電撃文庫 FIGHTING CLIMAX

対応機種・周辺機器
PS3、PSVita(1〜2人) PS3版はHDDインストール可 オンライン対応
ジャンル
対戦格闘ゲーム
著作・制作
©︎SEGA/エコールソフトウェア/フランスパン ©︎KADOKAWA/アスキー・メディアワークス

基本情報

 電撃文庫20周年記念で、人気小説のキャラクターが一堂に会した対戦格闘ゲーム
 開発は渡辺製作所の流れを汲む同人ゲームサークルのフランスパンで、MELTY BLOODUNDER NIGHT IN-BIRTHの系譜に位置する。
 本作はSEGAが発売・展開を行ったアーケード版の移植に当たる。
 SEGAといえば本作の前に出した2D対戦格闘ゲームが北斗の拳、その前がゴールデンアックス・ザ・デュエルそしてその前がバーニングライバル…不安しかない!!おっとダークエッジも2Dに入れておきます?僕好きなんですよ、不安は特に収まらないんですけど。

 アニメ化された人気キャラが集まっているだけに、キャラクターデザインの魅力が高く、また豪華声優陣の一言でかたづけられない声優の豪華っぷりだ。
 この辺は原作小説やアニメ・漫画を参照すればいいので、詳しくは語らない。
 電撃文庫が頭につくだけあって、イラストはアニメではなく文庫本準拠なのも分かってる感じだ。

 起動直後に動画配信を禁止する注意書きが出るのが時代を感じさせる。
 ちなみに2023年現在では動画配信しても、お咎めはなさそうだ。どっかで解禁する旨のアナウンスがあったのかもしれない。
 その一方で公式の攻略wikiも存在していたりして、Web展開に試行錯誤していることが伺える。

 本作はアーケードの移植作としてPS3とPSVitaが同時発売されているが、本記事ではPS3版についてのみ語るので、セーブデータが共有できる機能とかは試してない。
 なお、対戦プレイはオンラインも含めやっていないので、割としっかりしてるオンライン用のプロフィールカスタマイズと、かなり雑らしい対戦サーバの作りについては割愛。
 腕前的には大威力コンボどころか必殺技も確実に出せない感じなので、主にキャラゲーとしての側面から語る。

参加作品

 サポートキャラも含めると膨大になるので、プレイアブルキャラだけ紹介する。
 割と電撃文庫だと思ってたら角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫の作品だったということも多いので「なんでアレがないの?」と思ったらレーベルを確認していただきたい。
 サポートキャラは「ボタン一発で呼びだせるキャラ付きの技」という感じのもので、本作ではレバー方向で2パターンの技を選択できる。
 SNKTHE KING OF FIGHTERS '99のストライカー(援護攻撃の発展系)あたりから対戦格闘ゲームで多く取り入れられた「とにかくキャラをたくさん出したい時に便利」なシステムで、プレイアブルキャラに比べれば格段に少ない画像数で1キャラ参戦を実現できるため、本作のようなクロスオーバー型の作品によく合う。

 さて、プレイアブルキャラだ。アーケード初期は8人と流石に少ない。

  • 灼眼のシャナシャナ
  • ソードアート・オンラインキリト、アスナ
  • とある魔術の禁書目録御坂美琴
  • 俺の妹がこんなに可愛いわけがない高坂桐乃
  • デュラララ!!平和島静雄
  • アクセル・ワールド黒雪姫
  • ロウきゅーぶ!湊智花

