ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔

対応機種・周辺機器
Wii(Wiiリモコンのみ)
ジャンル
体感アクションRPG
著作・制作
(c)アーマープロジェクト/バードスタジオ/ジニアス・ソノリティ/スクウェアエニックス

基本情報

 テレビ接続の電子玩具(テレガング)として発売され大ヒットした剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣(以下、剣神)のコントローラを振ることで画面内の敵を切るシステムを踏襲した、ある種続編的なゲーム。
 Wiiのロンチソフトとして予定されていたソフトであり、スーファミのⅢ以来11年ぶりの任天堂据え置きハードでのドラクエ、さらには頑なに声を入れなかったドラクエが初のイベントフルボイスということでも注目されていた。

 シナリオ・ゲームデザイン・ゼネラルディレクターに、堀井雄二。キャラクターデザイン鳥山明。音楽すぎやまこういち。というドラクエ本編となんら変わらぬスタッフ。
 加えて、企画にドラクエシリーズではおなじみのプログラマー山名学の率いるジニアス・ソノリティ。
 もうこれ、ドラクエ本編じゃないですか!
 Wiiリモコン操作で、ドラクエ世界で剣を振りまくれ!!

システム

 拠点である街を出て、ほぼ一本道でたまに分岐がある道のりを進んで、出現するモンスターと戦いつつ最後のボスを倒すとステージクリアで街へ戻ってくる。
 クリア時にはヒット率や連続ヒット回数、ダメージ量、クリア時間などを加味してスコアが算出され、クリアランクが決定される。
 RPG的な経験値や装備などもあるが、基本は割とアーケードゲーム的な作りのゲームだ。

キャラクタ

 主役+仲間3人は鳥山明の描き下ろし新キャラで、なかなか良い感じ。
 特にパンクファッションのギャル系僧侶という、ドラクエ? みたいなキャラのセティアはゲーム中のモデルも含めてよくできている。
 セティア作って「いける!」感触を得た上で、1年後のドラゴンクエストⅤのDS版では第三の花嫁デボラを作り、さらにⅨのサンディのコギャルへ繋がったんじゃなかろうか。

 セティア役はデカレンジャーでお馴染みの木下あゆ美なんだけど、デカイエロー(ジャスミン)同様に演技が若干微妙だ。
 牙狼-GARO-の冴島鋼牙やった小西遼生が声を当てているディーン王子も同じぐらい微妙だ。
 バウド役の松田賢二は仮面ライダー響鬼のザンキ役で知られているが、こちらはハマっている。
 てゆーかスーパーヒーロー大戦か、このキャスティングは(笑)

 脇を固めるのが、三石琴乃、 増岡弘、藤原啓治、山寺宏一などなど、「上手い順に声優連れてこい!」みたいなキャストなので、準主役たちが悪目立ちしてる面はある。

 主人公のデザインもなかなか格好良いのだが、一人称視点が基本なのでゲーム中ほぼ出てこない…もったいない。
 ドラゴンクエストⅧのように通常はビハインド視点で背中見せていても良かったかもしれない。
 特にステージの道中は背景に単調さがあり、なんというか間が持たないので。
 パッケージは背を向けた状態で描かれているので、企画当初は出す気だったようにも思える。

 戦闘につれていけるのがひとりだけというのも寂しい。
 4人パーティーだったら、かなりドラクエ感あって良かったろうに。
 ボス戦前のイベントでは全員揃うのに、戦闘が始まると2人に戻っちゃうのとか、意味不明にもほどがある。
 シナリオとムービー制作時点では出す気だったが、最終的には無理だったのだろう。
 Wiiではリアルタイムの多人数パーティー戦闘のソフトは出ているので、制作のエイティングの能力やノウハウ不足だと思われる。

 加えて4人仲間がいるのに直接操作できるのは主人公のみ。
 みんな杖振って「メラ!」とかやれると思ったでしょこのゲーム。できないんですよ、嘘でしょ。
 基本的に魔法はAIまかせ。コマンド選択で指示もできるが、剣振ってる雰囲気が台無しになる。
 十字キーの左右に[とくぎ]コマンド選択のショートカットがついていて便利ではある。
 しかし十字キーの左右で[さくせん]を切り替え大まかな指示だけだ出せる方が、画面切り替えが発生せず雰囲気を壊さないので良かったろう。

