はじめてのWii

対応機種・周辺機器
Wii(1〜2人、ヌンチャク対応・Mii対応)
ジャンル
Wiiリモコンの操作入門
著作・制作
(c)Nintendo

基本情報

 Wii本体に合わて発売された、いわゆるローンチタイトルである。

 Wiiはこれまでのゲーム機の標準的なコントローラを一新している。
 このため、プラットフォーマである任天堂・サードパーティ・プレイヤー、共に感触がつかめない状態になるのは目に見えていた。
 そこで、任天堂としてはプレイヤーの反応を見るため、サードパーティ向けには「こういうゲーム作るといいですよ」というサンプル、プレイヤーには「Wiiではこんな遊びができますよー」と示す、とりあえずの一本が本作ということだろう。
 この手のものとしては、プレイステーションのデュアルショックコントローラのデモ的意味合いのあったSCEIサルゲッチュがあるが、本作はタイトルとジャンルからして露骨に練習用ソフト然としている。

 Wiiは「リビングで邪魔者にされない」ということに対して、過剰なほどに気を使っていて、家族全体をWiiという遊びに巻き込む戦略を取ろうとしていた。
 そのためには、確実にリモコンを2本揃えさせる必要があった。
 本体に同梱すれば確実だが、値段が上がって本体の売れ行きに悪い影響が出る。
 そこで若干詐欺っぽさを感じるが、はじめてのWiiパックという「ソフト1本の値段でWiiリモコンもついてくる」というお得感を出して売り出した。
 本作は単体では発売されず、Wiiリモコン(3800円)とのセットで4800円だったので、実質1000円のソフトと言える。

システム

 本作の内容は9本のミニゲーム集。
 リモコンの基本操作に習熟するのを目的とし、概ね単純な操作のものから順に複雑なものへとステップアップする仕組みだ。
 以下、各ゲームを簡単にレビューしていく。

シューティング

 ポイント操作に慣れるのが目的のガンシューの一種。
 画面は懐かしのファミコンのダックハントのWii版、みたいな感じ。
 Wiiのコントローラを光線銃的に使うことは誰でも考えつくが、それだけに外せない。
 最初に遊ぶゲームとしては難しく、全然撃ち落とせなくて呆然となる人がいそうだ。
 先に進むと缶を落とさないように打ち続けたり、襲ってくるUFOから住人を守ったりとバリエーションもあり、なんだかんだでバランス設定がうまくできており、ムキになる。
 面白ければ面白いほど、任天堂の「このレベル超えないような安直なゲーム作るんじゃねーぞ」という無言の脅しを感じてしまう(笑)
 薬が効きすぎたのか、結局Wiiでは思ったほどガンシューやFPSジャンルの画面をポイントして撃つ系統のゲームは出なかった。

 Wii発売当時に遊んだ記憶では、リモコンのポイント精度が予想より低くて、これはポイント&クリック操作は辛いな、という感じだったと思う。
 このシューティングは、操作が難しいこと自体をゲームに取り込んでしまえばいい、という任天堂の回答だろう。
 ただ、もっと精度欲しかったなーとは思うし、実際後で精度を上げたWiiリモコンプラスが発売されることになる。

あのMiiを探せ

 Wii本体の似顔絵チャンネルというソフトで、Miiというプレイヤーの分身が作れる。
 大ブームとなった絵本でありセガがゲーム化もしたウォーリーを探せ!的に、たくさんのMiiの中から指定されたMiiをポイントするゲームだ。

 ウォーリーと違って絵面もシチュエーションも単純で、ゲーム的にもさほど面白くはないが、自分や家族・知り合いの顔によく似たキャラが画面上に登場するのは楽しい。
 操作法としてはシューティングと基本同じなので、サードパーティ向けに「こういう感じにMiiを使うと、お客さんが喜んでくれますよ」とデモンストレーションするのが、主な目的に感じた。

ゆびさしピンポン

 リモコンを左右に動かしてピンポン球を打ち返すが、打ち返しは自動なのでボタンは使わない。
 前述の2つのゲームより操作は単純なのだが、頭に出すには卓球はインパクトがないので順当な位置か。
 一人プレイの際の対戦相手は確実にボールを返してくるので、ちょっと凸凹のある壁打ちという感じだ。

 これもさほど面白くはないが、誰にでも遊べる対戦ゲームが必要との判断かと思う。
 (温泉)卓球経験は誰しも持っているので、急なお客様にもルール説明がいらないしコンピュータゲームに抵抗がある層にも勧めやすい。

ポーズMii

 前述のMiiをポインタにして、落ちてくる人型の角度とポーズに合わせてはめ込んでいくゲーム。
 ポイントに捻りが加わり、ボタンもポーズ選択に2つ使うので、操作の難度が上がっている。

 Miiが変なボーズを取りながら振り回されるのは、ちょっと滑稽な面白さだが、まぁその程度だ。
 「捻りも検知しますよ」と表明する感じ。

ホッケー

 アミューズメントスペースでおなじみのエアホッケーのコンピュータ版。
 パドルを移動させるだけでなく、捻りによって角度をつけられるのが特徴。
 元のゲームが面白いので、このゲームも面白い。

