ガンダム無双3

対応機種・周辺機器
PS3・Xbox360(1〜2人)(オンライン2〜4人)
ジャンル
戦術アクション
著作・制作
(c)バンダイナムコゲームス / コーエー / 創通・サンライズ

基本情報

 サンライズの「ガンダム」とコーエーの「無双」の夢のタッグのシリーズ3作目。
 前作ガンダム無双2からおおよそ2年ぶり。
 前々作ガンダム無双(スペシャル)はPS3からPS2への逆移植、前作ではPS2とXbox360のクロス開発が前提となっていたが、本作ではPS2の事は考えなくて良くなった。
 コーエー内で開発している所謂「内製エンジン」もかなりこなれてきているようだ。
 本稿ではPS3版を元にレビューを行った。ベスト版も出ているが内容に違いはない。

 0083、X、00、UC、シリーズの参入と、好きなキャラを助けに呼べるパートナーストライク、そして好きなキャラをオペレータにできるのが目玉だ。

戦闘システム

パートナーストライク

 専用ゲージを消費して設定したパートナーを呼び、強力な支援を受けられる。
 これは呼ぶキャラ(機体)にもよるが、本当に強力で、うまく連発できれば戦況を決定できる力がある。
 利用できない(あるいは難しい)ミッションの比率が多く、あまりに強力故にパートナーストライクありなしだけで結構なメリハリがついている。

 オペレータと同様に味方キャラが増え、必然的に会話も増えるというメリットもある。
 とにかくキャラが多いゲームでうまくキャラを消化するナイスシステムと言えるだろう。

 パートナーストライクとは別に、近くにゲージの溜まった味方機のいる状態でSP攻撃を行うと、コンビネーションSPが発動する。
 協力技が出ると言っても基本は個々の技を同時に発動するだけだが、共闘感が生まれて非常に楽しい。

さらに向上した機動力

 ブーストの使い勝手が2からさらに良くなって、攻撃を食らっている時もダッシュで抜けられるようになった。
 ゲージ消費はするけど、ゲームが停滞せず快適。
 ガードボタンがあることを、すっかり忘れてたぐらい。ビュンビュン動ける。

鍔迫り合い

 鍔迫り合いは前作に引き続きQTE方式。
 これ全力で「つまらん!」と言いたい。なんでこれが面白いと思ったのか問い詰めたい。
 失敗したら確実にパワーダウン状態になるのも工夫がない。半分ぐらい成功してたらダメージを受けるだけとかにして良くない?

巨大兵器

 モビルアーマーなど巨大兵器に関しては改善も見られたが、そもそも攻撃がヒットしてるかどうかががわかりづらい。
 巨大兵器が簡単に吹っ飛んだりしたら興ざめだが、こっちの攻撃が効いているんだかいないんだか分からないのも困る。

 戦艦は拠点に配置されたオブジェでしかない。
 前作は隊長機が防衛することで戦艦の代わりとしていたが、本作では周囲に配置された砲台が攻撃してくる。
 地面から突然生えている砲台の絵面はかなりシュールだが、それなりに戦艦の雰囲気を出している。
 ただ、もうちょっと頑張って欲しかったというのが正直な感想だ。

ダメージのバランス

 ダメージの何割かはリカバリーゲージに割り当てられ、このゲージ分は時間で回復する。
 というカプコンヴァンパイアセイバーなどでお馴染みのシステムが取り入れられている。
 このシステムの良いところは、ゲージの幅以上に体力を持っているも同然となるので、攻撃力を高めに設定しやすい事。
 また休む暇を与えず敵を攻撃する必然性があり、逆に自分は一旦引く意味が出る事だ。
 ランダム性の強いドロップアイテムでの回復に頼らなくていいのも良い。

 それから戦力ゲージが残っている限り再出撃が可能という、カプコン機動戦士ガンダム連邦VSジオンなどでお馴染みのシステムが取り入れられている。

 これらが合わさって非常に良い効果を上げている。
 体力回復不能・再出撃不能だと、即死の理不尽さが強すぎて、プレイを投げ出したくなってしまう。
 そこで攻撃の威力が抑えられることになるのだが、「サテライトキャノンの直撃食らってこんだけしか減らないの?」とか思っちゃうのがファン心理。
 体力回復可能・再出撃可能だと大ダメージを食らっても「やっぱトランザム強えー!」とか喜んでいられる。素晴らしい!!

