オーディンスフィア

対応機種・周辺機器
プレイステーション2
ジャンル
サイドビューアクションRPG
著作・制作
(c)アトラス / ヴァニラウェア 2007

基本情報

 プリンセスクラウンから10年。
 ゲームクリエイターでありグラフィックデザイナーである神谷盛治が、同じ基本システムを踏襲して再度挑むサイドビューアクションRPG。
 10年の歳月はゲームにどれだけの進化をもたらしたのか。

サイドビューアクションRPGでの立ち位置

 サイドビューのアクションRPGと言えば、任天堂リンクの冒険ソーサリアンなど、1980年代に一度盛り上がりを見せる。
 その後、七ツ風の島物語ガーディアンヒーローズ、前述のプリンセスクラウンなど、佳作・傑作が出るものの、今ひとつメジャーになりきれないジャンルである。
 本作は、ほぼ上方向への移動がなく奥行きもない「左右移動+ジャンプ」での移動という、スパルタンXを彷彿としてしまうぐらいシンプルな作りである。
 なにせ、背景は完全に書割りで、対戦格闘ゲームの背景に近い作りだ。

 つまり、落とし穴やトラップをジャンプなどのアクションを駆使して抜ける必要がない。
 そのためアクションの腕前がほぼなくても、キャラクタを成長させたりアイテムを駆使したりすることで突破できるのがメリット。
 しかし背景に全く仕掛けがないのは、やはりいくらなんでも淡白すぎる。プリンセスクラウンでかなりプレイヤーからツッコミ来たと思うんだが、まさかそのまんまとは。
 スーパーマリオブラザーズとかメタルスラッグにする必要はないが、長いプレイの気分転換的な仕掛けとして、ステージに変化が欲しかったところである。

グラフィック

 描き込まれたグラフィックが滑らかにモーフィングしつつパーツアニメ(キャラクタが細かい部品に分かれていて、その組み合わせでアニメーションする方式)する。
 プリンセスクラウンも相当細かく動いていて、その後この手の多関節のパーツアニメではザ・ランブルフィッシュが頑張っていた。
 本作はPS2のパワーを存分に使って、マシンが許し人が考え作業しうる限りというレベルで細かく滑らかに動く。
 多関節キャラは関節部分が不整合を産まないように、膝あてを付けるなどして自然に見せるのが常套手段で、スーパーロボット大戦のようなロボット向きのシステムである。
 本作は生足美女が自然に動くし、ドラゴンも関節に区切り線のようなものもなく自然に表現されている。
 2Dの手描きの味わいと3Dのような滑らかなモーションを両立させた、恐るべきグラフィックと言えるだろう。

 ただ、アクションシーンではPS2のパワーを持ってしても処理が追いついていないようで、巨大ボス登場時は勿論、画面にアイテムが多めに出て来ただけでも処理落ちする。
 自分の操作ミスではなく処理落ちで操作できなくなってやられてしまうのは納得いかず、ストレスの元になる。
 レーダーに表示されるシルエットをみていると、敵が画面外にいる時にもフルに処理しているっぽい。
 また、アイテムにも光源処理を行っていて、それもまた処理が重くなる一因のようだ。

 アイテム選択時は背景と色が近すぎて見辛い上に、手前の背景オブジェクトやメッセージウィンドウがアイテムにかぶって、そもそも見えなかったりする。
 だいたい、アイテムサークルというシステム自体、あまり使いやすくない。
 神谷盛治作品はカプコンにいた時からずーっとアイテムサークル方式を採用しているが、このこだわりは止めて欲しいところだ。
 特に頻繁に使用する部分なだけに、雰囲気より操作性を重視して欲しい。

マップ

 マップは左右が繋がった(円周状の)ステージがあり、それを10数個程度つなげたラウンドがあり、さらにいくつかのラウンドからなる全体マップがある。
 この階層によって、移動に無駄に時間がかかることもなく、適度な区切りでテンポ良くプレイできるようになっている。

 ステージは戦闘状態と非戦闘状態があり、戦闘状態では敵を全滅させるとクリアとなる。
 ただしステージ侵入前に簡単に戻ることができるので、ハマってしまうことはない。
 全滅までにかかった時間や被ダメージなどでスコアが算出され、ステージ毎にアイテムの入った宝箱が出現する。

 ラウンド(地方)毎に背景画像は大きく変わるが、ラウンド内の各ステージはほぼ同じ背景と数種の敵で作られており、繰り返し感が尋常でない。
 その似たようなステージが切り替わるたびに数秒の読み込みが発生するのが納得いかない。
 グラフィックも音も共通なんだから、ステージ毎に必要なデータなんかせいぜい数キロバイト程度な気がするんだが。

ストーリー

 5人のキャラクタそれぞれにストーリーが用意されていて、基本は順にクリアしていく。
 1人あたり10〜20時間程度でクリアできるので、1人目はわりと適切な長さで飽きる前に終わる。
 しかし、キャラが変わっても舞台も敵も一緒なので、新鮮味に乏しく繰り返し感は強い。
 合成できる薬や料理が増えたり、敵やアイテムの量などが変わるし、キャラ毎の技や性能の違いは多少ある。
 逆に言うとその程度の違いしかないわけで、前述の背景の単調さとあいまって、2人目の時点で作業感が出てくる。
 ストーリー重視であるためか、キャラクタ選択とラウンドの攻略順が固定なのも、やらされてる感があり不満。

 イベント→準備→イベント→ラウンド探索→イベント→ボス戦→イベント、を1セットとして繰り返す。
 謎解き要素はほぼないし、最初のチュートリアル以外では、クエスト的な小目標もない。
 流石にシステマティックに整理し過ぎで、作業感バリバリである。

