電撃文庫 FIGHTING CLIMAX IGNITION

対応機種・周辺機器
PS3、PS4、PSVita(1〜2人) PS3、PS4版はHDDインストール可 オンライン対応
ジャンル
対戦格闘ゲーム
著作・制作
©︎SEGA/エコールソフトウェア/フランスパン ©︎KADOKAWA/アスキー・メディアワークス

基本情報

 電撃文庫20周年記念で、人気小説のキャラクターが一堂に会した対戦格闘ゲームである電撃文庫 FIGHTING CLIMAXの一年後に出たアッパーバージョン。
 カプコンストリートファイターⅡに対するストリートファイターⅡ'ぐらいな感じの作品だ。
 なので、本稿では差分について語るので、主な内容は前作のレビューを読んでいただきたい。

 アーケードの移植作としてPS3とPSVitaに加え、本作からPS4版が加わった。
 システム変更と追加キャラクターという感じで、本稿ではほぼキャラについて語る。

参加作品

 SEGAからの新たな参戦キャラがいないのは、やっとこの作品の客層がわかったようで好感触。
 ただ前作で出ていた電神(ドリームキャストちゃん)は影も形もいなくなっているのは解せない。プレイアブル参戦した上でサポートキャラにサターンちゃんとか付けようよ!Hi☆sCoool! セハガールステージを新規に追加してるのに!
 他にもSEGAに期待できるところとしては、スーパーダッシュ文庫から劇中にサターンが出たりと所縁の深いベン・トーを引っ張ってくるとか、SEGA初音ミク -Project DIVA-のつながりで初音ミク引っ張ってくるみたいな、ライトノベルファンが喜ぶ感じのサプライズが欲しかったところだ。
 あるいはKADOKAWAが頑張ってスニーカー文庫や富士見文庫からのサプライズ参戦が欲しかった。ラノベファンがSEGAのゲームに興味がないことは大いにありえるが、電撃文庫しか読まないということはあり得ないだろう。
 結局、次のような新規ラインナップで、電撃文庫からの人気的にも性能的にも無難なキャラの参戦で驚きに乏しかった。

  • はたらく魔王さま!遊佐恵美
  • とある魔術の禁書目録白井黒子
  • ヘヴィーオブジェクトクウェンサー=バーボタージュ
  • 魔法科高校の劣等生司波達也
  • ソードアート・オンラインユウキ(DLC)
  • ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?アコ(DLC)

 遊佐恵美とユウキに関しては「長髪の女性剣士」という区分けだと、既にシャナとアスナがいるので食傷気味。
 特にユウキはSAOで3人目のプレイアブルキャラで、SAOは単独タイトルのゲームがあるから別に数いらんしクロスオーバー感が薄くなるし…という気になる。
 任天堂スマッシュブラザーズレベルのキャラチョイス力を発揮してくれ、とまでは言わないがブギーポップとキノ…せめてどっちかプレイアブルに入れてくれぇ。

 御坂美琴もそうだがとある魔術の禁書目録枠で白井黒子が参戦というのが違和感がある。どう考えてもとある科学の超電磁砲枠だ。
 電撃コミックスの作品であるので電撃文庫がタイトルにあるゲームに出すのはどうか、という配慮があったんじゃないかとは思うのだが⋯SEGAのキャラが参戦している段階で「そこはもう細かいこと」でしかないと思う。絵を描くのが灰村キヨタカか冬川基か問題はあるとして。
 それよりとある魔術の禁書目録ってタイトルなのに禁書目録(インデックス)がサポートキャラにすらいない方がおかしいだろう一方通行(アクセラレータ)や初春入れてる場合じゃないよ!!
 そもそも主役の上条当麻がプレイアブルじゃないのも納得いかないところ。敵の能力をことごとく無効化する幻想殺し(イマジンブレイカー)の扱いが対戦ゲーム的に難しいことはわかるが、アスキー・メディアワークス(角川ゲームス)とある魔術の禁書目録という対戦格闘ゲームには上条さん既に出てるのに!!
 新規参戦の司波達也はサポートキャラにもいるので、上条さんも行けたでしょ!
 ちなみにSEGAは後にとある魔術の電脳戦機というなかなかに無理筋なコラボタイトルを作っている。

