった。あらすじは所詮あらすじ、読むのがつらい。

 台詞もストーリーの説明の為にしゃべっているような部分も多く、意味なく難しい言い回しをしているところもあり、あか抜けない感じな上、ひどい誤字もあったりして、大作でコレかー?!とちょっと情けない気持ちになった。
 ストーリーのために動いているキャラクタには、最後まで同調できず。

 クリアしなくてもいいサブイベントを、比較的沢山用意しているのはいい。
 ただ、後半で一気に発生するようで、折角の終盤へ向けての勢いを削ぐような部分もある。
 また、分岐があって2週しないとストーリーが分からなかったり、サブイベントをクリアしないとキャラクタの動機付けが分からなかったりするのは、まずい。

 パーティーのキャラクタが様々な会話を行うスキットは、キャラクタを立たせるのに役立っているし、積極的に操作をしなくても、時々画面に表示されたときにZボタンを押せば始まるという作りで、会話の気楽さをうまく表現していると言える。

 プレイヤーキャラクタの数は2桁に及ぶため、各人の印象が薄くなっちゃっているのは問題。
 できれば敵味方合わせても、主要キャラクタは7人程度に納めてほしい。

 称号や好感度等、2週目以降を意識して用意してある仕掛けも多く、ストーリーだけでなくゲーム的にも、1週だけでは消化不良を感じる。
「ねこにん」というキャラがいて、宝やモンスター図鑑等、コンプリートできていないところを探索してくれる。そんな仕掛けより、取れなくなる宝を無くしてくれた方がうれしい。順番を間違えると取れないモノが多く、なんだか「負けたような気持ち」になる。
 2週目を楽に、または手応えのある状態にして再プレイできる仕掛けは悪くないが、それより1週目をもっと重視すべきだ。時間的に、簡単にクリアできるものでもないのだし。

グラフィック

 漫画的なキャラクタデザインを売りにしているゲームで、キャラクタを3D化することは、かなり危険ではあるが、本作ではなかなかうまくモデルができている。
 また、ゲーム的なデザインとしても、服にはひらひらしたものを付けて、走るときになびかせることで、移動速度や方向が分かりやすくなっている。
 移動、戦闘、イベントの各シーンで、同じモデルが使われているのも、統一感があっていい。
 ただイベントシーンで、何故か輪郭線がぶれたように表示されてしまうのは残念。

 ムービーによるイベントシーンと、スキットという移動中に発生する会話シーン、戦闘シーンのステータス表示部、それとメニュー画面では、2Dのキャラクタが使われている。
 できれば、ここも3Dで押してほしかったのだが、キャラクタ性を高めるために表情は大きく表示したい、しかし3Dの顔のアップは、まだ人形のような印象を強く与えてしまう。
 てなわけで、折衷的な方法をとったのだろうが、ちぐはぐな感じがするのは否めない。

 背景は、手描きの絵のようなテクスチャを使っていて、オブジェクトも非常に良く作り込んである。
 しかし、「グランディア」シリーズに比べると、触れて変化があったり、音などの反応があるものは少なく、書き割りに近い「単なる背景」といった印象がある。

システム

 戦闘はアクションゲームとしても、かなりの高いレベルに出来上がっている。
 これだけ戦闘シーンのアクションとしてのレベルが高いと、純粋にアクションとして楽しめ、各キャラクタを満遍なく操作できるような仕掛けも、用意してほしかったところだ。
 例えば、対戦モードを用意するとか。各キャラクタが1人でクリアしなければいけないダンジョンを用意するとか。

 ターゲットした敵と使用キャラクタ上を直線で結ぶ事で、サイドビューの操作感を実現していると同時に、3次元的にキャラクタを配置することもできている。
 ただ、複数のプレイヤーでキャラクタを操作できるようになっているものの、1人でないと画面構成が、まともに成立していないのは残念。
 そもそも、全てのキャラクタをサイドビューで配置するのがシステム的に無理だし、多人数で長いストーリーを追うのだって無理がある。戦闘を多人数プレイ可能にするべきだったのかと言う時点での疑問もある。

 また、通常のモンスターとの戦闘以外に、練習用の場所が別にあった方が良かったろう。闘技場も登場するが、後半になってからでは遅い、慣れてないから練習したいのだ。

 折角RPGの上に乗っているシステムなのだから、コンボのつながり方とかのヒントを、人に聞けるとかアイテム(本とか)で読めるとかして、もっと出すべきだ。
 折角の面白いシステムも「最後まで気づかずにクリア」してしまうプレイヤーも多いだろう。

 ソーサラーリングは、アクションRPG的な謎解きを持たせてゲームに幅が出ているが、1種類につき1ダンジョン限りの仕掛けであり、付け焼き刃感が強い。

 料理システムは、結局「リフィル先生が料理下手ってことを強調するためだけのシステム」のような気がする。最高の料理人を目指すゲームでないことはもちろん、料理に関連したシナリオも無いようだ。料理メニューの操作が、キャラクタをLRで選択できない等、他と異なっているのも後付け感が強い。

 他にも、EXジェムによるスキル、武器の合成など、戦闘シーンの外のシステムは、いろいろあり過ぎて方向性が散漫になっている。

 他のRPGと比べて本作の独自性は、アクション性の高い戦闘にある訳だから、他のシステムもこの戦闘に集約されるようなものにしないと、いくら多くのシステムを入れたとしても単に別のゲームが平行にあるだけに過ぎなない。これはストーリーにしてもそう。
 残念ながら、頑張った結果、どういうゲームにしたいのかが、よく分からなくなってしまっている。

その他

 極端におかしなインタフェースは無いが、ボタンの位置をもっと意識してレイアウトしてほしい。
 例えば、スキットはコントローラ右上のZボタンなのに、画面上は左下に表示される。他の部分でも、ボタン位置と、画面上の位置の不整合を多く感じる。

 アクションRPGではなく、戦闘シーンのみがアクションに特化しているというテイルズのシステムは、押し進めれば、カプコン「ジョジョの奇妙な冒険」やナムコ「ソウルエッジ」等の、ストーリーを強化した格闘ゲームと完全に重なるジャンルとなる。
 残念ながら本作は、ストーリーを強化した格闘ゲームの目指すべき手本とはなれなかったし、キャラクタやストーリー、世界設定も薄く、RPGの王道ともなり得ていない。
 つまらないわけではないが、「もう一段上」を目指せるシリーズであるだけに、残念無念である。

 そこで結論。

「アクションを選択し集中せよ、詰め込み過ぎは豪華ではなく散漫」


2005-10-04