 さらに仲間の装備は何も操作できず、レベルアップに応じて勝手に切り替わる方式で、全く楽しくない。
 主人公は買い物や宝箱からの入手で装備を整えられるほか、剣のみ既存の装備の強化が可能で、強化素材入手のため繰り返しステージに挑む理由となっている。
 強化(錬金)のシステムが変に凝っていると面倒臭いという気持ちが勝ってしまうし、剣だけぐらいが味付け的にはちょうどいいかと思う。
 ただし素材はステージで高い得点を取ると良いものが得られるというシステムなため、「上手い人ほどゲームが簡単になり、下手な人ほどいつまでも難しい」という状況ができてしまうのはヒドい。
 上手い人は一発でクリアしちゃうので探索不足で素材が得にくいが、下手は繰り返しプレイして探索するのでたくさん素材が手に入る、という調整にすべきだったろう。

 ドラクエに声がついてどうだったかというと、イベントシーンに関しては演出が弱く、映像を楽しむより待たされてる感じが強い。
 戦闘シーンで呪文や掛け声が出るのは臨場感があるし、HPやMPが減った状態だとかを知らせてくれるのも便利。
 ただ、戦闘終了時の簡単な感想セリフが、アニメーションから1秒遅れみたいなありえないぐらいのズレで再生され、萎えることこの上ない。

剣のアクション

 剣神はテレビの上に赤外線照射および受光機を持った本体を置いて、剣の方は電源いらずの赤外線反射板だ。
 この方式の感度が良かったかというと微妙なところはあったのだが、画面の切りたい場所近辺を、切りたい角度に近い角度で、そこそこ望んだタイミングで切れる、という程度の精度はあった。
 でWiiリモコンであるが、まず振るだけでは画面の切りたい場所を切ることはできない、横に振ったつもりなのに縦に切れてしまうことがあるぐらいの雑な精度、Wiiリモコンを水平に保たないとまともに認識されないので正確に角度を出そうとすると剣を振ってる感覚も弱くなり、ポインターロックの必要があるのでタイミングが遅れがち。
 という、ひとつもいいところがないものになっている。

 ここで突然出てきたポインターロックは、Wiiリモコンで画面上のポインタを動かして、Aボタンを押した箇所に画面を切る位置を固定するシステム。
 つまり剣神ではなんとかできていた「一振りで画面の好きなところを切る」という操作を諦めているのだ。
 Wiiリモコン一本で操作する方式なので、ボインタ移動と剣を振るのが同時にできず、ものすごくテンポが悪いし誤作動しがち。
 8方向&ニュートラル+ショットでガンシューの雰囲気を十分出せていたコナミスナッチャーのような思い切った割り切りが必要だったのに、剣神の仕様を再現するのにこだわり過ぎて、逆に別物になってしまった上につまんなくなった感がある。

 またゲージが溜まった時に出せる必殺剣は、まずコマンド選択で出す必殺技を選び、画面の指示に従ってWiiリモコンを操作すると発動する仕組み。
 …コマンド選択した時点で必殺剣出していいじゃん。
 しかも操作の指示タイミングが画面の映像や音で感じるタイミングと全く合ってなくて、「いまだ!」ブンっ!「あっ…まっ今かよ!!」みたいな感じで実にわちゃわちゃしてしまう。
 通常の剣撃と同様に判定が荒いので、失敗したのはそっちがちゃんと判定しないせいで俺は悪くない!! という感じになり、げんなり。

 剣神の場合は音ゲーみたいにポインタが画面上を流れていく時に、剣を振るタイミングと縦横の組み合わせで発動する技が変わるという仕組みだった。
 本作も、適当に振っても基本の必殺剣が出せるが手順を踏むと別の技が出るみたいな、剣を振る意味があるシステムにして欲しかった。

 たぶん、このゲームでは「どくばり」で刺す時以外「かいしんのいちげき」がない。
 おそらく突きによる弱点攻撃があるため、ランダムで発生するクリティカルをなくしたんだと思う。
 残念ながらこの仕様は、ただでさえランダム性が低い戦闘に、さらに平坦な印象を与えているように思う。
 剣神だと縦横斜めを連続して決めると特殊攻撃(ギガソード)が発生する仕掛けがあったが、本作ではその辺もない。

 あと突きがものすごく出づらいので、クリアしても一回も弱点攻撃やらなかったという人の方が多いぐらいかもしれない。
 思えばゼルダの伝説 トワイライトプリンセスの盾アタックもかなり出しづらかった。

盾のアクション

 戦闘中にBボタンでポインタの代わりに盾が表示され、その部分に来た攻撃を防ぐことができる。
 これはなかなか分かりやすくはあるし、ゲームのルールとしても攻撃される箇所を追っかけていくのは面白い。

