PC-Engineの末期に発売されたゲームで、バグ騒ぎなどもあり、もう一つ売れなかったのだが、評判は比較的良く「幻の名作」扱いされていた。
それからかなりたって、プレイステーションに移植され、その後サターンにも移植された。しかし1998年といったら、サターンにしても後期である。
サターン版は、特典として、アイディアノートとサウンドトラックが付いてくる。またPC-E版のグラフィックなどが鑑賞できるオマケモードや、スタッフと競争できるモードも搭載されている。
マップグラフィックが、ほとんどPC-Eのベタ移植(に見える)っちゅーのは、懐かしい気持ちにさせられる。このくらいPC-Eっぽいと、売る気あったんかって気すらする(いろんな雑誌で、桝田さん、「グラフィックしょぼいから、買うな、買うな」って言い過ぎ。ホントに売れてないじゃないのよ)
動物のデザインは、PC-Eよりも取っ付きやすくしてあるものの、グロテスクで色の塗り方なんかも泥臭い。
イベントシーンは、ムービーと一枚絵が使われているが、流石にこれは描き直されている。キャラクターデザインはPC-Eに引き続きカナビス氏が担当していて、これは非常にいい感じで、センスも力もある。ヒロインは可愛いしね。グラフィック的にはここが救い。
PC-Eからの移植であるから当然であるが、パッ見て驚くようなところはプログラムでは無い。システム的には、けっこう面倒なことを裏でやっているのではあるが。
ただ、時々住人が通路を塞いで、プレイヤーが通行できなくなることがあるのだが、もう少し賢いプログラムはできなかったものか疑問である。
シナリオはA,B,C,Dの4つが用意されていて、基本的な設定が同じパラレルストーリーとなっていて、おおまかにはA,Bのシナリオとそれらをベースにしたパロディ的要素のあるCシナリオという構成である。
シナリオDは、1年でとにかく沢山動物を集めるという、非常にゲーム的なもので、ゲームとしてみるとシナリオD以外はオマケである。物語的には、シナリオDはオマケである。
このゲームに「魔王」はいない。いや、「死神」と呼ばれる巨大隕石が「魔王」なのだが、「死神」は回避不能、破壊不能であり、それを倒すことがゲームの目的では無い。
ゲームの目的は惑星の動物をとにかく沢山集めて、ケツをまくって「死神」から逃げることである。
シナリオABCはゲーム開始後8年で、シナリオDは1年で、必ず「死神」とエンディングを迎える。
ゲームの基本は動物集めの名を借りた狩猟行為であり、狩猟は人間の本能に根ざした行動である故に、無条件に楽しい。大雑把にいって任天堂「ポケットモンスター」と同じジャンルのゲームである。
アイテムは動物を加工して作るし、台詞に出てくる動物の文字も捕獲状況によって色が違っていたりする、それに、シナリオも動物絡みで進行する。とにかくゲーム全体に動物を意識させることを徹底させていて、プレイヤーが目的を忘れることがない、良い工夫である。
ゲームを作る側として考えると、フィールドでは時間がどんどん流れていくのに、シナリオに時間制限があるのは、かなり厄介である。
シナリオが消化不良であってもなんでも、とにかくエンディングを迎える。しかも、住民が惑星から脱出して、毎年減っていくのであるから、制約は厳しい。
よくもまぁ、こんな自分の首をグイグイ絞めるようなシステムを採用したもんである。
それでもって、シナリオのデキはかなり良いのだから、桝田省治はただもんでは無い。特に印象に残る台詞の作り方を心得ているのがニクい。
台詞にセックスやら死を意識させるものが多いのも、ゲーム(エンターテイメント)が人間の本能に訴えかけるもので無くてはいけないってことを理解してのことだろう。
逆に、そのあたりの制作者の頭の良さが気にならなくも無い。ほとんどは作者の頭の悪さが気になってしまうのが、ゲームのシナリオの常なのだが。そういうところも、この桝田という人はゲームの作者としては非常に珍しいタイプと言える。
戦闘は、四方向に敵が出現したり、地形効果がかなり高かったりするし、迂闊な攻撃を当てると動物を捕獲できなかったりして、そこそこ知恵を使わなければいけないようになっているので、ダレることが無い。
昨今の戦闘のゲーム性の低いRPGにくらべると雲泥の差である。長くプレイすると、ちゃんとキャラクターのレベルだけで無く、プレイヤーのレベルも上がる。
最近のゲームとしては、ちょっと難しめの難易度設定だが、どのレベルのプレイヤーでもクリアできる工夫がしてある。
シナリオABは、捕獲数などのクリア条件が低めに設定されているので、ストーリーを追っていく感じ。Cは少しきつくなるものの、ABをクリアした後ならば、特に問題なくクリアできるだろう。
Dはまず完全クリアは無理なぐらいの厳しい条件付けだが、スコアアタックモードなわけなので、クリアよりも適当に自己記録を作って遊ぶといいのだろう。ちなみに私はクリアできて無い。
そこで結論。
「RPGとしては珍しく、ちゃんとゲームになっている傑作」
2001-02-14