ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス

対応機種・周辺機器
GameCube | Wii
ジャンル
アクションアドベンチャー
著作・制作
(c)Nintendo 2006

発売までの経緯

 ゲームキューブで発売された、前作「ゼルダの伝説 風のタクト」で採用された、アニメっぽい表現のトゥーンシェードがアメリカでは不評だったらしく、というかリアルなグラフィックが期待され過ぎてて他の選択肢が見えなくなっていたらしい…勿体ないなぁアメリカ人、もっといろんな価値観を持とうぜ。
 という事で、そういった要望に応えるべく作られたのが本作「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」である。

 基本は「ゼルダの伝説 時のオカリナ」から続く3Dゼルダのフォーマットに乗った作品。
 風のタクトのシステムを使い回して新作を作れば、「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」みたいに比較的素早いリリースができたと思うのだが、リアル系にしたためグラフィックをまるっと新規描き直しに。さらにはプラットフォームのメインがゲームキューブからWiiに変更となり、リリースは遅れに遅れた。
 最終的には、Wiiをメインターゲットとし、ゲームキューブ版をオンライン販売専用商品とする事になった。

基本設定

 闇の世界に侵食されたハイラル王国を、闇の手から開放するのが目的。
 闇の世界からやってきたミドナという女の子(2頭身の魔物)が、プレイヤーの導き手となる。

グラフィック

 グラフィックはゲームキューブとしては最上級のものといえる。Wii版でも基本的には同じ映像なので、逆にWiiならもう少し頑張れたんじゃないの? という感じのグラフィックでもある。
 とはいえ、ゲームキューブ級で、ゲームに必要な映像のクオリティを軽く凌駕しているので、然したる問題ではない。

 どちらかと言うと、問題点は全体に「格好良すぎる事」にある。
 リンクをはじめ、ちょっとした村の住人に至るまで、美形すぎて味がないのだ。
 時のオカリナの大妖精みたいな味方のうちでも心強いキャラが、お前ボスだろ!って感じの悪人面していたりするような、「まさか」のキャラデザインが全然ない。
 美形はゼルダ姫、格好良いのはガノンだけで良いです。リンクはちょっとダサイ位がいいです。

 グラフィックに限らず、セリフも格好付けて難しい言葉を使っていたりするが、どーにも薄っぺらい。
 ゼルダの伝説の格好良さは、そういう普通の格好良さではないだろうに…。
 美しかったり、格好良かったりするのを「ダメ」と言うのも変な感じだが、このゲームで一番ダメなところと言える。これじゃゼルダではなく、フツーの良くできたゲーム、だ。

 全体的に画面が暗く、ゲームの最初に必ず表示される明るさ調整画面で説明されている通りに揃えないと、下手すると何も見えなくなる。
 …どーもハリウッド的画面作りをやろうとしてるっぽい。
 ムービーも妙にライティングが凝ってたりしてるんだけど、ゲームをやりたい人種からすると、そこに力を入れられてもねぇ…というところ。

 ちなみに私のフェイバリットグラフィックは猫や犬を抱き上げた時のリンク。後ろからみると肩ごしに動物の顔が覗くのが、ひじょーに可愛い。
 見てるだけで、動物の体温を感じる。

ミドナ

 サポートキャラとして、ミドナというチビの魔物がほぼ常にプレイヤーに付いてくる。
 困ったら話しかけてヒントを聞くことができるが、この台詞が進行状況と場所で一意に決まっているようで、何度も繰り返し聞いても同じ事しか言わない。
 話しかけるアクションとか、キャラの個性の出しどころだと思うのだが、この辺はかなり淡白。
 それに限らず、ちょいちょいゲームを先に進めるように催促してくるので、プレイヤーがゲームしているのか、ミドナにプレイヤーが操作されているのか分からなくなってくる。
 もーひとつ、リンク自身が頑張る理由が少ないのも、やらされている感を強くする。

 こっち来い、ってのもやらされている感があるが、もっといやなのが、そっち行くな、の指示。
 ミドナ自身が、私の大嫌いな透明の壁(グラフィック的には進めそうなのに進もうとすると行けない)そのものになっており、いやーな感じだ。
 マップ上に、本来の意味での透明の壁がほとんど存在しないのが救い。

 キャラクタデザインは単純に可愛いのではなく、適当に恐ろしげな雰囲気を加味してあるし、2頭身なのに無駄にボディラインがエロいという、ずれた感じが良くできている。
 あとWiiだとリモコンから声が出るのが、相棒っぽくて良し!