 このくらいの複雑さになってくると、最初に書いたリモコンの精度の低さが、面白さを生むよりも単に操作のしづらさとして出てきているきらいはある。
 オートで打ち返していたピンポンより現実のゲームに近づいたぶん、コンピュータである理由に乏しくなり、本物のエアホッケーの方が面白いなー、となっちゃうのは避けられない感じ。
 この手のゲームではBrøderbundシャッフルパックカフェというタイトルがあったが、(パソコン版は)マウスを使うので操作性が良く、そちらと比べても無理やりWiiリモコンで操作させてる感がある。

ビリヤード

 ビリヤードは、ごく基本的な物理演算で処理できるコンピュータ向きのスポーツであり、幾度となくコンピュータゲーム化されている。
 はじめてのWii版はリモコンをキューに見立てて「突く」ことができるのが出色で、かなり雰囲気が出ている。
 本格的に作り込めば1本成立しそうなポテンシャルを感じるが、ミニゲームとしては気軽さに欠け、やりこむには本格さに欠ける微妙な感触。

つり

 クリップを貼り付けた紙に描いた魚を、紐にぶら下げた磁石で釣る遊びがあるが、そういう雰囲気のゲーム。
 グラフィックもそれを意識している感じで、画面に表示される魚は落書き風味でペラペラだ。
 操作としてはリモコンを上下左右前後に立体的に動かすことが要求される。

 そもそも紙での遊びが結構面白いのだが、コンピュータのゲームらしく魚は動き回るし、釣り上げるタイミング、点数や時間制限の追加、ボーナス魚の設定など、よりゲームっぽくしてあるので楽しい。
 ただ、ちょっと工夫を加えた程度でもある。

牛ダッシュ!

 レースゲームの一種だが、牛にMiiがまたがり、路上のカカシを突き倒し、ハードルをジャンプしていくという、なんだか訳の分からないシュールなゲームだ。
 リモコンを横持ちにして前後にひねってスピード調節、左右に傾けてカーブ、上に素早く持ち上げるとジャンプという操作系。
 それなりに面白いが、だいたい感触がつかめたところで、もういいかなという感じ。
 しかし、これから発売されるだろう(実際された)、マリオカートの新作への期待が高まる一品でもある。
 また「リモコンを素早く持ち上げる」という操作は、サードパーティ製も含め、結構多くのソフトで使われた。

タンク!

 ナムコタンクバタリアン(バトルシティ)を彷彿とさせる、トップビューで戦車を動かして撃ち合うゲーム。
 戦車を動かすのに十字キー(かヌンチャクを装着した場合はアナログスティック)を使い、照準をリモコンでポイントして大砲を撃ち、地雷をセットすることもできる。
 キャラを動かしながら照準も動かすというFPS的な複雑な操作が求められるため入門用とは言い難いが、入門編の最後としては妥当な難易度か。
 本作の発売当初は、セガSDIが移植できるやん!! と色めき立ったものだが、結局移植されませんでした…くうっ!!

 これはもうまるっきりゲームらしいゲームで、流石は任天堂、流石はナムコゲーのパクリ(笑)で面白い。
 敵の攻撃のバリエーションもあって、シューティングと同じぐらい作り込まれている。
 頭と尻尾をしっかり作っておけば全体の印象はそれらに支配されるので、最後をタンク!で締めたのは間違いない構成と言える。

まとめ

 とりあえず買いやすいゲームという戦略が当たってアホほど売れたゲームなので、思い出のタイトルとして上がることはあるだろう。
 しかし、個々のゲームは個人製作でも行ける感じの質と量のものばかりで、名作としてタイトルが上がることはなかなかないゲームでもある。
 とはいえ、これ(とWii Sports)がそれなりに遊べるもんだから、なかなか他のゲームが売れないとまで言われたりもした逸品でもある。
 また、のちにWiiリモコンジャケット付きのものも発売され、Wii本体とともに生産され続けるロングセラーともなっている。

 サンプルとして、リモコンの操作はもちろんリモコンから出る音・振動の使い方、メニューのインタフェース、Miiや、Wii伝言板まで、Wiiはこんな風に遊ぶんだよ、そしてこんな風に遊べるゲームが出るんだよ(作るんだよ)、とアナウンスするゲームだ。
 そして、単純なゲームでもリモコンを使ってるだけで面白く、Miiが出てくるだけでも面白くなるんだよ、ってことをサードパーティとプレイヤーにアナウンスしたことは大きい。

 ショーケースとしての目的を持って作られ、変に作り込んで複雑にする欲を出さずに、しっかりその役割を全うしている。
 特に各ゲームの協力・対戦モードは家族・恋人・友人・知人を巻き込み、Wiiの紹介役(インフルエンサー)として「興味はあるけどプレイ感がわかんなくて踏み出せない」層の取り込みに大いに貢献したことだろう。
 どっかのゲーム会社の重役の家庭でこれが遊ばれていて、鶴の一声でWii用ゲームの開発がスタートした、なんてこともあったかもしれない、と思わせる力がある。
 なお、Wiiリモコンの特徴的な操作法のうち「振る」が活用されていないが、これは同時に出たWii Sportsで補完されている。

参考

 そこで結論。

「凡庸なゲーム」ではない、これは成功しすぎるほど成功した歴史に残る戦略商品だ。