アサシン クリードⅡ
- 対応機種・周辺機器
- PS3/Xbox360/Xbox One/Switch/Windows/Mac/G-cluster/ひかりTVゲーム
- ジャンル
- アクションアドベンチャー
- 著作・制作
- ©ユービーアイソフト
基本情報
十字軍時代(1191年)のアラビア圏のエルサレムを舞台にした前作アサシン クリードに対し、本作はルネッサンス期(1459年)のイタリアのフィレンツェとヴェネツィアを主な舞台にしている。
歴史上の人物も多く登場している。特にダ・ヴィンチが便利で、彼が出てくる物語では大抵の科学的な問題は彼が解決するが、本作も例外ではない。
基本的なシステムは前作同様で、話も現代人デズモンド・マイルズがアニムスというシステムを使って先祖の記憶を辿る前作の直後から始まる。
制作は前作と同じスプリンターセルシリーズでも有名なユービーアイソフトのカナダのモントリオール・スタジオだ。
ジャンルとしてはオープンワールドのステルスアクションというところ。
本記事はPS3でプレイした上でのレビューだ。PS3版はPSPのアサシン クリード ブラッドラインと連携してアイテムや所持金がもらえる機能があるが、そちらは試していない。
ちなみにアサシン クリード エツィオ コレクションは、本作とその後に発売された同主人公の作品3作をひとまとめにし、DLCも加えたものだ。
さらにちなみに、G-clusterやひかりTVゲームはクラウドゲーミングのプラットフォームで、これはもう「時代の徒花」で、本作の内容とは直接関係ないので気にしなくていい。
蛇足ついでに本作は2009年日本ゲーム大賞においてフューチャー部門を獲得している。
普通のゲームへ
前作は普通なら入れるだろうという仕様を削ぎ落としたストイックな作りで、ファンの間でも「最も暗殺者らしい」と言われるようなゲームなのだが、逆にいうとそれが刺さらなかったらお終いという尖り具合の危険なゲームとも言える。
個人的には前作の割り切りは好きなのだがUBIも商売、本作では「普通のゲームならついてるだろ」という要素をしこたま導入してきた。
一番大きな変更はおそらく通貨の導入で、それにより本当に普通のゲームに寄って行った。
- 装備購入による強化
- 拠点となる町への投資と成長
- 絵画という収集要素
- 宝箱や敵の遺体、スリによる金の入手
- 医者による治療、薬の購入
- 交通機関で町の間を瞬時に移動
- キャラに金を渡して協力を依頼する
その他のシステムも、普通寄りに調整され丸くなったというか有体に言って任天堂ゼルダの伝説っぽくなった。
親の敵討ちという分かりやすいストーリーを彩る家族や友人そしてヒロイン。
主役エツィオの関智一をはじめ大塚明夫、小林ゆう、森川智之など有名声優を惜しげなく配置したイベントシーンも見ものだ。
前作の「本部で命令を受け暗殺して本部に報告」というルーチンから離れ、マップ上の(!)アイコンの場所に行けばストーリーが進行するという方式になり作業感が軽減された。
ストーリーに沿った暗殺の後は逃げるフェイズがほぼ挟まることなく、次のシナリオが開始される。これは良し悪しだが、暗殺後に囲まれてゲームオーバーみたいにならず、テンポよく進むので大抵の人には歓迎されそうだ。
水に落ちて一発アウトだった前作だが、本作は自由に泳げる。
シンクロバーが普通のライフゲージになり、らしくない行動を取った際に減るのは別の「評判」というステータスになった。これはアニムスのシンクロシステムを意識させなくするという意味では改悪に感じる。
悪くなった評判は手配書を剥がすなどして、比較的簡単に平常モードに戻せる。
ミニマップにマーカーだけでなく建物も表示されるようになり利便性が上がった。これはそこまで詳細ではなく「ミニマップだけ見てメイン画面を見ないでプレイしてしまう」ということにならないバランスで良い。
敵の調整
前作は国別に敵兵が分かれていたがほぼ同じ行動パターンだった。本作は全てイタリア兵で重装兵・軽装兵・索敵兵に分かれ、それぞれ挙動が異なっている。
索敵兵が探し回るとはいえ、前作に比べるとかなり発見や追跡が緩くなり、常に緊張を強いられることは無くなった。