 さらにのちのバージョンアップによる追加キャラは次の通りで、PS3版には最初から含まれている。

  • 魔法科高校の劣等生司波深雪
  • とらドラ!逢坂大河
  • ストライク・ザ・ブラッド姫柊雪菜
  • ブラック・ブレット里見蓮太郎

 2014年を考えれば概ね納得という感じの作品選択。多くの対戦格闘ゲームに比べ少なめとはいえ、後で述べるボス2キャラを加えて14キャラは、新規タイトルの数としては頑張っている感じだ。
 デュラララ!!から平和島静雄は主役でもなく予想を外していて異論もあるだろうが、他のタイトルとのバランスを考えると変化があっていい選択と思う。
 ただいくつかキャラ選択に疑問もある。
 例えばとある魔術の禁書目録から主役の上条当麻ではなく御坂美琴のみプレイアブル参戦の上にタイトルでもある禁書目録(インデックス)がサポートキャラにいない。流石に開発はインデックスに頭噛みつかれろ!という感じだ。
 ソードアート・オンラインは主役のキリトがプレイアブルなのは当然だが、彼女のアスナはプレイアブルになるより、むしろサポートキャラとして助けて欲しい感はある。
 この他魔法科高校の劣等生も主役の司波達也ではなく深雪で、作品ファンが基本感情移入して読んでるだろう主役男性がないがしろにされるのはいかがなものか。

 逆に俺の妹がこんなに可愛いわけがないの主役である高坂京介の場合、とても格闘ができるようなキャラではないので桐乃の参戦は納得ではあるが、そもそもの作品がバトルものではないあたり若干疑問はある。
 若干でしかないのはバトルものでない原作が対戦格闘ゲームになるのは渡辺製作所の名前を知らしめたTHE QUEEN OF HEARTGLOVE ON FIGHTからもうゲーマー的には慣れっこで、それで全然問題なく面白いからだ。

 そして若干の疑問というのはブギーポップは笑わないキノの旅の主人公は戦闘向きでもあり人気も高いのに、プレイアブルキャラにいないという部分。
 長年のファンからすると「なんでや!」って感じだろう。当時はIP展開がおとなしくなっていたものの、両方ともその後再アニメ化されるほどの人気タイトルだ。
 両者ともサポートキャラとしては入っているので、キノの声優がアニメ版の前田愛ではなくラジオ版の久川綾であるとか、まぁなんか色々と著作権やキャスト関連で難しかったのかなぁ…的なところはあるが。ちなみに再アニメ化の際の声優は悠木碧だ。

 そしてボス(バージョンアップで対戦で使用可となる)のアキラとセルベリアに関してはセガのキャラがなんで電撃文庫に?という違和感がすごい。
 僕はセガファンなので両者の参戦も嬉しいが、ステージの背景が全てセガIPがらみで電撃文庫一切関係ないし、音楽はセガ関連作曲家ではあるものの既存のセガも電撃文庫も関係ないのは流石に白ける。
 進行役のドリキャスに関しては現代日本にやってきたセガの女神にありがちなことが(多分このコラボがらみで)電撃文庫から出たので、ギリギリでアリとは思うが。
 あとついでにセガはエラーゲームリセットでもそうだが自社を敵にしがちな癖は改めたほうがいい。セガの自虐はファンも嬉しくない。セガはダサくない!!!

戦闘システム

 UNDER NIGHT IN-BIRTHをベースに開発されているようで、弱・中・強の攻撃ボタンと特殊ボタンの4ボタンの組み合わせ、弱攻撃連打で手軽につながるコンボ、2Dのキャラクターなど共通部分は多い。
 これは非常によく本作の初心者向けコンセプトと合っていて、手抜きという感じはしない。
 加えて必殺技は波動コマンド(左右方向で別技)、超必殺技に当たるクライマックスアーツはヨガコマンド+中強(左右方向で別技)に統一されていて、極端につながるコンボもない。

 ただ即死コンボのような極端なものがないだけで、地上からジャンプ攻撃への繋ぎ、吹っ飛ばしから追撃、投げから追撃、ダウンに追撃、などなどが可能な場面があったりして、タイミングや操作技巧を要求する面もあるし、そもそも初心者がそれを自力で見つけるのは不可能に近い。
 また同時押しが弱中・中強・弱強・弱中強の全てに存在し、初心者どころかある程度は格闘ゲーム慣れしている人でも使いこなすのが難しい。もう一歩のシステムの簡略化か、いっそもう一つボタンを増やすべきだったのでは?(設定でLRあたりに割り振れるけど)
 またゲージ関連が体力の他にサポート・ブラスト・切り札・クライマックスと多数存在し、その辺りを理解するのもなかなかハードルが高い。
 おそらくアーケードのジョイスティック向けを前提にしているので、標準ゲームパッド操作との相性も良くない。