狼への変身

 神獣(狼)に変身する事で、人間では感知できない匂いなどを知覚できるようになり、噛み付きや掘るなどのアクションが可能になる。また、ミドナの能力も使えるようになる。
 これは、ムジュラの仮面で4つの種族への変身、および「メトロイドプライム」の4つのバイザーシステムを合成したシステムと言える。
 どちらも4種類はちょっと多すぎたとの反省からか、本作ではオオカミへの変身のみで視界変更はセンスのみとなっている。
 ただ、もう一つ簡略化して、狼への変身とセンス使用を一体化しても良かったかと思う。

 狼時は背中にミドナが乗る。ざっくり言って「犬に乗る子供」のビジュアルである。これがなかなか可愛い。
 ゲームシステム的には、草などの障害物に隠れて位置が分からなくなってしまわないようにするマーカーの役割となっている。
 髪の色がオレンジであることも含め、なかなか見やすい工夫と言えるし、造形的にも面白い形になっている。
 また、人型でないものには感情移入し辛いという問題点も解消できている。ただ、プレイヤーは狼なのだから妙な違和感ともなっている。狼に変身している時点で違和感がないのもおかしいので、ちょうど良い気もする。

 ミドナの能力は、基本的に狼時しか使えないので、ワープするたびに狼に戻ってしまう。
 人間の方がアイテムが使えるので当然できる事が多い。プレイヤーとしては基本は人間でいたい。
 となると、ワープ→変身の操作がセットになる。だったら、人間状態でもワープできるようにしてくれよー。面倒くさい。

 狼状態でできる事が人間に比べて少なく、どーにも寂しさ漂う。人のできる事を減らし、狼ができる事を増やす事で、バランスを取って欲しかった。
 そもそも狼状態の操作感も今ひとつ熟れていない印象。もっとやれそうなアイディアなのに残念。

ゲームバランス

 ミドナのヒントの他にも、マップに常に次の目的地が表示される事や、アイテムが登場してからボスで活用するまでの間隔が短いなど、ちょっとヒントが親切すぎて、プレイしているというより、指示された作業をこなしているような雰囲気が全体にある。
 特に光の雫あつめの作業感は「ゼルダシリーズを名乗っていいのかこれ?」とまで思ったほど。
 この辺り、「誰でもクリアできるゲーム」や「コンピュータに勝たされる」に書いたような問題がが出ている。

 結構な重要アイテムが、店に並んでいて金で買える。その割に金はあっという間にたまる。
 正直、アイテムを手に入れても達成感があまりない。
 ダンジョンの奥にボスに守られて仰々しく鎮座している宝箱から手に入れるとか、依頼をクリアしたお礼に貰うから嬉しいのであって、その辺にポーンと置かれてもなぁ…。
 今回、ハートの欠片が以前の4分割から5分割となって、集めるのが大変になった…というより「やたら沢山でてありがたみがない」状態になっている。
 他にも、ゴーストの魂という収集アイテムも過剰に出てきて、見つけて嬉しいというより「また取らなきゃいけなくて面倒」というレベル。

 どうも全体に「えっ、もう貰って良いの?」って感じのタイミングでアイテムが手に入ってしまう事が多い。
 特にエポナ(馬)にいきなり乗れるのは、どーだろう。自分の足で走って走って、もう限界ってころに手に入れてその疾走感に酔うのが良いのではなかろうか。

