|
1995年、ドラクエとFFで日本のRPG市場が固まったところに、ナムコがあえて狙って行ったスーパーファミコン版「テイルズ オブ ファンタジア」。
発売本数としてはそれほどふるわなかったものの、プレイ評価は非常に高く、潜在的需要がある事が確認された。
そこで、第2弾として1997年プレイステーションで発売された「テイルズ オブ デスティニー」、そしてそのPS2版リメイクが本作。
ストーリーやシステムの大まかなところは同じだが、背景がポリゴン化された事や、キャラの等身が上がったことを筆頭に、各部ほとんど作り直しとなっており、最終的にはリメイクと言っていいのか怪しい位のPS版とPS2版は別作品となっている。
原作との違いをいちいち取り上げると、それで終わってしまうので、単体の作品としてレビューする。だいたい原作やった事無いし。
タイトルを「テイルズ オブ ファンタジア2」ではなく「テイルズ オブ デスティニー」とした事が、本シリーズの長寿化を可能とした大きな要因といえる。
ナンバリングタイトルがついていると、前作を踏襲しないといけない雰囲気が漂う、新規ユーザが入りにくい雰囲気が漂う、ということで衰退を招きやすい。
「テイルズ オブ 〜」と最後の単語だけ変える事で、シリーズの安定感は印象づけつつも、上記の二つのデメリットから自由でいられる。
特に2作目でキャラクタデザイナを変更した事により、毎回変わるということをビジュアルで示すことができたのは大きかった。
大まかな路線的にはグローディア/ライトスタッフ「エメラルドドラゴン」や、ゲームアーツ「ルナ -シルバースターストーリー-」なんかと同様のアニメ風味のRPGという感じ。
グラフィックはゲームアーツ「グランディア」のようなトップビューのポリゴンで、フィールド以外では回転できない。
「できない」というと悪い感じだが、3Dの立体感と2Dの見やすさを両立させている、とも言える。特に町では迷いがちなので、この判断は悪くない。
「テイルズ オブ シンフォニア」で既に3Dには挑戦しているので、かなり熟れた感じがある。
キャラがシンフォニアではボリゴンだったのに、本作ではドット絵となっているのは退化のようにも感じる。
アニメ的なキャラをポリゴン化するのは、けっこう危険な事なので、悪くない判断とは思うが、背景との整合性に無理が出ているのも否めない。
時々挿入されるムービーは、ProductionI.G.を中心としたアニメの老舗に発注されており、無理にCGを使う事なく、普通のアニメーションとして作られており安定感がある。
そもそも、キャラデザインが「いのまたむつみ」というアニメの大御所てあるので、本編との違和感も全然ない。
キャラデザインの中でも、特にルーティ・カレットのデザインは、ヒロインなのに黒ベースという印象的なもので、テイルズシリーズのイコンともなっている傑作ビジュアルだ。
雪国出身でヘソ出しのデザインはどーなのとか、それだけの縫製技術があるのに中世的世界なのはどうしてなのとか、リアリティのレベルからはツッコミどころは多い。
背景・キャラ・ムービーと、グラフィックは全体に相当レベルが高い。
本シリーズの白眉は、対戦格闘ゲームのようなアクションによる戦闘シーンにある。
これはコマンド式の戦闘に比べ、動作がダイナミックで、プレイヤーのアクションが画像に直接反映されることも分かりやすく、単純に面白い。
単にリアルタイムで処理するというだけでなく、そのままアクションゲームとして成立する位、ゲームとしてのレベルが高い。
そうなるとアクション下手だと太刀打ちできないのではないかという心配も出るが、そこはRPG、レベルアップや装備で、プレイヤーが何もしなくても、他のキャラが頑張って勝てるようになっている。
メニューの作りなども非常に良くできており、操作性にほとんど問題ないのだが、なぜかフィールド上の「しらべる」操作の当たり判定が荒く、上手く選択できない事が多くてストレスとなっている。
他にも、ガードボタンは他のボタンと併用する事が多いんだから、デフォルトでL2あたりに設定しておくべきじゃないのかとか、ズームアウト時にパラメータでキャラが隠れて見にくいとか、細かいところの練り込みが甘い感じもある。
