ゼルダの伝説 風のタクト

対応機種・周辺機器
GAME CUBE GABケーブル対応
ジャンル
アクションアドベンチャー
著作・制作
(c)Nintendo 2002

 任天堂の看板ゲームにして、最高のゲームシリーズの一つであるゼルダが、GAME CUBEに発売された。
 トゥーンレンダリング(セルアニメのような絵柄)で描かれた世界は、写実的ではない「もう一つのリアル」を作り出している。

 とにかく、キャラクターのモデルがよくできており動きがまたいい。今までの3Dゼルダのキャラクターが鉄板でできているものに見えてくるほど生き生きしている。
 特に目の動きがすばらしく、主人公のリンクが気になるものを目で追っているのがヒントになっていたりして、ゲーム的にも向上しているし、イベントシーンにも説得力を与えている。
 これが、カメラ位置が引いた位置にあることや、トゥーンシェードの絵柄とも合わせて、主人公との一体感は多少薄れ、そこにいる主人公を操作する感覚に近くなっている。
 これは、ある種2Dのゼルダの伝説に先祖帰りしているとも言える。ゲームとしては、プレイヤーと主人公が非常にいい位置におさまったと言えるだろう。

 舞台は海とそこに散らばる小島で繰り広げられる、島の間の移動手段は帆船を使うのだが、この船疾走感と波の動きが、じつにいい。だらだらーっと、航海している感じがよく出ている。
 これは、プレイヤーによってはストレスともなりかねない危険な選択でもあった。海上で退屈しない工夫も多くなされているが、島の移動に時間がかかるのは否定できない。
 個人的には、とにかく早く早くという風潮に待ったをかける、英断であると取りたい。「ドラゴンクエスト」シリーズの歩行速度同様に、いいリズムを作っていると思う。

 背景やキャラクターがくっきり描かれているので見やすく、それが操作性の向上にもつながっている。
 スティックへの反応が細かく、今まで以上に思ったようにキャラクターが動くようになっている。

 十字キーをマップなどの操作に当てているが、まだ十字キーを方向入力用の装置との認識で使っている。これはもう割り切って、左側にもボタンが4つ付いていると認識して機能を割り当てるべきだったと思う。
 そうすることによって、押しにくいスタートボタンを使わせずに済み、結果的に操作性の向上につながったのではないかと思える。
 また、キャンセルボタンがAであったりBであったりするのも、ちょっと分かりにくい。「やめる」は常にBに割り当てた方がいいように思えるが、いかがなものであろうか。

 オープニングでも語られる通り、「時のオカリナ」とストーリー的につながりがあるのだが、全面的にグラフィックを刷新したのであるから、これはつながりが無かった方が良かったろう。
 主人公であるリンクに肉親(おばあさんと妹)がいるのは、ストーリーに深みを与えているが、全体としてのストーリーは、「時のオカリナ」の後の世界としたことで、逆に薄っぺらになってしまった感もある。

 基本的なシステムは、「時のオカリナ」を踏襲している。もともと高かった操作性であるが、特に戦闘での向上は目を見張るものがある。
 例えば、ボタンを連続で押すだけでコンビネーションが4連続で出るし、回転切りのコマンドも入力が簡単になっている、またボタン一つで発生する必殺技も装備され、剣技の幅が広がった。
 そのおかげで、戦闘が気持ちいいし、自分が上手くなったように感じる。逆に言えば戦闘が簡単ということでもある。

 戦闘に限ったことではなく、全体的にヒントを多く出すなどして、とにかく快適に快適になるように作ってある。
 例を出すなら、フックショットと言うアイテム、本作では突き刺せる場所がマークで表示されるが、「時のオカリナ」の場合、突き刺してみるまで、突き刺せるかどうか分からなかった。
 これはゼルダの伝説がハードウェアを支える看板ゲームとなったため、ユーザーのすそ野を広げるための戦略ではあるし、確かに非常に快適である。しかし、万事がこの調子では、「プレイヤーから考えることを奪っている」と言えなくもない。

 ゼルダシリーズの特徴と言えば、総合ゲームである面白さと言える。本作では、例えば「ウェーブレース」であるとか「パイロットウィングス」 やら「ポケモンスナップ」など、諸々の要素が入っている豪華さである。
 コアなユーザーにとっては、新しさを感じるのではなく「もう見たよ」という感じを与えてしまう危険もあるが、さすがに上手くまとめあげている。

 総合ゲームであることの証左であり、ゼルダシリーズの代名詞とも言える「ミニゲーム」がある。
 残念ながら、本作ではミニゲームのできが、今ひとつであると言わざるを得ない。
 というのも、ミニゲームが上手くなっても、ちっとも通常のプレイが上手くならないタイプのゲーム、要するにそこだけ完全に別のゲームであるミニゲームが多いのである。

 今回は海が舞台であり、宝箱を海から引き上げることもできる。これは「男の子のロマン」の一つでもあり、楽しいものではあるが、すぐに慣れて作業化してしまったのが残念でならない。
 もう一工夫があれば、相当に面白くなったろうと思えるのだが。いや、むしろ工夫してヒントを出し過ぎたのが、面白さを削いだ部分もあるかもしれない。

 本作は、GCの牽引ソフトとしての役割を担っていたこともあり、2002年の年末商戦に合わせて発売された。
 そのためとは思いたくないが、どう考えてもダンジョンを少なくとも2つ、おそらく4つは「はしょって」いるような展開がある。
 ボリューム的には、今までの作品より、かなりグレードダウンしていると言えるだろう。ただ私自身は、このくらいのボリュームで十分であると思う。それよりも問題は、ゲームをやっていて「この場所からダンジョン無くなったな…」と思わせるところにある。どう考えても、最初からこのボリュームを意識して作られたとは、思えないのである。

ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」では、収集アイテムの種類が過剰である問題点を指摘したが、本作でもいくつか問題がある。
 一つは、戦闘が簡単なので、体力を増やすアイテムであるハートのカケラを集めるモチベーションが低い。次に、本作ではフィギュアを収集できるが、2回プレイしないと完全に収集することができない上に、取り逃すと後で挽回できないものがある点。最後に、先ほども書いたように宝箱の引き上げが簡単なので、宝の地図を見つけた後行うサルベージが結局作業でしかない点。
 フィギュアは先に述べたようにモデリングのレベルが非常に高く、収集欲をそそるアイテムであるだけに残念である。

 操作性の大幅な向上や、表情のあるキャラクターによって、一つ上のステージに立つ事のできた本作である。しかし、ゲームとして上のステージに立つことができたかと言えば、そうとは言いがたいものがあるのも事実である。

 ちなみに、本作は予約特典としてN64の「時のオカリナ」のGC版とその裏バージョンがまるまる2本付くと言う、史上類を見ない豪華特典が用意されていたことでも話題となった。それを含めれば、ボリュームが少ないということは全くないのだが。あくまで予約特典であるので、ソフトの評価に入れるべきではないだろう。

 そこで結論。

「ゼルダの伝説の新たなステップの土台となるゲーム」


2003-01-21