住人も含めて昼夜で行動が変わるのも芸が細かい。
雑踏に紛れてステルスしている場合は、周囲がモノトーンになる処理が加えられ、非常に分かりやすくなっている。
町中には金で雇える娼婦・盗賊・傭兵がいて、それぞれの方法で敵兵の相手をしてくれるので、戦闘やステルスが苦手でも割となんとかなる。
前作のアルタイルも大概強かったが、本作のエツィオは敵から隠れてのステルスキルもバリエーションが増えて、最終的に毒やピストル装備まで追加され、とにかく強い。
豊富な操作は多少唐突感はあるもののストーリーに沿って少しずつ説明され、ゲーム内ヘルプも用意されているし、戦闘に関してはいつでも復習可能な闘技場も用意されているという万全な作りだ。
敵はしっかりガードするなどそれらしい行動をするので、きちんとカウンター他の技を使いこなさないとすぐにジリ貧になってしまう。
これは想像だが、その状態ではクリアできない人が続出し、飛び道具や薬あるいは傭兵を使ってゴリ押しできるバランスに変更したような雰囲気。
結果としてゴリ押し上等のバランスにより、用意したシステムがほとんど無駄になってしまっているのは残念なところ。
戦闘補助システムを使わない縛りでプレイすればいいとも言えるが、結局補助は入れてしまったので、根本の戦闘バランスは取れてない印象だ。
特に一対一になってしまうと、掴みを絡めたハメ技で時間をかければどんな強い敵も倒せてしまう。
グラフィック
特定の建物や人物に近づくと簡単な案内が画面に出てきてSELECTボタンを押すと詳細な解説がすぐ読めるし、その場で押さずに後で読むこともできる。
前作のモノトーンの砂漠の町も美しかったが、本作では緑に覆われたフィールドとオレンジの屋根の町という暗殺者のゲームとも思えない明るいトーンでできている。
観光の定番の建物が揃っており散歩しているだけで楽しくなる上に観光案内までついているのだ、「世界一安いイタリア旅行」と喧伝されても納得である。
またビューポイントから見た町は遠くまで見事に描写され「見えているところ全部いけるんだ!」というワクワク感がすごい。
前作では城壁などは見えてるんだけど登れなかったりしてションボリすることが多かったが、本作では町とその外のフィールドがシームレスにつながり、城壁を超えて行き来することが当たり前にできる。
町が広大なこともあって、色々と自動調整するシステムが入ってるようで、特に高所から安全に飛び降りるイーグルダイブは落下地点のわら束に強い引力があり、多少配置が雑でも飛び降りれるようになっているようだ。
わら束を足下に見ながら飛び降りてみるとイーグルダイブ成功するぐらいの調整で、たまにすごい勢いで横方向に飛んでいくことがあって笑ってしまう。
前作がほぼ平屋根であったのに比べ、本作はほぼ屋根が斜めで移動時の衝突判定など大変なのではないかと思ったが、かなり自然に処理されている。
ただ、まぁまぁプレイヤー含めキャラが壁に埋まったり、変な位置で動けなくなったりするので、場合によってはご愛嬌では済まない(オートセーブがあるとはいえ)数十分やり直しコースになるのはいただけない。
本作はUBIのゲームエンジンAnvilを使っているが、物理エンジンのHavokをベースにもしており、完全に制御しきれてない感じだ。
やり込み要素
収集要素が、何もしなくてもマップに表示されるミッション、地図を買うと表示される宝箱、建物ごとに存在が示唆されるシンボル、町ごとの数以外はノーヒントの羽根というように、要素が難易度によって段階づけされていてプレイヤーのやり込みたい度合いに応じて収集要素のコンプリートを目指せるようになっている。
難易度が低い代わりに宝箱は大量に用意されているので、難しいチャレンジや道中の息抜きに収集を進めるというプレイができて、いいアクセントになっている。
また、前作のアルタイルの装備を手に入れるための墓所が6箇所とテンプル騎士団の基地が2箇所用意されており、そこはアスレチックな仕掛けが用意されたダンジョンであり、任天堂の3Dマリオに近い感じのゲームらしいチャレンジとなっている。
前作のフラッグ集めの淡白さに比べ、なんと豊潤になったことか!
