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「幻想の世界に迷い込むのはプレイヤー自身」とのキャッチコピーの通り、ぐいぐいとプレイヤーを引き込む仕掛け満載の完全新作ホラーゲーム。
アクションアドベンチャーでは、他の追随を許さない完成度を誇る任天堂が送る、ホラーゲームの回答とは?!
その後、コナミ「メタルギアソリッド」のゲームキューブ版を開発することにもなったカナダの開発会社シリコンナイツが、開発を担当した本作。
N64で開発していたのに、結局次のプラットフォームで発売することになりました、というGCに多いゲームでもある。
だいたい部屋の中に3ポイントぐらいカメラ位置があって、その間をスムーズに動くが、基本は固定。
そのため、操作しづらい場面もあるが、ホラーとカメラアングルは切っても切れない部分もあるので、演出的には正解。
基本的な走る攻撃する等の操作は実にスムーズで、ラジコン操作ではなくスティックを倒した方向に動くので、戸惑うことは無い。
ただ、場面きりかえ時に、キャラクタの位置を把握しづらくなることがあった。切り替え後一瞬は切り替え前に進んでいた方向に進んでほしい。
その他、メニューに多少不十分な面も見られるが、及第点以上のできである。
かなり良い。
古の神が争いながら人間世界にじわりじわりと浸透して行く様を描くストーリーは、クトゥルフ神話そのものではないが、それを強く意識した設定だ。
神々の圧倒的な力の前に、個人としての人間のなんと儚いことか。
見た目に反して、かなりテキストに力点があり、文学的表現で恐怖を表現する場面が多い。
例えば、ホラー小説ではおなじみの犠牲者の残したメモで、恐怖を高める工夫も外さない。
これは、基本のシステムがアクションなのに、テキスト重視であるチグハグさも感じさせることではある。
ただ、後述する映像音声の工夫もかなり高いレベルであるため、「全ての方向から恐怖を演出しようとしている」と言えなくもない。
ゲームは、屋敷でエターナルダークネスの書の章を手に入れ、それを読むことで過去の出来事を体験し、それによって得た知識や能力によってさらに次の章を手に入れる、ということを繰り返すことで進行する。
章はさほど長くなく、章毎に主人公が替わり、見た目だけでなく細かな能力が変わるとともに、時代や舞台も変わる。これが、テンポの良さと飽きさせない展開を生んでいる。
幾つかの主人公では舞台となる場所が共通なので、落盤が起きていたり部屋が増築されたりと、時の流れを感じることができる。
序盤が「グラディウス」とか「スクラマサクス」というマイナー武器で、時代が進むと「クロスボウ」、「ショットガン」と変化することを一例として分かるように、実に良く時代背景を下調べして大人の鑑賞に堪えうるように作られている。
海外で作られたということで、大まかな雰囲気はCORE DESIGN「トゥームレイダー」シリーズと似ているが、ディティールは、こちらがずいぶん深いと言えよう。
何度かプレイすることを前提としているので、1周目は気づかなかった謎が2周目で解けたり、ますます謎が増えたりする、奥深い作りになっている。
逆に、プレイヤー側にフランク王国がどの辺にあったか程度の知識がないと楽しみが薄くなるゲームとも言える。
ただ、こんなストーリー子供じゃ面白くないし、映像表現的にもキツイものも多いので「暴力マーク」だけじゃなく「15才以上」のゲームにするべきだったと思う。
そりゃあゲームキューブは子供率が高いプラットフォームで大人にしか売れないゲームはかなり不利だが、逆にそれだけに子供に配慮すべきだと思う。
基本的なシステムは、カプコン「バイオハザード」を踏襲していると言ってよい。
密閉された空間、固定されたカメラ、アイテムの組み合わせによる謎解き、襲い来るゾンビ等、共通点は多い。
本作では魔法を取り入れ、謎解きに幅を与え、戦いを有利にする仕掛けとなっている。
また、恐怖に遭遇すると落ちて行くサニティ(正気度)というパラメータが、本作の特徴だ。
これは、TRPGの「クトゥルフの呼び声」で取り入れられたパラメータを、コンピュータゲーム用にリファインしたものと言える。
サニティが落ちると、幻聴や幻視が始まり、おかしな音や映像がちらつくようになり、さらにはゲームのプログラムがおかしくなったような症状が出始める。つまり、キャラクタの正気度が無くなっていることをプレイヤー自身が体験することになる。
ただ、このサニティ低下の特に面白い部分は、かなりぎりぎりにならないと出現しないので、もう少しサニティの高い状態でも、惜しみなく出した方が良かったかと思う。