 謎も、後一段階は工程を踏まなきゃダメだろ、と思ってたらいきなり抜けられることも多くて、逆にそれで詰まった事も。
「ちょっと幅広いから足場が必要だな…スイッチは…(20分経過)、っていきなりジャンプして届くやーん」みたいな感じ。

 上記のようにヒントが過剰な位出るのだが、ちょっとアイテムの種類が多すぎて、使い分けが面倒な部分がある。
 もう少し減らす事はできなかったろうか…例えば爆弾虫とか特に必要ないし、弓を手に入れたらパチンコ消してもいいのでは? あと、ダンジョンの途中にワープできる「おばちゃん」は必要だったろうか? ダンジョンの作りが良いので、ショートカットで移動しても十分速いのに。
 それと、鷹とかスピナーとかイマイチ活用できてない。アイテムの数を減らして応用パターンを増やして欲しかったところだ。
 ちなみにアイテムではないが、イリアは必要だったのか? あのポジション、ゼルダ姫がやった方が良くないか?

とは言えゼルダ

 色々と苦言を書いたが、なんだかんだ言ってもゼルダの伝説シリーズにハズレなし。基本的なゲーム力が段違いに高い。

 3Dだと分かりにくくなりがちなマップ構造なども、綺麗な絵と両立させる絶妙なテクスチャ。
 アイテムを手に入れる前と後で、2つの顔を見せる考え抜かれたマップ。
 ゲームシーンからシームレスにつながるイベントシーン。
 引っ掛かりの少ない、高い操作性。簡単な操作で豊富なアクション。
 豊富で(基本的に)通常のゲームシーンと同じマップで展開されるミニゲーム。
 取り逃しがなく、後から取りにいけるアイテム。
 リンクの顔の向きでさりげなく示されるヒント。
 など等々。

 難易度は、個人的には流石にゼルダシリーズは勿論、「TOMB RAIDERS」シリーズを散々クリアしたので、簡単になっているってこともあるだろうが、それでもゼルダシリーズの中では比較的楽な方なのではなかろうか。
 ミニゲームが豊富に用意されているので、ストーリー進行中に詰まっても遊べるし、クリア後も長く遊べる逸品となっている。
 ただ、サブイベント、という感じのものが少なく、世界の幅はちょっと狭い印象。
 馬車護衛などの特殊操作が必要なシーンは操作やルールを把握するまで詰まりがちなので、本編ではなくサブイベントに振ってくれたら良かったのに…。

 最初に書いた通り、アメリカでは待ち望まれていたゼルダであり、Wii本体の発売時のハード売り上げを牽引したキラータイトルとなったのは間違いない。
 …日本ではイマイチだったけど。

GCとWiiについて

 このレビュー、GC版とWii版を両方プレイして書いている。その違いに付いても書いておこう。

 まず、このゲームはGC用として開発されていたということを思い出して欲しい。全体的にGC版の方がゲームバランスがいいと言える。
 Wii版は乗馬や射撃武器のポイントが難しく、そのシーンの難度が妙に上がっている。逆に回転斬りがリモコンを振るだけで出せるので、大勢の敵に囲まれてるシーンでも、大して難しくならない。後、盾アタックがWiiでは出し辛いので、防御を固める系の敵が妙に強い。
 さらに二つのコンボで、盾アタックを失敗して回転斬りが暴発→無防備になったところを攻撃される、とゆーなんだかなーって事になっている。

 そして、従来のファンには堪え難いことというと大げさかもしれないが、Wii版はリンクが右利きになっている。
 これに伴い、マップ全体が左右反転されていて、西から日が昇ったりする。

 あと、GCは画面の縦横比が4:3で、Wiiよりちょっと狭い。
 これはあまり気にならなかった。

 それから、Wii版の釣り操作が凄く分かりにくかった。
 序盤も序盤でまさかの挫折かと思ったほど。
 意外と細かいところでGCからWiiに移行した無理が出ているのは否めない。

 そこで結論。

「今一歩ゼルダっぽさに欠けるきらいもあるが、流石にゼルダ」


2012-03-22