このように丁寧な配置がされているとはいえ、イベントシーンがスキップできないとか、前作でできていたクリア済みのチャプターの再プレイができなくなっているとか、クリア後のケアが弱い感じがある。
また、シンボルの取得時にパズルを解く必要があり、見た瞬間解けるぐらい簡単なものも多いが、かなり知識やパズル力を必要とするものもあり、時間がかかった時にはヒントも出されるとはいえ、ちょっと本編のゲームの方向性とズレてる感じはある。
さらに前述の拠点の町を発展させるシステムは、割と簡単にカンストしてしまう上に、そこで得られる収入が大きいし放置すれば20分おきに自動的に増えるので、必然的に購入アイテムのコンプリートも作業的に終わってしまう。
加えて、町の発展の指示だけではなく収入の徴収や装備の入れ替えなど拠点に戻って行う必要がある行動が多く、少々プレイ感が悪い。
問題点
フリーラン(パルクール)が強化されて、R1+×を押しておけば後はLスティックを動かすだけで派手なアクションが出るが、特に壁はりつきからのバックジャンプが暴発しがちで、いらない落下ダメージとタイムロスがストレスとなっている。
他でも例えば走りが、最速がR1+× → R1 → × → スティックのみが最遅、と細かく指定できるがそこまでの使い分けの必要を感じなかった。
×のみはしゃがみ歩きか忍び足に割り当てて、遅くした方が良かったのではないかという気がする。
スティック操作による装備の持ち替えも快適とは言えない。など、微妙なUIの整ってなさを感じた。
登場するイタリアの都市は数階建てが中心で屋根に登るのが手間だが、階段がわりの木箱や梯子をやたらたくさん用意するという方法で解消したのは、前作の「建物に掴んで登れそうな突起が多い地域」というスマートな回答に比べると、興醒め感がある。
また特定の建物に登るためのルートを探すのが妙にシビアだったりするのも調整不足を感じる。
登攀能力を高めるダブルジャンプを身につけるのが割と後なのも、困ったところ。
どうでもいいといえばいいが、現実(現代)に戻ったパートはアニムスの外なので、ゲージ類が一切なく、それ故に高所から落ちるなど何やってもダメージがない。むしろ現実の方が現実感ないんだけど、⋯⋯それでいいんだ。
まとめ
前作同様に馬に乗れる他、ヴェネチアではゴンドラを操作できるし、途中で馬車やグライダーを操作する場面もあり、乗り物のバリエーションも増えた。
すでに書いた通り、ほかにも色々と飽きさせない工夫があり、単調さが目についた前作に比してゲーム体験が豊かになった。
前作からおおよそ2年でこれだけ完成度を上げてきたのは驚嘆するしかない。
前作が大胆に要素を切った作品だっただけに、ゴテゴテと普通のゲームにありがちな要素を足すというのは「なんでもカレー味にすりゃいいってもんじゃないぞ」という気持ちもある。
悔しいが(悔しがる必要はない)本作の場合、元がご飯だったんでカレーかけたらカレーライスになったという「そりゃ美味しいですよね」という結果になっている。
そしてゼルダの伝説っぽくなった本作だが、後に出たゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(2017)は、めちゃめちゃ本作を含むアサシン クリードっぽいのである。
好循環!
参考
- アサシン クリードⅡ | UBI 旧公式サイト
- アサシン クリードⅡ | UBI 公式サイト
- アサシン クリードⅡ - Wikipedia
- Amazon | アサシン クリードⅡ | プレイステーション3
- Amazon | アサシン クリードⅡ スペシャルエディション | プレイステーション3
- Amazon | アサシン クリード Ⅰ+Ⅱ ウェルカムパック | プレイステーション3
- Amazon | アサシン クリードⅡ | Xbox360
- Amazon | アサシン クリードⅡ スペシャルエディション | Xbox360
- Amazon | アサシン クリード Ⅰ+Ⅱ ウェルカムパック | Xbox360
- Amazon | アサシン クリード エツィオ コレクション | プレイステーション4
- Amazon | アサシン クリード エツィオ コレクション | Switch
そこで結論。
尖りすぎた前作の角を丁寧に丸めた大傑作!