地球防衛軍4

対応機種・周辺機器
プレイステーション3/Xbox360
ジャンル
サードパーソンシューター
著作・制作
©SANDLOT / D3 PUBLISHER

基本情報

 低価格路線のSIMPLE2000シリーズのひとつであったTHE 地球防衛軍2(以下単に2)をベースとしてリメイクし、フルプライス(6980円)商品として発売されたのが本作地球防衛軍4(以下単に4)である。
 タイトルから「THE」が無くなっているのがSIMPLEシリーズでなくなった証だ。
 なお、フルプライス商品となったのはTHE 地球防衛軍のリメイク版であるXbox360の地球防衛軍3(以下単に3)から。
 4はXbox360とPS3のマルチプラットフォーム展開で、今回レビューするのはPS3版。以前にプレイしているのは2だけなので、2との比較での感想を書く。
 また基本的なシステムは2と同じなので、そちらを知りたい人は2のレビューを読んでもらうとして、ここでは2と違うところを主に書く。
 ざっくり言えば「荒っぽいけどめちゃ面白い!コスパ最高!」それが地球防衛軍2だ。

 突然攻めてきた謎の巨大生物やフォーリナー(2ではエイリアン)の円盤などを、生身の体で駆け回って殲滅し、地球を守る。
 本作では陸戦兵がレンジャーに、空飛ぶペイルウイングがウイングダイバーと名前を変えて登場。加えて、エアレイダーという空爆や乗り物の呼び出しができる兵科、およびフェンサーという強化服を着て4武装を使い分けられる兵科が追加されている。
 2での2画面分割でのオフライン協力・対戦プレイに加えて、オンラインでの協力プレイが可能になったのも大きな変化だ。

 あらかじめ言っておきますと、ここから始まるのはほぼダメ出しです。
 でも、基本は2と一緒なので面白いです。ではレビューやって行きます。

グラフィック

 基本的に2の持つ特撮映画っぽく、荒っぽいが良いグラフィックという路線で、プラットフォームがPS2からPS3になった分だけパワーアップという感じ。
 隊員のデザインはリアル寄りになっていて格好良くはあるんだけど、これはちょっと残念。リアルであるより特撮番組の再現という方向性でやってほしかった。

 物理エンジンにHavokを採用したことにより、3D描画されたアイテムが落ちた後に転がったり、ビルの崩壊や敵の破壊の時に破片に分かれたり、攻撃を受けた時の挙動が敵味方共に細かくなった。
 これもまた一長一短で、Havokで起きがちなオブジェクトが空中に浮いたままになるとか、くるくる回り続けるとか、異常に遠くまで飛んでしまうとか、そういう不具合現象が散見される。

 加えてゲームのルール的にも、アイテムが散らばりやすくなって回収しづらいとか、悪い部分がある。
 特にまずいのが、隊員が起き上がるまで操作できないため、吹っ飛ぶ→坂道を転げ落ちる→起き上がるの時間が下手すると10秒超えることもあり、運が悪いと爆発から爆発のコンボをくらい、ただ見ているだけでゲームオーバーを迎える始末。
 吹っ飛びから起き上がり後まで無敵時間にしてくれ。坂道転がる時間は最長でも2秒ぐらいにしてくれ。

ゲームシステム

 ジャンルはTPS(Third Pershon Shooter)だが、広大なフィールドを走り回って大量の敵を倒すという作りは、コーエーテクモの無双シリーズ近いプレイテイストだ。

 敵に食らいつかれて継続ダメージを受けるアクションは2にはないので、食らいつきからの脱出用に爆発系でない武器を持つのが必須となる。
 レバガチャやボタン連打でも脱出できるなど、武器の組み合わせを限定させない仕組みが必要だったろう。
 加えてクリアに長射程の武器が必要なステージが多いため選択の幅は限られる。
 結果として定番武器を手に入れたらずっと同じ武器を使うことになり、プレイに起伏がない。

