真・三國無双6 Empires
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基本情報
リアルタイムシミュレーションと格闘アクションの融合真・三國無双6(以下、無印)をベースに、戦略シーンが追加されたもので、シリーズ定番の派生作品だ。
エンパイアーズとしては初かと思うが、復活参戦ではなく新規のプレイアブルキャラが追加されている。ちなみに徐庶だ。
真・三國無双5 Empires(以下、前作)では、特に戦略面がグダグダで「マジで歴史シミュレーションの雄、コーエーが作ったのこれ?」とビックリしたものだが、本作では無印同様の復活はなったのか。
なお、以下のレビューはアップデートを行った状態でのものだ。
本作はプレイ中の頻繁なフリーズという致命的なものの修正も含め、かなり多くの改良が加えられているのでアップデートは必須と言える。
戦略面
地位と名声
君主か配下武将、あるいは放浪武将としてプレイできるのは前作の通り。
配下武将だと君主の指示に従う必要があるが、勲功を立て大将軍や軍師といった地位につくと君主に近い自由度が得られる。
これで「魏は君主ではなく、軍師であるこの私の手のひらの上よ、はーっはっーは」な仲達プレイも可能で楽しい。
行動によって名声が得られ、その大きさと種類によってメニューの選択肢や、絶招秘計というカード的なものが増え、できる行動が広がる。
前述の地位とともに適度に行動を制限する仕組みとしてよく働いているし、ゲームプレイに武将の個性が反映されるのも面白い。
武勇・知略・仁愛・規律・財産という当然あるだろうなという名声の他に、「悪逆」があるのが良い。
董卓で悪逆三昧ができるのはもちろん、妲己をエディットしても、それらしいプレイができる。
劉備みたいな善人評価が定着している人物だって悪いことできるのもゲーム(特にシミュレーションの)の良いところだ。
ある程度以上名声の総量が増えると、全体の名声がじわっと下がりだすので、常にそれらしい行動を取らないと名声が保てないというバランスもいい。
名声の中では個人の能力を高める武勇の使い勝手が良い。これはバランスが悪いというより無双シリーズだから当然そうなるよな、という感じ。
戦略シーン
会議中は君主と配下武将が並ぶ状況が背景に表示され雰囲気があるが、城内をウロウロして仲間に話しかけたりはできないので、慣れると「これ無けりゃロードが入らなくて快適なのに」って思ってしまう。
一応、街に行くと城下の民に話しかけて国の評判も聞けるし、味方武将がいる場合もあり、その際は話しかけられるとはいえ、会議中に画面上隣にいる人に話しかけられないの残念。
ちなみに、アップデート前は街に行くだけで1ターン消費していた…ロードが入るだけでも億劫なのに買い物したり着替えたり住民の声聞くのに1ターン消費!! 酷い!!
前作のカード内政などの、著しく戦略性の低いシステムは全廃され、真・三國無双4 Empiresに近いものへと変更されている。
敵君主のいる本国を奪取すると、その地域および周囲の地域が自国領となる。広大な敵地域を分断したり、終盤の3、4地域を一挙に手中にするのに丁度いいバランスとなった。
このシステムにより、自軍の地域を取らせておいて、兵力が薄くなった本国を強襲して丸ごと取り返す、みたいな戦略も取れる。
アップデートで配下武将数は増えたものの、国ごとに細かく配置することはできず、この部分に関してはコンピュータとプレイヤー間での非対称性が強く、少々不満。
また太守を配置した地域は太守が防衛戦を行うが、3ターン連続で攻撃を受けると確実に取られるのも、非対称であることは勿論、シミュレーションというよりボードゲームっぽいルールで残念。
侵略・防衛の戦いの他に襲撃という「敵国に嫌がらせする」戦闘があり、これには簡単なミッションが付加されていて通常の戦闘と違う雰囲気を味わうことができる他、ミッションにより異なる名声を得られるので、名声の調整にも使える。