 しかし、このゲームの場合「振る」という操作によるなりきり遊びが面白いところなのだ。
 Bボタンを押してポインタを操作していることが防御っぽいかというと、人差し指をクイッと曲げるだけでは、とてもではないが体を守れる気がしない。
 体を動かしてシステムをイメージしたとは思えない、机上の理屈だけのシステムという雰囲気だ。
 それにくらべて剣神は画面に対し剣の切っ先を向けると攻撃、腹を向ける(剣を横向きにする)と防御という、感覚的に納得度が高いポーズだった。

 数値ではなく実際に表示される盾の大きさで防御範囲が変わるのは分かりやすく面白い。
 中央で受けないと耐久度が減る仕様は、より正確な操作を行うモチベーションとなって面白くもあるが、正確な操作というのはなりきり遊びの面白さを削ぐ面もあるし、管理しなければいけない数値が増えると気軽さが減る面もあり、若干失敗してる気がする。

スカスカした背景

 開発のエイティングは、このソフトが出るまで仮面ライダー クライマックスヒーローズNARUTO -ナルト- 激闘忍者大戦!を中心に3Dは対戦格闘ばっかり出してたように思う。
 そのせいなのか、どうにも背景の作りがセットっぽく、裏に回り込めないし調べられるオブジェクトも少ない。
 既にみんなとっくにスーパーマリオ64で自在に移動できるフィールドは体験しているし、ドラクエシリーズだって3DマップのⅧを通っている。
 同じWiiでも数年後にはラストストーリーで広大で複雑な街が作られている。
 なのに本作は道の上しか歩けないレイルシューター(ガンシュー)みたいなシステム使ってるのはがっかり。
 なんというかサターンの時代に感じた制限に近い雰囲気だ。そこから10年は経ってるのに…

 また町が1つな上に変化に乏しく、シナリオが進んでも町人の位置とセリフが変わるだけ。
 そして店や教会などの施設が町のあちこちに散らばっているのが面倒くさいしスカスカ感を高めている。
 正直、門から自宅までの間に主要施設を全部おいて欲しかった。それだけ置けるスペースに、ただ道があるだけなんだから辟易する。
 というか普通の民家が自宅だけなのもビックリだ。
 しかも、建物が少なくて殺風景なのに区画を移動するたびにローディングが発生するというガッカリな作り。
 そんな町にミニマップが出るのが悲しい。企画書の段階では建物たくさんあって町も広かったんで、必要だったんでしょうね…

 剣を振るのが魅力のゲームなんだから、町中に切れるオブジェクトを配置してバンバン切れるようにしておくべきなのに「町中では剣が振れない」のだ。
 ゼルダの伝説 時のオカリナのような、立て札だって切れますよ、みたいなゲームを期待するでしょ。ドラゴンクエストソードだよ。
 加えて驚くべきことに町の外でも移動シーンでは剣が振れず、怪しいところはポイント&クリックなのだ…「切らせて! くれ!! マジで!!!」
 たまに破壊できる障害物が出るが、一度ポイント&クリックして「壊せそうだ」というメッセージを見てから剣を振る必要がある…壊せそうなのは見りゃわかるから、いきなり振って壊れるか試させてよ!
 訓練場や遊技場はあるものの、思いついた時に即剣を振る練習させてほしい。

作りかけのような移動操作

 町中だと十字キー左右で向きを変えてその方向に進める(道幅の制限の中でではある)が、戦闘ステージでは視線を左右一定角度まで動かせるだけで、見えない線の上をたどっていくことしかできない。
 加えて分岐があるところでは選択肢が出て行き先を選ぶシステムで「転轍機かよ!」という趣だ。
 とはいえデジタルの十字キーで左右移動を操作するのは使いづらいので、いっそ町中もレール方式にしたほうが良かった。

 理想を言えば任天堂メトロイドプライム3 コラプションみたいにポインタ位置で視線を動かせてほしかったし、道以外のところも歩けるようにして欲しかった。

 また前進は十字キー上かBボタンで、両方を押すとダッシュというのも操作しづらい。手が小さい人など片手ではダッシュが困難な人も多そう。
 ヌンチャクを使わずWiiリモコンのみにしたのは、操作を複雑化させず簡単にプレイできるようにしたい、というのが前提にあったのだと思うが、むしろ操作しづらくなって本末転倒だ。
 画面中央あたりの領域をポイントしてB、とかをダッシュ操作にできなかったものか。
 ヌンチャクで移動する手もあるとは思うが、Wiiリモコンだけの操作でももうちょっと工夫できたと思う。