 本作にはAIの友軍がいるので、そちらと連携を取ることで武器を活用できても良さそうだが有り体に言ってAIアホだし、味方の体力などが表示されないので、こちらからも連携しづらい。
 こちらの射線上に飛び込んできて誤射はまだしも誤爆することが珍しくなく、慣れる(気づく)まで高頻度で「誤爆に巻き込まれることがゲームオーバーの原因」になる。
 そう、自分の攻撃は友軍に当たるのだ。広範囲に影響がある武器など、みるみる友軍が死んでいく!
 あとAI兵士も敵に食らいつかれる上に自力で脱出できない、さらに食らいつかれアイコンは協力プレイ時しか表示されないこともあり、いつの間にかバタバタ死んでいく。
 加えて、AI兵士が最後に残った敵を倒してしまうとステージクリアになるので、確実にアイテムを回収するにはまず友軍を全滅させるというサイコパスプレイが必要になる。
 AIの行動パターンを強化するのが大変だとしても通過した場所の回復以外のアイテム回収してくれるとか、逆にこっちが回復アイテムを超過して取ったら配下の友軍のHPが増えるとかして、共闘感を出してほしい。
 AI兵士たちがそこそこ敵を倒してくれるのと、無線通信による音声のバリエーションが増え、それを聞くのが楽しいのが救い。

ストーリー

 ストーリーはあってないようなものだが、ステージ開始前の説明や無線で告げられる情報で大まかな流れはつかめる。
 ちょいちょい「8年前の英雄」について流れてきて「それ俺のことだな」とニヤニヤできるのは良い(ただ僕がプレイしたのは2で、ここで言ってる英雄は直接の前作である3のこととは思うが)

 問題は自分が関わらない遠方の情報が多いのと、現在の戦場に対する無線なのに自分と関係なかったり目の前の状況と異なることを言ってきたりすることだ。
 例えば「空爆を要請しろ」とかあるんだがエアレイダーでないと要請できないとか。このあたりは流石に雑すぎる。
 ストーリーに凝る必要はないが、役に立つことを言って欲しいし、頓珍漢なことを言って白けさせないようにはして欲しい。

新兵科

エアレイダー

 飛びそうな名前だが飛ばない。
 支援用の装備が多く協力プレイでないと面白みが出ない…といってAIとは協力しづらい。呼び出せる乗り物は強力だけど到着に時間がかかり操作しづらい。食らいつきからの脱出時に自爆ダメージを受けるなど、特に装備の整わない序盤かなり厳しい感じだ。
 乗り物が変なところに引っかかって乗れないことがあるのバグでしょ。「呼び出す場所に注意してください」とか、バグを現場の運用でカバーする最悪なメソッドでしょ!このゲームなら派手に建物壊して出現しちゃえばいいでしょ!!
 てか最初から乗って出てくりゃいいでしょ!
 一人プレイだと動かせない乗り物があったり、呼び出せないステージも多く、宝の持ち腐れ感がすごい。
 あと乗り物はレンジャーも操縦できるんだから、レンジャーのステージにも乗り物を適当に置いとけばエアレイダーの練習になったしメリハリも出たし足の遅さもカバーできたのに。
 支援要請はすべての兵科でできた方が良かったと思う。方法もスタートボタン押した後にレーダーに表示されている範囲でポイントを指定する、ぐらいの緩さでいいのではないだろうか。
 また、AI兵士に対する指示も、エアレイダーの特殊な装備(2つしかない装備枠の1つが必要)というものではなく、すべての兵科で追加装備なしでできた方が良かった。
 ……そう考えるとエアレイダーという兵科はない方が良かったのでは?

フェンサー

 攻撃・防御ともに強力なものの操作が煩雑で慣れるのに時間がかかり爽快感を削ぐ上に、AIフェンサーは鈍足・ノーガード、体力・火力不足の雑魚と化している、となんとも中途半端な印象だ。
 フェンサー = イージーモードと割り切ってひたすら強くして欲しかった。
 敵にドラゴン出しているんだし、いっそ同社の斬撃のREGINLEIVから、フレイ・フレイア神をゲストキャラに出しても良かったのでは?