単に統一を狙うプレイではほぼ必要のない行動だが、飽きさせない工夫にはなっているし、資金が手に入る。
侵略・防衛でも資金が手に入り、全体に内政による資金調達の重要度が低いのは、個人的には不満だが無双的には正しい気もする。
ちなみに、アップデート前は襲撃時の回復手段が基本なかったので、ミッションによっては異常に難しい場合もあったが、アップデートで饅頭が出るようになった、饅頭うまいです。
力押しでなんとかなるのが無双のいいところではあるが、難易度を上げると同盟締結などの外交も無視できなくなる。
成功率がバーで表示されるため、「だいたい行けそう」とか分かり、貴重なターンの無駄打ちが少なくなっている。
さらに、絶招秘計で成功率を高めることもでき、ちょっとだけ外交をやる意味やゲーム的面白さが上がっている。
とはいえ、もうちょっと頑張って欲しい感じはある。
友好度を上げると義兄弟2人と(異性の)配偶者1人が作れ、以後一緒に行動してくれるなど、色々と特典がある。
前作と違い性別を問わず義兄弟になれるのは嬉しいが、できれば3人まで作れるようにして欲しかった。趙雲も兄弟にしたいんだよぉ〜。諸葛亮は…軍師でいいや(笑)
友好度は一緒に戦って武勇を示したり救援したりしても上がるが、宴会(憧れの酒池肉林もできる!)などでも上がるし、かなり狙って友好度を操れるのがいい。
前作は友好度が明示されていなかったので、婚姻とか「もしかしてランダム?」とか思っちゃうぐらいだったが、本作は有効度の可視化は勿論、友好度上昇時にムービーが挟まれることもあり、恋愛シミュレーションとしてある程度遊べる(笑)
様々な戦略上の行動が取れるので、割と描いた通りの武将人生を送れる。
自国の支配地域を減らして不利な状況下に置き、自分と懇意の武将の力だけ上げておいて支配地域の多い君主へ鞍替えなんてこともできる。
武将体験ゲームではなく、純粋に戦略ゲームとして遊ぼうとするとまだまだ浅い作りではあるが、「無双ですよコレ」と心で呪文を唱えると不満は解消する(笑)
史実とエディット
史実イベントは、用意されていても一律特殊戦闘が発生するという感じで、史実感は弱い。
また、いるわけない時代と地域に武将がいることも珍しくなく、雑な感じを受ける。
少なくとも時代を区切ったシナリオは、もうちょっと史実に沿って欲しかった。
シナリオは無料DLCとしても沢山用意されていて、ちょっとやそっとでは全制覇できない量がある。
有料の水滸伝居城セットの「天命の誓い」シナリオは、用意されたエディット武将(112名!!)で水滸伝がプレイできるというもので、この作品の可能性を一番感じた。
戦闘中に他の武将がかけてくる声は、関わりの深い武将同士だと、それなりに特別セリフが用意されていて嬉しい。
この辺やりすぎると「誰も気づかないデータを延々作る」ことになりかねないので、まず十分な量があると言っていいだろう。
あとは、的確な状況で発言してくれればいいが、偶然いい感じになることもある程度。
エディット武将は、やりすぎない程度に細かく設定できる。
細かく設定できすぎるとエディットキャラを作る時点でプレイ意欲を使い切ってしまって、本編プレイしないということになりかねないので、ベストに近い複雑度だろう。
ただ時代を考えると、「なぜこんなにメガネの種類多くした!」というツッコミはいれておきたい。
アップデートで製作後にテスト戦闘もできて、調整がしやすくなったのも素晴らしい。
ただもうちょっとインタフェースは使いやすくできるはずなので、頑張ってほしい。
嬉しいことに、既に名前がついてデータとして設定されている武将も(無双武将も含め)エディット武将と入れ替えることができる。
実際の歴史そのものは勿論、小説・アニメ・ゲームなど無双以外に好きな三国志があるプレイヤーなら誰でも、イメージと違う武将が毎回不満となっていたが、エディット武将と入れ替えできることでかなりの不満を解消できたと言える。
