THE 地球防衛軍2

対応機種・周辺機器
プレイステーション2
ジャンル
サードパーソンシューター
著作・制作
(c)SANDLOT / D3 PUBLISHER 2005

基本情報

 ディースリー・パブリッシャーがプレイステーション時代に千五百円という驚異的な値付けでTHE 麻雀を発売し低価格路線を切り開いたSIMPLEシリーズは、その後テーブルゲームを中心にラインナップを拡大し、ゲームショップにSIMPLEシリーズコーナーを打ち立てるに至った。
 プレイステーション2でも二千円という低価格で提供しており、もはやディースリー・パブリッシャーの商品シリーズとしてではなく、ゲーム開発各社が低価格ソフトを販売するためのプラットフォームとしても機能している。
 そんな中シンプル2000シリーズの一本として発売されたTHE 地球防衛軍が、フルプライス商品並のボリュームとゲーム内容で、SIMPLEシリーズの「安かろうチャチかろう」の常識を覆した。

 開発のサンドロッドは、ヒューマンに在籍していた開発者を中核メンバーとして「走り回ってビル壊す系」ゲームという、十分な需要が存在するのか心配になるラインのゲームを開発する実力派である。

 突然攻めてきた謎の巨大生物やエイリアンの円盤などを、生身の体で駆け回って殲滅し、地球を守る。
 そんなTHE 地球防衛軍が、空飛ぶ女性隊員ペイルウイングを加えて帰ってきたのが本作THE 地球防衛軍2である。

グラフィック

 一見、PS2らしからぬ荒っぽい映像だが、良く見ると本当に荒っぽい。
 しかし、色味やカメラワークが絶妙に特撮映画っぽく、美しいグラフィックではないが、良いグラフィックといえる。
 素人がハンディカメラで撮ったようなクローバーフィールド的リアルさが良く出ている。
 と言っても、手ぶれを再現しているわけではないので強烈な3D酔いがあるわけではなく、変にテクスチャをリアルにしていないので、画面は見やすく快適である。
 アイテムが「えっ」と思うくらいコテコテの平面的なアイコンで描かれていて、プレイステーションやサターンを思い出すが、背景に埋もれず分かりやすい。
 改めて書くが、美しくはないが、ゲームとして非常に良いグラフィックである。

 プレイヤーキャラである地球防衛軍の隊員のデザインはウルトラ警備隊をイメージしているようで、怪獣相手に生身の人間が走り回って銃弾やミサイルを撃ち込むシチュエーションには熱くなる。
 敵は怪獣の他に、B級SF特撮映画では定番の巨大アリやクモ、エイリアンの円盤、宇宙戦争の歩行戦車のようなマシンと、実に勘所の押さえっぷりが素晴らしい。

 街はかなり広く、もしかして端が無いのではないかと思わせるほどだ、と言っても実際は端があり、そこには透明の壁が存在している。
 数種のマップを何度も使い回すので、スタート地点によってはマップ端がすぐ近くのこともあるが、多くの場合はさほど端を気にする必要がないほど十分な広さがある。

ゲームシステム

 ジャンルはTPS(Third Pershon Shooter)。3Dで構成された画面にプレイヤーキャラが表示され、移動しつつ敵を狙い撃つ、というもの。
 実のところ、システム自体に特筆すべきところはない。

 ジャンルの始祖的存在であるアイドストゥームレイダーと比べても、特殊アクションは横っ飛びぐらいしかなく、ジャンプアクション的な狭い足場を渡る面白みもなく、謎解き要素もない。
 ビルは建ち並んでいるものの立体的な迷路にはなっておらず、ごく一部を除き実質は実に平べったいマップ構成である。
 本作より追加された飛行隊員により立体的な戦闘が可能になっているが、高い所にいきたければ飛べば良いわけで、マップ理解のための労力は低い。

 なんだかこう書くと、結局安かろうチャチかろう路線のようにも思える。
 しかしこれは単純な手抜きではなく、「撃って壊す快感」を最大限引き出すようにチューニングされた結果、このようなシステムになっているというのが正解だ。
 敵の破壊は勿論、ミサイルとか手榴弾で民家やビルをガンガン壊しまくって、そのへんを焼け野原にすることもできる。このビルの壊れかたはなかなか他所では見ないサンドロッドの面目躍如たる気持ち良さだ。
 建物破壊自体が目的の任天堂ブラストドーザーと比べても引けは取らない。

 操作は照準を自動で行ってくれる簡易モードが用意されており、ハードルの高い「移動と視点が別レバー」の操作は上級者向けという作り。
 実は簡易モードの方がクリアが難しいというパターンに陥りがちだが、本作ではNORMALレベルぐらいまでは簡易モードで十分遊べる作りとなっている。

 敵を殲滅すると終了するミッションで区切られた面クリア方式なので、1プレイの時間が短く区切られていて遊びやすい。
 あと1ミッションクリアしておこうかなー、というノリでズルズル遊んでしまう。

 アーマーアイテムを取っていけば、体力がどんどん増えていくので、少々下手でも時間をかければゴリ押しでEASYはクリアできるようになっているのも調整としては適切かと思う。
 手強いゲームが遊びたい人のためにアホみたいな高難度も用意してある。

その他

 プレイ中に無線によってミッションの説明は勿論、他の隊員の状況が知らされる。
 台詞が音声化されると大抵はプレイヤーの操作を奪ってしまい、ゲームとしてはレベルが落ちてしまう。
 しかし本作の場合、無線によってプレイヤーの操作が一旦停止されるわけではなく、BGM的に音声が流れる。
 プレイが中断されず快適な上に、ゲームに必要な情報がちゃんと入っていて素晴らしい。
 同様に戦闘中に音声が入ってくるコーエーの無双シリーズと比べても、雰囲気を高める演出的役割として、より効果的に使われている。
 ミッション開始時のイベントシーンが「今度はこんなのが攻めてきましたよ」以上の複雑さがなく短いのもテンポが良い。

 巨大な円盤を撃墜したときの演出とか、いきなりカメラ固定になるのにリアルタイムにゲームは進んじゃう(設定でOFF可能)ので、混乱するとか。
 敵が近くに沢山いると処理落ちが激しく、ダメージを受けた際の無敵時間が少ないのであっという間にボコボコにされるとか。
 相当荒っぽい作りなのだが、このゲームで大事なところは「敵が迫ってくる怖さと破壊の快感」という軸がはっきりしているので、トータルとして高いレベルに到達できている。

 ただ、武器選択とかのインタフェースや乗り物の操作性の悪さなどは、単にコストを下げるためのチューニング手抜きな気がする。
 インタフェースのチューニングは思いの外コストが高くつくので、ここもまた「正しい選択」ではあるのだが。

 マップの使い回しでミッションを作るのは単に移動するだけのマップ把握の時間が減っていい。
 とはいえ、ちょっと内容の薄過ぎるものがチラチラある。難しくはないがとにかく時間がかかるミッションなんかは勘弁して欲しい。水増し感が半端ない。
 たぶん、半分ぐらいに厳選しておけば適切なミッション数になったと思う。あるいはエクストラミッションとして、クリア後に追加されるような仕組みなら問題なかったかと思う。
 兵種が2つから選べる他、武器の種類も豊富。そのアクションや効果も面白いので、無理にミッション数を増やさなくても、十二分にボリュームは確保できている。

 そこで結論。

安く作る制約が思い切ったシステムの特化を進め、傑作を生み出した


2013-08-08