縦方向の弱さ

 せっかく3Dのゲームなのにジャンプにあまり意味がなく、地形の上下関係もほぼない平面的な作りなのは単調さをより強めている。
 飛び道具はそこそこ役立つバランスだが、上空にいる敵を狙い撃つような機会は少なく残念。
 たまにドップやマゼラトップの編隊がやってきてジャンプ攻撃で殲滅、アッザムリーダーが仕掛けられる前にアッザムを撃沈、みたいなミッションがあればよかったのだが。

誘爆

 敵を特定の攻撃で破壊すると周囲の敵を巻き込んで爆発する誘爆は、機械が密集してることをうまく利用したシステムだ。
 特にフィールド占領直後は誘爆しやすい状態となり、連鎖誘爆が発生して爽快。
 しかも、誘爆で一気に敵が減少するので、占領したフィールドでいつまでも掃討戦を行う面倒もない。

マップ

 本作の大きな弱点のひとつがマップであることは間違いない。
 何しろ種類が少なくて、宇宙空間ステージがなく、全部足元に地面があるのもバリエーションに欠ける。
 また部屋を通路でつなぐマップしかないのも、メリハリがない。
 通路が多いので可変型MSで高速移動してもチマチマした印象で爽快感がない。
 企画当初は自動生成マップにしようとしたのに失敗した、という感じだ。

 ちょいちょい発生する「時間までに指定機体を倒せ」的なサブミッションは、妙に難度が高い。
 自分の位置と関係なく発生する上に、種類も少ないので、ゲームに変化をつけてくれると言うより、有り体に言って邪魔。

 ただ、援軍が呼べる通信基地や、遠くへ瞬時に移動できるカタパルトなど、戦術的な思考を必要とする施設ができて、優先順位の選択ができるようになったのは良い。
 どの施設も、取ると役に立ち、取られると厄介という絶妙なバランスが与えられている。

 戦力ゲージの割合により拠点の防御行動が変わるなど、戦術判断要素としてゲージに意味がある。
 前作までは戦術に組み込める要素が少なく、場当たり的に敵を倒していくことになりがちだった。
 本作は、戦術シミュレーションとアクションの融合である無双の面目躍如というところだ。

戦闘外システム

収集・成長要素

 前作ではパーツを集めて新機体を作る必要があったが、本作では設計図があれば即制作できる。
 機体が増えたので手順を省略したというところで、それ自体は良い変更だ。
 ただし、より強い設計図を手に入れて別の機体を作ると、せっかく強化してきた機体が無駄になってしまう。

 前作で余ったパーツは捨てるしかなかったが、本作で余った設計図はその場で売れる。
 また、ミッションを失敗した場合でもある程度、資金と経験値は手に入る。
 ものすごく当たり前のシステムだが、「悪い意味で」当たり前のことをしないのが無双シリーズなので、妙に感心してしまった。

 成長は基本的に金でなんとかするようになっている。
 MSの強化が金で可能なのは当然だが、人間のスキルは金ではなく別の条件を用意して欲しかった。
 金は非常に使い勝手が良いのだが、雰囲気というものがある。
 逆に、ちょっとおかしな話だが取得スキルは全キャラで共通化してほしかった。

 金を出して訓練をする事で成長させられるのはとても良い。
 訓練という意味を与える事で、金→人間の成長に理不尽さがない。
 あとで入ったキャラをメインに使いたいのにレベルが低いので、すでにクリアしたミッションで延々レベル上げ、みたいな不毛なプレイの必要がない。

共感レベル

 前作の友好度は本作では共感レベルに変わった。
 名前が変わっただけではなく、何をしても落ちない全キャラ共通の値であるなど、プレイヤーフレンドリーなシステムになった。
 ずっとバートナーやオペレータにして出撃してるのに全然上がらなくて、特定のシナリオをクリアすると無条件に上がるというキャラもいて、そこはちょっといただけない。

 その他、共感レベルの上昇によって解放される機能も、オペレータに設定できるのが最後だとか、ファンアイテムとしてどうか? という部分はある。
 ただ、共感レベルというシステム自体は、ゲームを続けるモチベーションとして有効に働いている。
 またガンダムというシリーズ自体が人類の共感をシリーズのテーマにしていると言っても良いので、ネーミングとしてもなかなかナイスだ。

ストーリー

 1マップ単位でミッションが用意されていて、いくつかのカテゴリーに分けられたものの中から選んでプレイする。
 マップや僚機・敵機、および勝利条件などがランダムの組み合わせとなっているミッションも多い。
 ローグライクにダンジョン自動生成したかったんだろうなぁ、という匂いが濃く残っている。
 新しいミッションの解放条件はわかりづらく、そしてやたら数が多い割りに中身に違いはほとんどなく、特定のミッション専用の特殊な仕掛けなどもほぼない。