 サンドロットはリモート・コントロール・ダンディから始まって超操縦メカ MGまででロボに関するノウハウは溜まったろうし、最初からロボに乗る兵科があってよかったのではないか、という気もする。
 せっかくロボがあるのに、エアレイダーをずーっとプレイしてからじゃないと出現しないのは勿体ない。
 面白そうなのものがあるなら、ケチケチせずに最初から見せるのが良い手だ(D3パブリッシャー側の、不要な入れ知恵な気もする)

その他

 敵の種類は増えたものの特徴づけが微妙だったり、2にいた怪獣が出てこないのもメリハリのなさを感じさせる。
 マップのテクスチャの解像度は上がったものの、マップ自体の嘘っぽさ(ノッペリ)は相変わらずで、町の作り的にはむしろ退化している面も散見される。
 壊せないビルが多いのも爽快感を落としているし、柵などの障害物は腰までの高さの柵はすり抜けOKかダッシュで壊せるようにして!移動が制限されて無駄にストレス!!

 一部の敵に攻撃が効いているのかいないのかリアクションで分からないのもイライラするところ。
 新登場のドラゴンは攻撃を当てると地上に落ちてくるのだが、完全に倒したかどうか見た目で分からず、死体と思っていたら襲われたりして理不尽感が強い。死体を突き抜けて襲ってくるのも、こちらの攻撃や移動が死体で阻まれるのでタチが悪い。

 他の敵にしても、例えば巨大クモのレタリウスの糸など障害物を貫通して遠距離まで届く上に拘束され継続ダメージを受けさらに脱出しづらいとか難しいというよりただもう「意地悪」なだけ。

 ついでに言えば、拾った武器に重複(スカ)が多く、アーマーもひとつでは数値が増えず大量のアーマー集めプレイが必要になるなど、薄味を加速させるバランス調整。
 同じ武器を10個集めると一つ上のグレードの武器が増えるみたいなことも、重複はアーマーとして加算されるとかもなく、ただスカなのだ。
 時間をかけて集めてもゲームオーバーになったり(あまつさえゲームが強制終了したり)すると集めたアイテムが加算されないので、プレイする気力が激減する。

 地上しか歩けない兵科だと屋根の上のアイテムを回収するのに建物を破壊する必要がある。アイテムが水に落ちると底まで沈み、潜れないので回収が不可能になる。雑!
 水に入ると、こちらは攻撃できないのに敵は攻撃してくる。ダメージに耐えながらモタモタ泳いで岸に上がるしかないのに上陸できる場所が限定されているマップも多い。ただただ辛い。

 無駄に何度もボタンを押させるインタフェースや操作感の劣った乗り物、自分の体で隠れて何も見えなくなるといった雑なカメラ周り、PS1時代に戻ったかのような1分近いローディングの発生、動作が重くなるのは当たり前、プログラムの異常終了が特に後半ステージで頻発するなど、PS2のしかも安価なソフトだから許されていた部分がより悪化している感じで、資金繰りに困ったのかなんなのか、慌てて出しちゃった感がある(修正パッチは出たが上記不具合は残っている)
 実際Xbox360版では安定していると聞くし、後にPS4などで発売された4.1では不具合やバランスの悪い部分の多くが改善され、本当に「作りかけの不良品」だったことが証明された形だ。

まとめ

 2から無線の内容の大幅拡充や2種の兵科の増設、もちろんステージやアイテムも増加、グラフィックは豪華になり挙動もリアル…になったのに、ステージ数多すぎとか水増し感あるとか書いた2よりさらに薄味だ。
 以前に「プレイ時間を増やすのなんて簡単で歩くスピードを遅くすればいいだけ(勿論そんなことするとつまんなくなりますけど)」てなことを言った開発者がいたが、そういうダメなボリューム感の出し方の展示場が本作と言える。

 残念ながら協力プレイはやっていないが、(フレームレートや回線などの安定性を除けば)面白そうではある。
 ただ、本作のよくない点の多くは協力プレイを前提にしたために発生しているので、協力プレイは諦めた方が全体のクオリティは上がったのではないかと思える。
 1人プレイでは2キャラの切り替えとオートモード時の簡単な命令ができ、2人での画面分割プレイもできる、コーエーテクモ戦国無双4に近い方式が本作の場合はベストだったのではないか、という気がする。

 ただ、最初に書いたように基本部分が2と同じでメチャメチャ面白いので、これだけダメなところてんこ盛りなのにそれなりに遊べる。

参考

 そこで結論。

水で薄めた酒を、量が増えたと言って高く売っちゃダメです

4.1ではこれよりずっと濃くなったらしい