このゲームは「人間、またはまだ魔物の姿でない人間」を斬りつけて殺すことができる。これが、実にいやーな気持ちになる。攻略上は魔物になる前に殺しておいた方が楽だったりするので、「とりあえず、全部殺しておくか」などと、だんだんプレイヤーである自分自身が魔物じみた考えになってくるのが、輪をかけて嫌な感じだ。
アクションとしての難易度はかなり低く抑えられているが、壁があると剣が横に振れない、魔法を唱えている間は動けない、走り回ったり体力が減ると動作が遅くなるなど、プレイヤーを慌てさせる工夫がなされているので、最初のうちは十分に手強い。
操作や状況に慣れると同じ敵でも格段に弱くなり、強力な魔法や武器と合わせると、爽快感すらあるほどに強くなる。
また、飛び道具には弾数制限があるものの、かなり豊富に弾があるので弾切れの心配も少ない。それ以前に剣のアクションや魔法が強いので、弾切れの不安と戦う必要は無い。
さらに、危険がないところではどこでもセーブできることに加えて、一度倒すと復活しない敵がほとんど、これらがゲームの難易度を下げている。
ただし、章によってキャラクタが替わり、持ち物や魔法が一旦リセットされるので、キャラクタの能力向上で怖さが無くなる、ということをある程度回避することに成功している。
しかし、何度もプレイするような作りになっている割に、ほとんど同じことを繰り返すことになるのはいただけない。
ムービーが大幅に変わる等、2週目以降にプレイの動機付けとなる仕掛けや、アクションを難しくする設定も欲しかったところ。
謎の難易度は、難しすぎず簡単すぎず、といったところ。ゲーム序盤のチュートリアルも含め、理不尽さは少なく丁寧にできている。流石の任天堂クオリティ。
とにかく、サニティが低下した時のグラフィックや仕掛けは比類なきものと言える。
「えっ、あれ、どうなったの?」と、プレイヤー自身の正気を確かめたくなるような工夫にあふれている。
マニュアルにも次のような注意書きがあるほど。
※音量が変わったり、映像がゆがんだり、無関係なノイズが入っても、ゲームの不具合ではありません。
普通のプレイシーンよりムービーの方の質が低いぐらいに感じた。前述したように元々N64用に開発していたので、ムービーはそのころ作ったデータではないかと思われる。
キャラクタはゲームキューブとしては荒めで、ほとんどがおっさんだが、非常に演技が良く存在感がある。
ちなみに一番の主役のアレクサンドリアは日本向けの顔立ちにしてあるので、「一番怖かったのがヒロインの顔」という海外ゲームにありがちなことは無いので安心だ。
出てくる怪物が、怖いというよりむしろカッコいい。
これはホラーゲームとしては、欠点と言ってもいいだろう。もっとわけの分からんデザインであった方が良かった。
また、落ちているアイテムが光って表示されるので、ものすごく分かりやすい。
同系統のカプコン「バイオハザード(特に2)」で、アイテムが分かりにくかったのに比べると、なんとも親切。
背景は、単純にきれいとか言うよりリアル。ゲームでありがちな明らかに文化圏や時代、技術レベルが違うだろうなんてな装飾や構造はほとんどない。便器の形状が時代に合わせて変わるのに衝撃を受けちゃうオレもオレだが。
ゲームでこういう背景を構築するのは、仕掛けを入れなきゃいけない都合上、背景デザイナーだけでは無理で、マップデザイナーの造詣が深く無きゃいけないのに、よく頑張っている。
できれば、その辺りの解説をもっと文字情報で補完してほしかった。2週目以降のオプションで英語モードにすると色々と情報が増えるんだが、英語じゃダメです!!
サウンドは凝りに凝っていて、前述のサニティ低下時の幻聴はもちろん、キャラクタの位置や選択しているアイテムによって聞こえる音が違ったりして、臨場感抜群である。
例えば暖炉の近くでは、炎がはぜる音が聞こえる。
通常はBGMらしいBGMは無く、「ごうぃぃん、ぐぉぉん」といった感じの不安をあおる音が流れているのだが、これが実に不快。
個人的にはこれが不快で、1日1時間ぐらいしかプレイできないぐらい。無理にプレイすると気持ち悪くなってくる。
謎がどうのとか、アクションが厳しいとか以前に、この音のせいで挫折しそうになった。3D酔いにはほとんど縁がない自分だが、音に弱いことを痛感した。とにかく気持ち悪い。胃にくる。
と言って、音を消しては折角のこのゲームの仕掛けが聞けないということで、体調を崩しつつクリアした。
せめてサニティが完璧の時は、この不安な音を鳴らさないでほしい。
そこで結論。
「狂気を体感する大人のゲーム」
2005-10-19