Return to Monkey Island+

対応機種・周辺機器
Mac / Switch / Windows / Linux / PS5 / Xbox Series X/S / iOS / Android
ジャンル
ポイント&クリック アドベンチャー
著作・制作
©Terrible Toybox

基本情報

 スカムアドベンチャーの人気シリーズモンキーアイランド(The Secret of Monkey Island)の正式続編。
 シリーズはMonkey Island 2: LeChuck's RevengeThe Curse of Monkey IslandEscape from Monkey IslandTales of Monkey Islandと発売されており13年ぶりの新作だ。
 さらに日本語版だとにFMタウンズに出た2が最後なので、実に28年ぶりだ。
 本作は主に初代および2の開発者が中心となって制作されたようで、台詞回しや音楽の雰囲気はそのままだ。

 なぜ、このように間隔が空いてしまったのか。
 もともとはルーカスアーツ(LucasArts)というインディ・ジョーンズなどの映画監督で有名なジョージ・ルーカスの会社が開発したシリーズだったが、ルーカスフィルムがディズニー傘下となるのに伴ってルーカスアーツが解体され、モンキーアイランドの権利も宙ぶらりんな状態になったことが原因のひとつと言える。
 日本語版に関しては、多分ジョークとかがアメリカンにすぎて、日本では文化的に受け付けられなかったんじゃないだろうか。個人的には名作だと思うんだけど。
 まとにかく、人気シリーズだったのに続編が絶望的な状況で登場した、奇跡の一作であったということは分かるかと思う。

スカムアドベンチャーについて

 スカムアドベンチャーはマウスを使って画面をクリックすることでキャラクターが動き、画面内の対象物に作用する。
 ざっくり言うと、アクションゲーム的な見た目でマウス(タップ)でアドベンチャーゲームをプレイするという、ルーカスアーツが作り出したシステムにつけられた名前、だ。
 同じポイント&クリックのCyanMYSTのような作品と異なるのは、画面内にプレイヤーキャラクターが出るかどうかというところ。
 いわばFPSTPSの違いみたいなところだ。
 日本で有名なスカムアドベンチャーはルーカスアーツ/ジャレコマニアックマンションということになるだろうか。
 SCUMMは Script Creation Utility Maniac Mansion の略で、実のところアドベンチャーゲームのインタフェースを指す用語ではなく、シナリオ記述部分のシステム名称だが、作られたアドベンチャーゲームのUIが共通しているため、大抵はUIを含めたシステムを指す言葉として使われている。

 2024年現在の現行機種のほとんどに移植されているが、今回プレイしたのはApple ArcadeのReturn to Monkey Island+だ。
 何がプラスされているのかはよく分からないが、最終バージョンのレビューと思ってもらえれば、そう外れてないだろう。

グラフィック

 ちょっとキャラ大きめのドット絵という感じだった初期のシリーズ、また3Dを取り入れたEscape from Monkey Islandと違い、本作は絵本の絵がそのまま動いているぐらいの解像度となっている。
 カートゥーンアニメっぽい雰囲気は、初代が「表現したかったビジュアル」を完全に再現していると言っても良いだろう。待ってました!

 イベントシーンになると突然別のビジュアルに変わってしまうところがあった以前の作品だが、本作では絵的にシームレスに展開され、全く違和感がない。
 またプレイ中から関節毎にパーツ分けされたキャラクターアニメーションがふんだんに使われているため、そもそもどこからイベントシーンなのかという区別からして曖昧だ。

 基本的にはサイドビューに近いレイアウトで表示され、キャラクターのポーズがわかりやすく舞台のような印象を与える。
 逆に言うと、場面によっては鳥瞰図に近い上からのレイアウトもあり、キャラクターの大きさも場面によって異なっているが、解像度が高いので違和感なく同じキャラクターとして認識でき、同じ感覚で操作できる。

ユーザインタフェース

 初代モンキーアイランドをほぼ踏襲した操作で、スカムアドベンチャーがいかに当時からレベルが高かったを再認識する。
 ただし本作は「話す」などの「動詞」を選ぶ必要がなく、クリック対象の上にポインタをホバーすることによって、マウスの左右ボタンに対応した大抵は調べるか取るの(ちょっと愉快な表現の)二択が出現する。
 このシステムにより、選択した動詞が正解でないと進行しないという難しさ、そしてどこがクリックできるか分かりづらいという難しさから解放された。
 加えてTabキーを押すとクリックポイントに丸が表示されるため、見逃しもない。
 これは流石に探索の面白さを削ぐのではないかとも思うが、実際プレイ中に何度か助けられたので、進行できなくて詰むよりはずっと良いとも思う。