行商とかサブイベントとか、名所探しとか石蹴りだとか、中だるみをなくす工夫が多くなされており、非常に居心地が良い。
このあたりの「やらなくてもいいんだけど、やってもいいよ」的なものが十分用意されていると、本編が例えどうしようもなかったとしても、それなりに間が持つのでプレイを続ける吸引力となる。
そのへんの充実ぶりはテイルズシリーズの美点だ。カジノでごまかしてしまう傾向の強いドラクエと比べてもレベルが高い。
エモーショナル・カードチャット(他の作品ではスキットとも呼ばれる)というシステムは、パーティキャラのおしゃべりを覗く、という感じの機能で、SELECTボタンを押すだけで表示できる寸劇。
カードに描かれたキャラという表示のされかたは、カードを動かす事でアニメーションデータを少なくするとか背景で感情を表せるとか、メリットは多いが、「なんでカードやねん」という疑問を払拭できる程の説得力はないので、いわゆる「立ち絵」で展開した方が良かった気はする。
このエモーショナル・カードチャットは、現在の目的を確認できるという実用的な部分以外で、キャラクタを立たせるという役割で、強い力を持っている良くできたシステムだ。
もう一つ、キャラを出せそうなシステムである「あらすじ」は凄く淡白で、正直まともに読むのは辛いレベルに楽しくない。
主人公たち5人はソーディアンという意思のある剣をずっと持っているため、武器については装備の煩わしさから開放されている。
しかし、ソーディアンを持たないキャラも4人(+1)いて、結局そちらは普通の武器の装備が必要な上、戦闘に出撃できるのは4人までなので、ソーディアンを持たないキャラがプレイヤーキャラとして必要だったかというと、NPCとして一時的にパーティメンバーになるならともかく、恒常的についてくる意味は感じられなかった。
そもそも、ソーディアンたちも喋るので実質(5*2+5 = 15)キャラ数過剰である。正直に言って、2桁を越えるキャラは覚えきれない。
フードサックという、戦闘時と戦闘終了時に食べ物で回復してくれるシステムがあって、これが難易度を思いっきり下げているにも関わらず、あんまりプレイヤーにそうとは感じさせない。
ごりごりに力押しで進ませたいが、手加減されているとも思わせたくない、そんな作り手の要求にバッチリ応える良システムと言える。
ただ、明らかに食材であるアイテムから合成できなくて、フードという摩訶不思議な材料から合成されるのは、納得という点では良くない。
また、調理担当が必要なわけでもないので、折角料理が得意というキャラがいるのに、個性付けにも貢献できていない。
リライズという装備を強化して行くシステムがあるため、ほとんど店で新しいアイテムをかう必要がない。
逆に店で買うことを前提に装備を強化して行くとリライズの必要がなく、…微妙。
沢山のシステムが組み込まれているものの、このゲームにとって外せないものか、と言われるとほとんどが外しても問題ないという感じで、有機的な結合を感じなかった。
ロストテクノロジーであるとか、衛星軌道レーザー(的なもの)であるとか、ファンタジーというよりSFな感じの設定がなされているが、ほとんど科学的説明はなく、薄っぺらい世界観である。
縫製技術であるとか、住民の思想であるとか、色々なものが世界の設定から積み上げて作られているわけではなく、シナリオやシステムの都合で設定されており、深みが無い。
とは言え、カッコ良さげなガジェットを、どんどんぶち込んでいる本作がとても魅力的だったりもするのは確か。
キャラの台詞は設定との一貫性がなく、無駄に難しい言い回しをしたあげく誤用しているという、トホホ感溢れるもので、もーちょっと文学的才能がある人をライターに使って欲しい。
声優さんも台本渡された時点で気付いた人もいたと思うのだけど、指摘できないもんかなぁ…。
全体の構成としては、まずぐるりと世界を一周させた後、最終ボスへの対抗行動へという流れで、これは分かりやすくて良い。
だが、海・空を移動する自前の手段を手に入れるタイミングが遅く、特に世界一周後の都市も無いところをひたすら徒歩なので、展開がダラダラしている。
また、各キャラクタの行動原理も、納得させきれてないように思う。
そこで結論。
「厨二の頭の中を、キッチリゲーム化した傑作」
2012-07-30