 加えて画面をポイントして調べられる箇所が、画像も位置もマップに固定でかつ調べるとお金やアイテムが出るので毎回同じ場所を調べることになる。
 なんでランダムで位置が変わる程度のことができなかったのか。
 さらには敵の出現場所と出現パターンから行動までほぼ一定で、いくらなんでも変化がなさすぎ作業感MAX!!。

 そして戦闘モードでは前に進めなくなる。
 敵との距離が離れてる時は十字キー上で距離を詰めさせてくださいよ。
 主人公は戦士なので敵が寄ってきてくれるまでじっと待つことになる。
 そして敵は飛び道具バンバン使ってくる…つらい。
 ここで青の着弾マークが出る攻撃は切って跳ね返せるので、全く反撃できないわけではないが、前述のように画面の特定位置を切る手順が面倒臭く、非常にイライラする。
 切るタイミングだけで跳ね返せるようにして欲しかった。

 移動時の背景の上で戦闘しないで、戦闘シーンはドラクエらしく固定背景に切り替わる方式が良かったんじゃないかなぁ。
 変なところでシームレスにこだわるから、出現場所固定だとか前に進めないだとか、いびつな仕上がりになっちゃってる。

 剣神と比べるとグラフィックも音も豪華になっている。
 しかし同じように移動が直線で「進む・戦闘」の繰り返しであるセガスペースチャンネル5は、道中は密度がありアングルにも工夫がある背景ムービーに、進行状況によって増減してダンスも変化するキャラと変化する音楽が乗っている。退屈感などカケラもない。
 1999年に出たドリームキャストのゲームに、正直本作は一個も勝ってるところがないのだ。
 スペースチャンネル5が神ゲーだとしても、8年前のゲームに一個ぐらいなんか勝っても良かったんでは?
 言い過ぎかなと思ってしばらく冷静に考えたが、本当に一個も勝ってるところがないな…。

メニュー操作

 この作品、ポイント&クリックのユーザインタフェースとしては、かなり優れている。
 まず[はい]にAボタン、[いいえ][もどる]にBボタンが基本的に設定されていて、画面上の選択枠のところまでポインタを持っていかなくても、ボタン一発で選択できる。
 また多くの場面で画面外をポイントしてAでもキャンセルが可能だ。これはガンシューのリロードとしてメジャーな操作で、ポインタで画面を狙うタイプとしては当然対応しておきたい操作である。
 そして、ボタン操作できる時には選択枠の部分にA・Bの表示を出してボタンで選べることを明示している。

 また前述の十字キーの他に1・2ボタンにもショートカットを設定するなど、ポイント&クリックせずとも極力手元のボタンで操作できるように作ってある。
 世の中のソフトはこういう「当然やっておきたい」をやってないのが多く、この当然の一手間をやっているのは偉い。
 メニューのページめくりに-と+ボタンを割り当ててあったら、メニューの基本操作とボタン割り当てに関しては、ほぼ完璧と言っていいぐらいの完成度だ。

 人物やひっくり返せる石など、割と距離が離れていてもポイントしてアクションが可能など、メニュー以外でもポイント&クリックに関しては操作感が良くていい。
 ただ、ポインタの形や選択枠の画像が場面ごとにちぐはぐで、いまひとつ統一されていないのは良くない。 

全体的に分かりづらいルール

 空振りなしで当て続けるとヒット数が加算されるんだが、ステージ最後のスコア算出のボーナス以外に何の意味があるのか分からない。
 敵が前後に移動した時に、どこから剣が届く距離になっているのか分からない。
 メタルスライムは突然他の敵と戦ってる時に出てくるので、倒すと大量の経験値が入るということを前もって知ってないと「なんか邪魔なのが出てるなー」みたいな印象しかない。

 必殺剣はゲージが貯まればどの技も出せるし多分ぜんぶが全体攻撃なんで、どう使い分けしていいんだか最後までわからなかった。
 ヘルプに「炎の剣は炎に弱い敵に強い」みたいなことが書いてあって「トートロジー!!」
 パートナーと一緒になって出す合体技はMPも消費するんだけど、何のメリットがあるかよくわからない。

 などなど、全体的に説明が下手くそすぎる。

その他

 セーブ箇所の教会が町の出口から遠かったり、そもそも教会から出るまで一手間かかったり。
 門番がいらん演出いれて時間かけて門を開いた上に、大して意味のないことを話しかけて来たり。
 調べてアイテムが出たあと、マップを歩けるまでに挿入される2秒ぐらいの意味のない間などなど。
 あらゆるところで余計な時間が発生する。
 急須ひとつぶんの茶っ葉でヤカンのお湯全部使ったみたいな出がらし感。

