ぽっぷるメイル


対応機種・周辺機器
メガドライブ CD-ROM
ジャンル
アクションロールプレイングゲーム
著作・制作
©日本ファルコム/SEGA

基本情報

 本作はPC-88用のパソコンソフトとして発売された、サイドビューのファンタジーアクションゲームをメガCDにアレンジ移植したものだ。
 今だと、メトロイドヴァニアの一種に分類されるかと思う。
 3キャラを切り替えて進めるのが特徴ではあるが…キャラ切り替えは当時でもコナミガリウスの迷宮や日本ファルコムドラスレファミリーとかで見たよという感じで、特に目新しいものではない。

 PC-88からPC-98への移植は画面解像度の変更だけのようだが、コンシューマ移植にあたっては、各機種(メガドライブ・スーパーファミコン・PCエンジン)かなり自由な変更が行われており、主要登場キャラと基本ストーリーが同じだけでシステムもかなり異なる。
 興味がある方は前にレビューしたスーパーファミコン版の記事も参照いただきたい。
 今回調べてびっくりしたが、なんとiモード版も出ていたようだ。

 なおこのレビューは、メガドライブミニ2に収録されたバージョンをプレイしての感想。

声優のキャスティング

 ゲームに声優を使うということがまだ当たり前ではなかったCD-ROM黎明期ということもあって、ほとんど何もかも変な感じだ。
 例えば、機種ごとに声優が違うとか、キャラクター商売をしようという気が感じられない行き当たりばったり感である。

声優対応表
メイル タット ガウ ブラッキィ
メガドライブ 林原めぐみ 石田彰 千葉繁 飛田展男
PCエンジン 國府田マリ子 戸田恵子 山本圭子 神谷明
ドラマCD 林原めぐみ 結城比呂 冬馬由美 置鮎龍太郎

 うわぁ、超豪華声優陣!!………じゃねーよ!あ・わ・せ・ろ!!!
 ちなみに林原めぐみのファンタジーキャラと言えばスレイヤーズのリナ=インバースだが、そのアニメ登場のよりも前に本作のメイルを担当していたことになる。

 インタフェースに関しても音声の扱いに甘さが見られる。
 まず音声はボタンでスキップできず、常に最後まで聞く必要がある。
 オプションで音声を聞かない設定はできるものの、CD-ROMのゲームで音声を全く聞かないという選択肢はあり得ず完全に周回プレイ用の設定だ。

 操作中のキャラごとにイベントの内容が微妙に変わるが、その微妙な違いを確認するためにいちいちロードしてイベントを聞くのも…ただもう面倒臭い。
 せっかくキャラが複数いるんだから、掛け合いしてくれ!そっちの方がキャラの関係性も出て絶対面白い。

 音声に遅れて文字が表示されるため、情報を受け取るタイミングが乱れて不快。
 まず文字情報の表示を開始して音声を再生してほしい。
 その割にリップシンクの開始終了はかなり正確…それできるのになんで文字表示タイミングがおかしいの!?

ビジュアルシーン

 さて本作はCD-ROMということで、イベントはTVアニメ風味のビジュアルシーンがそこそこの量入っているが、キャラクターの作画が全く安定しておらず…シーンごとに別人になっていて漫画を初めて描いた人あるあるみたいになっている。
 加えてパッケージやマニュアルのイラスト、会話ウィンドウの顔もそれぞれテイストが違う。
 本作はファム&イーリーの田中久仁彦がキャラクターデザインという話だが、メガドライブ版を開発した頃にはファルコムを辞めていたらしく、キャラの安定感のなさにつながっていると思われる。
 ちなみにアニメーション・ファルコムというと新海誠だが、本作開発時は入社どころかアルバイトもしていない筈だ。

 とはいえ、このようなアニメ文化とゲーム文化の橋渡し的な活動は当時ファルコムが抜きん出ており、今となっては何もかも手探りだからこその歪さも面白みではある。

アクション

 当時メトロイドヴァニアという言葉はなくヴァニア側であるコナミ悪魔城ドラキュラX〜月下の夜想曲〜も発売されていなかったが、サイドビューのマップ進行が一方通行でなく任意の探索アクションは任天堂メトロイドをはじめたくさんあった。
 そもそもファルコムがこの手のものをいくつも出しており、本作が登場した時も「手癖で作った」感があったのは否めない。

 そんなわけでゲーム本体に新規性はないし、そもそもファルコムのゲームはRPGとしてはともかくアクションとしてはどれもできは良くなかった。
 本作はファルコムでは良い方だが、ファルコムの外と比べると平均程度という評価だ。

 特にボスのできが良くなく、弱点とそれを狙うタイミング(割と待つ)を発見すればひたすらそれを繰り返すだけの上に無駄にボスの体力がある…つまり「強いというより面倒くさい」のだ。
 メガドライブミニ2のボス対戦中でも保存できる機能がなかったら、一度負けたら挑戦したくなくなるレベルで面白くない。

 主に過ごすマップは、慎重に進めば簡単に進めるが華麗にスピーディーに進もうと思ってもできない感じの調整でチマチマした印象。
 とはいえ、武器を振るう時に必要なゲージが、タイミングを待つうちに適度に回復するので、なんだかストレスが相殺される。
 そして全体マップの表示機能がないのでそこそこ迷う。
 そこそこ広い程度なので全体マップがなくて丁度いいぐらいな感じ。
 という感じで結果的に結構バランスがいい。

 用意されているアクションにチグハグ感があり、面白さに繋がっていない。
 例えば方向キー下の防御だが…活用できるシーンあっただろうか?
 瞬時に防御アクションを取れる人なら、軽くジャンプで回避できる感じだし、防御できそうに見えてできない攻撃も多い。
 逆にジャンプで回避できない人が防御を取れるのか、というとかなり怪しい。
 つまり、防御がほぼ無駄機能なのだ。

 ある程度以上落下するとその場に着地できずに跳ねるという仕様や、崖のギリギリで踏ん張っているときはジャンプや攻撃などのアクションができない仕様も、面白さに貢献していないように思う。
 その他はしごの上り下りなど、細かいプレイ(フィール)が良くない…が、ひどいというほどでもない。

 あと3キャラの切り替えはメニューを開いて切り替える必要があり、特に店で買い物をする際にいちいち店の外に出てキャラ切り替えする必要があるのがストレス。
 また、キャラ変えはジャンプ高さや移動速度・攻撃力のようなパラメータの違いが主なもので、さほどプレイ感が変わらないのも残念なところだ。

まとめ

 ボスが微妙だったりインタフェースが良くなかったりするが、なんだかんだで「結構面白い」ぐらいのところに着地している。
 これは主に、守銭奴のエルフを主人公としたスラップスティックな世界観の面白さによるところで、声優を起用した意味が大いにあったと言える。
 ボリューム的には多分10時間ぐらいかかったと思う、当時としては多少物足りなかったかもしれないが、今()となってはサクッと終わって嬉しいぐらいかと思う。

 実は非常に似たシステムのウエストン/セガモンスターワールドIVが同日に発売されているので比べてみるのも面白いかもしれない。
 …というかカートリッジとCD-ROMという媒体の違いがあるとは言え、似たゲームを同日に発売するんじゃないよセガ。

参考

 そこで結論。

ゲーム的には良くも悪くも特筆するところはないが、世界観は良い