 ヘヴィーオブジェクトからオブジェクト(巨大兵器)がプレイアブル参戦するとかだと面白いが…50mあるから足元しか出せない(笑)。クライマックスアーツ(超必殺技)に出てくるので良し!
 アコは魔法少女枠(クレリックだけど)としてドクロちゃんとどうするか的なことはあるが、旬を選んだということで悪くない。
 なおDLCキャラは追加購入の必要がある(ユウキは発売からしばらく無料だった)

戦闘システム

 本作ではサポートキャラに加えてブラストキャラを設定できる。
 これにより状況によって発生するブラストの3種の効果うち一つを強化できる。
 つまりブラストには多くのキャラを設定できるが、機能的には3種類しかないのだ。
 ブラスト使ったりゲージ溜まったりした時の音声を変えるためだけにキャラを選ぶのは、ちょっと面倒くささのほうが先に立つ。

 またタイトルに入っているイグニッションというシステムが追加されている。
 ラウンド終了時にプレイヤーキャラ・サポートキャラ・ブラストキャラのうち一つを選んで強化できるというシステムだ。
 ラウンド区切りで調整して仕切り直せるので悪いシステムではないものの、選択の面倒さが先に立つ。

 加えてイグニッションを2回かけるとダブルイグニッションが発生し、クライマックスアーツをそれぞれの追加入力で強化できる。
 ……覚えることが多すぎる。前作の段階でもシステム過多なところがあったが、客層を間違えてる感じがある。
 アクションゲームが得意でない人は「複数ボタンの同時押し」が結構なハードルだ、というぐらいの前提で作って欲しいところだ。
 アーケード展開が前提であるため、ガチ対戦ゲーマー向けのバランス調整を入れざるを得ないところが裏目に出ているようで、キャラクターの選定にしても面白さより破綻が生じにくいことを優先して選んでいるように思える。

 また同梱の紙のマニュアルが簡素化され、オンラインのWEBマニュアル(アソビン教授がいるのはちょっと嬉しい)で確認しないとシステム自体わからないのもひどい。
 紙マニュアルを簡素化するにしても、ゲーム本体にも一通りマニュアルは入れておいて欲しかった。
 マニュアル代わりになる丁寧なチュートリアルモードが搭載されればよかったのだが、その辺りのケアは一切なく放りっぱなしだ。
 開発のフランスパンとエコールは対戦部分に集中して、SEGAがゲームに慣れるまでの導線を作り込む、みたいな分担でやれれば良かったろうと思うが、伝統的にSEGAはプレイヤーを突き放しがちで良くない。

シナリオ

 前作のゴリ押しSEGA要素の変なストーリーは綺麗さっぱりなくなり、なぜか互いのことをある程度知っている上での掛け合いがあって戦闘に突入するという、前作の[DREAM DUAL]をメインに据えた開き直った流れになっている。
 ステージ毎に3キャラから選べるので、好きな組み合わせで遊びやすいのもいいところ。
 そこまではキャラゲー的には全く正しいのだが、ボスキャラがいないのでクリアした際にちょっと消化不良。
 貞夫(エンテ・イスラのすがた)をボスにしとけばよかったんじゃないの?あいつ魔王(ラスボス)でしょ!

 アニメ準拠になってなっていないのはあくまでも「電撃文庫」であるというのもあるだろうが、権利者が膨らみすぎるのを避ける目的があるだろう。
 にしても音楽は無理でも、小説+イラストの権利で背景までは各作品に合わせたものを用意して欲しかった。開発期間が1年あったんだから!

まとめ

 このゲームで上条さん使いたすぎて若干気持ち悪いレビューになっているが(笑)、面白いゲームを順当にバージョンアップしているので大崩れもなく、やっぱり面白いゲームになっている。
 しかし電撃文庫(ラノベ)ファンというターゲットに対して適切なチューニングが行われているかというと疑問で、下手すると作品ファンそっちのけで対戦格闘ガチ勢が目を血走らせて対戦しているという図になり、ライトノベルファンをアーケードに誘導する、あるいはその逆というミッションは達成できてないのではないか、という気はする。
 ちなみに今回(現在)はオンラインでマッチングできて対戦が叶って嬉しかったが、流石に8年近く経った現在残っているのは猛者しかいないので勝てる気はしなかった。
 それだけ長い間遊ばれるだけのポテンシャルをしっかり持っていたことの証明としては十分かと思う。

参考

 そこで結論。

傑作の無難なバージョンアップ版なので傑作