 イベントシーンはムービーではなくゲーム中と同じグラフィックによる細かい演技が行われる。
 さらに舞台を意識した台詞回しやスポットライトなどの演出に加え、演技派声優によるフルボイスが、超高品質の人形劇を観ているような、絵本が動き出したような、独特の世界を作り出している。
 このイベントシーンは本作の出色している部分であり、単調な本編を先に進める、プレイの原動力になるほどの魅力がある。
 また一度観たイベントは、いつでも呼び出して見れるのも素晴らしい。
 まだ観ていないイベントがどれだけあるかも表示されるので、全体のどのくらい進んだかも分かりやすくなっている。

 さらにイベントシーンには漫画のフキダシに近いものが表示され、音声で言葉が被るのに合わせてフキダシも視覚的に被るといった、フキダシ方式のゲームの中でも高度な使われかたをしている。
 しかしながら、音声とアニメーションという時間に捕われる表現との整合性は悪い。
 台詞読み終わっているのに飛ばすこともできず、台詞読んでると折角のキャラクタアニメを見逃したりろくなことがない。
 技術的には高度なもののデフォルトでは無いほうが良かったし、文字を表示する場合も字幕方式が収まりが良かったろう。

 物語自体はかなり良く練られているが、カエルがちょっと面白いぐらいでユーモアの要素に乏しい。
 登場人物、特にプレイヤーキャラが美男美女ばかりでアクが弱く、人物が真面目すぎて逆にギャグになっている面もある位だ。
 プーカという種族がコインを集めている、という部分はうまくシステムと重なっていて良かったが、基本的にゲームとの関わりが少ないストーリーである。

戦闘システム

 攻撃ボタンはひとつだけで、連続入力で出るコンボ、空中コンボ、しゃがみで強攻撃、上キーで対空攻撃、あとは各キャラごとに特殊技が2種類という、格闘ゲームとしてはかなりシンプルな作り。
 とはいえ、本作ではゲージ消費タイプとアイテムの魔法が存在するので、それらを組み合わせることにより、十分なバリエーションを確保できている。
 魔法は両者とも、メニューから選択するタイプなので、アクションとしてのテンポは悪いが、アクションを難しくしすぎない選択としてアリだろう。

 攻撃をするたびにパワーゲージが減り、ゲージがなくなったら気絶状態になってしばらく動けなくなる。
 ヒットアンドアウェイを強制する仕掛けなわけだが、動けなくなるのはやり過ぎで、攻撃ができなくなる程度にして欲しかった。
 このゲージは、しばらく時間を置く他に、フォゾンと呼ばれる経験値にもなる光の粒を吸収することで回復することもできる。
 フォゾンは敵を倒すと出現する他、アイテムやスキルで出せる。
 そこで強敵と戦う前にフォゾンをバラまいておいて、ちょこちょこ吸収してゲージを回復しつつ、連続攻撃を継続する、なんてこともできるのは面白かった。

 戦闘の難易度をいつでも選べるのだが、成長システムで難しさは吸収できるので、あまり意味がない。
 アイテムやスキルを駆使することでも難易度は格段に下がる。
 また、死んでも即ステージ開始時に戻るだけでペナルティなしな上に、いつでもステージから脱出できるのでなおさらだ。

 ボス戦は処理落ちのせいもあって、うまく敵の攻撃をよけて弱点を攻撃みたいな戦闘が難しく、結局力押しで解決という事が多く残念。
 特殊な仕掛けがあって倒しかたに工夫の必要なボスもいるが、ほぼ最後に集中しているのも残念。
 ボスに限らずアクション部分は、危険な状況からのリカバリが難しく、結局は正解のアクションを繰り返すことになり、作業感が強くアクション的面白さが削がれているのは残念。
 結局アクションとしての面白みが出せていないのなら、いっそボスはグラフィックと体力が違うだけで同じもの、位割り切った方が良かったかもしれないと思うほどだ。

アイテムの合成と入手の手触り感

 ステージのスコアや、キャラクタの育て方、アイテム合成の優先度、そういうシステムが有機的に繋がっていて、ゲームを進めていくうちにより効率の良いやりかたを見つけていくのが楽しい。
 アイテム合成はいつでもできる魔法薬作りと、店でしかできない料理の2本立てで、ゲームのプレイの半分位の時間は合成している印象。
 その合成ルールや数値的なバランスはかなり良い。

 しかし、魔法薬は画面で一度に見れるアイテムが少なくて探すのが面倒な上、アイテム2つを合成すると地面に放るので、いちいちそれを拾わなきゃいけないのが面倒。
 アイテムを一旦フィールドに落とすことによる手触り感が欲しかったのかもしれないが、大量に合成する必要があるシステムなので、楽しいと面倒では確実に面倒の方に針が振れている

 料理の材料が足りているか確認する場合、店に入らないと自動で判定してくれない上に、店に入るのに数秒のローディングがある。
 足りない材料を確認し、店の外の行商人で材料を買い足し店に入る、というルーチンワークがまた面倒。

 アイテムを拾うアクションは、アイテム上で(アナログ)方向キー下を押すことで可能。
 アイテム上を通過するだけで入手できるリングも装備できるが、ビックリするほど手触り感がなくなる。
 こちらは面倒より楽しいに針が振れている。
 おそらく通過でアイテム入手できるリングは、「ほら下キーで拾った方が楽しいでしょ」ってことを言わんがためのアイテムだろうし、その意図はすごく成功している。

 そこで結論。

2Dパーツアニメの最高峰! 美しい! でもゲームは単調


2013-08-16