 加えてチュートリアル的なものが一切なく、初心者向け?という感じの、コンセプトのブレも感じられる。
 その辺の初心者置いてけぼり具合が良く分かることとして、二段ジャンプが可能であることが説明書にもゲーム本体にも書いてない気がするのだが…
 Webサイトでのフォローはあるが、バージョンアップ時に本体にチュートリアルなど組み込めなかったものだろうか。

 とはいえ共通システムが強く、サポートキャラの選択でキャラの弱点を補うこともでき、体力的に負けている側に様々なバフが付くなど、対戦バランス的にはフランスパン製格闘ゲームの中でも随一ではないかと思われる。個人的にそこまでの技量を持たないので推測の域なんだけど(笑)
 ちょいちょいゲーム大会のタイトルとして選ばれたりもしているので、世間的にも良バランスという評価かと思う。

シナリオ

 セリフ単体で見ると原作者監修がされているだけあって、お前は絶対そんな言い回しせんだろ的な違和感はない。
 ざっくりと「セガ空間に迷い込んだから戦って脱出するんだ!」みたいなよく分からん設定なのだが、その文脈に乗せると特に原作から引っ張ってきたセリフなど意味不明になってたりしていて、この辺りは雑さを感じるところだ。
 誰か一人統括シナリオライターをやってくれる電撃文庫作家はいなかったものか…、個性あふれる作家をまとめることができる作家とか夢見てんじゃねぇって話ですねすみません。
 当初はもっと全面的に電撃文庫VSセガみたいなゲームにする気だったらしく、その歪みがあちこちに残っちゃった感じ。

 それを補完する形で、キャラ同士の掛け合いを重視した[DREAM DUAL]が用意されていて、そもそも量があるわけでもない上に重複も多いが、補完という意味では悪くない。
 また[NOVEL]モードでは原作小説の冒頭の試し読みができるようになっているのが、この手のゲームでは珍しい。
 アニメしか知らなかったとか別のシリーズを読んでいなかった層に対するアピールとして非常に適切。
 ただTV画面で読む小説は、いまいち読みづらい。

まとめ

 とにかく人気キャラを自由に動かせる時点で楽しい。
 メサイヤらんま1/2 爆烈乱闘篇だったりトレジャー幽☆遊☆白書 魔強統一戦だったり、キャラものの傑作対戦格闘ゲームは沢山あるが、本作でキャラものに一番合っているゲームジャンルは戦格闘ゲームであると再確認した。
 当時でも絶滅の危機に瀕していた2Dキャラ格闘にしたのも、アニメでも人気の作品群に対してベストチョイスだ。立ち絵のアニメーションにイラストを動かすのに最適なM2開発のE-moteを採用していて、妹大好ききりりん氏もご満悦!!
 またキャラゲーとして高いレベルであるのと同時に、これまでの2D対戦格闘ゲームで培われたシステムをうまく取り込み、キャラを一切知らない格闘ゲーム好きが遊んでも満足できるレベルのゲームに仕上がっている。
 セガ要素のゴリ押しなどの不満はあるものの、権利関係や作品世界やキャラのすり合わせが難しいクロスオーバーものとしては、出色のできと言っていいだろう。

 なお、続編というより追加データパック的な電撃文庫 FIGHTING CLIMAX IGNITIONが存在するので、あえて本作を選ぶ理由はなく、手に入るならそちらをプレイするのが良いかと思う。

参考

 そこで結論。

豪華クロスオーバーとそれに適切なシステム。傑作です。