実写すぎず漫画すぎないキャラのリアル度なので、映画レッドクリフ(赤壁)の役者っぽく作り直すとか、人形劇 三国志っぽくとかできる、横山光輝 三国志は漫画らしすぎてちょい辛いが。
性別不問なので漫画一騎当千やまじかる無双天使 突き刺せ!! 呂布子ちゃんを再現してみたりもできる。
オープニングやスタッフロール以外はいわゆる実機ムービーなので、無双武将と同じようにエディット武将が登場するのも嬉しい。
ムービーの登場キャラを自由に設定できるモードもあるので、自分に似せたキャラ作って好きな武将とのムービーを延々見るという、もうなんのゲームかわからないプレイも可能だ。
DLCでの(無料)追加装備も豊富だし、もし制作できる武将数に200人の制限がなければ、無限に遊べてしまって危ないところだった。
さらに、ネットワークに接続すると、公式(コーエーテクモ)や他のプレイヤーが作った武将が参戦してくるように設定でき、未登場の三国志の人物は勿論、いろんな物語のキャラや芸能人に似せたキャラがやってきたりして楽しい。
他も、完全オリジナルのひらがな日本名のキャラは小学生が自分のつもりで作ったのかな、とか思えて楽しい。
ネットワークを通じて来訪した武将はローカルに保存もできる。
ネットワーク対戦はできないが、戦闘時にプレイヤーを招待したりされたりして2人プレイできる。
つまりこれは自分が作ったエディットキャラが沢山出る戦場に招待したりできるわけだ。
発売時には、ユーザによるエディットキャラを使ったプレイ動画配信で、そこそこ盛り上がったみたいだ。
戦術(戦闘)面
戦闘面
基本的に無印のままだが、DLCを含む無印・猛将伝で登場した武器が全部入っている。
それに伴い得意武器の設定が整理され、技も追加されるなどして、6の無双武将完全版と言える状態になっている。
廃止された技もエディット武将の技として使えるなど、至れり尽くせり。
一般武将の無双乱舞攻撃の刀の衝撃波が、無双武将含めて一番飛距離あるんじゃないか、というぐらい遠くまで届く上に狙いが正確。
発動音が遠くで十分逃げたと思ってたら、背中からバッサリ食らう、結構怖い。
特に高難度の場合は敵が気軽にコンボ決めてくるので、何もできないまま死亡パターンも珍しくなく、手強いというより理不尽に感じることも。
敵武将が密集していることが多いのも、困ったところ。一旦凌いでも、あとで一気に敵本陣で復活して難易度劇上がり、というパターン多い。
しょうがないので、囮になって敵将を引き連れてマラソンを行い、味方が敵本陣制圧してくれるのを待つが…この勝ち方楽しくない。
一騎打ちはなくなって、たまに特別な武将で遭遇ムービーが挿入されるが、その後は普通の戦闘。
一応、鍔迫り合いは残っている。
戦術面
合戦前に設定しておくと戦場で各1回発動できる絶招秘計というシステムがある。
効果は味方の能力強化・回復、援軍の要請、兵器の設置、火計や落石などの計略と多岐にわたり、単調さを大幅に軽減してくれている。
味方武将もこれらの計略を使うのだが、完璧に意味ない使い方はまだしも、こちらが不利にしかならない使い方をすることも多く、これは勘弁して欲しかった。
ドラクエの「まほうつかうな」みたいな指示が欲しくなる。
また、発動のためのインタフェースも熟れておらず、間違った絶招秘計を発動してしまったり、決定が○ボタンなので、絶招秘計を発動させたつもりで無双乱舞(あるいは逆)してたりする。
アップデートで追加になった全体指示が絶招秘計発動のインタフェースについでに組み込まれているのも、紛らわしい。
味方武将は、比較的的確に攻撃・防衛・護衛といった行動を選択してくれるし、そこそこ敵武将を撃破するし拠点も制圧するし、突っ込んで即撤退ということもなく、ほっといても割と大丈夫。
こう優秀になってくると、逆に指示して働いてもらいたい面も出てくるのだが、個別指示のインタフェースは相変わらずいまひとつ。戦闘開始前に指示を出しておくことすらできない。他のRTSのインタフェース研究してないのか…てゆーかしてないだろ!
