メトロイドプライム3 コラプション

対応機種・周辺機器
Wii(ヌンチャク必須 ネットワーク対応)
ジャンル
ファーストパーソンアドベンチャー
著作・制作
(c)Nintendo / Retro Studios 2007-2008

基本情報

 ゲームキューブで2Dサイドビューから3D一人称視点のFPSへとシリーズの舵を大きく切った、メトロイドプライムメトロイドプライム2 ダークエコーズに続くシリーズ3作目にして完結編。そしてWiiで発売される初のメトロイドでもある。
 基本的なシステムはこれまでのものを踏襲していて、開発も同じレトロスタジオが担当している。
 大きく異なるのが敵の照準などの操作にWiiリモコンを採用していること。

ストーリー

 外伝であるメトロイドプライムハンターズで、主人公サムス以外のハンターが登場していたが、本作ではハンターはもちろん、銀河連邦の人々が多数登場している。
 これまでもしかしたら最後の人類じゃないのかとか、そもそも喋れるのか、みたいに思わせるぐらい孤独なキャラだったサムスが、なんとAボタンで会話したりする。
 イベントムービーは英語音声+日本語字幕で展開され、なんだかハリウッド大作映画っぽい。

 それで雰囲気に大きな違和感が出たかというと、違和感はあるけど新鮮味の範囲に収まっている感じ。
 サムスが相変わらずゲーム表現上では喋らないので、安心だ。
 話しかけると銀河連邦内でサムスがスター扱いだったりするのが、ちょっと嬉しい。
 ただ、画面内に軍人がうろうろしていると、一気にマイクロソフトヘイローみたいな空気になってしまうのは避けようもない。

 今回、スキャンによって得られる情報が多く、全体の文章量がこれまでのシリーズに比べ増えている。
 奥深さが出ている面もあるが、ビジュアルで説明できているものを再度説明しているような記述も多く、どちらかというと水増し感が強かった。
 スキャンで得られるログで、敵のスペースパイレーツがサムスの出現に慌てふためいている様子は面白いし、本作ではダークサムスがパイレーツの首領となっており、ダークサムスの賞賛っぷりも面白い。
 ただ、日本語のフォントがイーカゲンに拡大したような雑な感じで、ちょっとそこは雰囲気壊している。

グラフィック

 さすがにGCからWiiとなって、全体の密度が上がっていてる。
 密度が上がったことにより、なんか操作できそうなディティールが増えて、結局スキャンしないとどれが操作できるものかわからない、というのは本末転倒だ。
 単なる壁でしかない部分は意図的に密度を落とし、操作できそうな形は避ける工夫が欲しかった。

 テクスチャは実写というよりリアルよりのイラストっぽく、非常に見やすい。
 前より改善されているが、本作でもそこまで暗くする必要ないだろう、という箇所が(明るさ100%設定でも)散見されるのはもう文化の違いと思うしかないのか。

 本作はスペースシップを駆使して数カ所の惑星や宇宙船を行き来するので、背景バリエーションが豊か。
 ただ、後述のシップシステムを活用するためにも、開放的な場所での戦闘を増やしても良かったかもしれない。

システム

切り替えシステム

 本作はパワーアップするとキャノンに能力が付加されていく形となっていて、キャノンの切り替えが不要になっている。
 バイザーとキャノンの2つの切り替えシステムがあるのは煩雑であるとの正しい判断だ。

 バイザーの切り替えは本作でも残っているが、マイナスボタンを押しながら画面をポイントすることで切り替える方式になっている。
 正直、スキャンバイザーとコンバットバイザーだけにして、ボタン一発で切り替えられるようにしてよかったように思う。
 Xレイバイザーもコマンドバイザーも使い所が限定的で、スキャンバイザーに機能追加することでなんとかなりそうに思えた。

Wiiリモコン

 リモコンで敵をポイントすることで直感的に狙って撃てる。移動と照準が同時に行えるのは快適でWiiはFPS向きのハードだと思わせる力がある。
 ただし、マウスほど正確に操作できるわけでもなく、慌てたり気を抜いたりしていると画面からポイント先が外れていて、とっさに対応できなかったりする。
 リモコンで照準と視線移動を同時に操作するわけだが、デフォルト設定は3D酔いを起こしにくいよう画面端でないと視線が動かない作りなため、少々癖がある。
 少しなれたら3つの設定を全部試して、好きな設定を選択することをオススメする。

 リモコンでポイントしづらいと言ってもロックオンした敵に自動で撃ち込む設定にできるので、そうすれば快適だ。
 しかしボス戦だとこの設定が効かなくなって、きっちり狙わないといけなくなる。
 的が小さいとか、なかなか目の前に晒さない弱点を狙わせるパターンが多くて泣きたくなる。

 操作しやすいことも大切とはいえ、ゲームは「ごっこ」(ロールプレイ)の面白さも大切で、リモコン操作はサムスごっこに没入させてくれる。
 特に要所要所に挿入されるリモコンを立てたり降ろしたり、押したり引いたり、ひねったりで機械を操作する場面は楽しい。
 盾や装甲をひっぺがすのにヌンチャクを引っ張るのも良かった。興奮してる時は大きく動かしすぎてリモコンとの接続コードを引きちぎりそうになったぐらいだ。
 なお、①②ボタンはヌンチャクを持った手で押すと、サムスっぽくていいぞ。