ヒストリーミッション

 原作アニメのダイジェストシナリオが入っている。
 毎度思うんだけどアニメと無双ではまるっきり戦闘の状態が違うんで、なんも嬉しくない。
 ただ、原作をトレースするのは一定の需要があるらしく、外せなかったのだろう。
 個人的にはアニメを見返しなさいよ、と思う。

 シナリオ数は少なくマップも使い回しで、「一応つけときましたよ」って空気が強い。
 アニメを見ずにプレイして、原作の内容が理解できたらニュータイプを名乗っていい。

メインストーリー

 原作をなぞらず、各作品のメカ・キャラが一堂に会する夢の共演が行われるミッション。
 ミッション前後の立ち絵の会話で物語を進行させるが、やはりミッション内でやることにあまり変化はない。

 基本的には無双OROCHIと同様に「時空を超えて英雄が集められたんで戦ってね」程度のストーリーだ。
 そこで、クロスオーバーで本来出会わないキャラ同士の掛け合いが見どころとなる。
 全体としては及第点を下回ってる感じだが、個人的にはユニコーンガンダムが追加されたことによる「ミネバとハマーン」の絡みが割と多かったので満足。

通信セリフ

 本作はオペレータとパートナーのシステムもあって、今までにも増して頻繁に戦闘中に音声が入る。
 劇中のセリフを中心に特に脈絡もなく再生されるのだが、その噛み合わなさが酷い。
 酷いが前作の評価にも書いた通り「会話が噛み合わないのがガンダム」なので、妙な原作再現率の高さを受け取ってしまう。
 稀にバッチリ話が噛み合う事があり、それが数回連続したり戦況と完全にシンクロしたりすると、なんだかスロットで大当たり出したような嬉しさがある。

 基本はランダムではあるが、キャラと機体やキャラ同士の組み合わせ、特定のミッションによって特別音声も用意されており、それを聞くのも楽しい。

 クロスオーバーものの評価は、自分が気に入っているキャラ同士のいい感じの絡みがあるかどうか、で8割がた評価が定まる。
 本作はオペレータとパートナーを(ほぼ)任意に選べる上に、上記のように通信の発生率が高いので、ファンの誰にとっても「いつか面白い事が起きる」システムと言える。
 特に妄想力が高い人は、意味のないやりとりに意味を見出してしまうだろう。
 そもそも声優がべらぼうに豪華なので、自分の好きなキャラを固めてプレイするだけでも、かなり満足度が高い。
 一見雑なランダム会話システムだが、大いに評価したい。

グラフィック

 今までのガンダム無双のテクスチャは、いかにもCGっぽいテカテカしたもので、チョット安っぽかった。
 3は多分「ガンプラのボックスアート」をイメージして作ってある。
 フォトリアルでもなくアニメ的でもなく、納得の落とし所かと思う。
 ただ次回作の真・ガンダム無双でCGっぽい絵に戻ってしまっているので、全体としてのユーザ評価的は高くなかったようだ。

 メッセージ枠のキャラが、立ち絵を縮小した感じなのがちょっと面白い。
 腰から上が表示された状態で口パクもするので、顔のアップより生きてる感が出てる。
 小人っぽさはあるけど、結構このくらいのバランスは良いのでは。
 なお大きな立ち絵が出る会話シーンにはつかないのも良い。

まとめ

 前作で登場を要望した、アッガイ、カプルとソシエ・ハイムがいるので満足。
 しかし例えばシュバルツやルナマリアはちゃんと愛機に乗れよとか、シロッコはメッサーラにも乗れとか、前作に出てたキャラや機体返せとか、プレイヤーの欲には限りがない。
 とはいえ、よくこれだけ大量のキャラと機体を用意して、大きな破綻もなくまとめたものだと褒めていいだろう。

 掛け合いなどは凝ったシナリオとか用意せずに、キャラのランダム音声に振り切ったのは吉と出ている。
 また、特定のミッションだけに登場する仕掛けはほぼなく、基本要素の組み合わせでミッションが作られている。
 捨てるならどっちかという判断で、良い割り切りがなされたと思う。
 他の判断としては、ヒストリーミッション無くして、マップのバリエーションをもう少し頑張って欲しかったところ。
 せっかくのクロスオーバーなので、原作のあの場所で別の機体が戦って欲しいのだ。

 メニューの作りなどのUIは無双としてはいい部類で、ゲームを邪魔するほどは悪くない。
 とにかく本体の無双アクションと戦術部分がよくできていて、ミッションクリア時間が10分程度、いい感じにやめ時がなく続けてしまう塩梅だ。

 あと、オンラインモードはプレイしてない。あまり評判は良くない感じだ。
 ダウンロードコンテンツも用意されているが、これもあまり値段に見合うものではないようだ。

参考

 そこで結論。

原作付きクロスオーバーとして、キチンと力を割り振った傑作