 あちこち調べたり敵を倒したりするとちょいちょい「小さなメダル」が出てくる、要するに無限に出てくるのだ。
 こんなの単なる種類が違うお金だ。
 ゲーム中に存在する数に上限があるか、出現する確率が限りなく低いから必死こいて集めるのに、1ステージ2個ぐらいはほぼ確実に手に入る。
 困ったことに、このゲームは作業感を高める仕掛けを導入することだけは得意だと言わざるを得ない。

 剣神度という数値があってステージクリア時のスコアに応じて増え、それによって主人公の能力が上がるんだが、なんでまたここでも下手プレイヤーに厳しくするんだ? いじめか?

まとめ

 Wiiの仕様を知って「おっ! これ剣神の移植できるじゃん!」と意気揚々と開発を始めたものの、全く思うように動きを検知できず、付け焼き刃的にシステムを追加して、なんとか「遊べないこともない」ぐらいまで持っていった感じ。
 キャラのモデルは作れたものの、対戦格闘のノリでポリゴン使いすぎて同時に複数キャラを連れて行けなくなるし常に一人称視点になる。
 3Dのマップ作りのノウハウもなくマップが遅れに遅れ。移動を制限することで何とか成り立たせた。
 せっかく作った中ボスもステージが出来上がらないので、結局隠しボスとしてクリア後に押し込んだ。
 そしてボリューム不足を埋めようとあの手この手で引き延ばそうとしてみるが、15時間ぐらいでクリアできちゃう状態で発売することに。
 そんな荒波に翻弄される小舟のようなプロジェクトの様子が想像できる。
 実際に発売は半年以上延期されているし、当たらずとも遠からずではないだろうか。

 ドラクエ本編クリエータのビッグネームがが並んでいるものの、すぎやまこういち曲は既存の数曲だったりするし、鳥山明は主役と仲間のキャラ原案のみのようで、わずかな新規の敵も鳥山明がデザインしているか怪しい、シナリオのスカスカっぷりから堀井雄二も「名前貸し」に近い状態で作られたのではないかという気がする。
 山名学だけはがっつり関わってて、そこがメニューのできの良さに出てる気がする。

 15時間で終わるからダメとは言わないが、とにかく何もかもスカスカで、実質3時間ぐらいの内容しかないのを無理やり5倍したような印象。これはさすがにダメと言わざるを得ない。
 ちなみに15時間は、そこそこ剣を強化したりステージSランク取ろうとしたり、満遍なくキャラを育てたりした上でのクリア時間なのだから、最短クリアは推して知るべし。

 本作はWiiリモコンを振るという、正確さよりなりきりの雰囲気(ロールプレイ)を重視した操作を中心に置いているのに、スコアという正確性を重視する指標を導入しているところに大きな矛盾がある。
 そもそもWiiリモコンで正確な入力判定が不可能だとわかった時点で、プレイ技術の測定値であるスコアは撤廃するべきだった。
 本作は自分が下手だから失敗したというより、ソフトの作りが雑で誤判定されてしまったという憤りの方が強い。
 実際はWiiリモコンのハードウェア的な問題が大きいのだが、そこはもう変更不可なのだからゲームルールの変更というソフト側で対応すべきだったのだ。
 代わりの面白さとして探索やランダム性の増量による調整は不可欠だったと思うが、本作では真逆に舵を切ってしまった。
 全体的に「ステージクリア型のスコアあり、プレイが上手くなって先に進めるアーケードアクション的なシステム」と「時間をかけて経験値・装備でキャラを強くして先に進むRPG的なシステム」が衝突して、着地点を見出せぬままリリースに至っている。

 ただし、リモコン剣を振るってドラクエ世界で戦うのは理屈抜きに楽しいので、これに懲りずに続編を作ったり、Wiiリモコンプラス用でリメイクしたりしてほしかった。
 基本的にはWiiの性能を高く見積もりすぎたのが失敗の原因だと思うので、ゲーム機の性能の向上によって問題が解消される可能性が高いのだ。
 しつこく作り続けていれば、任天堂より先にリングフィット アドベンチャーのようなストーリー+エクササイズのゲームに到達していたかもしれないのに。

参考

 そこで結論。

コンセプトは良かったが、Wiiリモコンがそれを許してくれず凡作止まり