 そういう意味でバイザーの選択操作は、サムスの動きと関係ないゲーム的な操作で面白みがないのも問題かもしれない。
 耳の横にリモコン持ってきてボタンを押すとバイザーが切り替わるみたいなギミックだったら(実際どこまで実現できるかはわからないが)、サムス度が高くて良かったと思う。

 リモコン操作には自信があったようで、GCから移植されている1と2にもWiiリモコンを使った操作が採用されている。

スキャン

 スキャンした情報が増えているのはいいのだが、攻略パターンが完全にネタバレしている情報はやめてほしかった。
 2ボタンを押して表示されるヒントは、ほぼ操作説明であまり意味がないので、例えばそこにネタバレな感じのやつを置いてくれると、スキャン直後にがっかりするようなことはなかったろう。
 マップヒントはOFFにできるようにしてあるのに、スキャンでのヒントの出し方にデリカシーがない。

 またスキャン情報が状況ごとに細かく変化するのが、面白いよりもめんどくさいが先に立つ。
 青い部分は特に重要ではないということなのでスキャンしなくてもいいのだが、まだ読んでないとスキャンしたくなるし、スキャンする前に先に進んでしまうと損した気分になる。
 さらにスキャン(など)によってクレジットがもらえて、それをイラストやBGMなどと引き換えるシステムがある。このシステムがさらに「スキャンしなくちゃ」と不要な強迫的心理を生んでいる。

シップ

 前述の通りシップを使って様々な場所を行き来でき、自由にシップを呼んで別の着陸地点へ移動できる。
 このため、雇い主から次の行動が指示される作りにも関わらず、一本道な感じは少ない。

 また、シップの機能としてこれまでもあったセーブと補給の他に、大きな荷物をぶら下げて移動できたり、ひらけた場所ならシップを呼んで爆撃を加えたりもできる。
 ゲーム的にはさほどの面白さがある仕掛けでもないが、シップの相棒感がグッと増していい雰囲気だ。
 ここまでくると、(漫画の海賊コブラみたいに)飛んでいるシップの上でキャノンを構えるシチュエーションが欲しかったところだが、それはなかった。
 さすがにシップに乗ってシューティングとなると、スターフォックスとだだ被りだしな。

難易度

 ノーマルでしかプレイしていないが、回復アイテムが豊富にあって難易度が低く作られている。
 また本筋の部分での仕掛けは難易度が低く、複雑な仕掛けはタンク増量などのやらなくてもなんとかなる部分に集中している。
 前述のようにスキャン時の説明も詳しく、マップも見やすいし、次の行き先の指示も丁寧だ。
 終盤はマップ上にアイテム位置を表示するようにもできて、無駄に歩き回る必要がない。
 全体の難度は3作の中でもっとも低いように思う。

 本作では新たにハイパーモードという状態が導入されていて、その状態になると攻撃力が高くなり、なんとダメージを一切受けない無敵状態になることに加え、受けたダメージ分が武器のエネルギーになる。
 これが超強力で難易度を一気に落としている。
 ただ、発動に体力タンクを1つ消費することや、使うと汚染(コラプション)によって死亡するリスクがある。
 これらのリスクは実のところほとんどリスクではないのだが、ゲームが下手な人が積極的にやりたくなる設定かというと、とてもそうは言えず、ハイパーモードはその能力の高さにも関わらず、初心者救済になってないように思う。
 さらに、高温と貫通力はビーム、低温と衝撃はミサイルというふうに、敵の耐性に応じて使い分けられるのに、ハイパーモードが強すぎて、とりあえずハイパーしとけばいいのはゲーム的に退化だ。

 ボスの弱点を狙うのが難しいわりに攻撃が効いている感じが弱い、と言って回復アイテムは出るので、千日手に陥いって1時間ぐらい同じボスと対峙するようなこともあった。
 十分手に汗握るものの、倒す手順が似ていたり人型が多いこともあって、ボスの印象がもう一歩弱い。

その他

 足下がよく分からないとか、ゲートが開くまで時間かかって背中に銃撃受けちゃうとか、スキャンし損ねたら取り返せないとかの、前作までの悪い点は改善されていない。
 ただし、本作では最初から2段ジャンプもモーフボールもできるので、序盤の操作感の悪さは解消されている。
 また、スキャンでトリガを押しっぱなしにするのがだるい問題は、トリガがハードウェア的に軽くなったので解決を見た。

 音楽や環境音に、ほぼ常に低音が含まれていて、不必要に不安な気分にさせられたのは参った。これは同じ任天堂+海外開発のエターナルダークネス -招かれた13人-でも感じたのだが、暗い画面と同じく文化的な違いなのかもしれない。

 ネットワーク対応となっているが、フレンド間でやりとりしないと得られないクレジットがあるという程度だ。

まとめ

 自分以外の味方キャラクタが多数登場したりWiiリモコンを使った仕掛けは面白く、アドベンチャーゲームっぽさが出ていて非常に良かった。
 Wiiリモコンを使った新しいシステムを導入しつつ従来のシステムは整理され、より完成度の高い作品となっている。

 このように優れた作品だが、日本で一人称視点ゲームを流行らせる力はなかった。
 GCに比べて圧倒的に台数の出たWiiというゲーム機にも関わらず、今までプレイしたことのあるユーザが継続してプレイしたというレベルに留まったのは残念。

参考

 そこで結論。

FPSとWiiリモコンの相性の良さを見せた、シリーズ締めくくりにふさわしい傑作