アップデート前は全体指示もなかったので、武将の行動が優秀になったからプレイヤーが指示する必要ないだろ、との判断かと思うが、優秀なら優秀なりに指示はしたいのだ。
もうちょっとで一切戦闘を行わない「完全軍師プレイ」でも楽しめそうなレベルに到達できそうなのに。
操作武将も戦力が残っていれば、撃破されても再出撃できるようになった。
これまではコンピュータ武将の再出撃に理不尽さを感じていたが、これで対等となった。
一応、士気の落ち方が激しいとか、再出撃までの待ち時間がないとかの差はあるが、ゲームバランス上納得できる違い。
再出撃できるので戦いが雑になるかと思ったが、全体的に敵が手強いので緊張感はむしろ大きくなったように思う。
逆に敵がコンボ決めてきたり集団で襲ってきたり、雑に難しくしてる感ある。
敵武将は全員、しつこく追撃してくるようになった。
そのため、足の遅いキャラが敵武将に囲まれてタコ殴りにされるリスクが高い。
やはり、馬呼びからの騎乗の流れを、もうちょっとスムースにして欲しいところだ。
逆に足が速いキャラを使っていると、伏兵などの罠を仕掛けた場所に連れて行ったり、自軍のテリトリーに誘い込んで捕縛したりと、使い勝手が良い。
拠点機能
相変わらず拠点の門は開けっ放しだが、絶招秘計で一定時間閉じることができるようになった。
ただ、全体に影響してしまうので的確に使用するのは難しく、味方に使われて制圧済みの拠点から出られなくなったり、残念な場面が多い。
時間制限なので門を破壊するということもできず、攻城戦の面白さは本作でもあまりない。
絶招秘計で拠点に投石機を設置して近くの敵拠点を攻撃できるのが一番城攻めっぽいシステム、というのは流石に淡白。
戦国無双3 Empiresの拠点のように、最初から拠点の機能が設定されている上に異常にその能力が高い、みたいなことはないので、気にしなければ大丈夫レベルではある。
全体に絶招秘計は強力ではあるが、使わなくてもなんとかなるレベルの強さで、これは良いバランスかと思う。
特に強力な絶招秘計は、発動するのに追加の資源が必要になることでバランスをとってあるのも良い判断。
あまりに強力な技だと「それ使う以外の選択肢がなくなる」ので、ゲームが単調になり、つまらなくなってしまう。
ただ、敵に絶招秘計使われると「マジでやめて」というぐらい追い込まれることがあるのは、緊張感あっていい。
まとめ
「新卒に仕様書書かせたんじゃないか」レベルだった前作の戦略部分は、傑作と名高い真・三國無双4 Empiresからさらに改善された。
評判が良かった前作のエディットが強化され、大幅増加された無双武将が固有武器とモーションを携える万全の体制。
コンピュータとプレイヤーのルールの非対称性も少なくなり、行動の自由度も増え、三国志の世界を生きる武将のシミュレーションとしては、現状ではこれ以上ないレベルに達した。
前述のインタフェース含め、馬が建物に引っかかるとか、夜が見づらいとか、3D対応してないにもかかわらず敵が消えるとか、細かい部分がいつものダメ無双だったりはするが…。
無双シリーズは、機能としてはあるのにインタフェースが悪くて気付いてもらえず、レビューに「この機能がないので★減点」とか書かれるパターンが多く、ほんともったいない。
問題は、アップデートしてない状態だとゲームとして成立してるかどうか怪しいレベルに酷い出来であること。
ネットワークが発達してない時代だとリコールもんで、TVとゲーム雑誌にお詫び広告を出して、全品改修版に取り替えかアップデートディスクの配布が必須だったんじゃないだろうか。
アップデート後もフリーズの発生はあるものの、これだけアップデート前後で違うゲームになっているのも凄い。
参考
そこで結論。
脳内で物語を生成できるプレイヤーは無限に遊べる完成度(ただし、アップデート後)