 基本的に画面にあるアイコンをクリックすることで道具を使うなどのアクションが可能で、全てマウスだけで操作可能だが、例えば道具(Inventory)にはキーボードのIがショートカットとして割り当てられていて、これらを活用するとより快適だ。
 選択肢に1(ヘルプではなぜかI…なのは何らかのジョークか?)から始まる数字キーが対応していて、即座に選べるのもいい。

 初代から、キャラ毎に色分けされたセリフがキャラクターのそばに表示されるシステムで、漫画のような感覚でプレイできる。
 なお初期状態で日本語字幕になっていないので、まず最初に設定しておこう。
 フルボイスの音声は日本語に対応していないが、洋画の字幕版を見ている感覚で悪くない。
 サウンドエフェクトが文字で表示される設定もあり、耳が不自由な人に対するケアも行き届いている。

ストーリーと謎解き

 主人公はお馴染み海賊ガイブラシ・スリープウッドで主な舞台もメイレー島、これまでのシリーズで登場したキャラクターも沢山登場して懐かしい気持ちになる。
 ただ、それを知らないと面白くないというものでもない。ガイブラシの子供を聞き手とすることで、うまくプレイヤーを誘導している。
 そもそもモンキーアイランドの登場人物はトンチンカンでスットンキョウな奴らばかりなので、細かいことがわかる必要はない。そのノリについていけるかどうかの方が重要だ。

 しばらく間をあけてゲームを再開すると、どこまでプレイしたか確認できるのも気が利いている。
 それに持ち物にヒントブックがあって、それを使えば「鍵がないと先に進めないみたいだ」ぐらいのふわっとしたヒントから始まって、何度か聞くと「酒場のでかい帽子を被った人物にグロッグをおごれば鍵を譲ってもらえる」ぐらいの具体的なヒントというより正解そのものまで教えてくれる(ちなみにこのヒント例は実際のゲームのものではない)

 先にTabキーでクリックポイントが表示されるのが親切すぎはしないかと指摘したが、このヒントに至っては下手な攻略サイトより親切だ。
 インターネットの攻略サイトや動画ですぐにネタバレしてしまう昨今、隠すよりゲーム本体に攻略情報を置いた方がプレイヤーの調べる手間が省けて、結果として高評価につながるという現状を素直に反映しているわけだ。
 そういうのが嫌いならばインターネット上の攻略情報同様に使わなければいいし、二周目に使って隅々まで味わい尽くすのもいいだろう。
 実際クリアに必要のないチャレンジがいくつも用意してあり、それらに関してのヒントは実績(トロフィー)のタイトルで匂わす程度だ。

 加えて基本的にゲームオーバーが存在しないのも気軽さのひとつ。
 ありえない選択肢も「面白そうだから」ぐらいのノリで選べてノンストレス。

まとめ

 絵本のキャラクターをそのまま操作するようなスタイルは冒険テーマの本作と相性が良く、アドベンチャーゲームの画面に動きがないか操作不能な動画でプレイ感が弱いという弱点も解消している。
 ただこれを実現するには尋常でない物量が必要になるので、なかなか世のメインストリームとはならないところがあった。
 しかしゲームに物量をかけるられる状況かつ3D表現が飽きられつつある現在、本作のようなスタイルのゲームの復権が期待される。

 ストーリーはカートゥーンや洋画・アメコミのような異文化に触れる面白さがあり、どこまでが現実にあった話でどこからがホラ話かわからない独特のノリも面白い。
 まさかの奇想天外な選択肢で解決する謎解きも楽しい。
 ただ、これらはノレないと「ひたすら滑ってて寒い」という面もあるので、人を選ぶのは間違いないだろう。
 実際「大傑作!」と思っていた初代モンキーアイランドも日本では全然売れず知られていないので、推して知るべし。
 アメリカでは出ているPS5/Nintendo Switch/Xbox Series X用のパッケージも日本版はないし!!
 ちなみにアメリカでの本シリーズは「ヒットだが大ヒットではない」「熱心なファンは多いが誰もが知ってるまではない」ぐらいな感じで、ファイナルファンタジーほどではないがサガ程度は知られているシリーズという認識で良いのではないかと思う。

参考

 そこで結論。

傑作にして迷作が、本来必要だったスペックを伴って帰ってきた!必然的に大傑作!!